『モーニング』編集長・島田英二郎に訊く、漫画の未来
インタビュー・テキスト:宮崎智之 撮影:野村由芽
これからの編集者はプロモーション面も含めて、「好き」になってもらうためのサポートをしていかなければいけない。
―『Dモーニング』では東村アキコ先生の新連載『メロポンだし!』をオールカラーで掲載しましたね。こうした取り組みも「好き」になってもらうことにつながりそうです。
島田:紙と違って電子では、オールカラーで掲載することにそこまでコストがかかりませんから、カラー化がしやすいんです。そもそも電子では紙以上にカラーが望まれている印象をもちますね。『メロポンだし!』はLINE公式電子コミックストア&ビューアアプリ「LINEマンガ」でも同時連載を開始しています。また、月刊『モーニング・ツー』の『聖☆おにいさん』は、第1話「ブッダの休日」4ページ分の原稿データを「原著作者のクレジット表示」「改変の禁止」の条件を満たせば自由に転載、印刷できるクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用しました。これも、読んでもらう裾野を広げる活動の一環です。
聖☆おにいさん 第1話「ブッダの休日」
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―『Dモーニング』では、コミック誌では読めないオリジナルコンテンツ連載として『山下和美名作読み切り劇場』や、『へうげもの』で有名な山田芳裕先生のデビュー作『大正野郎』も連載されています。
島田:紙では再録は基本歓迎されませんが、電子ではなぜか喜ばれるのが不思議なところです。
『Dモーニング』オリジナル復刻連載『大正野郎』
―電子化が作品に与える影響はどんなものがありますか?
島田:これからは電子を主眼において描く作家が出てくるかもしれません。そうなるとスマートフォンを意識せざるを得ませんから、コマ割りが大きくなったり、台詞が少なくなったりするかもしれませんね。あと、紙と違って電子の場合は、どの漫画が何ページまで読まれたかがデータとして明確に出てきちゃいますね。
―よりシビアに評価されるようになると。
島田:「毎号面白くなければいけない」というのはどの作家さんも今までもやってきたことですから、本質的にはやることは変わりませんがね。それに漫画の価値は、どれだけ読まれているかだけでは測れないという一面もあります。2,000人しか読んでなかったとしても、2,000人にものすごく愛されているなら、その作品にはそれだけの価値があるということにもなります。これからの編集者に求められるのは、2,000人のファンでも儲かるような仕組みを考えることでもあります。たとえば2,000人の熱狂的なファンがいるなら、単行本の価格を通常の10倍に設定すれば、ふつうの単行本2万部分の利益をもたらせるわけです。
―先程の、「売れるとは何か」という問いにもつながりそうです。
島田:まさに、その通りです。技術の進歩は、読んでもらう裾野を広げたと同時に、「売れる方法」の多様化も押し進めていくと思います。編集者はプロモーション面も含めて「好き」になってもらうためにサポートしていかなければいけない。その1つの選択肢として、「電子」が立ち上がってきたというのが今の現状です。
―SNSの登場が与える影響も大きそうですね。最近では、Twitterで情報発信する作家さんも増えてきました。
島田:どういう人が作っているかがわかると、作品への愛が深まりますからね。TwitterなどのSNSは「面白い」から「好き」に移行させる上で、とても有効的なツールだと思っています。また、SNS上での作品の評価を気にする編集者も最近は増えてきました。SNSで盛り上がっているからといって、どれだけ実売につながるかはまだ未知数ですが、騒がれていれば心強くはありますからね。編集者って、とにかく「これはいけるんじゃないか!」と思っていたい生き物なんですよ(笑)。
―島田編集長自身もTwitterをやられていますね。
島田:あれには「とにかく、『モーニング』の新人賞の応募者をたくさん集めたい」という明確な目的でやってます。裾野を広げるのは読者だけではなくて、作家も同じことだと思うんです。どんどん若い作家が出てこなければ漫画文化は衰退してしまいますからね。漫画の未来に希望を持ってもらうために、これからも頑張っていこうと思います。
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