古川日出男×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION) 対談(後編)
インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:田中一人
震災のあとに「歴史は正しく残らないだろう」って直感的に思ったんです。この震災についても、歪曲された言葉が正史には積み重なっていくんじゃないかって。(後藤)
―時代を超えて残る作品というものを考えたときに、『南無』でも描かれているような大局的な視点、時間の流れを大きく捉える視点っていうのが、とても重要なのではないかと思います。
後藤:古川さんの作品は、文章を読んでいるんだけど、20世紀をマッピングし直した地図を眺めている感覚もあって、やっぱり何かが編み直されてる感じがしますよね。それは『ベルカ(、吠えないのか?)』や『LOVE』を読んでもそうだし、ホントに独特としか言いようがない。日本史に抗ってるような感覚もあるというか(笑)。
古川:「与えられた地図を信用するなよ」っていうことを言いたいんでしょうね、無意識に。「マッピングは自分でやった方がいいよ」って。
後藤:僕は震災のあとに「歴史は正しく残らないだろう」って直感的に思ったんです。この震災についても、歪曲された言葉が正史には積み重なっていくんじゃないかって。『THE FUTURE TIMES』を始めたのは、柳田國男とかがやったように、俺たちは俺たちの正史を民話として残さなきゃいけない、でないとこの僕たちの戸惑いは、大文字の「2011.3.11」に刻まれもせずに遺棄されていくんじゃないかと思って。だったら、僕は紙に書きつけようという、そういう気持ちがあったからなんです。
古川:ミュージシャンが民俗学者の意識を持ってるって、すごいことですよ。その視点の小説家はいない。
後藤:西洋音楽史の本をずっと読んでいたら、中世の吟遊詩人たちがそういう役割だったと書いてあって。いろんな民話や風俗を伝え歩いて、ニュースペーパーのような役割をしていたようで、これを現代にカバーすればいいんだと思ったんです。それで、「新聞」っていうキーワードが出てきました。
「編集する力」ってすごく大事だと思っていたところに、「編集はこうやってやるんだよ」っていう小説が出るなんて(笑)。(後藤)
古川:『THE FUTURE TIMES』の発想自体は震災後どれくらいで浮かんだんですか?
後藤:4、5月くらいでした。震災前から音楽史の本をずっと読んでいて、その吟遊詩人たちが、宮廷の貴族たちの色恋を、「LOVE」を歌い出すんですよね。これこそポップミュージック、ロックンロールの起源だと思って。
古川:かっこいいなあ(笑)。
後藤:これまで聴いてきた音楽、読んできた本、学んできたことの一切合財が編集されて今の自分がいるわけじゃないですか? そういう意味でも「編集する力」ってすごく大事だと思っていたところに、「編集はこうやってやるんだよ」っていう小説が出るなんて(笑)。しかも、自分が一度読んだことのある本が、まったく違うものになってて(『南無』の中には2005年発表の古川作品『ロックンロール七部作』が完全に書き換えられ、一部に組み込まれている)、もちろん既視感はゼロではないんだけど、でも面白いと思うことに驚きました。「お前これ何年か前にちゃんと買って読んだよな?」って思うんだけど、でもまったく新しい、今語られるべき小説になってて、最後は今まで感じたことのない「わななき」みたいなものに新幹線の中で襲われたわけです。それはホントにびっくりしました。
古川:「わななき」っていい言葉ですね。「おののき」だと読んでくれない人もいるかもしれないけど、「わななき」までいくと、すべての感情のエクストリームなものが合体したんだなって感じる。僕はあれを書き上げてから3か月ぐらいずっと一人で編集してたんですよ。
―作詞・作曲はもちろん、録音・ミックス・マスタリングまで、全部一人でやるような感じですよね。
古川:そう、今までは原稿を渡して、雑誌に載って、ちょこっと直して本が出てたけど、今回はそういうわけにはいかない。そもそも1回出た本を3分の1ぐらいベースにしながら、まったく別の本を作るっていう作業をしてるから、「最後の最後までやらないと」っていう気持ちがあって。それがあったから、一面的な感情の読後感で終わる本じゃなくて、「わななき」みたいになったのかなって。
後藤:セルフカバーであり、リミックスですからね(笑)。
古川:そういうのは音楽を聴いてるから浮かぶ発想ですよね。本だけ読んでると、ああいうのはできないと思う。自分の本を盗作するっていうか……いや、自分の本だから盗作じゃないんだけど(笑)。
『古川日出男 × 後藤正文 トーク&ライブセッション』
CINRA.STOREで『南無ロックンロール二十一部経』をご購入いただいた方を抽選で『古川日出男 × 後藤正文 トーク&ライブセッション』にご招待致します。
2013年7月21日(日)17:30スタート予定
会場:東京都 青山 某所
定員:100名(当選者のみ入場可、座席有・自由席)
料金:入場無料(2ドリンク制)
※ご入場時にドリンク代(1,000円)をいただきます
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『南無ロックンロール二十一部経』刊行記念『古川日出男×柴田元幸トークショー』
2013年5月16日(木)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 東京堂神田神保町店6階東京堂ホール
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
『ランドマーク』通常盤(CD)
2012年9月12日発売
価格:3,059円(税込)
KSCL-2122
1. All right part2
2. N2
3. 1.2.3.4.5.6. Baby
4. AとZ
5. 大洋航路
6. バイシクルレース
7. それでは、また明日
8. 1980
9. マシンガンと形容詞
10. レールロード
11. 踵で愛を打ち鳴らせ
12. アネモネの咲く春に
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V.A.
『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2013』(CD)
2013年6月5日発売
価格:2,520円(税込)
KSCL-2246
1. Loser / ASIAN KUNG-FU GENERATION
2. マイ・ロスト・シティー / cero
3. 適当な闇 / the chef cooks me
4. レインボー / Dr.DOWNER
5. 花束 / 岩崎愛
6. STARS / NOWEARMAN
7. 石川町ファイヤー / PHONO TONES
8. Rapid Reality / RADICAL DADS
9. There's A Change / Sara Radle(ex.The Rentals)
10. SUNNY / シャムキャッツ
11. ストーリー / スカート
12. beautiful world / SPECIAL OTHERS
13. BRAND NEW EVERYTHING / ストレイテナー
14. Misleading Interpretations / Turntable Films
15. WORDS KILL PEOPLE(COTODAMA THE KILLER) / うみのて
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Gotch
『The Long Goodbye』(アナログ7inch)
2013年4月20日発売
価格:1,000円(税込)
ODEP-003
1. The Long Goodbye
2. The Long Goodbye (P's O-parts Remix)Remixed by PUNPEE
※ダウンロードコード付き
The Long Goodbye / 後藤正文 | only in dreams
『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN CIRCUIT 2013』
2013年6月14日(金)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:京都府 京都 KBS ホール
2013年6月15日(土)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:京都府 京都 KBS ホール
2013年6月17日(月)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:愛媛県 松山市総合コミュニティセンター
2013年6月19日(水)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:熊本県 熊本 DRUM Be-9 V1
2013年6月24日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:新潟県 新潟 LOTS
2013年6月26日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 Rensa
2013年6月28日(金)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:東京都 水道橋 TOKYO DOME CITY HALL
ASIAN KUNG-FU GENERATION デビュー10周年記念ライブ『ファン感謝祭』
2013年9月14日(土)OPEN 15:00 / START 17:00
会場:神奈川県 横浜スタジアム
ASIAN KUNG-FU GENERATION デビュー10周年記念ライブ『オールスター感謝祭』
2013年9月15日(日)OPEN 15:00 / START 17:00
会場:神奈川県 横浜スタジアム
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