2010年代の初頭から台湾で聞かれるようになった「文青(ウェンチン)」。もともとは「文芸青年」の略で、アートや文学、音楽などのカルチャーが好きな、自分の世界を持った若者を指して使った言葉です。
最近の台湾社会では、文青がブームを通り越してすっかり定着。そのライフスタイルに憧れて真似するようになった、コアな文青から見れば「ミーハー」な人々も、世間からは文青と呼ばれるようになり、裾野が広がっているといいます。
いまや台湾の若者マーケットを語るには欠かせない文青ですが、そのライフスタイルとはどんなものなのでしょうか? 文青を読者として抱えるHereNowが、コロナ後の最新状況も踏まえて、SNS事情や読んでいる雑誌から、旅、美容に関する意識までアンケートで聞きました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
もっともよく使うSNSはFacebookで9割以上。Twitterは4%
よく使っているSNSを3つまで選んでもらう設問では、9割以上がFacebookを選択し、1位となりました。次いで、メッセージ系アプリのLINEが86%、Instagramが82%。日本では主力SNSのひとつであるTwitterは、4.2%にとどまりました。
ICT総研が2020年に行った調査によれば、日本国内では、LINEが77.4%、Twitterが38.5%、Instagramが35.7%、YouTubeが23.2%、Facebookが21.7%の順。人気SNSの勢力図には、大きな違いがみられます。
好きな著名人第1位は、蔡英文総統。IT大臣のオードリー・タン氏も
好きな台湾人の著名人をたずねる質問では、2位と倍近くの得票差をつけて1位となったのが、現総統の蔡英文氏。蔡氏のほかにも、コロナ禍でのすぐれた対応で話題となったIT大臣のオードリー・タン氏や、当調査実施の直前である2020年7月に惜しまれながら亡くなった台湾初の民選総統・李登輝氏をはじめ、政治家の名前が多く挙がっています。台湾の若者層の、政治への関心の高さが強くうかがえる結果となりました。
そんな人気政治家陣に食い込み2位となった魏如萱(ウェイ・ルーシュエン)は、シンガーソングライターとしてデビューしたのち、俳優やラジオDJ、作家など幅広く活躍する女性。当調査の開始前にもちょうど、みずからプロデュースする新ショップがオープンして話題に。インディーズからメジャーデビューしたあとも、自分の個性を大切に活動している人気タレントです。
また、オードリー・タン氏と同一の得票数となった9m88は、いまや台湾の国民的スターともいえる女性シンガー。有名になってからも、衣装やMVをセルフプロデュースしていることで知られます。台湾の最近の若者層からは、「自分」をしっかり持ったタレントたちが支持を集める傾向にあるのかもしれません。
文青カルチャーをつくった雑誌『小日子』って?
