ねごと×tofubeatsの同い年対談

高校生のときに出演した『閃光ライオット』(10代アーティスト限定のロックフェス)で脚光を浴びた「ねごと」。中学生からネット上で無数の音源を発表して注目を集めた「tofubeats」。バンドとトラックメーカー、ライブとネット、ともに若くして活躍しながら、正反対の環境で音楽を続けてきた2組は、実は同い年。現在両者とも、大学4年生として学業と音楽活動を両立させている(ねごとのボーカル蒼山幸子は短大卒業済み)。今回はねごとの2ndシングル『sharp ♯』に、tofubeatsがリミックス参加したということで、両者に対談してもらい、同世代ならではの話に花を咲かせてもらった。小学生の頃からインターネットに触れて育ち、90年代生まれの感覚を随所に感じさせる発言の数々からは、今後の音楽シーンに来るべき変化を感じてもらえるはずだ。

ねごともがんばって(音楽と学校を)両立してるから、オレもがんばらなきゃみたいな。(tofubeats)

―今回、ねごとの“sharp ♯”をtofubeatsさんがリミックスすることになった経緯は?

蒼山幸子
蒼山幸子

幸子(Vo&Key):“sharp ♯”が『「機動戦士ガンダムAGE」アセム編』のオープニングテーマに決まったときに、今作からねごとを知ってくれる人に対して、リミックスを入れたいねって話になったんです。それで、リミックスしてくれる人を探していたなかで、tofubeatsさんならダンスミュージックも知りつつ、アニメの特性も知りつつ、ちょうどいいバランスでやってくれるんじゃないかなっていう提案をマネージャーさんからいただいて。私たちもおもしろそう! と思って、お願いしたんです。


―ねごとのみなさんとtofubeatsさんが実際に会うのは、今日が初めてなんですよね?

佑(Ba):はい。tofubeatsさんは同い年ということを聞いていたので、楽しみにしてました!

tofubeats:実は僕、ねごとが2008年に『閃光ライオット』に出演したときから見ていたんです。僕はずっとひとりで活動してて、一度も誰かと組んだことがなかったので、うらやましいなと思いながらずっと気にしてて。(去年3月に)『カロン』が出たときも普通に買って、DJで使ってたんですよね。だから、お話をいただいたときは、すごいうれしかったんです。

tofubeats
tofubeats

瑞紀(Gt):そうだったんですね! うれしい!

― tofubeatsさんも『WIRE』(=石野卓球が主催する日本最大級のレイブイベント)に出たのが2008年。高校生の頃から注目されてましたよね?

tofubeats:いや、もうひとりなので、いろんなところに音源を送りまくってたんですよ。作曲コンテストに応募したり、ラジオ局に送ったり。あとはDE DE MOUSEさんとかイルリメさんとか、好きなアーティストに、「○○さんの曲が大好きです。僕のデモ聴いてください!」ってファンレターみたいなのを送ったり。いまでこそDJもやるようになって、DE DE MOUSEさんとか仲良くしてもらってますけど、昔は家から出ずにデモばっか送ってましたね。

澤村小夜子
澤村小夜子

小夜子(Dr):なんか、バンドやるよりも積極的ですね(笑)。

tofubeats:何もしなかったら本当にひとりなんで、寂しいから(笑)。ネットでいっぱいデモとかアップしてるのも、反応がほしいからなんですよ。バンドだったらメンバー内でレスポンスもあるじゃないですか。ひとりでやっていると、インターネットとかに置かないと、それさえも返ってこない。

瑞紀:私たち、ひとりだったら『閃光ライオット』に応募なんてできなかったよね。

幸子:そんな積極的なことできない。tofubeatsさん、すごいです。

tofubeats:でも、僕はねごとみたいなバンドに憧れがあるんですよ。リミックスする前に人となりを知りたいなと思って、ブログを見させてもらったんですけど、「試験が終わりました」とか言って、4人でノートの貸し借りとかしてるのかな? とか勝手に想像してて。さっき聞いたら学校は別々ということだったので、単なる妄想だったんですけど(笑)。でも、バンドと大学の両立は難くないですか?

