年間を通して、国内外からの観光客で賑わう京都。清水寺、嵐山、錦市場など定番スポットを巡るだけでも十分楽しめますが、じつはメインエリアから少し離れたところにこそ、ローカルが集まるスポットがたくさんあります。
そこで今回は、学生時代を京都で過ごしたHomecomingsの畳野彩加さん(Vo.&Gt)とともに、ミニバイクのレンタルサービス「HondaGO BIKE STAND」を使って京都を散策。
バンド結成の地でもあるこの街で、京都で暮らす人々の視点から、ローカルなカルチャースポットを1日かけて巡りました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
京都の「今」を発信するアートホテル『HOTEL ANTEROOM KYOTO』
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旅の出発点は、JR京都駅からも徒歩圏内の『HOTEL ANTEROOM KYOTO』。
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もともと学生寮だった建物を、全128室からなるホテル&50室のアパートメント、ギャラリー、そしてバー、レストランを兼ね備えた空間へと改装し、2011年開業しています。
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畳野彩加さん
観光客が年々増加し、ホテルの開業ラッシュが続く京都。そのなかでも『HOTEL ANTEROOM KYOTO』は、日本を代表する彫刻家の名和晃平、写真家・映画監督の蜷川実花など、国際的に活躍するアーティストによってプロデュースされた客室で話題に。アートホテルブームの先駆けともいえる存在です。
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名和晃平がプロデュースした客室
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蜷川実花がプロデュースした客室
客室の他にもホテル全体では約150以上のアート作品が展示されており、一部の作品は購入可能。取材当日は、エントランスと一体化したアートギャラリーで、畳野さんと同じ京都精華大学を卒業されたアーティスト・NAZEさんの作品が展示されていました。
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NAZEの展示
畳野:ホテルのエントランスとアートギャラリーが一体化しているのが新鮮。美術館みたいにかしこまった距離ではなく、自然な距離感でアートと触れ合えるのがいいですね。
NAZEさんと面識はないのですが、大学の数年先輩で、学生時代に校舎でNAZEさんの落描きを見つけたことがあるんです(笑)。同世代のアーティストの活躍を見ると、自分も頑張らなきゃと励まされます。
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そして、そんなエントランス&アートギャラリーの横には、鮮やかな黄色のミニバイクが2台。こちらが本日のバイク旅をサポートしてくれる「HondaGO BIKE STAND」です。
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畳野:京都の街をバイクで走るのは数年ぶり。大学が京都の山奥にあったので、学生時代はバイクで通学したり、買い物に行ったりしていたんです。
京都は電車が通っていないエリアにも面白いお店がたくさんあるので、バイクはとても重宝していました。学校帰りに友人たちと一緒に比叡山を越えて、琵琶湖を見に行ったこともありますよ。当時乗っていたのは、ヴィンテージの原付バイクでこんなに洗練されたバイクではなかったですけどね(笑)。
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用意されているバイクは、オリジナルカラー仕様のジョルノ、クロスカブ各1台。2色のヘルメットのほか、グローブやウェアも借りられます。
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レンタルバイクの利用手続きをフロントで済ませたら準備完了。さっそくバイクに乗って、京都の街を巡りにいきましょう。
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HOTEL ANTEROOM KYOTO
住所: 京都市南区東九条明田町7番
営業時間: 24時間 チェックイン15:00、チェックアウト11:00
定休日: ホテルの営業日に準ずる
電話番号: 075-681-5656
最寄り駅: 京都市営地下鉄烏丸線 九条駅
URL: https://hotel-anteroom.com/
『WIFE&HUSBAND』で、朝のコーヒー&ピクニック
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『HOTEL ANTEROOM KYOTO』を出発して北へ。京都のメインストリートのひとつである烏丸通をずーっと北上すること約30分。
最初に向かったのは、鴨川(賀茂川)沿いの閑静な住宅街に佇むこぢんまりとしたカフェ『WIFE&HUSBAND』。朝は人通りも少なく、京都に住んでいる人しか味わえないような、穏やかで静かな時間が流れています。
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オープンから4年あまりですが、そのコーヒーのクオリティーの高さが話題となり、日本のみならず海外からも訪れる人が後をたたない同店。
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クセがなく飲みやすいブラジル産の豆や、香りとコクが楽しめるグアテマラ産の豆を中深~深煎りで自家焙煎。いろんなコーヒーメニューがあり迷ってしまいますが、畳野さんが選んだのはオリジナルブレンドでした。
