世界中の風景を、色鮮やかで繊細な刺繍で再現した写真の数々が、昨年インターネット上で話題になった。様々な言語で紹介された刺繍プロジェクト、『Sew Wanderlust』を制作するのは、シンガポール人アーティストのテレサ・リム。24歳を迎える頃にはすでに、シンガポール、香港、バンコク、そして東京で、アート作品の展覧会やファッションショーに参加していた。クリエイティブなプロジェクトのため、また自分の楽しみのために世界中を飛び回るテレサは、旅先での光景を、針と糸で記録する。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
—昨年多くのブログやウェブサイトでピックアップされたアートプロジェクト、『Sew Wanderlust』がどのように始まったのか、教えて下さい。
テレサ・リム:2014年の後半、オーストラリアのパースにいた頃にこのプロジェクトを始めました。コテスロー・ビーチで、ものすごく美しい夕焼けを眺めていたのですが、携帯の充電が切れてしまって写真が撮れないという状況でした。それでも、どうしてもこの景色は残さなければと、裁縫道具を持っていたので、太陽が沈むまでに、急いでこの景色を刺繍してみようと考えました。
—写真のかわりに刺繍でって、ユニークですね。
テレサ・リム:カメラでサッと撮影して歩き去るよりも、刺繍をしている時のほうが、自分の目からより多くの情報を得ていることを感じ、この制作プロセス自体をとても楽しむことができました。常にその場に存在する、その瞬間に起こっていることを意識するように心がけていますが、旅をしている時にはそれがさらに重要だと感じます。旅先での刺繍作品は、かなり前からオンラインにアップしていましたが、ある日突然Frankieというサイトに掲載されて、次の日には世界中で話題になっていました。かなり怖い体験だったけど、自分のプロジェクトが公開されてうれしかったです。
—どのような反響がありましたか?
テレサ・リム:ほとんどの反響はポジティブなものだったので、とても支えになりました。でもインターネットですから、常に批判する人はいますよね。すぐに思い出せるのは、「これはなんのアプリ?」それから、「(刺繍なんて)白人らしい趣味」……私はアジア人だけどね。
—他にどのようなプロジェクトが進行中か教えてください。
テレサ・リム:継続中のシリーズでは、「Sad Girls Club」というのがあります。この刺繍の作品は、イラストと合わせて本にまとめる予定です。日本から依頼されているお仕事もありますよ。
—お仕事でも個人的にも旅をする機会が多いようですが、世界中の様々な街を訪れて、あらためて感じるシンガポールの良さを教えてください。
テレサ・リム:シンガポールは小さいから好きです。スーパーに買い出しに行くのに車で一時間ドライブする必要はありません。国内であればどこでも移動しやすく、交通の便も素晴らしい。電車やバスだけでどこへでも行けます。シンガポール人は、電車が遅れたり止まったりするとすぐに文句を言うけど、ロンドンではそんなこと日常茶飯事だから、遅延やストライキに備えて、必ず移動時間を長めに計算しておきますよね。それから、シンガポールは食べ物が豊富なことは、とてもありがたいことだと思っています。そして最も重要なことは、街が安全なことですね。他の国とは違います。この前、祖父母を訪ねにドイツへ行った際、早朝に散歩にでかけると伝えたら、祖母から催涙スプレーを手渡されたんですよ(笑)。
—シンガポールで好きな場所はどこですか?作品のための材料を入手するのもシンガポールですか?
テレサ・リム:作品に使う素材は、いつもチャイナタウン(シンガポール国内の中国人街)へ買いに行きます。それ以外では、アッパー・トンプソン・ロードにあるカフェがどこも静かで、ゆっくり座って本を読んだり、スムージーを飲んだりしています。
—最後に、次の旅の行き先はどこですか?
テレサ・リム:年末には一ヶ月ほど南へ向かいたいなと思っています……たぶん。まぁ、どうでしょうね。いつも行き当たりばったりなことが多いです。
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