瑞紀:そんなことないですよ。うまくスケジュールを調整してもらってるので。

― tofubeatsさんもいま大学生なんですよね。やっぱり両立は大変?

tofubeats:自分のさじ加減次第なんですけど、リミックスとか他のアーティストさんと関わる仕事だと、締め切りもあるじゃないですか。週末はDJをやって、作曲やリミックスは平日にやるので、大学と両立するのはちょっと大変で。でも、そういうときに、ねごともがんばって両立してるから、オレもがんばらなきゃみたいな。そういう意味でも同世代のバンドと仕事ができてよかったなって。

2/3ページ:“sharp ♯”は、ねごと史上いちばんストレートな曲だったので、情景とかよりも気持ちみたいな部分を書こうっていうのはありました。(幸子)

“sharp ♯”は、ねごと史上いちばんストレートな曲だったので、情景とかよりも気持ちみたいな部分を書こうっていうのはありました。(幸子)

―実際、tofubeatsさんのリミックスはいかがでした?

幸子:すごい衝撃を受けました。“sharp ♯”があんなふうになるなんて想像してなかったので。

tofubeats:個人的にはそこまで遠ざけなかったつもりなんですけどね。声を編集してるから、それにビックリしたのかもしれないですけど。

―「ワッワワッワワッ」みたいな声ですよね?

幸子:そうですね。あの声のサンプリングはビックリしました。あと、コード感も違うなと思って。こういう曲にしようっていうのは、どうやって決めるんですか?

tofubeats

tofubeats:歌詞をずっと読んでて、宇宙っぽい感じにしようっていうのはあって。歌詞に音を当てるのが好きなんですよね。例えば「ゆっくり」っていう歌詞があったら、「ゆっ〜く〜り〜」にしたりとか。そういうのは意識しましたね。逆に聞きたいんですけど、ねごとはどうやって歌詞を書いてるんですか?

幸子:瑞紀が先に原曲を作るんですけど、最初にイメージしてるものを教えてもらって、それをスタジオで組み立てていって。オケができてから私が歌詞とメロディーをつけるので、歌詞も曲から引き出されてる部分があったりとか。


tofubeats:テーマがあるというよりかは、曲があって、こういうふうにしよう、みたいな感じ?

幸子:そうですね。瑞紀からこういう歌詞がいいんだって言われるときもありますけど、そうじゃないときは自分で聴いてみて、浮かんだ情景を歌詞にしたりとか。そういうパターンが多いですね。でも、今回の“sharp ♯”は、ねごと史上いちばんストレートな曲だったので、情景とかよりも気持ちみたいな部分を書こうっていうのはありました。

―これ、メロディーはストレートかもしれないですけど、曲の構成は全然ストレートじゃないですよね。

tofubeats:ですよね。データもらってビックリしましたもん。僕はいつもサビから作るんですけど、この曲って頭からケツまで全部サビみたいな感じじゃないですか。だから曲の流れは崩しちゃダメかなと思って。最初は生演奏の感じも活かしたかったので、シンセも使いたかったんですけど、最終的にはボーカルとドラム、あとイントロだけギターも使って、それ以外は全部自分でオケも作りましたね。

―一般的にはAメロ、Bメロ、サビみたいなルールがあると思うんですけど、“sharp ♯”はA、サビ、D、A、B、サビ、E、Bみたいな感じですよね。こういう独特の構成になった理由はあるんですか?

