ここ数年、台湾ではコーヒー文化が盛り上がりを見せています。2012年にはUSA Todayが発表した世界の10大コーヒー都市に、台北がアジアから唯一選出されるなど、日本ではまだまだ「お茶の国」といったイメージが強い台湾ですが、カフェ文化の発信拠点、さらにはコーヒー豆の産地として世界で知られています。 そんな個性あるコーヒーショップやコーヒー豆専門店がひしめく台湾の台北で、7月29日・30日に『Culture & Coffee Festival in Taipei』が開催。台湾と日本、合計約40店舗近くのコーヒーショップが集結しました。両日とも最長で会場入り3時間待ちにまでになったイベントの様子と、台湾のコーヒーカルチャーの「今」を紹介します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
真夏の太陽よりも熱い!? 台湾のコーヒーカルチャー
本イベントは、日本と台湾のアートブックに特化したブックフェア『Culture & Art Book FAIR in TAIPEI』などを主催してきた、台湾で新しいライフスタイル(衣・食・住)を提案する「富錦樹グループ(Fujin Tree Group)」によるもの。
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そんな彼らが主催する、今回のイベントテーマは「コーヒー」。日本と台湾から選出されたコーヒーショップが、台北のカルチャー・アート発信地としても有名な『華山1914文創園区』に集結しました。会場では淹れたてのコーヒー、各店舗オリジナルブレンドのコーヒー豆の販売に加えて、様々なワークショップも行われるなど、盛りだくさんな内容。
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実は開催日の二日間、台北に台風が直撃するかもしれないという予報が出ていたタイミング。晴れたり強風が吹いたりと終始不安定な天候の中でしたが、台風の影響も少なく、両日合わせて5,000人を超えるコーヒーファンが会場の内外に行列を作っていました。行列の先頭の方は、朝早く高雄から新幹線に乗り、イベントスタートの1時間前から並んでいるとか。話を伺うと、日本の出店ブースのコーヒー豆を目当てに、家族に買って帰りたいのだそうです。
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日本のバリスタから見た、台湾のコーヒー文化
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会場に入ると、コーヒーのアロマティックな香りが。日本と台湾のバリスタたちは、熱狂的な台湾のコーヒーファンに1杯1杯丁寧にコーヒーを淹れていきます。同じコーヒーといえども豆の種類や挽き方、ドリップの方法で全く風味が変わるのも面白く、来場者はひとうひとつブースを周りながら、個性豊かなコーヒーを飲み比べていきます。
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特に両日ともに台湾のコーヒーファンを魅了したのは、日本からやってきたコーヒーショップ。中には、初日で持参したコーヒー豆が全部売り切れてしまったという店舗もあったとのことです。
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この2日間のイベントを通して日本からの出店者たちは何を感じたのか。東京・中目黒のコーヒーショップ『ONIBUS』の代表・坂尾篤史さんにお話を伺ったところ、開口一番に出た言葉が「スゴイ」の一言。「台湾のコーヒーカルチャーの盛り上がりは、日本でも耳にはしていたけれど、ここまでとは思わなかった」と坂尾さんはいいます。
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『ONIBUS』代表・坂尾篤史さん
とにかく、台湾のコーヒーファンは知識量が豊富だということ、台湾のコーヒー好きは自宅でもよくコーヒーを飲むからコーヒー豆を購入する人が多いこと、そしてワークショップに関しても本当に真剣に話を聞いてくれたのが印象に残っている、と坂尾さんは話します。
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また当日坂尾さんを一番驚かせたことは、すでに『ONIBUS』に来店したことがある人が多かったこと。「まさか台湾でこんなに多くの人に『ONIBUS』を知ってもらっているとは想像もしなかった」と漏らしました。
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また日本の出店者である『ABOUT LIFE COFFEE BREWERS 』の宮内さんは、台湾人のコーヒーの風味を楽しもうとする姿勢は日本人と似ているといい、台湾のバリスタとの交流やブースの作り方を見て学ぶことが多かったと言います。
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自由な雰囲気でコーヒーと文化を楽しんでもらえる場所
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ワークショップではコーヒーのカッピングや豆の紹介をする店舗が多かった中で、異彩を放っていたのが『コーヒー坊や x 只本屋』。彼らが試みたのは台湾の人に「自分がオススメするコーヒーショップのフリーペーパー作り」に挑戦してもらうというもの。
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京都の月に一度だけ開くフリーペーパーのお店『只本屋』代表の山田さんの指示のもと参加者とイラストレーターの森夕香さんが輪になって、一緒に1枚の台湾コーヒーショップMAPを作っていきます。
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このワークショップを企画した『只本屋』の山田さんに感想を聞いたところ、「台湾のお客さんってどんな感じなのかな? と思っていたけれど、感覚とかリアクションが日本人っぽいなってすごく思いました」とのこと。
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(左)『只本屋』山田さん、(右)『コーヒー坊や』焙煎士
一緒に出店していた『コーヒー坊や』さんからは、「2日間、予想外のことが結構多かったけど、コーヒー以外にもZineを販売したり、途中でイラストレーターの森夕香さんにお客さんの似顔絵を書いてもらったりと、自由にのびのび自分たちの色を出せたと思います」とのこと。お話をうかがった2人からは、イベントに対する満足度を感じられました。
コーヒーをトレンドではなく文化に落とし込む
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今回『Culture & Coffee Festival in Taipei』を取材する中で、特に印象に残ったのは、主催者である富錦樹グループの小路さんのお話。
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「少し前までは台湾のカルチャーは日本の影響がとても強かった。だけどここ数年で、彼らの意識は大きく変わったし、自分たちの文化や個性についてもっと深く考え、表現するようになってきた。その中のひとつが“コーヒー”なんです。今回はあえて台北だけではなく、台湾全土と日本各地から出店していただきました。そしてイベントの中でもっとコーヒーの多様性に触れて欲しかったので、出店者の年齢にもあえて幅をもたせたんです」
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確かに会場内ではメインのオシャレな若者層に加え、家族連れや学生、そして少し年配の方など老若男女問わず、「コーヒー」を楽しむという姿が見受けられました。そして、台北における、現在のコーヒーカルチャーの状況を、小路さんはこう話します。
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「確かに台湾のコーヒーカルチャーは、今すごく盛り上がっているけど、まだ現状だとひとつの『トレンド』の段階だと思っています。だけど、それぞれみんながこだわりを持ってコーヒーを理解することで初めて、このトレンド現象が『文化』になっていくと思うんです。だから今回のイベントでも自分の好きなコーヒーを探してもらうために、できるだけ出店者側に、試飲をお願いするようにしていて」
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最後に、今後もこのような日台の文化をつなぐイベントの開催を考えていますか? という質問に対し、「前回はアートブックフェア、そして今回のコーヒーフェス。どちらもまたぜひやりたいと思っています。ただ、次に考えているのは文房具やお酒などといったテーマでの開催。これらの分野も今とても台湾で盛り上がってきている、この盛り上がりをぜひ“文化”にまで落とし込むのが、僕達の使命だと思っているんです」とのこと。
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真夏の台湾で全ての出店者のおいしいコーヒーを提供したいという思いと、来場者のおいしいコーヒーを楽しみたい、この2つの想いが堅く結ばれたと感じた『Culture & Coffee Festival in Taipei』。イベントは開催終了しましたが、是非現地のコーヒーショップをまわり、台北のコーヒーカルチャーの熱気を感じて欲しいです。
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