道具と機材にあふれた一軒家
TYMOTEは2008年10月、高田馬場にある「ヤバい」雑居ビルで会社をスタートしました。
井口「事務所をどこにすればいいのか全然ビジョンが浮かばなくて。トレードマークの『馬』縛りで高田馬場にしたんですよね
設立から2年間は高田馬場の事務所で仕事したものの、狭さと臭さとヤバさが気になって引越しをすることに。現在は、都内の閑静な住宅街にある一戸建てを仕事場にしています。大まかに分けると、1階がPCや音響機材でデジタルな作業を行うスタジオ、2階が油彩などで使うアトリエです。果たしてTYMOTEはどのような道具を使って制作を行っているのでしょう? 彼らの仕事を支えるヒミツ道具を見せてもらいましょう。
OP-1
TYMOTEの映像作品に欠かせない要素、それは音です。その重要な音作りを担っているのは村井さん。スタジオの一画には、サンプラーをはじめ、多くの音楽機材が置かれています。けれど、お気に入りはこれらの機材ではなく「OP-1」というシンセサイザー。キーボードをひと回り小さくしたくらいの、まるでおもちゃのようにかわいらしい見た目ですが、いったいどこが魅力なのでしょうか?
村井「まず、小さくて持ち運びしやすいのがいいですね。4トラックのテープシミュレータがまた良くて、暇な時間にパッと曲が作れたり。ちょっとしたエフェクトも面白くて結構使えるし。画面の表示がグラフィカルでかわいいものばかりなので、楽しく、直感的にエディットできるんです」
最近作っている仕事の曲も、プライベートで作ってる曲もこのOP-1で作っている部分があるそうです。
鉛筆
TYMOTEのグラフィックや映像には、温かみのある手描きモチーフが登場します。それらを描くため、メンバーを問わずよく使っているのが鉛筆とそのラインをぼかす擦筆(さっぴつ)、そして練りゴムです。これらの道具のうち、特にこだわりがあるのは鉛筆だとか。
飯高「三菱ユニが、芯が軟らかくていいんです。4Bから4Hまで使い分けています」
最近では、「VIA BUS STOP」のデジタルサイネージに登場するグラフィックのパーツを鉛筆で描きました。なんと枚数にして、ざっと500枚…!
飯高「VIA BUS STOPの案件は、制作期間が2週間くらいしかなかったんです。そのうち1週間をまるっと原画描きに費やしましたね
ブレッドボード
TYMOTEで唯一プログラミングを行うメンバー、Web担当の山口さん。普段は社外でメディアアーティストとしても活躍しています。その山口さんがアーティスト活動でよく使っているヒミツ道具がブレッドボード。
山口「普通は電子回路を作るのに、ハンダ付けをしないといけないじゃないですか。でも、ハンダ付けは面倒くさいし、一度使ったら使い回しができない。それが、ブレッドボードなら電子部品を挿すだけで回路が使えるんですよ。つまり、終わったらバラせるんです」
最近ではこのブレッドボードを使い、ドローイングマシーンを作りました。
山口「馬力の強い電動スケボーを改造して、二重振り子をつけたんです。普通、振り子って円運動をするじゃないですか。その振り子にもうひとつ振り子をつけると、動きがカオスになって、有機的なラインを描くんですよ。で、その先端にスプレーがついてて、抽象的な絵を描くマシンなんです」
ペンタブレット
メンバーのうち半数以上が使用しているというペンタブレットですが、様々な領域を得意とするTYMOTEだけに、映像、グラフィックなど使用分野も人それぞれ。井口さんは、最近だと伊勢丹の案件でアニメーションを作った時に、ペンタブレットを使って作品を制作しました。
井口「ひとつの素材からコマを何個も量産しなきゃいけなかったんですよ。それを手描きの質感を残しつつ、デジタル上でうにゃうにゃ動かすために使いました」
鉛筆の質感を出したい時はアナログの鉛筆で、それ以外で手描きのテイストを出したい時はペンタブレットで、とざっくりした使い分けを行っているそうです。
井口「僕らは手描き風の作品が多くて、例えば映像作品でも「描く」っていう行為が必要になることがあるんですが、そういう時に「感覚」で使うことのできるペンタブレットは重宝してますね」
また、アシスタントの「まっちゃん」こと松岡さんは、マウスの握り方が問題で腱鞘炎になっていた時にペンタブレットに出会い、症状が劇的に改善したのだとか。
松岡「普通にマウスの代わりとして使ってますね。ペンタブレットはソフトによってボタン設定を自分で変えて使ってます。ホイールも結構触ってますね。くるくる回して、拡大縮小させたり。ペンタブレットがないと不安になります」
ライトボックス
映像制作を行うことの多いTYMOTEでは、ライトボックスが必須の道具です。ライトボックスとはその名の通り、強い光を発する台のこと。アニメーションの制作などで絵のトレースをする時に使います。
村井「油絵の具で描く時は、ひとつひとつのモチーフを写真に撮って動かしていくというやり方でアニメを作ります。ライトボックスを使うのは、鉛筆で描いた原画を動かす時ですね。例えば、「ENVELOP」というイベントのために作ったオープニング映像では、手描きタイプフェースが度々出てくるんですが、これはライトボックスで作ってます。他にも、同じ形で違う色のグラフィックを作りたいという時、ライトボックスに敷いてトレースしたり」
今ならば、原画をスキャンしてパソコンで複製すれば簡単に同じ形が作れますが、そうしない理由はなんなのでしょう?
村井「デジタルでやったほうがいいと思う時は、そっちの方法をとりますね。今回はライトボックスで透かして部分的にちょっと描きかえよう、今回はパソコンを使おうと、その時々でフィーリングに合った道具を選んで使っています」
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