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畳野:学生時代にカフェでアルバイトを経験したのをきっかけにコーヒーが好きになりました。『WIFE&HUSBAND』のオリジナルブレンドは深煎りなのに後味がスッキリしていて私好み。ごくごく飲めてしまいますね。
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朝日が差し込む店内を見渡すと、オーナーご夫妻の趣味でもあるアンティーク家具・雑貨がいたるところにセンスよく配置されていることにも気づきます。
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おしゃれな映画のセットのような居心地の良い店内ですが、『WIFE&HUSBAND』では、なんとピクニックバスケット&グッズのレンタルサービスも提供中。天気のいい日には、徒歩数分の鴨川(賀茂川)の河川敷でピクニックを楽しむこともできます。
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ピクニックバスケットのなかには、小さなお菓子、マグカップ、テーブルクロス、そして畳野さんも思わず「かわいい!」と声をあげたコーヒー入りの魔法瓶が。
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製造終了しているヴィンテージの魔法瓶は、オーナーご夫婦が骨董市や友人・知人を介して地道にひとつずつ集めたものだそう。
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そのほかにも小さな椅子や折り畳みテーブル、ござなども貸し出しています。
「紙コップや紙皿でもピクニックはできますが、こうしたアイテムを利用することで、なにげない日常の風景も特別になるはず」とオーナーの吉田さん。
一杯のコーヒー、そしてコーヒーを囲むアイテムの一つひとつに、オーナーの温かな想いが込められています。
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WIFE&HUSBAND
住所: 京都市北区小山下内河原町106-6
営業時間: 10:00〜17:00(ピクニックのラストオーダーは15:00、カフェのラストオーダーは16:30)
定休日: 不定休
電話番号: 075-201-7324
最寄り駅: 北大路駅
駐車スペース: 北大路駅東駐車場
URL:https://www.wifeandhusband.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/wifeandhusband.jp/
日常の合間に『圓光寺』の日本庭園でリラックス
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『WIFE&HUSBAND』で朝のコーヒー&ピクニックを堪能した畳野さんがバイクに乗って次に向かったのは、鴨川(賀茂川)を渡り、北大路通をずーっと東に向かって行った左京区一乗寺エリア。
寺院も多く、バスや電車を乗り継いで訪れる観光客の姿も目にしますが、いっぽうでローカルの人々にとっては古くからの学生街として知られるエリアです。
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そんな静かな街の細い登り道をバイクで進んだところにあるのが、美しい日本庭園で多くの人々に愛されている『圓光寺(えんこうじ)』。
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お寺の柱を額縁に見立て、本堂の座敷や縁側から眺める額縁庭園「十牛之庭(じゅうぎゅうのにわ)」などが全国的に有名で、秋には紅葉、春には桜と、四季折々の表情が楽しめます。
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畳野:日常生活のなかに「お寺」や「自然」がすっと入り込んでくるこういう感じ、京都らしいなって思います。
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畳野:じつは、京都で暮らしているときはあまり気にしてなかったのですが、東京で暮らしはじめてから「こういう場所って他の街にはあまりないんだ」って気がつきました。
散歩やランチのついでにお寺に寄って、ゆっくりと移ろいゆく景色を楽しめるなんで本当に贅沢ですよね。久々に京都に帰ってくると、いいなぁとしみじみ思います。
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圓光寺の日本庭園は「十牛之庭」のほかにも、石や砂を用いた枯山水の庭「奔龍庭(ほんりゅうてい)」や、江戸時代に活躍した絵師・円山応挙(1733〜1795年)がよく訪れていたとされる幻想的な竹林など見どころが満載。
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本堂の入口横にある「水琴窟(すいきんくつ)」は、地下の空洞に水が滴る音を、竹筒を通して楽しむという、伝統的な日本庭園の仕掛け。畳野さんははじめて聴く金属音のような水滴の音に、とても不思議そうでした。
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水琴窟
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畳野:子どもの頃から両親に連れられて、京都のいろんなお寺を見に行ったのですが、圓光寺の庭園は程よい広さの空間に、紅葉、枯山水、池、竹林、苔など、庭のほとんどの魅力が揃っているのが印象的でした。限られた時間で京都らしい景色を楽しみたいという観光客の方にもおすすめですね。
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圓光寺
住所: 京都市左京区一乗寺小谷町十三番地
拝観時間: 9:00〜17:00
