日々景色を変えていく、大都市・東京。なかでも、成田空港からもアクセスしやすい上野や日本橋といった「イースト東京エリア」は、古いビルを改装したギャラリーやカフェなどが続々とオープンし、感度の高い若者たちから注目されています。
そして、この変化の波はホテルにも。ビジネスホテルからラグジュアリーホテルまで、そのスタイルはさまざまですが、今回紹介するのは「遊び場」としての魅力がある個性派ホテル。
いま東京のローカルたちの間では、アートを観に行ったり、音楽を聴きに行ったり、友人と飲みにいったりする場所として、こうしたホテルを利用するケースが少しずつ増えています。 今回は、『K5』『DDD Hotel』『NOHGA HOTEL UENO TOKYO』をご紹介。宿泊だけではない、遊び場としてのホテルの楽しみ方を見つけてみて。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
約100年前の銀行をリノベーション。世界中の才能が集結した複合施設
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『K5』
日本で初めての銀行や証券取引所などが建てられ、いまも多くのビジネスマンで賑わう、日本橋兜町。東京証券取引所の裏手にある、1920年代に建設された元第一銀行別館をリノベーションしてオープンしたのが、ブティックホテルを含む複合施設『K5』です。
重厚な石造りと高い天井は、兜町が「日本のウォール街」と称される所以を感じさせる荘厳な雰囲気。しかし、一歩なかへと足を運ぶと、いま世界で活躍するクリエイターたちの力を結集した、夢のような空間が待っています。
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『K5』のデザインを手掛けたのは、スウェーデン・ストックホルムを拠点とするデザイン集団「CLAESSON KOIVISTO RUNE」。オフィスビルの多いビジネス街・日本橋がもつ堅い雰囲気を、北欧と和のテイストを融合させた、あたたかみのあるデザインで一新させました。
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「このエリアを、若いクリエイティブな世代にとっても魅力的な場所にしたい。ここをその出発点にしたいんです」と話すのは、同ホテルのPRマネージャー・大倉皓平さん。『K5』には、このミッションに共感する、気鋭のレストラン、カフェ、バーが出店しています。
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『SWITCH COFFEE』
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1階レセプションのすぐ横のレストランスペースにあるのが、言わずと知れた目黒の人気コーヒー店『SWITCH COFFEE』。本格的なエスプレッソコーヒーや爽やかな酸味が効いたエスプレッソトニックなどを提供しています。
観葉植物に囲まれた心地の良い店内は、もちろん超高速WiFiも完備。コーヒーを片手に作業したい人にもおすすめです。
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『SWITCH COFFEE』の横にあるのは、レストラン『CAVEMAN』。同店は、日本独特の調理法「発酵」を巧みに使った料理で人気を集める目黒のレストラン『Kabi』の姉妹店。料理を担当するのは、ノルウェーの三つ星レストラン『Maaemo(マエモ)』でスーシェフを務めた黒田敦喜さんです。
東京で暮らす若い世代の、遊び場といえば、中目黒や渋谷など東京の西側エリアがメインですが、そんな若い世代がこの場所に足を運ぶようになったのは「Kabiの流れを汲む新しい場所なら面白いに違いない」という期待感があったからなのかもしれません。
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『CAVEMAN』で提供される料理の写真
『CAVEMAN』が提供するのは、無国籍のモダン・フュージョン料理。約11品からなるコース料理は、定期的に内容が変わるので、何度行っても新しい発見があること間違いありません。
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『CAVEMAN』
ビジネス街・日本橋には珍しく、休日も朝から利用できるのが嬉しい『K5』ですが、夕方からの利用がおすすめのスポットも2つあります。
まず一つ目は、1階にある、ライブラリーバー『青淵(Ao)』。日本橋で、ハイエンドかつ派手すぎず落ち着けるバーをお探しなら、真っ先にこちらへ。
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『青淵(Ao)』
『青淵(Ao)』のモチーフのひとつとなったのは、19世紀に活躍した実業家で「第一銀行」の初代頭取、渋沢栄一。美しい赤のベルベットで覆われた一室の壁には、ずらりと本が並んでいます。まるで文化人の書斎に訪れたような特別感のある空間です。
提供されるのは、アジアのお茶や漢方をベースにしたカクテルやオリジナルで考案されたブレンドティーなど。上質なカクテルで夜を締めたい方や、夜遊び前の一杯を楽しみたい方におすすめのスポットです。