「ライフスタイルの参考にしている雑誌」を聞いた質問で1位となったのは、旅やグルメなどを中心に紹介するライフスタイルマガジン『小日子(シャオリーズ)』。2012年に創刊し、「文青」の世界観をつくりあげた張本人ともいえる雑誌です。現在は文青文化の広がりを受けて、より幅広い若者層が手に取っているほか、雑誌の世界観を表現したショップを台北で運営するなど、多角的な展開を行っています。
その『小日子』に次ぎ、僅差で2位となった『The Big Issue』。ホームレスの人々が路上で販売するイギリス発の雑誌で、日本でも発行していますが、内容は国によってそれぞれローカライズされています。
台湾版は、トップレベルのデザイナー・聶永真(アーロン・ニエ)氏が表紙デザインを担当。台湾で人気の日本人カメラマン・濱田英明さんも過去、数度にわたって表紙の写真を撮影しています。
内容面でも、とくに音楽や映画などカルチャー関連の特集が充実していると文青から高評。雑誌を売っているホームレスの人々のインタビューをウェブサイトに掲載するなど、雑誌の背景にあるストーリーを伝えるブランディングが成功しています。
3位の『天下雑誌』は、大手のビジネス雑誌です。日本関連では、5位の『秋刀魚』が台湾の若者に人気の日本情報誌であるほか、マガジンハウスの『POPEYE』『BRUTUS』もランクイン。日本の雑誌は翻訳版が出ているわけではありませんが、写真を中心に眺めるような読み方をしているようです。
「サステナブル」&「医師監修」。最近の台湾コスメを語る、2つのキーワード
好きな化粧品ブランドをたずねる質問では、上位19ブランドのうち、台湾発のブランドはひとつにとどまりました。日本を中心とした海外ブランドの名前が多く挙がっています。
顕著な傾向は、オーストラリアのAesop(イソップ)や日本のTHREE(スリー)、韓国のInnisfree(イニスフリー)をはじめ、オーガニックや自然由来などの素材にこだわったブランドや、アメリカのKiehl’s(キールズ)やフランスのLa Roche Posay(ラ ロッシュ ポゼ)のように、医学を背景に持つブランドが人気であること。メイクアップよりスキンケアを重視する傾向も感じられます。
台湾発のブランドで唯一ランクインとなった「綠藤生機(Greenvives)」は、天然由来の成分やサステナビリティーを重視することなどをポリシーに掲げるスキンケアブランド。もともと台湾の化粧品市場は日本やアメリカなどのメガブランドが主流でしたが、近年は「環境に優しい」「お医者さんがつくったブランド」などのキーワードで展開する、輸入物と比べて比較的安価な台湾ブランドが増えており、若者から人気を集めているそうです。
約95%が日本への旅行経験あり。10回以上も2割超
雑誌や化粧品に関するトピックからは、日本への関心の高さをうかがうことができました。今回の調査では、日本についても質問しています。
これまでの訪日回数をたずねる質問では、0回が約5%にとどまり、95%以上が日本への旅行経験があるという結果に。10回以上も2割を超えました。そんななかで、「行ってよかった場所」としてあがっていたのはどんな場所でしょうか?
京都、東京、北海道、沖縄など、日本人にとっても旅行先として馴染み深い地域が軒並み挙がるなか、注目なのは7位の瀬戸内海。14位、15位には直島や小豆島もラインクインしており、『瀬戸内国際芸術祭』の人気を感じさせます。さすが、アート・芸術好きの文青!
文青は、日本の「デザイン」「ファッション・美容」に注目している
文青たちは、何を求めて日本へ来ているのでしょうか? 興味がある、好きな日本のカルチャーのジャンルについて聞いたところ、1位から順に、食、デザイン、映画、アート、ファッション・美容と続きました。
一方、日本に限らず興味・関心のあるジャンルについて聞いた質問では、1位から順に、旅行、映画、食、音楽、散歩・まち歩きという結果に。このふたつの質問への回答を比較してみると、「デザイン」「ファッション・美容」は、とくに日本について注目しているジャンルであるとわかります。
日本についていま気になるのは、「新型コロナの感染状況」
最後に、最近気になった日本に関するニュースをたずねた質問では、新型コロナウイルスの感染状況などをあげた人が全体の半数以上にのぼり、感染拡大による音楽フェスなどのイベント中止に触れる声もありました。また、『東京オリンピック』を挙げた人も3割を超えました。
旅行関連のキーワードをあげた人も約7%おり、日本の「Go To トラベルキャンペーン」についてや、いつ日本との往来が回復するのかを気にする声があがりました。
新型コロナウイルスが早期に収束した台湾では、日本政府や行政の対応がネガティブな話題になってしまった時期もありましたが、また日本から台湾へ、そして台湾から日本への往来が可能になる日を待つばかりです。
調査概要
・実施期間:2020年7月29日〜8月5日
・方法:HereNow中文版Facebookページで募集、インターネット調査
・回答数:693件
・年齢
・性別
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