台湾南部の都市「高雄」。港町である高雄の街並みや、そこで感じられる潮風、そしてゆるくも情に熱い人柄が、音楽にも反映されています。中でも近年注目される高雄のバンドは、これまでの台湾のミュージシャンたちと違い、高雄を拠点に活動し続ける傾向が多いとも言われます。今回、HereNowでは音楽好きな旅人たちに6組の新生バンドを厳選して紹介。彼らの音楽に耳を傾け、いつもと違う目線から高雄を楽しんでみよう。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
まるで甘い果実のよう。台湾語ロックの王道を行く、新生バンド「孩子王」
高雄は台湾の中でも、台湾語で歌われるロックバンドがもっとも多い都市。「孩子王」はまさに台湾語ロックの王道とも言われる新星バンドです。2012年に高雄の南西部に位置する大樹区出身のギター阿宏、ベースの什麼、ドラムの強尼と、ボーカルであり、このバンドのキーパーソン・阿達により結成されました。
まるで南国・高雄で取れるパイナップルのようにジューシーで甘酸っぱい、阿達の作り出す音楽と歌声。そこにメンバーたちの演奏が加わると、その甘み(音楽)はさらに濃厚になり、しかし決して甘すぎず、爽やかに変化する果実のよう。
孩子王の音楽は、オルタナティブロックやオルタナティブフォーク、正統派の台湾語ロックのファンたちの心を掴むこと間違いなし。若者たちが社会に感じている葛藤や不安を歌い上げているそんな彼らは、2017年にファーストアルバム『最窘丸』を発表。リリース直後には韓国ツアーで現地の若手バンドとも交流を深めるなど、精力的に活動しています。
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ロマンを追い求める、大人のシューゲイザー集団「必順鄉村」
イギリスのシューゲイザーバンド・RideやSlowdiveなどが、続々と活動を再開し始めた昨今、台湾の高雄にもようやくシューゲイザーのブームが再来しました。そんなロマンを追い求めるダンディーな4人組「必順鄉村」が、今台湾のシューゲイザーブームの台風の目とも言われています。
ツインボーカル&ギターの阿順と紀豪、ベースの胡俊、ドラムの信樺で2012年末に結成された必順鄉村。高雄という港町の生活に降り注ぐ光と影を、耽美な台湾語で、シューゲイザーに昇華しています。過去には、台湾のシューゲイザーフェス「瞪鞋音樂祭」にも出演。日本バンドとも積極的に交流を深めているバンドの1つです。
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- 必順鄉村
音源はカセットテープで販売。Dubで勝負する流浪のバンド『最後大浪』
65キロの長い海岸線を持つ高雄の空気さながら自由奔放で、実験精神を持つフリースタイルなDubバンドが「The Last Wave」。リリースしたEP『膠筏』『天鵝船』『太平洋獨木舟戰士』は全てカセットテープのみの販売で、グッズも全てギターの小肆の手作りというDIY精神を持っており、ライブではいつも個性の違うゲストアーティストを招いて、セッションするなど、可能性溢れる個性的かつ流浪のグループです。
メンバーは、リーダーでギターの小肆、ベースの忠哥、ドラムの耕豪の3人。小肆がエレキギターやアナログシンセサイザーで制作した音楽は、常にリスナーの想像力の極限まで広げるような不思議な世界観を作り出しています。
「君たちが風だとしたら、俺らは波だろう。風が無ければ、波は立たない。」と言う彼ら。フリーキーなスタイルで突き進む彼らは、高雄で今最も目が離せないライブバンドの1つです。
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- 最後大浪
南国ファンタジーを味わう、ドリーム・ポップバンド「The Fur.」
夜の散歩にぴったりな高雄のドリーム・ポップバンドが「The Fur.」。ナードなビンテージドラムに、心地よく音割れするギター、ボーカルのクールな歌声が、彼らの世界観を作り出しています。
2016年に中心メンバーのボーカル・柚子とギターの凌がThe Fur.を結成。その後ベースの唯任とシンセサイザーの溫溫が参加し、高雄では珍しい全曲英語詞のインディーズバンドとして活動しています。一般的に情熱がほとばしると言われる台湾語の歌詞と比べ、クールな印象を持つ英語詞は、記憶の奥底にあるような昔の音楽を急に思い出すような、レトロで独特な雰囲気を演出。その上に、彼らのビンテージ感溢れるユニークな演奏が加わると、自由に踊りたくなるような気分になるでしょう。
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台湾の若者たちから支持を集める、オルタナティブなバンド「謎路人」
2014年にボーカルの小賀、ギターの小麥、ベースの秉志、ドラムの大美で結成された「謎路人」。ロックの豊かなメロディーラインに、ハードコアのような重いビートとダンスミュージックを組み合わせたような絶妙なバランス感覚を保つ、台湾のミクスチャーロックとも言える、独自のスタイルを生み出しました。ライブも高雄の夏の太陽のように熱いことで知られています。
彼らが敬愛する、オルタナティヴ・メタルのサブジャンルNu Metal(ニュー・メタル)やハードコア・パンクから派生したロックのジャンルPost Hardcore(ポスト・ハードコア)のように、オルタナティブなスタイルで勝負する彼ら。彼らの音楽は、台湾の若者たちの生活を省みて、それを爽やかかつ硬派な音で表現することで知られ、そんなスタイルが、台湾の若者たちの中で絶大な支持を得ています。2016年にはEP『Scar』、と2017年に『REBIRTH』をリリースし、香港や大阪などの若手バンドとも積極的に交流。彼らのフルアルバムを待ちつつ、東アジアのロックをさらに盛り上げてくれることに期待です。
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高雄という都市に向き合う、オルタナティブフォークバンド「淺堤」
小柄なボーカル・蔡依玲を中心に、ギター・阿宏、ベース・方博、ドラム・潘廷で結成されたオルタナティブフォークバンド「淺堤」。2016年にファーストデモ『Demo.1』をリリースし、その直後にシングル『怪手』が「金音獎(Golden Sound Award)」のベストロックシングル賞に選出。さらに2017年には、高雄の街と若者たちとの絆を描いた楽曲“高雄”を収録したファーストEP『湯與海』をリリースしました。
とても柔らかで心を落ち着かせてくれるようなボーカルの歌声、フレキシブルでスピード感のあるギターサウンド……、それはまるで港町・高雄の象徴とも言える灯台「旗後灯台(きごとうだい)」に漂う空気のように、穏やかな音が奏でられています。そんな彼らの音楽は、一聴すると繊細で正統派のインディーロックに聞こえますが、彼らが歌う歌詞は、都市の工業化や近代化から逃れられない悔しさを表現し、高雄という街の大切な部分を奪われないようにと、優しい眼差しで演奏しているのです。
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