今やK-POPといえば日本でも聞き馴染みのあるジャンルの1つ。韓国の音楽に関心を持っている人でなくても、東方神起やBIGBANG、少女時代といったグループをはじめ、最近では、TWICEやBLACKPINKなどの名を知る人は多いでしょう。 しかし、近年韓国ではK-POPだけではなくヒップホップが盛り上がりをみせています。韓国でのヒップホップブームに火をつけるきっかけとなったテレビ番組『SHOW ME THE MONEY』を始め、『Unpretty Rapstar』などラップバトル番組は次々ヒットし、番組から大衆的人気を得るラッパーも数多く誕生しました。今回はそんな熱い盛り上がりを見せる韓国のヒップホップシーンをリードする3つのレーベルと代表的な所属アーティストを紹介します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
Hi-Lite Records
ローカル文化の活性化とアンダーグラウンドシーンの発展のために、ソウルのヒップホップシーンを牽引してきたのがHi-Lite Records(ハイライト・レコーズ)。Hi-Lite Recordsは、ラッパーPaloalto(パロアルト)が、2010年に設立したレーベル。所属アーティスト一人一人の個性を際立つことを目指す同レーベルは、様々な形で私たちの耳を楽しませてくれます。
代表のPaloaltoの他には、Huckleberry P, Reddy, G2, Sway D, YunB, Camo Starr, DJ Djanga といったアーティストが所属。さらに、2017年8月には、アンダーグラウンドで様々なアーティストとコラボをして来たプロデューサーのYosiが加入し、楽曲面により一層の期待が寄せられます。その他にも、Okasian、B-Free、Evoなどいった現在の韓国のシーンで注目を浴びている若手ラッパーの他、日本のラッパーKOHHのfeaturingで知られる“It G ma”を発表したKeith Ape(キースエイプ)もこのレーベル出身です。最近では、韓国国内だけでなく国外でのライブを行うなど、国外でも熱い反応を得ているHi-Lite Records。今や、韓国ヒップホップシーンを代表するレーベルの1つと言えるでしょう。
Hi-Lite Records所属、アーティスト紹介
Paloalto
2003年にデビュー後、2013年には韓国大衆音楽賞のラップ/ヒップホップアルバム部門で受賞など、さまざまな活動をみせるHi-Lite Records代表Paloalto。1990年代末、新村(シンチョン)エリアでヒップホップ公演が繰り広げられた頃から、数々のラッパーやプロデューサー、そしてスターが誕生しては消えていく潮流の中で、Paloalto は地道な活動を続けています。
Reddy
韓国の人気のラップバトル番組『SHOW ME THE MONEY』にも出演していたことも記憶に新しいReddy。幼少期から21歳までの宣教団体所属のミュージカルで美術音楽に触れ、軍除隊後から自身の経験を元にしたラップミュージックを作り始めるという、珍しい経歴の持ち主です。過去に、ラップを初めた当初は仲間たちと一緒にThe Cohortという名前のクルーで活動していた他、韓国のサブカルチャーを牽引してきたアパレルブランドHumantreeでデザイナー、モデルとしても活動。その他にも、ファッションモデルとしても活動するなど、多彩な才能をみせるアーティストの一人です。
2016年に発表したパク・ジェボムとコラボレーション曲”생각해(考えて)”は、これまでのReddyとはまた違った形で、彼のスタイルの幅を広げた一曲。スローテンポのR&B調のビート上に、より強固になったフローを披露したこの楽曲は、両アーティストの魅力をより引き立て、多くの話題を呼びました。
G2
2014年、Keith Apeとのコラボアルバム『Project:Brainwash』よりラッパーとしての活動をスタートした金髪ドレッドが特徴的なG2。2015年にHi-Lite Records期待の新人として迎えられました。レーベル合流後、初のシングル“식구(Shikgoo)”では音源はもちろん、ミュージックビデオではレーベル所属アーティスト全員が参加したことで話題になりました。2017年に発表された『G2's Life, Pt.1』では、自信と不安が混在した複雑な心境を、重くビート上で強いラップで表現。アルバム内の“Hymn II”のミュージックビデオは、挑戦的なスタンスと自由な感性をたっぷり含めて、多くの反響を得ました。
Huckleberry P
Hi-Lite Records所属で、フリースタイル(MC)を論じるのに欠かせないラッパーの一人がHuckleberry P(ハックルベリー・ピー)。ラッパーのSUDAとのユニットGet Beckersや、プロデューサーのSoulfishと共にPinodyneとしても活動しています。最近では、レーベルメイトであるG2、Paloaltoと共に発表した“Rapflicks”が公開されたばかり。この曲は映像制作チームTHECUTがcypherビデオを作るために作られた曲で、3人の畳み掛けるようなラップと絶妙な間、そしてマイクリレーが聞きどころ。これは、もともと映像ために作られた楽曲でしたが、映像公開と同時にヒップホップリスナーたちから大きな注目を集め、音源発売を決定しました。
AOMG
元2PMのリーダーで韓国系アメリカ人であるパク・ジェボムことJay Park(ジェイ・パーク)が設立し、ラッパーのSimon Dominic(サイモンドミニク)が共同ディレクターを務めているレーベル、AOMG(エー・オー・エム・ジー)。設立パーティーには、ジャスティンビーバー、G-DRAGON、2NE1などが参加し、設立当時から大きな注目を集めました。所属アーティストには、新鋭ラッパーでありプロデューサーのGRAY(グレイ)、注目のラッパーLOCO(ロコ)、R&BボーカリストELO、Ugly Duckなどを迎え、今最も影響力のあるレーベルの1つとして知られています。他にもプロデューサーのCha Cha Malone、DJ Pumkin、DJ Wegun、そしてAOMGの初の女性メンバーであるHoodyを迎え入れて、今後の展開がますます期待されるレーベルです。