定休日: なし
電話番号: 075-781-8025(電話受付時間 9時~17時まで)
拝観料: 大人500円 中高生400円 小学生300円
最寄り駅: 一乗寺駅
駐車スペース: 圓光寺駐車場
URL:https://www.enkouji.jp/
京都の学生たちに40年以上、カルチャーの洗礼を浴びせ続ける『恵文社一乗寺店』
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続いてバイクで向かったのは圓光寺のすぐ近く、同じ一乗寺エリアにある『恵文社一乗寺店』。
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いまや全国から観光客がひっきりなしに訪れるこの老舗書店は1975年創業。セレクト系書店の先駆けとして、40年以上にわたって京都のカルチャーシーンをリードしてきました。
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周辺には京都大学のほか、美術系の大学も多数。多感な時期にこの書店に通いながら、本や音楽、写真、グラフィックなど、新しいカルチャーとの出会いを経験する京都の大学生たちも少なくありません。
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畳野:バンドメンバー全員、ここから近くの大学に通っていたので、授業の合間や休みの日など、ほぼ毎週のように来ていました。好きなお蕎麦屋さんもこの近くで(笑)。
とくに福富(優樹 / Gt.)くんは、以前の店長だった堀部(篤史)さん(現・誠光社店長)とも仲が良くて、メンバーのなかでも一番の読者家。大学生のころからメンバー同士で、好きな本の情報交換していましたね。
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恵文社では、スタッフ間で何度もミーティングを行い、納得のいく書籍のみを仕入れているとのこと。畳野さんのフェイバリットブックもたくさん並んでいるようです。
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畳野:誠光社の店長・堀部さんが恵文社での修行時代を書いたエッセイ『90年代のこと』は、1990年代のカルチャーシーンが生き生きと描かれていて大好きな作品です。
村上春樹さんとつながりの深い翻訳家・柴田元幸さんが訳しているアメリカの文学作品もすごく好き。柴田さんが編集長を務めている文芸誌『MONKEY』もよく読んでいます。
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畳野:あと、この『SABRINA』というグラフィックノベルは、今年一番ハマった本かも。
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畳野:ニック・ドルナソという作家がアメリカ現代社会の闇を描いた作品で、まるで映画を観ているような独特の世界観に吸い寄せられるんです。
あ、これも福富くんからオススメされていた本だ。
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『掃除婦のための手引書』
と、手に取ったのは、『掃除婦のための手引書』という不思議なタイトルの本。逝去10年以上経ってから作品がベストセラーになるなど、近年再評価の進むアメリカ人作家、ルシア・ベルリンの初邦訳短編集です。手にとってパラパラと数ページをめくった畳野さんは、そのままお買い上げになられていました。
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畳野:恵文社の書棚って、本の並び方に秘密があると思うんです。興味のおもむくまま一冊の本を手にとって、なかに描かれていたイラストに目が止まる。
その本を書棚に戻すとき、横にそのイラストレーターの画集があるのに気づく、といった思いがけない出会いがあるんです。ここに来たら絶対に何かと出会える。そう思わせてくれる大切な場所ですね。
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恵文社一乗寺店
住所: 京都市左京区一乗寺払殿町10
営業時間: 10:00〜21:00
定休日: 元日
電話番号: 075-711-5919
最寄り駅: 一乗寺駅
駐車スペース: 店舗裏側
URL:http://www.keibunsha-store.com/
商店街に誕生した、ローカルに愛される文化複合施設『出町座』
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出町座
一乗寺エリアを後にした畳野さんは、高野川に沿って川端通を南へ。最後に向かったのは、劇場、書店、カフェからなる複合文化施設『出町座』です。
高野川と鴨川(賀茂川)が合流する「出町柳」エリアの「出町桝形商店街」のなかにあり、バイクは商店街すぐ横の京都市出町駐車場に停めることができます。
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2年前にオープンした『出町座』では、単館系の新作映画はもちろん旧作も含めて、1日に10作品前後を2スクリーンで上映。
上映作品を選ぶ上で大切にされているのは、世界の最前線の映画表現を地元に届けること。遠方からお越しの映画好きのお客さんはもちろんですが、商店街を通る近所の方々にも愛されています。
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畳野:昔から旧作映画の特集上映が好きで、東京で暮らしてからも、Homecomingsのほなちゃん(福田穂那美さん / b)と、早稲田松竹のような名画座に通っています。
最近は、NetFlixなどの配信サービスで気軽に映画を楽しむ人も増えていますが、そんな時代だからこそ劇場で観る映画はとても特別な体験に感じます。
ここならカフェも併設されているので、上映後に感想を言い合ったりするのも楽しいですよね。
