レンタルスタジオとはその名の通り、時間制で借りることのできる撮影スペース。通常は撮影のために使われるスペースですが、最近ソウルではプロの写真撮影にとどまらず、様々な使われ方でスタジオが急増しているのだとか。本稿では、そのトレンドと人気のレンタルスタジオを紹介します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
進化する、ソウルのレンタルスタジオ事情
皆さんは、レンタルスタジオを利用したことはありますか?
ソウルではプロのカメラマンでなくても、日常で撮れないような1枚を求め、気軽にスタジオを借り、その時間や空間を楽しみます。ここ数年でそういった形でのレンタルスタジオ利用者が増え、それに伴いスタジオの数はソウル市内だけでも300店舗以上にもなっているのだとか。
なぜ、ソウルではレンタルスタジオが、たくさん利用されるのでしょうか?
その理由の1つが、SNSの普及。FacebookやInstagramなどが普及するずっと前に、韓国ではCYWORLD(サイワールド)というSNSが利用されていて、「みんなに見せるための写真」を撮影することが日常になっていました。この時から、本格的な一眼レフカメラを持つ人が増え、レンタルスタジオを利用する個人が増えました。
また、「結婚アルバム」や子供の成長を記録した「成長アルバム」と言う豪華なアルバムを制作する韓国特有の写真文化も影響していると考えられます。
さらに韓国では、他国に比べてオンラインショップの開業がとても活発。特に若手のアパレルブランドが多いため、彼らの商品を綺麗に写し出すためのフォトスタジオとしてニーズが高まっています。
そういったレンタルスタジオのニーズの多様さが相まって、最近では単に空間を貸すのではなく、その広いスペースを活かして様々なカルチャーイベントも実施されるようになりました。
パワフルで、どんどん進化し続けるソウルのレンタルスタジオ。そんな中でも特に人気で、独自のスタイルを確立させているレンタルスタジオを3つ、ご紹介します。
Plusjun studio / Layer57
時代の流れと共に、レンタルスタジオ業界もますます競争が激しくなっているソウルですが、ここ『Plusjun studio(プラスジュンスタジオ)』は、ソウル市内に6箇所ものスタジオを構える人気のレンタルスタジオ。
運営しているのは、ファッション・フォトグラファーとしてその名を轟かせているホ・ジュンソンさん。様々な撮影場所で写真を撮ってきた経験から、「質の良い空間を多くの人に提供したい」という思いをきっかけに、時代を先行く空間を作り続けてきました。
スタジオの中でも特に人気があるのは弘大(ホンデ)エリアの一角にある庭付き一軒家のレンタルスタジオ。最近韓国でもセルフ・ウエディングやスモール・ウエディングがブームなことから、結婚を控えたカップルたちが「セルフ撮り」を行うために、このスタジオを訪れます。
そんな『Plusjun studio』が、老朽化の進んだ1号店の延南(ヨンナム)洞のスタジオを引き払い、2016年12月に聖水(サンス)洞の印刷工場をリノベーションし、新たにオープンしたのが『Layer57(レイヤー57)』。
レンタルスタジオとしてはかなりの面積を持ち、その広さもさることながら、注目するのはカフェやブックストアも兼ねた複合施設であるということ。コーヒーの香り漂うおしゃれな空間のカフェやアートブックを取り扱うブックストアも、レンタルスタジオとして利用することが可能です。
写真撮影はもちろん、PV撮影やファッションショー、大企業のイベントの開催場所としても注目を浴びる『Layer57』。オーナーが語る「質の良い空間を提供したい」という思いがさまざまな形となり、新たなカルチャーを生むレンタルスタジオです。
VERANDA INDUSTRIAL
古くから町工場やハンドメイドの靴屋などが立ち並ぶエリア・聖水洞(ソンスドン)。ここは、工場や倉庫をリノベーションしたおしゃれなセレクトショップやカフェが並ぶエリアでもあり、現在ではソウルの若者たちが足繁く通うホットスポットとなりました。2013年、狎鴎亭(アックジョン)からここ聖水洞に移転してきたレンタルスタジオが『VERANDA INDUSTRIAL(ベランダ・インダストリアル)』です。
