10代限定のロック・フェス『閃光ライオット』で審査員特別賞を受賞し、デビュー前から主催イベントのSOLD OUTを連発させ、CINRA主催イベント『exPoP!!!!!』でも素晴らしいライブを披露してくれた現役大学生ガールズバンド「ねごと」が初音源をリリースする。挨拶代わりにしては強烈なインパクトを与えるであろうミニアルバム『Hello! “Z”』は、頭のなかを何度もループする軽やかなメロディーと、ふわりと不思議な世界観、おっとりした彼女たちの佇まいからは想像もつかないオルタナティブなバンド・サウンドが病み付きになる衝撃作。とんでもない才能を持った彼女たちを解剖すべく、早速インタビューを行った。
(インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作)
『閃光ライオット』に出るために作ったのが、初めてのオリジナル曲
―ねごとは高校時代に結成して、みなさんいま大学2年生なわけですけど、どういう経緯で結成されたバンドなんですか?
蒼山幸子
幸子:まず私と小夜子が高校の軽音楽部で知り合って、その軽音楽部にいた共通の知り合いを通して、別な高校に行ってた瑞紀と友達になって。瑞紀の高校には軽音楽部がなかったので、うちの高校に遊びに来るようになったんですね。それで「バンド組もうよ」って話になって、前身バンドを組んで。
―前身バンドは、どんなことをやっていたんですか?
幸子:主に邦楽のコピーをするバンドをやってましたね。最初は銀杏BOYZとか、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとか。
―女性ボーカルで?
幸子:そうです(笑)。GO!GO!7188とかもやってました。その後にナンバーガールとか、スパルタローカズとか。
―またすごいバンドをコピーしますね。でも、そのバンドは解散して?
幸子:はい。なんか、スタジオの雰囲気が悪くなっちゃって…(苦笑)。それで、ベースを佑に変えて、ねごとを結成したんです。
―バンド名の「ねごと」の由来は?
瑞紀:ひらがな3文字がいいよねっていうところから来てて。
―なんでひらがな3文字がよかったんですか?
瑞紀:覚えやすいから(笑)。
幸子:いろいろ候補を挙げていったんですけど、「ねごと」がいちばんよかったんですよね。
―ほかの候補は?
幸子:「けむし」とか、「よだれ」とか、しょうもない感じの(笑)。
―一歩間違えてたら危なかったですね(笑)。最初はどういうバンドをやろうとしてたんですか?
幸子:コピーバンドのつもりで組んだので、「洋楽コピーしようよ」みたいな。クリブスとか、ヤーヤーヤーズとか、フラテリスとか、アークテック・モンキーズとかを主にやってましたね。
―じゃあ、オリジナル曲を作り始めたきっかけは?
幸子:『閃光ライオット』がきっかけですね。『閃光ライオット』に出るために、オリジナル曲を作らなきゃって。
―それで作った曲が審査員特別賞になっちゃったんだ!
小夜子:当時は「いい曲」っていう認識がまだ全然なくて。
幸子:オリジナルができたね、みたいな。
佑:確かに耳に残る曲だったんですけど、さていい曲なのかっていうのは…。
瑞紀:反応が良くて驚いたっていう。
普通にいったらおもしろくないから、ちょっとへんてこな要素を入れたいっていうのがあって。
―曲作りはどんな感じでやられているんですか?
幸子:ギターの瑞紀が原曲を持ってきてくれて、それをセッションしながら形に。瑞紀がリードしてアレンジを作ってくれちゃうんですよ。それに私が後からメロディーと歌詞を乗せて。
―歌詞にメッセージを込めようとかは?
幸子:なんか、「共感してほしい」とか、「これが言いたいんだ」とか、そういうのがあんまりなくて。みんなで音を鳴らしてるのが楽しいなってところから始まっているんですけど、それがねごとなのかなって。考えてやるっていうよりは、自然にできたものが楽しいか、というのを一番に考えています。
―寝言っぽい歌詞を歌いたいとか、そういうこともなく?
