カッコつけるためのヒミツなんていらない「カッコいい」道具たち
代々木駅にほど近い青山さんの事務所。取材当日は、青山さんも出展した『THE TOKYO ART BOOK FAIR 2012』の前日だったこともあり、ZINEの制作作業に取り組むアシスタントの方の姿もちらほら。お忙しい中、青山さんのクリエイティブに欠かせない「ヒミツ道具」を紹介してもらいました。
PowerShot S100(キヤノン)
写真家のカメラといえばプロ仕様の大きな一眼レフを想像してしまいますが、「ヒミツ道具」として紹介されたのは、誰でも持っていそうなコンパクトなカメラ。理由を聞いてみると……。
青山:写真を始めてから僕はずっと写真が大好きなのですが、グアテマラのあの日以降一度だけ、大好きな写真を楽しめなくなってしまった時期がありました。作品作りや、その写真のクオリティーにこだわりを持ちすぎて、カメラを構えてるときはおろか、普段携帯電話で写真を撮るときでさえ、「光が足らない」「構図がおかしい」などと理由を付けてシャッターを押せなくなってしまいました。その時に僕を救ってくれたのがこのカメラです。お正月に妻の実家に帰省した際、リハビリのためにこのカメラでおせちを自由に撮りまくったことがきっかけで、写真の楽しさを思い出すことができました。
カッターマット
2つめに登場したのは、デザイン事務所や設計事務所などでよく見かけるカッターマット。写真とどういった関わりがあるのでしょうか?
青山:学生のころから写真をポストカードや卓上カレンダーにするなど、手作りでいろいろ作って友達にあげたりしていたのですが、その楽しみを少しでもみんなに伝えようと、今でもL版の写真を紙に張り付けて冊子にするワークショップなどを行っています。今はデジタルカメラや携帯電話のカメラで撮影し、データ上でトリミングや画像補正、レイアウトまですべてを完結させてしまう人が多いでしょう。でもやっぱり写真はプリントするからこそ、「もの」としての魅力が発揮されるものだと思うんです。手作業で写真を切って紙に貼ったりしていると、今でも楽しい気持ちになります。僕自身もともとそんなに器用じゃないので、ちょっと斜めに切ってしまったりすることもあるのですが、それが人間らしくてまた味わいがあるんですよね。
消える筆記具フリクション
「カメラの次に好きなのが文房具」という、青山さん。「消える筆記具フリクション」はとても便利なので愛用している方も多いと思いますが、青山さんが選んだ理由は?
青山:写真と並んでライフワークにしているのが文章を書くこと。思春期のころに自分について悩み出してから、手帳やノートにたくさんメモを取るようになりました。ただ僕はもともと文字へのこだわりが強く、昔は授業のノートなんかも少しでも間違ったらノートごと捨てたくなってしまうほどだったんです。それを完全に払拭してくれたのが、この一品でした。実は写真より文字校正のほうが細かいくらいなので、書いたものを簡単に消して修正できるところが魅力なんです。フリクションがなくなったら、いてもたってもいられなくなるでしょうね(笑)。
ペンタブレット
青山さんは、スキャナーで取り込んだプリント写真に付着したゴミなどをデジタル上で消す作業の際に、ペンタブレットを使用されているのこと。なぜ、ペンタブレットを利用しているのでしょうか?
青山:フィルムで紙焼きをしていた時代にやっていた、ホコリなどのゴミを取るスポッティングと同じ感覚で作業できるからです。もちろんマウスでも可能なのですがやはり誤差も出るし、細かい作業なのでイヤになってしまう(笑)。デジタル上でも昔から慣れ親しんだ手作業の感覚を思い出しながらゴミを取ることができるのは、ペンタブレットだからこそだと思います。とくにIntuos5になってマルチタッチが導入されてからは、ペンだけでなく指でタッチして利用するようになりました。ほかの人とはかなり違う使い方をしているとは思いますが、僕にとってペンタブレットは、デジタルと手作業を結ぶ、重要な役割を果たしているんです。
意外なものも多かった、青山さんの「ヒミツ道具」。その利用法には、手作業の感覚にこだわりを持ちながらも、上手にデジタルを活用している様子がうかがえました。写真家と言えばレフ板など撮影に必要な機材ばかりをイメージしてしまいますが、さまざまなアイテムが創作を支えているんですね。
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