瑞紀:私としては全然普通というか、むしろいつもよりシンプルにできたなと思ってる作品で。

tofubeats:すごい(笑)。

― tofubeatsさんはDJやリミックスをやっていて、こういう構成の曲に出会うことはあんまりない?

tofubeats:ないですね。ずっとアクセル踏んでて、しかも最後に加速するみたいな。クラブトラックって、ずっとループして、最後にご褒美で盛り上がるみたいな展開が多いんですよ。普通のJ-POPもA、B、サビ、A、B、サビ、C、サビみたいな感じが多いので、そういうのとは毛色が違うなと思いました。あと、ロックのリミックスをやることが実はあんまりなくて。もらったときは「生演奏だ!」みたいな。僕はバンドに対してコンプレックスがある分、生の音楽も好きなので、うれしかったですね。

tofubeats
左から:蒼山幸子、沙田瑞紀、藤咲佑、澤村小夜子、tofubeats

J-POPも好きなんですよ。売れてるのはだいたい聴いてますし。(tofubeats)

―みなさん同い年ということで、訊いてみたいことはありますか?

tofubeats:これは訊きたいと思ってたんですけど、音源を買うときって、CDで買います? それとも配信で買います?

瑞紀:配信で買ったことないです。

幸子:わたしも配信ではあんまり買わないですかね。

tofubeats:CDは月何枚くらい買うんですか?

瑞紀:時期にもよりますね。ハマったアーティストがいたら、とりあえず何枚か一気に買って、聴き比べしたりとか。

tofubeats:DJとかやってなかったら、普通の人はレコードとか買わないし、同世代の人がどういうふうにしてるのか気になって。

― tofubeatsさんはCDが主体?

tofubeats:割合でいうと、中古CD、新品CD、レコード、データで、全部同じくらいの値段を毎月使ってます。中古CDがすごい好きで、ブックオフとかよく行くんですよ。ブックオフではマキシシングルばっかり買ってて、アルバムも500円までのしか買わないようにしてるんですけど、(指を広げて)こんくらい持たないとレジに行けなくて、ついつい買いすぎちゃうんですよね。それで、同世代の人とかで、中古CDをずっと見てる人って、あんまり見かけないなと思って。

藤咲佑
藤咲佑

:私、ディスクユニオンでよく中古のCD買ってますよ。

瑞紀:私はブックオフのオンラインショップかな。1,500円以上で送料無料になるので、けっこうまとめて買ってますね。

―中古ではどんなの買うんですか?

瑞紀:最近はジョー・ジャクソンさんのCDを買いましたね。あと、フランク・ザッパはちょくちょく集めてて(笑)。

幸子:tofubeatsさんはバンド系は聴くんですか?


tofubeats:ド直球なバンドはあんまり聴かなくて。生音とかだったら、テニスコーツとか、イルリメさんの弾き語り(鴨田潤)とか。最近は80年代のディスコのレコードをよく買ってますね。あと、ハードコアなものもテクノと隣接してる要素があって。でも、J-POPも好きなんですよ。売れてるのはだいたい聴いてますし。

―めちゃくちゃ守備範囲が広いですね。

tofubeats:変な守備範囲というか。それこそブックオフとかで見つけたりするので、このジャンルを聴こうとかじゃないんですよ。僕らはサンプリング用に音の一部だけ抜いたりもするので、変な民族音楽とか見つけたら、とりあえず買ってみて、使えそうなものがひとつでもあればいいなって。100円のものを100枚買って、いいのがひとつあったら、1万円の音源を買ったと思えばいいというか。

3/3ページ:ねごとでは完結した曲も、その原曲のトラックをいじって別の方向性の曲を作っているんです。(瑞紀)

ねごとでは完結した曲も、その原曲のトラックをいじって別の方向性の曲を作っているんです。(瑞紀)

― tofubeatsさんはネットで支持を得て話題になりましたけど、みなさんの世代だとインターネットを使って音楽に触れることも多いんじゃないですか?

