「京都発だからっていうのは別にない」リアルな日常感を追求する京都の新星、Homecomingsインタビュー

バンドって青春の塊だ。学生の多いここ京都には面白いバンドがたくさんいる。京都造形、精華、同志社、立命館、そして京大、それぞれの大学にサークルが存在し、そこから無数のバンドたちが生まれている。そのすべてが注目され、活動を続けられるわけではないが、京都の老舗レーベルSecond Royalが発掘した、女性3人+男子1人のHomecomingsは、京都をはじめ、今日本のインディーシーンにおいてなくてはならない存在になりつつある。5月には2ndアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』をリリースしたばかりのリアルな彼らの素顔に迫るべく、Vo.の畳野彩加、Gt.の福富優樹、Ba.choの福田穂那美の三人に話を伺った。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

京都精華大学のサークルから生まれたHomecomings

—みなさん出身は京都ですか?

福田穂那美(Ba、Cho):私は京都で、ドラムの石田さんが滋賀、福富くんと畳野さんは石川でバラバラですね。

福富優樹(Gt):僕と彩加(Vo)さんは高校時代の同級生です。

―Homecomingsは大学で結成されたんですよね?

福田:私たちの母校である精華大学の新入生歓迎ライブがあって、それに出るためにサークルが同じだった福富くんが他の3人を適当に集めて始めたのがきっかけです。

―京都に住んでいて、曲に影響していることとかありますか?

畳野彩加(Vo):京都に住んでいてできたアルバムではあるんですけど、他のところにいても同じものができていたかもしれない。普通に朝起きて、バイト行って、ご飯食べて、バンドの練習があってっていう私の日常がここ京都にあるだけであって、別に「京都だから」とかっていうものじゃなくて。町の雰囲気だったり、道の感じだったり、町の眺めとかには少なからず影響を受けているけど、「京都感」っていうのはサウンドには反映させてないですね。

福富:それでも、知らぬ間に影響を受けているものはあるんじゃないですかね。出町柳のトランスポップとか、誠光社で本を買う日常だったり。

—京都って学生が多いから、居心地が良い印象ですがどうですか?

畳野:ちょうどいいとこって感じはしますね。そんなに都会じゃないし、自然も近いところにあって。ガヤガヤしてない。それが曲作りにいい影響を与えているとは思います。

—私の個人的な印象ですけど、Homecomingsは、京都よりも東京とかの方が人気あるイメージです。

畳野:本当にそう。

福富:でも最近はそれも少しずつ変わってきたんですよ。

畳野:私は実際、全然実感してないけど。

福富:そう? こないだの「いつまでも世界は」っていうサーキットイベントがあって、最初は別の会場の予定だったんですけど、僕らの時だけお客さんが溢れすぎて急遽会場が変わったんです。急な変更だったんですけど、お客さんもたくさん来てくれて、すごく盛り上がって。あの時は「あぁ、京都!」って感じしたけど。やっと京都にホーム感みたいなものが出てきた。

—京都と東京でライブやる時の気持ちとは全然違いますか?

一同:全然違う!

福富:一回一回のライブでシリアスに考えちゃいますね、東京は。すごい気合いを入れて挑んだのに、実際のライブが良くなかったってこともありました。

畳野:その時のライブのこと、あんまり覚えてないかも。(福富くんを指して)この人がプレッシャーに弱いんですよ。

—デビュー当時からずっとライブを見てきたのですが、ライブでの演奏は格段に成長したと思います。それに対するファンのリアクションはどうでしたか?

福富:上手くなることを拒否する人もいるんですよ。レコードとかをめちゃくちゃ掘ってるみたいな音楽マニアの人たちがいるじゃないですか。そういう人たちがデビュー当初はたくさん来ていて。

畳野:そこから客層は若い普通の女の子とか、ガラッと変わりましたね。1stアルバムを出した時くらいからですけど、決定的だったのは「HURTS」だったと思います。客層が若くなったって感じました。

次は日本語でもいいかな、って思ってる。

—Homecomingsで曲を書いているのは誰ですか?

福富:最初は原型もなくて、スタジオでみんなでセッションとかして、曲を作っていたんですけど、今はその原型を僕と彩加さん二人がスタジオに入る前にしっかり作ってきて、肉付けして曲を作ってます。

—ということは、以前とは大分変わったってことですよね?

福富:そうですね。ちゃんと曲を作るようになりました。サークルにいる時は彩加さんが歌詞を全部書いてって感じで。正直、その時は英語の歌詞の内容はなんでもよかったんですよ。なんかラブソングみたいな感じで、みたいな。それがどんどんと変わってきた。

—周りは日本語で歌っている人が多い中で、英語の歌詞にこだわっている理由はありますか?「HURTS」のビデオでは日本語の歌詞が字幕みたいに入っていますけど。

畳野:どっちでもいいんですよ。日本語もやれたらいいなって思ってますし。

福富:このアルバムで英語でやりたいことっていうのが、英語で歌っているけど、和訳がついててっていうもので。和訳を読んで、二層にすることで、そこから曲の意味を深く好きになってほしい。という気持ちが込められてます。ジャケットなども含めて、このアルバムでは世界観を大切にしているんです。それが日本語じゃなくて、英語だったってことなんです。次は、日本語の作品でもいいかなって思ってます。

友達以上、家族未満みたいな関係なんです。

—京都で対バンするってなった時に一緒にやりたいバンドはいる?