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2つ目は、仲間とにぎやかに夜を楽しみたい日にぴったりの地下の隠れ家的ビアホール『B』。ニューヨーク以外では初となる、アメリカのクラフトビールブランド「Brooklyn Brewery」のフラッグシップ店です。タップから提供される9種類のクラフトビールはもちろん、タコスやワカモレといったメキシカンなおつまみも提供しています。
平日は、仕事終わりの一杯をめがけて日本橋界隈のビジネスマンたちが訪れる同店。不定期でDJイベントも開催予定で、今後イースト東京のナイトライフシーンを盛り上げてくれること間違いありません。
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『B』
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K5
住所:東京都中央区日本橋兜町3-5
【営業時間】
K5:7:00〜24:00
SWITCH COFFEE:7:00〜17:00
CAVEMAN:7:30〜12:00(11:00ラストオーダー)、18:00〜23:00(22:00ラストオーダー)
B:月曜〜金曜16:00〜23:00、土曜・日曜・祝日13:00〜23:00
青淵(Ao):14:00〜2:00
定休日:施設によって異なる
最寄り駅:茅場町駅
電話番号:03-5962-3485
Webサイト:https://k5-tokyo.com/
よく働きよく遊ぶ、現代人のための進化系ビジネスホテル
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『DDD HOTEL』
大型開発の隙間で空洞化が進んでいた日本橋馬喰町周辺。近年は、古い雑居ビルを改装しギャラリーやオフィスとして利用する若手クリエイターたちが増え、新旧の魅力が混在するエリアへと変化しはじめています。
馬喰町駅から歩いてすぐの場所にある『DDD HOTEL』は、かつてはイースト東京で働くサラリーマンが泊まるための簡素なビジネスホテルでした。
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「Design」「Development」「Destination」の頭文字を取った『DDD HOTEL』
創業当初から家族経営だったこのホテル。2016年に、現オーナーの武田悠太さんが父親に「このホテルをもっとクリエイティブで革新的な場所に生まれ変わらせたい」と提案したことをきっかけに、リニューアルへと踏み切ります。
その結果、清潔でミニマルなビジネスホテルの良さを生かしながら、上質なライフスタイルが体験できるホテルへと生まれ変わり、すでに感度の高い東京ローカルたちの心も掴んでいます。あえて職場や自宅からも近いこのホテルで一泊するゲストもいるのだそう。
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2階のロビーの先にあるのは、レストラン・カフェ『abno』。
同店のディレクター兼チーフバリスタを務める、Peter Ny Buhlさんにこの場所を訪れる人たちについて聞くと「昼間は、コーヒー片手に働くノマドワーカーの姿をよく見かけますね」とのこと。
たしかに電源を完備したワーキングデスクや、座り心地の良いソファ席を見れば、スタイリッシュなオフィススペースとして『abno』を活用するお客さまがいるのにも納得です。
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『abno』
静かで居心地のいい場所を求めてやってくるのは、ノマドワーカーだけではありません。友人とおしゃべりしにくる方や地元の家族連れも『abno』を利用しているのだそう。
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「ここは、ただコーヒーを飲むだけの場所ではなく、コーヒーの可能性を広げるためのコーヒーラボ。コーヒーを使った実験的な料理も提供しています」と話すPeterさん。メニューを開いてみると、「コーヒー茶漬け」という珍しい名前が見つかりました。
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こちらは、鯛茶漬けがベースで、そこに出汁をドリップしたコーヒーを味変アイテムに使用するという料理。
シェフ、バリスタ、バーテンダーがそれぞれの職域を超えてアイデアを出し合い生まれたオリジナルメニューです。ここでしか体験できない、コーヒーと料理のマリアージュをぜひ楽しんでみて。
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『nôl』
オリジナリティー溢れる料理が楽しめるのは『abno』だけではありません。1階にあるキッチンスペース『nôl(ノル)』は、モダンフレンチのシェフ・厚東創さん率いる実力派料理人たちの活動拠点。店舗というかたちにとらわれずに、ケータリングやイベントを行う実験の場です。
非日常的なディナー体験をするのにもってこいのこちらのスペースですが、ディナーイベントの開催は不定期なので、事前にホテルへの確認が必須です。
