木下晋也&よしもとばななのマイペース対談
インタビュー・テキスト:内田有佳 撮影:三野新
木下さんの制作スタンスは、いい言い方をすれば村上春樹型というか。(ばなな)
木下:あと、悩みっていうほどのことじゃないんですが、僕、すぐ寝ちゃうんですよ。常に眠い感じで。最近はスルメを買ってきてかじったりしているんですが、いい眠気覚ましの方法ってありますか?
ばなな:寝ちゃうのが一番ですよ。短時間でもいいんです。そんなに締め切りとかが切羽詰まっているんですか?
木下:いやあ、そういうわけじゃないんですけど……。
ばなな:さっきお話を聞いて安心したのですが、木下さんのようなタイプの制作を不規則な生活の中でやると、死んでしまうと思う。ダレるでも退屈でもなくて、自分の中で飽きてきちゃうと思うんです。
木下:そういうものなんですかね? やったことがないからわからないけど……。
ばなな:だから忙しくなっても、徹夜して翌日休んだりするやり方はしないほうがいいんじゃないかな。私自身は子どももいますし、めちゃくちゃな生活リズムなんですけど……。木下さんは思いついたら描く! みたいな作風じゃないし、こういうタイプの人は昼夜が逆転するとまいってしまうことが多い。いい言い方をすると、村上春樹型というか。
木下:漫画家って不規則な生活でなんぼって考えが頭の片隅にはあって。でも僕にはできないなって思いながらやっていたので、そう言ってもらえると心強いです。
ばなな:間に合っている分には大丈夫じゃないですか? 木下さんは、とにかく粘りがすごい人だから。作品を読んでいて、ちょっと危ないかな? と思っても巻き返すようなパワーを持っていて、それは頭を休めいているときから来ると思うから、無理してほしくないなっていうのが私の願いですね。
―ばななさんは、実際木下さんにお会いしてみて、印象は変わりましたか?
ばなな:想像していた通りの佇まいですね。絵を描く人って、作品と本人がどこか似ているんです。
―人柄についてもイメージ通りでしたか?
ばなな:人柄は、漫画よりも鋭いというか、周りの人が驚くようなキツイことを急に言ったりするんだろうなって思ってたんです。言い方がキツイとかじゃなくて、すごく身近な人には、こうなんじゃないの? とか核心をついたことを言って、その人をすごくびっくりさせるのかなと、勝手に思っていました。
木下:言わないですね……。ぼんやり生きているんでしょうね。イライラしても、寝たらバカみたいに忘れたりするので。
ばなな:わかります。私も普段は、木下作品のような感じだから。でも、あるときから、表向きの人格と、本来の人格を切り離さないとやっていけないと思ったんです。
―それはどうしてですか?
ばなな:日記やエッセイでは意見を明確にして書くけれど、そうしないと読んでいる人がモヤモヤしてしまいますよね。でも、本当はあんなにハッキリしていなくて、あれでも、これでもいいんじゃない? というのが本来の私。それを知っている人たちからは「あなたは木下作品好きだろうね〜」って言われます。私が木下さんの漫画を好きなのは当然なんですよ。
―最後に、今後の展望について聞かせてください。新連載の『つくりばなし』は『ポテン生活』のように長くなるイメージはあるんですか?
木下:それはもちろん、人気が出て長い連載になってくれたらいいですよね。
ばなな:木下さんの作品は、今の時代に必要な漫画ですからね。みんな、こういう風になったほうがいいんじゃないかな。実生活ではここまでユルくなれなくても、読んでいる瞬間だけでもそうなれたら幸せだな〜と思います。
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