小学生の子供たちとともに、本格的な舞台を作り上げる「パフォーマンスキッズ・トーキョー」。今回のワークショップを担当した東野祥子さんは、吉祥寺シアターで『UNICOSMO WONDERLAND(ユニコスモ・ワンダーランド)』という作品を作り上げました。はたして、この作品創作を通じて子供たちが得たこととは? そして、東野さん自身は何を考えたのでしょうか? 東野さん独自のダンスについての思考をお伺いしました。
(インタビュー・テキスト:萩原雄太 撮影:菱沼勇夫)
前衛的なノイズミュージックを使って子供とダンス
―子供との作品づくりを通して、東野さん自身、どのような経験が得られましたか?
東野:今回の「パフォーマンスキッズ・トーキョー」では、『UNICOSMO WONDERLAND(ユニコスモ・ワンダーランド)』という作品を発表しました。ちょっとかわいらしいタイトルですが、メルヘンな夢もあれば、悪夢のようなシーンもあり、「自分とはいったい何なのか?」と問いかけるようなシーンもあるような作品だったんです。
東野祥子(ダンサー・BABY-Q主宰)
―なるほど。子供にとってはかなり高度な内容になったんじゃないでしょうか?
東野:子供だからと安易に“子供扱い”するのではなく、大人と分け隔てなく扱うべきだというのが私の考え方なんです。子供だから難しいことは理解できないと思いがちですが、「自分の存在意義」といった難しい話でもしっかりと話せば伝わります。また、いわゆる“子供向け”のキレイな世界だけではなく、人間の内面を表現したような世界観も子供は案外受け入れてくれるんです。
―普通、難しいことは子供には伝わらないと思ってしまいがちですよね。
東野:今回の作品でも前衛的なノイズミュージックを使用したんですが、子供たちは「変な音楽」と言いながらも真剣にやってくれていました(笑)。その他にも照明や映像なども「BABY-Q」の公演とほぼ変わらないものを使用していますし、作り手としては、とても面白い公演に仕上がったんじゃないかと思っています。私が子供だったら参加したいですね。
―ワークショップの内容はどのようなものだったでしょうか?
東野:まず始めに、大人と同じワークショップをしながら、ひとつひとつの動きをピックアップして作品に仕上げたんですが、コンテンポラリーダンスの世界を知らない子供たちですから、最初は戸惑ったような反応が多かったんです。けれども回数を重ねていくと、だんだん自分の身体のことがわかってきて「こういうふうに動けるんだ」「こういうふうにコミュニケーションできるんだ」という理解ができてくる。それによって、「舞台に立つ」という意識が芽生えてきて、稽古中もしっかりと行動するようになります。だから、こういった活動は子供の教育にも役立つんじゃないかと思いますね。
吉祥寺シアター 発表公演 ©鹿島聖子
「美しいとは言えないダンス」も認めてもらえたことが、今につながった
―東野さん自身もダンスによって自分が変わったという経験はありますか?
東野:高校の頃にダンスのコンクールに応募したんですが、その時に出品した作品が先生の下で踊っていた普通のダンスとは真逆の、一般的には美しいと言われないようなダンスを組み込んだ作品でした。けれども、その先生がそんな作品に対しても「ダメ」とは言わずに「もっともっと」と後押しをしてくれたんです。今振り返ると、それによって自分の表現の可能性を伸ばしていけたように思います。
―そこで認められたから今の自分がある?
東野:私自身、高校生の頃にダンスの先生から「これでいいんだ」と後押しをしてもらえたことがきっかけで現在まで続けることができているんです。その時に「ダメだ」と言われていたら、とっくにダンスを辞めているんじゃないでしょうか。自分の表現を認めてもらえるということが、どんな人間にも大事なことなんじゃないかと思います。
―以前CINRA.NETのインタビューで「ダンスを見る人を増やしたい」と語っていましたが、その後状況は変わったと感じますか?
東野:最近は劇場以外の場所でのダンスが増えてきたので、ダンスが身近になってきたと感じられますね。今回の企画は、東京文化発信プロジェクトのサポートによって実現したんですが、ダンスを経験する人が多くなっていけば、必然的にそれを見に行く人も増えていきます。ダンスの世界が今以上に広がることにつながるんじゃないかと期待していますね。
その他、東京にはたくさんの文化プログラムがあります!
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