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『PARCEL』
地下1階へ進むと現れるのが、インハウスギャラリー『PARCEL』。じつはこの場所、かつてはホテル利用客のための駐車場兼ランドリースペースだったのだそう。
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広々とした空間には、国内外のアーティストの作品がずらりと並んでいます。数か月に一度のペースで入れ替えて展示しているそう。
もちろんこちらのギャラリーも宿泊者以外でも利用可能。いままでは日本橋エリアに馴染みがなかったという人も観光にきた海外のゲストも混じり合う、クリエイティブハブになっています。
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DDD HOTEL
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1
【営業時間】
DDD HOTEL:24時間営業
abno:7:00〜23:00
nôl:不定期営業
PARCEL:水曜〜日曜14:00〜19:00
定休日:施設によって異なる
最寄り駅:馬喰町駅
電話番号:03-3668-0840
Webサイト:https://dddhotel.jp/
地域とのつながりを重視した、上野のスタイリッシュなホテル
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『NOGHA HOTEL UENO TOKYO』
いつも多くの人で賑わう、上野の商店街「アメ横」から歩いてすぐの場所に『NOHGA HOTEL UENO TOKYO』はあります。
「地域との深いつながりから生まれる素敵な体験」をコンセプトに掲げる同ホテル。その理由を広報担当の中村泰士さんに聞くと、「地域の方がこのホテルにくつろぎに来てくれることが、宿泊客にとっては東京のリアルな暮らしが垣間見える機会になると思うんです」との答えが。
宿泊客もローカル客もゆったりとおもいおもいの時間を過ごせる、静かでオープンな場所は、繁華街・上野では貴重な存在です。
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吹き抜けの天井が開放的な『NOHGA HOTEL UENO TOKYO』のロビーは、宿泊客がくつろいだり、上野近辺で働く人がちょっとしたミーティングができたり、地元の方が一杯のコーヒーから気軽に利用できるスペース。ここでは「日本酒のテイスティングセミナー」などのワークショップも不定期で開催しています。
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『Bistro NOHGA』
1階の『Bistro NOHGA(ビストロ・ノーガ)』では、朝食からディナーまで、旬の食材を使ったコンテンポラリー料理を提供しています。オープンキッチンスタイルなので、こだわりの料理ができあがる瞬間を目撃したいなら、カウンター席がおすすめ。
同店の料理には、上野近辺の精米店やベーカリーなどから仕入れた食材を積極的に使用しています。「食」の面でも、地域と深くつながることを大切にしているのです。
提供するコーヒーも、台東区の人気コーヒー店『蕪木』とコラボレーションしたオリジナルブレンド。朝昼晩で焙煎や豆も配合を変えるほどこだわっています。
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ロビー中央の階段をあがり2階へと進むと、緑に囲まれた隠れ家的なテラス席と、心地良いヴィンテージスタイルのライブラリーコーナーがあります。
1階と比較すると席数も少なく、よりプライベートな空間です。リラックスして本を読んだり仲間と語り合ったりするなら、この場所がおすすめ(ライブラリーコーナーは、宿泊客及びレストラン利用客のみ利用可能)。
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『NOHGA HOTEL UENO TOKYO』では、パブリックスペースや客室など、至る所でアートの展示をしています。
1階のギャラリーでは、東京で最も刺激的なアートスペースのひとつ『アーツ千代田3331』と連携して、国内外のアーティストやデザイナーの作品を展示しています。お気に入りのアートは、購入することも可能。ここでしかない、とっておきの出会いをぜひ楽しんでみて。
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NOHGA HOTEL UENO TOKYO
住所:東京都台東区上野2-21-10
【営業時間】
NOHGA HOTEL UENO TOKYO:24時間営業
Bistro NOHGA:7:00〜10:00、11:30〜14:00、14:00〜18:00、18:00~22:30
定休日:無休
最寄り駅:上野駅
電話番号:03-5816-0213
Webサイト:https://nohgahotel.com/ueno/
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