成田から直行便で約13時間の、ラテンアメリカの国メキシコ。マヤ、アステカ文明などの古代遺跡や、カリブ海のリゾート、スペイン統治時代の建物が立ち並ぶコロニアルシティの美しい街並みなど、ユニークな魅力にあふれる場所です。
なかでも南部の街・オアハカは、メキシコを代表するお祭り『死者の日』が特にさかんなことで有名な地域。『死者の日』とは、毎年10月31日から11月2日までの期間にわたって死者たちを迎え入れるお祭りですが、華やかなパレードを行われるなど、明るく楽しく過ごすのが特徴です。
そんな「お祭り好き」の陽気なオアハカを、写真家の七咲友梨さんが訪れました。その魅力を、「食」「人」「お祭り」「絶景」の4つの切り口からレポートしてもらいます。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
カラフルな街並み。青空の下、ニコニコ顔の人々
私は最近まで、人生のほとんどを日本から出ずに過ごしてきた。でもこの頃は海外での撮影も増えて、去年は5か国を回って旅の映画を撮ったし、オーストラリアの写真集も出した。
旅を通して世界との向き合い方を発見することは、とても重要な出来事だと感じている。どこか遠くの地にも、いま暮らす街の目の前の風景にも、どこにだって美しさは潜んでいる。そんなことを、私は旅に出るたびに実感する。メキシコは初めての国。ここでは、どんな発見が待っているのだろう。
オアハカまでは、日本からの直行便が飛ぶメキシコシティから車で5、6時間。古い伝統と若者のエネルギーが混じりあった街には、世界遺産に登録された歴史地区があり、趣味のいい小さな店が並ぶ洒落たエリアがある。街並みはカラフルで、人々は青空の下ニコニコしている。もっとこの街を知りたい。私はカメラを持って歩きはじめた。
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オアハカの食といえば。チョコレートと「モーレ」?
オアハカで飲んだコーヒーは、名産地というだけあり、どれもこれもが美味しかった。また、アガベという多肉植物からつくられるお酒「メスカル」も名産。地元の人たちは、メスカルを飲むとき、塩をふったオレンジを一緒に口に含む。その塩がすごく美味しくて、「これ何の塩?」と聞くと「いもむし塩とバッタ塩だよ」だって。ギョッとしたけど、美味しいからオーケー。
カカオも有名で、チョコレートも外せない。特におすすめの店は『Oaxaca en una taza』。ここのチョコラテ(ココアみたいな甘いホットチョコレートドリンク)と、クロワッサンの組み合わせなんて、最高。
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オアハカではいくつかレストランにも行った。どこも壁やインテリアの色がきれいで目に楽しく、料理も色鮮やか。
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ビュッフェスタイルのローカルレストラン
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ここはパティオ(中庭)。晴れていたので、天井は開け放たれている
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メスカルとパッションフルーツのカクテル。グラスの縁にはチリペッパー
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オアハカの山で採れたキノコのスープ
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辛いものを食べた後のアイスクリームが最高だった
オアハカ料理に欠かせないのが、香辛料の効いた色とりどりのソース「モーレ」。甘かったり辛かったり、複雑な味がする。アボカドのモーレ「ワカモレ」は日本でも有名だけど、現地で食べるのはやっぱり格別。トルティーヤにかけるほか、お肉やごはんと一緒にお皿の上で混ぜて食べるのも楽しい。
聞いたところではオアハカと、その北側に面した街・プエブラとの間では、どっちの街がモーレの発祥地か論争が続いているそう。食べることが大好きなメキシコ人らしい話。
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モーレ
もうひとつ驚いたのが、現地の人たちが何にでもチリをかけること。食事にはもちろん、マンゴーなどの果物や、カクテルやビールにも、チリをかけて、ライムを絞る。慣れると美味しいんだけど、胃腸が弱い人は要注意。
そうそう、メキシコに住む人はライムを「リモン」、トルティーヤを「トルティージャ」と発音する。これがさらりと言えるようになったら、メキシコ通かな。
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朝の学校の入り口前には、いろんな移動式屋台が集まっていた。ここで売っていたのは、トウモロコシの粉からつくった生地に具を入れて蒸した「タマル」
