台北の夜の定番といえば「夜市」ですが、作家の小野美由紀さんがいまハマっているのは、旅の非日常感にどっぷり浸れる個性的なバー。普段はあまりお酒を飲まない、と語る小野さんも、台北のバーのくだけた雰囲気、台湾らしいエキゾチックなフレーバーを加えたドリンク、そして何より、その空間に身を置くだけで他のお客さんたちと秘密を共有しているような一体感に一気にハマってしまったのだそう。今回は、とっておきの3店『Draft Land』『Le Kief 菱玖洋服』『桂公子酒館 Highballer's Bar』をご紹介してもらいました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
いま話題のドラフトカクテルを楽しむなら『Draft Land』
宵の瀬にはまず、くだけた雰囲気のカクテルバーから。
台北のなかでも感度の高い若者が集まる通称・東区エリアにある『Draft Land』はカクテル専門のスタンディングバー。
ガラス張りの店内は活気にあふれ、いつも人でいっぱい。普段はバーでお酒を飲まない、という人でも入りやすいカジュアルな雰囲気。ラボを模した店内はカジュアルで清潔。壁にずらりと並んだサーバーが特徴的だ。
ここで提供されるのは、「ドラフトカクテル」という、あらかじめつくられたカクテルをサーバーを使ってグラスに注ぐというスタイルのカクテル。
通常のバーのように注文されてから一杯一杯つくるわけではないので、リーズナブルに、色々な種類のカクテルが味わえる。気になるメニューがあれば試飲できるのも「ドラフトカクテル」だからこそ。
お店のスタッフはみんな、研究者のような白いユニフォームを着ている。メニューについての質問にもにこやかに答えてくれるし、お客さんとの距離も近い。
メニューには各ドリンクの詳しい解説のほか、アルコール度数や甘さの度数などが一目でわかるように記載されているので初心者でも選びやすい。
このお店に来て初めて、私はバーに対して持っていた固定観念が覆された。
これまでは、カクテルってなんだか注文するのも難しそうだし、種類も多いし、好みの味を探すのも、なんだか大変そうだな、と尻込みしていたのだ。
けれど『Draft Land』はまるでアパレルショップみたいにオープンで気軽に入れる雰囲気。お客さんたちもまるで、立ち飲みの居酒屋でビールを一杯引っ掛ける、みたいなテンションでカクテルを注文している。こんなお店、日本にもあったら良いのに! と思っていたら、もうすぐ東京やソウルにもオープンするのだとか。
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『Draft Land』
住所:106台北市大安區忠孝東路四段248巷2號1樓
営業時間:18:00〜1:00
定休日:無休
電話番号:+886 2 2752 5009-
最寄り駅:忠孝敦化駅
Webサイト:https://www.draftland.tw/
一見すると紳士服屋? 知る人ぞ知る隠れ家バー『Le Kief 菱玖洋服』
美味しいカクテルでテンションが上がったところで、『Draft Land』から5分ほど歩いたところにある『Le Kief 菱玖洋服』へと向かう。
こちらのお店、外からは一見、紳士服のテーラーのように見えるけど、じつはバーなのだ。
店内にある電話機に秘密の番号を入力すると、奥の鏡の形をした隠し扉が開いて、バーの入り口が現れる、というなんともエキサイティングな仕組み。
まるで映画の主人公になったみたいでワクワクする、旅の夜にふさわしいお店。
洞窟のような通路を通って店内に入ると、外側からは想像できないような広々とした空間。他のお客さんの顔がほんのり見えるぐらいにまで照明を落とした店内は、先ほどの『Draft Land』とは打って変わって落ち着いた大人の雰囲気。
オリジナルカクテルのメニューには、お茶の国・台湾らしい遊び心たっぷりの個性的なドリンクが並ぶ。緑茶とゆずのリキュールを使った「茉(MO)」、烏龍茶と海藻を使った「Wow-long time no tea」など、カクテル初心者でもすっきりと飲みやすくおすすめ。
お会計の後にはふたたび店内の隠し扉から帰されるという、最後までサプライズにあふれたバー。秘密を共有したい友達とぜひ訪れてみてほしい。
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『Le Kief 菱玖洋服』
住所:光復南路308巷36號
営業時間:月曜〜木曜19:00〜2:00 金曜・土曜19:00〜3:00
定休日:日曜
電話番号:+886 2 2752 5009
最寄り駅:國父紀念館駅
Webサイト:https://inline.app/booking/-LH69FTVI3JGVmw1fuN_/-LH69FW8QLm6wbZZ7vMq
非日常感にどっぷり浸れる『桂公子酒館 Highballer's Bar』
最後に向かうのは、『Le Kief 菱玖洋服』からタクシーで10分ほどの林森北路エリアにある『桂公子酒館 Highballer's Bar』。昼は朝食の店や屋台で賑わうエリアだけど、夜は「え? こんなところにバーなんてあるの?」と思うほど静か。
ドキドキしながら古いビルの細い階段を降りて地下1階に潜ると、怪しいネオンの輝きを放つ、まさに「アンダーグラウンド」なバーが現れる。
サイケレトロなピンクの光に彩られた店内。無骨な壁に描かれたグラフィティ。内装からは1980年代の香港映画を彷彿とさせるフレーバーが漂い、まるで非現実の世界に迷い込んだような気分に。
このバーは2018年の10月にできたばかり。香港のダウンタウンみたいな良い意味でラフな空気が流れ、グループでわいわいお酒を飲むのに向いている。カップルや一人客がほとんど目につかないのが、前出の2店との大きな違いだ。
メニューにはビールとワインとカクテルがほど良いバランスで並ぶ。もちろん店名のとおり、ハイボールのメニューも豊富だ。
しかし、店名の「ハイボーラー」の意味をマスターに尋ねると「リッチで余裕のある人」という答えが返ってきた。金満家で猥雑で享楽的な、1980年代の香港の遊び人のイメージなんだろうか?
おすすめのメニューは「桂氣天香雲外飄」というパッションフルーツワインにパイナップルピューレ、キンモクセイのラムを加えたカクテル。南国の果物の甘さのなか、ほのかにキンモクセイが薫り、旅情と乙女心の両方を刺激される。
オールドファッションなネオンの輝きに身を浸して、非日常をたっぷり味わえる、唯一無二のバーだ。
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『桂公子酒館 Highballer's Bar』
住所:b1, No. 37號民生東路一段中山區台北市10451
営業時間:20:00〜5:00
定休日:なし
電話番号:+886 2 2537 3649
最寄り駅:雙連站駅
Webサイト:https://www.facebook.com/highballersbar
- プロフィール
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- 小野美由紀
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作家。著書に銭湯を舞台にした青春小説『メゾン刻の湯』(ポプラ社)、『傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』(幻冬舎)、絵本『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)など。創作ワークショップ『身体を使って書くクリエイティブライティング講座』を毎月各地で開催している。
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