幸子:はい、全然。
―でも、結果的に夢に出てきそうな世界観がありますよね。
幸子:バンド名を考えて書いたことはないんですけど、ねごとって名前にしてよかったなぁとは思っていて。なんでもできるじゃないですか、夢の中の出来事なら。パジャマ着てもいいし(※ねごとはパジャマ姿でライブをすることがある)。最初に作った“ループ”が、〈ループループして 夢の中〉って言っちゃってるくらいだから、もとからそういうのはあるのかなって思いますね。
―歌詞はどういうきっかけで出てくることが多いんですか?
幸子:ねごとの曲は、いつも演奏が先にあって、インストだけでも全然楽しめると思うんですけど、歌詞はその曲と演奏をもっと魅力的にしようと思って考えるんです。パッと曲を聴いた最初のイメージを大事にしたいと思ってるんですけど、例えば2曲目の“透き通る衝動”は、駆け抜ける感じというか、瞬間っていう感じと、オーロラ色っていうのがまず最初にあって、そこから書き始めました。
―インストだけでも楽しめるっていう話がありましたけど、ねごとの曲は意外と歌の比率が少ないですよね。けっこう間奏が長かったり。
幸子:言われてみればそうかもしれないですね。たぶん、普通にいったらおもしろくないから、ちょっとへんてこな要素を入れたいっていうのがあって。例えば4曲目の“うずまき”は、最初のサビが終わった後に長い間奏があるんですけど、淡々と進むだけだとつまんないから、後からその間奏を足したんです。
―単純にJ-POPのルールに従ったような曲にはしたくない?
瑞紀:それでもいいんですけど、単純に終わらせるんだったら、それなりに渋いことをやるとか(笑)。
幸子:王道を行くみたいな。
瑞紀:そう。ねごとはそういう王道なものと、へんてこなものと、いいとこ取りするバンドなんです。
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3/4ページ:小夜子はまぁ、変態で(笑)。
小夜子はまぁ、変態で(笑)。
―メンバーそれぞれのキャラクターは、どんな感じなんですか?
幸子:ライブのMCでは私と小夜子がしゃべるんですけど、小夜子はまぁ、変態で(笑)。瑞紀は基本あんまりしゃべらない感じで立ってて。佑も、静かにしてる。静かなんだけど、演奏はアグレッシブ(笑)。
―みなさん、普段のときとライブのときは同じような感じなんですか?
幸子:普段は違います。
―違うんだ!?
幸子:瑞紀はライブではしゃべらないですけど、普段はよくしゃべりますからね。
―それはなんで?
瑞紀:やっぱりどう見られたいかじゃないですかね?(微笑)
―ははは(笑)。クールに見られたい願望とかあるんですか?
沙田瑞紀
瑞紀:なんていうか、私が考えるかっこいいギタリスト、例えばカート・コバーンを意識してやったら、やっぱりしゃべらないだろうし。普段はついつい「きゃー!」ってやっちゃうタイプなので(笑)、それをステージで見せちゃうのはどうなんだろうなって。でも、ライブでの見せ方も、普段の姿も、基本自然体ではあるんですけどね。
―小夜子さんは変態担当っていう話ですけど…。
小夜子:いや、でも私、そんな変えてないんで。ライブでもそのままの姿で。
―変態っていうのは?
幸子:うーん…、女の子好きだし。なんか見てるだけでいいらしいんですけど、普段から街を歩いてる人とか、雑誌とかを見て、「あ、あの人タイプ♥」とか言ってて。
―ちなみにどんな人がタイプなんですか?
小夜子:がっきー(新垣結衣)とか、まゆゆ(渡辺麻友/AKB48)とか。おとなしめの子が好きです♥。
― 小夜子さん、まだ全然本性を出してないですよね?
澤村小夜子
小夜子:はい。
―ねごとのリスナーに知っといてほしいこととかあったりします?
小夜子:かわいい女の子はあんまり近づかないほうがいいかなぁって(笑)。半分冗談ですけど。
―ドラムを叩くときに意識していることとかは?
小夜子:あー。ライブは楽しんでるんですけど、そんなに演奏に集中していることがなくて。メンバーにはそれがバレちゃってるんですよね。この前も瑞紀に「小夜子は演奏中に違うこと考えてるとすぐわかる」って言われて。
―どういうこと考えてるんですか?
小夜子:えー、なんだろう。最近よく考えてるのは、やっぱりコンタクトの期限はいつかなとか。
―いい演奏ができるときは、どういうことを考えているんですか?