ここのオーナーは、「スクキューアート(釘一本一本をキャンバスに刺し、一つの絵を完成させる技法)」作品で有名なアーティスト「VI」ことVERANNDA IKIM(ベランダ・アイキム)さん。自身のアトリエとして利用している空間を、制作時間外となる昼間のみ貸し出している、ユニークな形態のスタジオです。本来は個人的な空間であるという理由から、特にレンタル撮影スタジオに関するWEBサイトなどはなく、口コミで人気を呼んだスタジオです。
オーナーであるアイキムさんは、その昔、ミュージックビデオの監督として撮影のセットに携わり、そこで内装やインテリア雑貨などの制作を経て、アーティストとしての才能を開花。ここ『VERANDA INDUSTRIAL』の内装も、今までの経験や培った技術を用い、何ヶ月もかけて自ら行ったそう。
そんな熱い情熱のこもったこのスタジオは、撮影スタジオとしてのみならず、ライフスタイルマガジン『KINFOLK』のイベントや、『KINFOLKディナー』の韓国会場として、またシャネルの新作お披露目披露会の会場として、最近では韓国ドラマ『マン・ツー・マン〜君だけのボディーガード〜』ロケ地としても利用されましたことでも知られます。
時代と共に生き、思いを表現するアーティストの息遣いが感じられる『VERANDA INDASTRIAL』。これからどんな風に変化していくのか要注目のレンタルスタジオです。
Studio Billy Bean
ブラッド・ピッド主演の映画『マネーボール』の登場人物、ビリービーンからその名を付けたレンタルスタジオ『Studio Billy Bean(スタジオビリービーン)』は、2017年5月にオープンしたばかりの2階建一軒家の庭付きレンタルスタジオ。
閑静な高級住宅街が集まるエリア、延禧洞(ヨニドン)に位置する『Studio Billy Bean』を運営するのは、自らもミュージシャンとして活躍し、インディーズレーベル『billy bean music(ビリービンミュージック)』の代表でもあるキム・ビリーさん。音楽活動の傍ら、レンタルスタジオと音楽をミックスさせることのできる空間を探し求め、今年ようやく理想の1軒と出会い、このスタジオをオープンしました。
仲間たちとアイデアを出し合って、ユニークな空間へとリノベーション。部屋ごとに様々なコンセプトのインテリアが施されていますが、中でもオープン早々人気を呼んだのは、ビンテージの香り漂うキッチンを活かした植物園仕立ての1階の一室と、厚い壁に大胆に穴を開けて視覚的効果と便宜性を兼ね備えた2階の一室。洗練されたこの空間でのシャッターチャンスを求め、撮影にくる若者たちが後を立ちません。
そして他のスタジオにはない特徴は、音楽との関わり。アルバムのジャケット撮影やミュージックビデオ撮影などが行われているほか、1階スペースはライブ会場としても利用されます。今年6月に開催されたライブイベント「DAYTIME LIVE」では、「billy bean music」所属のミュージシャンをはじめ、様々なジャンルのシンガーソングライターが爽やかなギター音と歌声を奏でました。
また音楽のみならずフリーマーケットを開催するなど、コミュニケーションの場としての役割も果たす『Studio Billy Bean』。空間を提供しつつ、カルチャーをも発信する、若くてエネルギッシュなレンタルスタジオです。
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Studio Billy Bean
住所: ソウル特別市西大門区延禧路11ラギル28
電話番号: 02-6101-7979
最寄駅: 弘大入口駅
URL:http://www.studiobillybean.com/
今回、スタジオとしての空間としての要素に加え、様々な文化の要素までミックスされた空間をピックアップしてみました。今を生きるソウルの人々にとっての文化として、欠かすことのできないレンタルスタジオ。それぞれのスタジオから発信される、カルチャーにも乞うご期待です。
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