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炭火で焼くオアハカ郷土料理のトラジューダ。「オアハカのピザ」ともいわれる
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豆のペーストの入ったトルティーヤ
カラフルな洋服がおしゃれ。地元を愛するオアハカの人々
明るい街並みと強烈な太陽のなかにいるオアハカの人たちは、みんな真面目で働き者で、ちょっとシャイ。だけど目が合うと嬉しそうに笑う。
おばあちゃんたちはリボンと髪を一緒に三つ編みにしていて可愛い。ショートヘアーの私はちょっと憧れる。女の子たちの、目が醒めるような原色のスカートや、刺繍の施されたチュニックが美しい。この街にいると、自分の服が地味に感じて、柄の入ったカラフルなおしゃれをしたくなる。
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ゲストハウス『La Casa de Mis Recuerdos Bed & Breakfast』のコンチータさん
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路地を歩けばカフェや雑貨屋、本屋さん、ギャラリー。小さなお店がたくさん。そのほとんどがオアハカのローカルのものを扱っている。「みんな地元が大好きで、家族が大好き。大人になってもオアハカを出ない人も多いんだよ」って、ZINEショップのお兄さんが言っていた。
オアハカはメキシコのなかでも先住民が多い地域。それが、ユニークな服装や食文化に色濃く写し出されている。人々は素朴で、私のように外から来た人にもオープン。私はそんなオアハカの人々に心から安心して、この街だったらしばらく住みたいかもって、ちょっと本気で考えてみたりした。
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市場にて
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朝、学校の前の親子
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オアハカ中心部から南へ約40km・オコトラン。有名な陶人形作家の一家「アギラールファミリー」の工房
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アガベ畑の奥にある山から歩いてきたおじさん。お供えするためのマリーゴールドを摘んで帰るところだそう
『死者の日』で有名なオアハカは、お祭りが大好き
治安が悪いのではという私の先入観を鮮やかに裏切って、オアハカはものすごく安全だった。夜に一人カメラを持って歩いていても平気なくらい。夜の散歩が楽しくて、街を歩いていたとき、突然「パーン!」と大きな音がした。ビックリして見てみると、おおきな人形をぶんぶんと振り回しながら人々が行進してくる。パレードだ。
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地元の人に聞いた話だと、この街の人はパレードが大好き。オアハカで行われる『死者の日』のお祭りは有名で、ディズニー映画『リメンバー・ミー』の舞台にもなった。だけど、それ以外にも結婚式とか何かのお祝いとか理由を見つけては、しょっちゅうパレードをやるらしい。
私は中学生の頃、太鼓を叩いて行進したくてブランスバンド部に入ったくらいパレードが好き。目の前で繰り広げられるパレードに、みんなで演奏するあの一体感を思い出して夢中で追いかけた。
石畳の路地を跳ねるステップ、情熱的な2ビートと歓声、火薬のにおい。頭に花籠を乗せた女の人が通り過ぎたとき、くるくると回るスカートに目を奪われた。2階の窓から誰かの口笛が鳴る。その場にいる誰もが、楽しさだけを味わう時間が心地よかった。
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屋久杉の3倍の大木に涙。絶景「イエルベ・エル・アグア」
オアハカの街を少し離れると、かなり壮大なランドスケープが広がる。乾季で乾燥しているせいか空気がクリアで、遠くまでスカッと見渡せて気持ちがいい。強烈な太陽が、岩や木々の色を鮮やかに引き立てている。
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「イエルベ・エル・アグア」は、オアハカから車で1時間ほどで着く渓谷地帯。ここには不思議な池がある。岩山のてっぺんに溜まった湧水が日差しを跳ね返し、エメラルドグリーンに輝いている。断崖絶壁がすぐそこまで迫る天然のプールで、人々は水着になりのんびりとくつろいでいた。
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そしてこの場所にあるもうひとつの絶景が、滝のような形をした岩壁。長い年月をかけてミネラル濃度の高い水が岩を溶かしながら流れ落ち、固まってできたそう。軽いトレッキングをしながら、いろいろな角度から眺めて歩いた。広大なスケール感と、自然の造形美に素直に感動した。