畳野:やっぱりSecond Royal界隈かな。

福富:あとは周りに集まってきてるから、Seussだったり、Hi,How are you?、odd eyesだったり。友達が多いかな。

畳野:でも私は最近、ライブハウスが苦手で、イベントでもすぐに外に出たくなっちゃう。最後まで見てられない。座って見てると落ち着けて見れるけど、立ってライブを見てるのがしんどい。年ですかね?(笑)。

—(笑)。みんなは、まだまだ若いけど、大学を卒業したらバンドを辞める人も多くいますよね。

福富:今も明確なビジョンがあるわけではないですけど、長く続けていくバンドでありたいですね。そういう活動ができるのは京都だからって感じもしますけど。

—畳野さんは京都を離れるとなったら寂しい?

畳野:それは、全然ないんです。石川から京都でワンバウンドしているから、結局どこに住んでも一緒かなって。

福富:僕の方が根強いというか、京都に愛着があるんじゃないかな。

畳野:愛着、ないですね。どこでも行ける派です。

—それでもどこか京都に思い入れはあったりしないですか?

畳野:住みよい(住みやすい)ってところくらいですかね。住みよいけど、どこか満足されてないような気持ちがずっとあって。あんまり満足はしてなくって。

福富:友達もあんまりいないもんな。

—エ! そうなんですか(笑)? 音楽周りでもいそうですけど。

畳野:バンド周りって女の子が全然いなくて、セイラ(Seira Mirror)くらいなんですよ。同性の友達が本当にいない。プライベートで遊びに行こうっていう子が皆無なんです。私自身が合う人合わない人がはっきりしてて、誰とでも友達になれるタイプじゃないし。

福富:俺がいるからなあ。よかったなあ。

一同:笑

福富:バンドが一番友達。

畳野:ほなちゃん(Ba)もなるちゃん(Dr)も友達で、そこで完結しちゃってて。これがあるから大丈夫って気持ちになってる。友達以上、家族未満みたいな関係なんです。

左京区は、グニュっとした感じ!?

—みんなの京都の好きなところと嫌いなところを教えてくれますか?

福富:僕は一番、京都の住みよいとこが好き。チャリンコも好きだし。僕の性格に街が合ってる。トランスポップとかタンタンショップとか好きな店があるし。

畳野:思ったよりも知らないところが多い。このマガザンキョウト(当日の取材場所)もそうだし。近所なのに道を一本入るだけで新しい発見がある。ここに行きたいとか、特にないけど、新しい場所を見つけたいなって気持ちはある。

福田:私は京都の南に住んでるからあんまり思い浮かばないけど。京都府立植物園は小さい頃におばあちゃんに連れてきてもらったりして。最近は行けてないけど。

福富:小さな時の思い出の場所が京都っていうのは羨ましいなあ。

—逆に嫌いなところは?

福富:京都って、ヤバイところがあるじゃないですか。グニュっとしたところ。

—グニュっと!?

福富:ドロッとした感じ。精華大学にいたし、近くにいたからこそ僕はそこらへんに抵抗がある。

畳野:私もあの感じは苦手かも。京大界隈は面白いなって思うけど。場所として面白い。

福富:西部講堂は?

畳野:めっちゃ気持ち悪いのが、ちょっといい(笑)。

—左京区は独特な空気感がありますよね。あの雑多な雰囲気というか。

畳野:京都駅のイオンとかも行きたくなる。イオン好き(笑)。そして京都駅が好き。思い入れがある。いっぱいお店があってワクワクするし、いい気持ちになる。実家に帰る時とかの通過点なんですけど、そこからどこかへ出発する感じが好き。

福富:金閣寺とか清水寺とか、遊びに行くと楽しい。今更って感じですけど、古都を感じたいっていうか(笑)。

わざと明るくしたくない。これが私たちのリアル。

—新しいアルバムをどんな風に聴いて欲しいですか?

福富:サウンドをそれぞれ自分の町に照らし合わせてほしい。

畳野:日常感を無理くり明るい方には持って行きたくなくて。私たちのサウンドはわざとテンションを上げるようなものじゃないですし。これがリアル。

—そのリアルに、多くの人が惹きつけられるんでしょうね。

福富:僕らが、曲で生み出した日常感を聴く人が自分の日常に重ね合わせてくれたら嬉しいです。

畳野:どこにでもありそうな町の光景を描いたジャケットのイラストにもそんな気持ちが込められてます。

Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』
RELEASE ONE-MAN TOUR "DON'T WORRY BOYS"


2016年6月25日(土)
会場:名古屋 TOKUZO
開場:17:00 開演:18:00
問い合わせ:JAILHOUSE 052-936-6041

2016年6月26日(日)
会場:大阪 Shangri-La
開場:17:15 開演:18:00
問い合わせ:SMASH WEST 06-6535-5569

2016年7月1日(金)
会場:渋谷 shibuya WWW
開場:18:15 開演:19:00
問い合わせ:HOT STUFF 03-5720-9999
プロフィール
Homecomings (ほーむかみんぐす)

京都在住、女の子3人+ 男の子1人の4ピース・バンド。「FUJI ROCK FESTIVAL」「スペースシャワー列伝」「HighApps Tours」「FM802 RADIOCRAZY」「BAYCAMP」等への出演や、The Pains of Being Pure at Heart / Mac DeMarco / Veronica Falls / Computer Magic / Norman Blake(Teenage Fanclub)といった海外アーティストとの共演、東京・大阪での自主企画イベントの開催など、2012年の結成から飛躍的に活動を展開中。2016年5月11日待望の2ndフルアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』をリリースした。



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