北海道・十勝といったら、みなさんは何を思い浮かべますか? 北海道の真ん中よりちょっと南東、日高山脈を仰ぐ雄大な平野と、「十勝晴れ」という言葉もあるほど澄み切った青空。名物の豚丼や六花亭、花畑牧場などでも知られます。
しかしじつはいま十勝では、宇宙開発のスタートアップや農業IoTサービスの創出など新しいうねりが発生し、移住者も増えているのです。前編に引き続き、後編では帯広市内の夫婦が営むカフェや、スタッフがアットホームに迎えてくれる骨董品店などを紹介します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
夫婦のこだわりが光るカフェ&雑貨屋『THE YARD』
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前編の最後に訪れたパン屋さん『toi』から車で30分ほどの、帯広市街の住宅地。人々が集い、ほっと一息つくこの一軒家は、南薗勢治・洋子さん夫妻が営むカフェ『THE YARD』です。ふたりは東京で暮らしていましたが、東日本大震災をきっかけに、洋子さんの地元・帯広に移住しました。
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やわらかい日の差し込む店内。ウッドとアイアンのバランスが心地よく、長居してしまいそう
『THE YARD』では、ブレンドとシングルオリジンのコーヒー豆をつねに2種類ずつそろえ、勢治さんが丁寧にハンドドリップ。洋子さんがつくる日替わりのおやつや、サンドイッチ、グリーンカレーはすべて、「EAT THE SOIL(大地をいただく)」をコンセプトに、心を込めてつくられています。
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素朴な味わいの自家製スコーン。香ばしい焼き加減とほろほろっとした口当たりがやさしい
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人気のレモンケーキは、甘さ控えめ。スッキリとしたレモンの香りと、コーヒーの組み合わせは抜群
カフェスペースとその奥にあるサンルームでは、雑貨も販売。オーガニック洗剤や、キルトやクッションカバー、木彫りのアルファベットブロック、インドやネパールのアクセサリー、ロンドンの裁縫道具など、遊び心ある世界の日用品が並びます。
また、『THE YARD』がみずから手がけるブランド「SEAMS & EFFECTS」のやさしいショーツやオーガニックの布ナプキンなども。カフェはもちろん、生地の染色や針仕事も、ふたりの生活の一部になっています。
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入り口は北海道らしい二重扉
「EAT THE SOIL」に加えてもうひとつ、『THE YARD』の大事なコンセプトが「SHARE&TIME」。せかせかした生活や、慌ただしい旅のスケジュールに疲れたら、ゆったりとした時間をシェアしてくれる『THE YARD』を訪れてみてください。
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『THE YARD』
住所: 北海道帯広市西8条南10-3-4
営業時間: 11:00〜18:00(ラストオーダー17:30)
定休日: 月曜・第3火曜
電話: 0155-22-5740
URL:https://www.theyard-cafe.com/
つくり手の声を聞いてセレクトする雑貨店『Pastoral』
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ここは、『THE YARD』から車で5分ほどの雑貨店『Pastoral』。セレクトショップ『D&DEPARTMENT』で働いていた中川孝太さんが2017年にUターンし、オープンしたお店です。
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中川:高校を卒業してからずっと札幌にいて。でも、ずっと住み続けるイメージがだんだんできなくなってきたんですよ。それで故郷の帯広に目を向けたら、『THE YARD』みたいに同世代がやっている、素敵なお店があって。僕も自分の力でやってみたいなと思いました。
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長く使える日用品や雑貨にこだわってセレクトする中川さん。漆塗りやガラスの食器など、独立して間もない若手の作品も多く扱っており、「知名度がこれから高くなっていくだろう方々と、一緒に広がっていきたい」とその熱意を語ります。
中川:作品だけ見るのではなく、実際に作家さんと話をして決めることを大切にしています。モノがいいだけじゃなく、人が見えるものがいいですね。お客さんにも、作家さんの人となりばかり話しています(笑)。
作品はお店に並べる前に、自分で購入して生活に落とし込み、その良さを確認することが多いと言います。つくり手のストーリーが染み込んだ、長く愛せる一品にきっと出会えるお店です。