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もうひとつオアハカで感動した風景といえば、樹齢2,000年、高さ42メートルのトゥーレの木。最初は「そうは言っても、ただの木だよね」って、正直ちょっと思ってたけど、実際は想像以上。屋久杉の3倍の大きさで、毎日水を2万リットル吸うらしい。よく見ると木のあちこちに、鳥の家族が住んでいる。大きな大きな生き物を目の前にして、言葉にできない気持ちが溢れてきて、こっそり泣いてしまった。
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可愛いお土産の数々を眺めながら、また行きたくなる
東京に戻ってあらためて写真を見直していると、オアハカの旅って素敵だなあ、と他人ごとのように思う。そして、3泊でよくこれだけ撮ったなあとも。ハードディスクには、ここには載せられなかった写真もたくさんある。それだけ楽しかったってことだと思う。
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オアハカ中心部から南に約30km、織物で有名なサント・トマス・ハリエサ村。伝統的な「腰織り」と呼ばれる技法
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メキシコにはワーゲンの工場があったことから、ワーゲンは街中でよく見かける
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『リメンバー・ミー』の主人公・ミゲルのおばあちゃんのモデルになった方。民芸品「アレブリヘス」の工房『Jacobo & María Ángeles(ハコボ&マリア・アンヘレス)』で働いている
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同工房で。サトウキビをかじって休憩中
オアハカのチーズ「ケシージョ」をもう一度食べたいな。コーヒーも飲み比べたいし、チョコレートも食べ歩きたい。チョコラテの味は思い出すだけで顎がきゅうっとなる。オアハカは民芸の街でもあるから、木彫の人形とか、刺繍とかの工房も回りたい。友達をつくって、その子の家にも行ってみたいな。
最後に小さな忠告をひとつ。オアハカは買い物天国だから、旅では確実に散財することになる。私はカゴバッグと、湯呑みと、お皿と、指輪とZINEや写真集、あと文房具と、チョコレートと、他にも山ほど可愛いものを買った。
見ているだけで明るく元気になれるオアハカの民芸品たちを眺めては、うっとりしてる。また行きたいなあ。メキシコシティにもゆっくり滞在したいし、渓谷を走るチワワ鉄道にも乗ってみたいな。次は1か月は必要かも。
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Oaxaca en una taza
住所: La Constitución #108, Centro, C.P. 68000 Oaxaca, MexicoLa Casa de Mis Recuerdos Bed & Breakfast
住所: Pino Suárez 508, Centro, C.P. 68000 Oaxaca, Mexico
URL:https://lacasademisrecuerdos.com/Jacobo & María Ángeles
住所: Calle Olvido #9, San Martín Tilcajete, C.P. 71506 Oaxaca, Mexicoメキシコ旅のお問い合わせ「PASELA / メキシコ観光」
Webサイト: http://www.pasela.mexicokanko.co.jp/
- アエロメヒコ航空で行く、メキシコの旅
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メキシコを代表するエアライン・アエロメヒコ航空は、成田からメキシコシティへの直行便を毎日運行しています。昼すぎにメキシコシティに到着し、メキシコ国内の主要都市へも同日乗り継ぎが可能。
成田・メキシコシティ線では、機内の全座席に、動画や音楽などの機内エンターテイメントを楽しめる個人スクリーンを設置。機内食は和食または洋食から選ぶことができ、メキシコシティ発の便では、メキシコシティで人気のレストランのトップシェフ考案のメニューが楽しめます。
- プロフィール
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- 田尾沙織 (たお さおり)
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1980年東京都生まれ。2001年第18回『ひとつぼ展』写真部門グランプリ受賞。写真集『通学路 東京都 田尾沙織』『ビルに泳ぐ』(いずれもPLANCTON)を刊行。雑誌、広告、ムービーの撮影などでも活躍中。
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