AOMG所属、アーティスト紹介
パク・ジェボム(Jay Park)
アイドルグループ2PMの元リーダーであったことことからも知名度が高いパク・ジェボム。AOMGを設立後、R&Bとヒップホップを行き来するボーカル兼ラッパーであり、卓越したダンススキルを持つダンサーでもあります。最近では、ジェイ・Zが代表を務めるアメリカのレーベル「Roc Nation」にアジア初の専属契約を結んで話題となりました。2014年には、アメリカのオースティンで行われる世界最大の見本市SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)出演し、2018年のSXSWにも出演することが発表されました。名実ともに韓国のブラックミュージックシーンをリードするアーティストの一人です。
LOCO
近年の韓国のヒップホップブームのきっかけとも言えるラップバトル番組『SHOW ME THE MONEY』の初代優勝者であり、同番組の人気を作った貢献者とも言われているラッパーがLOCO。疲れ果てた一日の終わりに聞きたくなるようなメロウな楽曲から、全てを蹴飛ばして飛び出したくなるようなアッパーな楽曲まで、LOCOの作品はまさに大衆の心に共感を呼ぶものばかり。ヒップホップにダークなイメージがあった人にも、ヒップホップというジャンルをより身近に感じられるようにしたラッパーの一人と言えるでしょう。
GRAY
ラッパーとしてだけでなく、トレンドを作る天才ビートメーカーとしても評価が高いGRAYは、高校1年生の時から楽曲制作を始め、2011年には韓国の音楽祭『MBC大学歌謡祭』に「弘大入口」というチームで参加し金賞を獲得しました。トレンドをいち早く取り入れる彼のプロデュース楽曲の幅は広く、これまで手掛けたアーティストも数知れません。また秀麗な外見から「広告王」の異名がつくほど、多くの広告にも出演し、様々な方面での活躍が際立つアーティストの一人です。
ILLIONAIRE RECORDS
2011年韓国のヒップホップを代表する2人のラッパー、The Quiett(ザ・クワイエット)とDok2(ドッキ)が共同で設立したレーベルILLIONAIRE RECORDS(イリオネア・レコーズ)。後に、人気ラッパーの一人・Beenzino(ビンジノ)が合流しました。その三者による共作アルバム『11:11』を皮切りに、多くのヒット曲を掲げ韓国のヒップホップシーンに大きな影響力を与えるレーベルです。自分たちだけのブレないスタンスを示し、マニアはもちろん、多くの支持を得ています。そしてILLIONARE RECORDSでは、実力と努力で成し遂げた音楽の核心と成功を「Swag(注:スラング用語で“スワッグ”)」と呼び、その根本にある彼らスタンスは、彼らが発するリリック(歌詞)の端々から感じることができるでしょう。
ILLIONAIRE RECORDS所属、アーティスト紹介
The Quiett
17歳の頃から趣味でラップとビートメイキングをスタートし、2000年代初頭の韓国のアンダーグラウンドヒップホップシーンを語るに欠かせないレーベル、Soul Companyでメインのラッパーの一人として活躍してきたThe Quiett。当時発売した半分以上のトラックがインストゥルメンタルのアルバム「Q Train」は、韓国の音楽賞で最優秀ヒップホップ賞を受賞にした共に、今でも名盤として知られています。そんな、The Quiettの楽曲は彼の率直なメッセージを込めたラップと洗練されたビートが特徴。インディーとメジャーの境界を越えて韓国国内外で活動していて、中には日本のロックバンド安全地帯の曲をフィーチャリングした経験も。最近は気鋭のラッパー、Owen Ovadoz(オウェンオーバードーズ)の最初のミックステープをプロデュースしたことで話題となりました。
Dok2
底辺から頂点までじわじわとキャリアを踏んだ韓国ヒップホップシーンのアイコンであり、ILLIONAIRE RECORDSのもう一人のCEOであるDok2。13歳でデビューし、同じく少年ラッパーであったMicrodotとAll Blackを結成し、Mpickというテレビ番組の中で「最年少プロデューサー」という名で認知を広げました。多くのライブ経験を積んでいることから、ステージングが抜群で、耳に刺さるようなリリックと高いラップスキルで評価を得ています。2016年には国内ラッパー初のアディダスと正式にスポンサー契約を結ぶなど、世界的な評価を受けています。2017年の北米ツアーの後には、自身の誕生日に合わせて新しいアルバム『Reborn』を発表しました。
Beenzino
2009年のデビュー以来、現在までに多くのキャリアを積み、Shimmy Twice とのデュオJazzyFactとしての活動をはじめ、アンダーグラウンドを越えた認知度と影響力を持つラッパーがBeenzino(ビンジノ)。“Aqua Man”や “Profile”などの数々のヒットナンバーを輩出し、彼のショーは常に超満員。韓国のファッションアイコンとしても知られています。「他のヒップホップアーティストとは異なる動きを示したかった」というBeenzinoの言葉通り、韓国人デザイナーによるブランドWOOYOUNGMIのパリコレのショーミュージックを担当したり、コレクションにモデルとしても登場するなど活動の幅の広いアーティストです。さらに、友人と運営するアートワーククルーIAB STUDIOと共に自身のMVやアートワークも自ら手がけています。
ここに挙げたアーティスト達は間違いなく今の韓国ヒップホップシーンを牽引している存在ですが、とは言え韓国のヒップホップシーンの中の素晴らしいアーティストのほんの一部です。
実際に楽曲を聴いてみて、日々新しいスタイルが生み出され大衆的に盛り上がりを見せている韓国のヒップホップシーンに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。
- フィードバック 11
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-