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もともと毛皮屋だったという店舗。建物をそのまま活かしつつ、DIYで手を入れた
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『Pastoral』
住所: 帯広市西1条南4-14-1
営業時間: 11:00〜19:00(日曜・祝日は18:00閉店)
定休日: 木曜
電話: 0155-40-9075
URL:https://pastoralobo.base.shop/
Instagram:https://www.instagram.com/pastoral_obo/
異空間にようこそ。アットホームな骨董屋『グリーン商会』
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続いては、『Pastoral』から北に徒歩5分ほど、帯広川のすぐそばにある骨董品店『グリーン商会』へ。40年前からあるこのお店、一歩店内に踏み込むとタイムスリップしたような感覚に陥ります。
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大きなタンスから小さな玩具まで、所狭しと並ぶ骨董品は数万点に及びます。お客さんとの密なコミュニケーションと、長年培った勘で時代の流れを読み、仕入れるものを変えていくのだそう。
最近はアンティークブームの後押しもあり、日本各地から雑貨バイヤーや20、30代の若いお客さんが集い、海外からの客足も。お店の説明をしてくれたのはスタッフのひとり、ヨリちゃんこと畑中より子さん。「すごく年下のお客さんからもヨリちゃんって呼ばれるの」と笑います。
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スタッフのみなさん。右奥がヨリちゃん
畑中:東京や大阪からもお客さんが来ますよ。今日は台湾の方が7、8人いらっしゃって。10数年前は着物や江戸明治大正の調度品が多かったんだけど、いまは昭和レトロ系が人気ね。
あと、うちは古材で家具もつくっていて、カフェとか美容室とか、自分でお店をやる人がよく来てくれますよ。グラスや調理器具なんかをうちで揃える方も多いです。
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2階にもたくさんの雑貨が。まるで異空間のよう
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そして何よりもここの魅力は、スタッフのアットホーム感。買い物の相談にも親身に乗ってくれる、距離の近さがなんだかほっとします。
畑中:お客さんと一緒に、ここでごはん食べたりもしてますよ。初めてきた人にも「ごはん食べていきなさい」って。だから、買い物じゃなくただおしゃべりしに来る人もいます。そういうお店って、いま少ないじゃないですか。すぐ家族みたいになりますよ。
そんな距離感からか、親の代から通うというお客さんもいて、口コミで海外にまで広まっていったのだそう。友人の家を訪ねるような気持ちで、宝探しを楽しんでみては?
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帯広の屋台村で、十勝の味覚をまるかじり『北の屋台 / 十勝乃長屋』
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十勝のさまざまなスポットを巡り、お腹もちょっぴり空いてきた時間。旅の最後は、帯広の中心街、JR帯広駅のほど近くにある屋台村を2つ紹介します。
まずは全国の屋台村ブームの先駆けとして、2001年に誕生した『北の屋台』。地元民から観光客まで、毎晩多くの人が集います。冬の間はお店のなか、暖かくなってきたら屋外のテーブルと椅子で、十勝のカラッとした空気を感じながら晩酌を楽しめます。
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焼き鳥、居酒屋、フレンチ、中華、韓国料理やおばんざいなど、約20軒の屋台が軒を連ねる
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店先に干してあるししゃもが北海道らしい
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道路を挟んで『北の屋台』と反対側にあるのが『十勝乃長屋』。こちらにも、十勝の食材をさまざまなかたちで楽しめる屋台が約20店舗並びます。旅の締めくくりに、地元民と交流しながら、十勝の食を楽しむはしご酒はいかがでしょうか。
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『十勝乃長屋』
住所: 帯広市西一条南10
営業時間・定休日: 店舗により異なる
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