トクマルシューゴ インタビュー

海外はレーベルが多いし、いろんな音楽を受け入れる受け皿がありますね。

―ファースト・アルバムはアメリカのレーベルからのリリースでしたが、どんな経緯だったんですか?

トクマル:日本に住んでいる外国人の友人がいるんですけど、彼がmusic relatedというニューヨークのインディーズ・レーベルに僕のデモCDを渡してくれたのがきっかけでした。当時の日本には僕みたいなソロ・アーティストをリリースしているところがなかったので、国内のレーベルは探しもしなかったんです。海外はレーベルが多いし、いろんな音楽を受け入れる受け皿がありますね。

―国内以上に海外での反響が強かったと聞きますが、レーベルがしっかりプロモーションしてくれたんですか?

トクマル:元々小さな個人経営のレーベルなのであんまり(笑)。でも、ニューヨークにあるOTHER MUSICとスウェーデンにあるDOTSHOPというお店が大きく取り上げてくれたのが大きかったです。OTHER MUSICなんて本当に小さなお店なんですけどね。

―世界規模の口コミですね(笑)。音楽に力があれば、ちゃんと評価されていくっていう好例だと思います。トクマルさんは事務所を付けず、基本的に全て自分でマネージメントしていますよね。これからのバンドやアーティストにとってお手本になる存在だと思っているんですが、それは継続していく予定ですか?

トクマル:事務所つけると自分のやりたい方向で進めないかもしれないから、今のところはこのまま自分でやりたいと思っています。単純に好きな音楽を作っていたいだけなので、メジャーに行きたいというのもないし、行きたくないというのもない。やりたいことが出来る環境があれば良くて、そういう点ではイースタンユースが凄いです。彼らは自分たちで事務所をやって、周りに頼らず上がっていった。そういうスタイルは憧れますね。

―イースタンユースは自主企画で積極的に新しい人を紹介したり、そういう活動自体がリスナーから支持されてますよね。逆に、事務所がないと大変なこともやっぱりあるんですか?

トクマル:事務所経由じゃないと上の人たちとコンタクトが取れないことがあるのは面倒ですね。海外での僕の立ち位置を理解して一緒にやってくれるような、そこまで考えてくれる事務所がないのも理由の一つなんですよね。

―では、リリースされたばかりのサード・アルバム『EXIT』について聞かせてください。今作を含めトクマルさんの音楽には玩具やガラクタなどいろんな音が使われていますが、どうしてそういう音を使おうと思ったんでしょうか?

トクマル:18~20歳まではずっとギターばかりで曲を作っていたから、単純に飽きたんです(笑)。他の色んな楽器の音色があまりに新鮮で、色んな楽器を買ってみたんですよ。

―普段あまり聞かないような楽器音のアンサンブルが独特の世界観を構築してますよね。

トクマル:僕にもよく分からないんですけど、ああいう作り込まれた世界が好きなんですよね。元々カートゥーン・ミュージックが好きで、それと同時に、プログレやサイケとかドロドロした音楽も好きで。その二つを合わせるとこうなるというか。あまり深くは考えてなくて、遊んでた感じですかね。普通のものを作る気はまったくなかったし、そんなのは僕じゃなくても作れると思うので。

どこかしら自然とポップな要素が残っちゃうんです。ポップじゃないと納得がいかないんですよ。

―音楽活動って憧れの音楽を模倣するところから始まることが多いと思うんですが、トクマルさんはそうではなかった?

トクマル:いや、憧れもありましたよ。クリンぺライやビーチボーイズ、ワールドスタンダードには衝撃を受けました。マネもしていたのでそこからの影響もあるでしょうね。そういう気違いすれすれのラインが大好きなんです。気違いだけど、ポップな面もしっかりキープしているという。だから、ジョン・フルシアンテ のファースト・アルバムは大好きですね。

―トクマルさんも彼ら同様にポップであることを忘れないですよね。

トクマル:僕にとって、それが一番重要なんだと思います。所謂ポップじゃないものも作ったりするんですが、どこかしら自然とポップな要素が残っちゃうんです。ポップじゃないと納得がいかないんですよ。

―今回のアルバムでは歌の比重がより高まったと思うんですが、歌うことに対する変化があったんですか?

トクマル:ファーストの頃は歌うのが嫌いだったんですけど、ライブをやるうちに歌うことが段々と楽しくなってきましたね。

―歌詞が生み出すイメージもトクマルさんの独特な世界観を担っていると思いますが、何らかのメッセージ性も込められているんですか?

トクマル:メッセージとか主張は一切ないんです。夢日記を書いていて、歌詞はそこから拝借しています。何を書いていいか分からないので、そうでもしないとあまり歌詞が書けないんですよ。自分がやりたいことだけやって、それを楽しんでくれればいいかなって思ってます。

4枚目を作るとしたら今はもの凄く暗くてシンプルなものが作りたいです(笑)

―なるほど。歌が前に出てきたことも含めて、これまでよりも更にポップなアルバムになりましたよね。

トクマル:これまでアルバムを2枚リリースして、自分の中で1つ完結したような思いがあったんです。それでいざ今作を作ろうと思ったときに、自分のやりたいことがこれまでと変わってなくて、抜け出したくても抜け出せないもどかしさがあった。それがアルバムのタイトル『EXIT』にもなってます。作りためた曲をアルバムのコンセプトに沿って作り直したりするんですけど、今回は陰の部分を消していくことを心掛けたので、今作がよりポップに聴こえるとすればその結果だと思います。4枚目を作るとしたら今はもの凄く暗くてシンプルなものが作りたいです(笑)。

―それはそれで楽しみです(笑)。今作では初めて音源としてベースとドラムが入ったアレンジが聴けて新鮮でした。ソロからバンド編成でのライブがメインになった影響ですか?

トクマル:それはあると思いますね。ベースとドラムも入れた楽器編成で新しいことにチャレンジしてみたかったんです。来年はバンドで録音したいと思っています。

―それでは最後に今後の活動について聞かせてもらえますか?

トクマル:『EXIT』のレコ発があります。12月6日に名古屋TOKUZO、7日に大阪のシャングリラ、9日に代官山のUnitで。この日程を8人バンド編成で周ります。

―楽しみですね。今後の活躍を期待しています!

プロフィール
トクマルシューゴ

100種類以上の楽器/非楽器を操り、レコーディングからミックスまで全てをひとりでこなす。デビュー作『Night Piece』(2004)、セカンド・アルバム 『L.S.T.』(2005) の相次ぐ海外リリースによって、一躍世界で最も注目される若手日本人アーティストのひとりとなったポップ・マエストロ。2006年には初のヨーロッパ・ツアーを敢行。日本でも旺盛なライヴ活動を展開し、キセル、七尾旅人、湯川潮音、イースタンユース、 SAKEROCK、二階堂和美、54-71、OGRE YOU ASSHOLE、nhhmbase、テニスコーツ等と共演したほか、アニマルコレクティブをはじめ20以上の海外アーティストとの共演もした。



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