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『出町座』の1F中央には、カフェ『出町座のソコ』があり、キッチンを取り囲むようなカウンター席で、コーヒーやジュース、サンドイッチやホットドックなどの軽食メニューをいただけます。
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畳野さんが今回注文したのは、人気メニューのプリン・アラモードと自家製のホットレモンジンジャー。
プリン・アラモードは、自家製きび砂糖を使ったプリンにホイップクリームと季節の果物をトッピング。バイク移動で疲れた身体に甘いデザートが沁みます。
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畳野:じつは昨年の夏、このカウンターのなかでライブをしたことがあるんです(笑)。主題歌で関わらせてもらった『リズと青い鳥』という映画の上映イベントだったのですが、普段のバンドのライブではあまり味わえない貴重な経験でしたね。お店の入り口がガラス窓なので、商店街でお買い物中の方も覗いてくれました。
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「ローカルとのつながりを何よりも大切にしているという」という出町座。上映開始までの待ち時間を使って、商店街で買い物を楽しむお客さんの姿も見受けられます。観光地という側面とは違った、普段の京都の姿が垣間見えた瞬間でした。
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出町座
住所: 京都市上京区三芳町133
開館時間: 上映スケジュールによる
休館日: なし
電話番号: 075-203-9862
最寄り駅: 出町柳駅
駐車スペース: 京都市出町駐車場
URL:https://demachiza.com/
「バイクで京都の街を走っていると、学生時代の感覚が蘇ってきた」
気がつけばあっという間に夕方。久しぶりに京都の街を1日巡った感想を畳野さんに伺いました。
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畳野:バイクに乗るのは久しぶりだったので、はじめは少し緊張しましたが、すぐに学生の頃の感覚が蘇ってきて楽しくなりました。
古都とはいえど、街並みの移り変わりが激しい最近の京都ですが、学生時代を過ごした一乗寺や北大路など、少し離れたエリアには当時と変わらない雰囲気やお店が残っていて、とても懐かしい気持ちになりました。
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畳野:心残りは、一乗寺にある学生時代からお気に入りの蕎麦屋『蕎麦切塩釜』に行けなかったことかな(笑)。また違う機会に再チャレンジしたいです。
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HondaGO
「HondaGO」は、より多くの若者にバイクを楽しんでもらいたいという想いからはじまったプロジェクト。「移動手段」として見られているバイクを「世界観が広がる新しい体験ができる手段」として若者に気軽に楽しんでもらうため、旅先でのバイク乗車体験の機会を提供します。
旅×バイクの新プロジェクト「HondaGO」
https://www.honda.co.jp/HondaGO/
この記事で紹介している店舗には、バイク専用駐車スペースがない場合がございます。近隣の駐車場をご利用の際は、下記の「京都府バイク駐車場案内」をご覧くださいませ。なお駐車場の情報は、詳細や空き状況などが異なる場合がございます。事前にご確認のうえご利用ください。
日本二輪車普及安全協会 京都府のバイク駐車場案内
https://www.jmpsa.or.jp/society/parking/area26/
- プロフィール
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- Homecomings (Homecomings)
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畳野彩加(Vo./Gt.)、福田穂那美(Ba./Cho)、石田成美(Dr./Cho)、福富優樹(Gt.)による京都発の4ピース・バンド。The Pains of Being Pure at Heart / Mac DeMarco / Norman Blake(Teenage Fanclub)といった海外アーティストとの共演、4度に渡る『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演など、2012年の結成から精力的に活動。2018年には京都アニメーション制作映画「リズと青い鳥」の主題歌を担当、3rdアルバム『WHALE LIVING』をリリース。2019年4月映画『愛がなんだ』に主題歌「Cakes」を書き下ろした。
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Information
2019.12.22 [Sun]
Homecomings presents「PET MILK」
会場:東京・恵比寿LIQUIDROOM
LIVE:Homecomings ※ONE MAN SHOW
開場:17:00 / 開演:18:00
前売:3,600円(税込・ドリンク代別)
※学生割引:ご入場時500円キャッシュバック(要学生証)
※入場制限:小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)
※ぴあ(P:162-918)、ローソン(L:71196)、イープラス、LINEチケット
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
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