小夜子:ラーメンのこととか、今日は瑞紀の髪の毛の加減がいいなぁとか、そういうことを考えてます。
―小夜子さんの中でいい曲っていうのは?
小夜子:私が好きなのは、楽器の音が聴こえなくなるくらいメロディーがいい曲ですね。
音楽も信じたいっていうか、がんばりたい気持があった。
―CDリリースの話が出たときって、まだ高校生だった頃だと思うんですけど、「自分たちは音楽でやっていけるのかなぁ」みたいな不安はなかったんですか?
瑞紀:その時点で大学に行くことは決まっていたので、それは絶対に行こうと思ったんですけど、音楽も信じたいっていうか、がんばりたい気持があったから。やっていけるのかとか、そういうことは置いといて、とりあえず就活が始まる大学3年生までは全力でがんばろうっていう決まりを4人の中で作って。
―もしかしたら3年やって、「じゃあ就職しまーす」ってなるかもしれない?
瑞紀:まだそこまでは考えてないですけど、いまは全力で。
―覚悟した瞬間みたいなものはなかったですか? 「もっと本気にならなきゃダメだ」と思ったこととか。
幸子:都内でライブをやり始めたのが去年の9月くらいからなんですけど、それまでは大学にも慣れなきゃいけないので、ちょっと休止してたんです。それで、(去年の)夏休みはたくさん曲を作ってたんですけど、これくらいの時期にCDを出しますみたいな予定をスタッフと相談して、「とうとう出すんだ」って。CDも出してないのに、もうすでにライブにたくさんのお客さんが来てくれて、ねごとに関わってくれる人もどんどん増えているので、その重みは感じてますね。
―ねごととしての目標は?
幸子:いろんな人に聴いてもらえるバンドになりたいですね。マニアックに音楽を聴く人でも、普通のリスナーにも、子供にも、おじいちゃんにも聴いてもらえるような曲が作れるようなバンドになりたいなって。難しいことだと思うんですけど。
藤咲佑
佑:いま自分たちで『お口ポカーンフェス』というイベントをやっているんですけど、多くても4バンドくらいのイベントなので、アジカンさんの『NANO-MUGEN FES.』みたいに、丸1日とか、2日かけてとかでイベントにしたいですね。
―女の子の中で一番になってやるとか、男のバンドには負けねぇぞとかは?
幸子:そういうのは全然。ガールズバンドなので、初めて見た人から「かわいいのやってんのかな」みたいに見られちゃうのはしょうがないと思ってて。でも、だからといって男勝りに出ていこうと思ったこともなくて。自然体でいたいなっていうのはありますね。
―実際CDデビューを控えて、意識的なものとか、曲作りだったりに変化は出てきました?
幸子:曲に関しては、聴いてくれる人がいるんだってことを考えて作るようになりました。アレンジとかメロディーとか、スッと入るにはどんな感じがいいのかなって。ただ、今回のアルバムは、2曲目の“透き通る衝動”以外は、高校時代にできてた曲なんですね。ライブでもずっとやってきた曲ばかりなので、ねごとを紹介する1枚としてはちょうどいいと思うんですけど。
―それ以外の5曲に関しては、1〜2年前に作った曲が多いってことですね。ということは、これからどんどん進化した曲が出てくるってことですか?
幸子:そうですね。他にもたくさんいい曲があるので、楽しみにしていてください!
- リリース情報
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- ねごと
『Hello! "Z"』 -
2010年9月29日発売
価格:1,680円(税込)
Ki/oon Records / KSCL-16501. ループ
2. 透き通る衝動
3. ワンダーワールド
4. うずまき
5. NO
6. 夕日
- ねごと
- プロフィール
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- ねごと
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蒼山幸子(Vo&Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(Ba)、澤村小夜子(Dr)の4ピース。鍵盤がボーカルを取る形の、全員平成生まれの10代。さわやかでポップな要素とオルタナティブなロックエッセンスを盛り込んだ、一見アンバランスなバランス感、きっとこれが新世代のガールズロック。『閃光ライオット2008』審査員特別賞受賞。2010年9月、単独初音源となるミニアルバム『Hello! “Z”』をリリース。
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