沙田瑞紀
沙田瑞紀

瑞紀:tofubeatsさんみたいに、ネットに音楽をあげたことはないですけど、YouTubeとかで聴くことは多いですね。やっぱ気になるアーティストがいると、ネットで調べたりするので。

tofubeats:いまネットで落とせる僕の曲って、200曲くらいあるんですよ。そんなことしてるから、いつまで経っても自分のアルバムが出せないんだってよく言われるんですけど(笑)。最初に配り始めたのが中学2年で、バンドが練習でスタジオに入るくらいのノリで曲を配ってたんです。練習音源も全部出しちゃうみたいな。

瑞紀:いちおう完成形としてなんですか?

tofubeats:自分のなかのハードルが低いので(笑)。あと、パソコンで曲を作ってると、バンドと違っていつでも直せるんですよ。だから、軽い気持ちでアップして、DJでかけていまいちだったら直せばいいと思ってて。

瑞紀:私もパソコンで原曲を作るんですけど、ねごとでは完結した曲も、その原曲のトラックをいじって別の方向性の曲を作っているんです。

幸子:え、そんなことやってたの!?

tofubeats:メンバーにも聴かせてない?

瑞紀:聴かせないですね。そんな話したことない。自分で聴いたり、母に聴かせたり(笑)。

tofubeats:オカンはなんて言うんですか?

瑞紀:「わーっ」みたいな。何を聴かせても「わーっ」としか言わないんですけど(笑)。

tofubeats:いい話!(笑)。ねごととは全然違う感じなんですか?

瑞紀:スチャダラパーとか好きなんですけど、スチャダラパーっぽく自分で歌ってみたりとか。

tofubeats:聴きたい!(笑) ネットにアップしてくださいよ。

瑞紀:ヤバい! 無理です! どうしよう、すごい恥ずかしくなってきた(笑)。

tofubeats:やっぱデモとかの話は恥ずかしいですよね。僕もネットに出して後悔した昔の曲がいっぱいありますからね(笑)。

―そうやってネットに曲をアップするのって、例えばねごとの場合はレコード会社との契約もあるので難しいと思うんですけど、やっぱり今のみなさんの世代だと、ネットにアップして当たり前みたいな感覚もあるんですか?

tofubeats:そこまでではないと思いますよ。僕の場合は実際アップしすぎてるから、自分で自分の価値を叩いてる部分もあるなと思いますし。僕はそれでいいんですけど、大人の目線では難しいんでしょうね。とりあえず、こんなに配ってる人は、いまのところ日本人の若手じゃそんなにいないと思うので、そこはいいかなとは思ってますね。たくさんありすぎて、どれから聴いたらいいかわかんないとはよく言われますけど(笑)。経済学部で最近それを教わったんですよ。選択肢が多すぎると人は選べないって。あ、ダメなんだと思って(笑)。

瑞紀:私も経済学部なんですけど、なんか無駄に考えちゃいませんか?

tofubeats:自分たちのマーケティングとかですか?

瑞紀:そうですそうです(笑)。

tofubeats:僕、卒論は自分の曲の売り上げも参考にした上でレポートを書こうと思ってて。教授に言われるんですよ、「音楽なんてちゃんと仕事になるのか?」とか。確かに、決して儲かってるわけではないんですけど、ちゃんとやればある程度ならお金もらえますよみたいなことをレポートにしようと思って。

―みなさん、この4月から4年生ですもんね。学生最後の年になりますけど、今年の予定は?

tofubeats:6月に以前レコードで出してた“水星”っていうシングルを配信で出そうと思ってて。あとはリミックス仕事がちらほらあるんですけど、まだ言えないのが多くて(笑)。

幸子:ねごとは4月と5月にツアーがあります。4月のは学生限定のツアーなんですけど、同じ学生ということで、同じ世代の人と音楽で盛り上がりたいなって。今年の残り上半期は、その2つのツアーがいちばん大きいですね。あとは裏で次の作品に向けての制作もしてるので、楽しみにしていただければ。

―みなさん、ちゃんと卒業できそうですか?

瑞紀:する…、予定で。

幸子:できそう?

:う、うん。

小夜子:…うん。

瑞紀:大丈夫です!(笑)

tofubeats:あと1年、ちゃんと終わりたいですよね。お互いがんばりましょう!(笑)

tofubeatsとねごと

リリース情報
ねごと
『sharp ♯』通常盤

2012年4月4日発売
価格:1,260円(税込)
KSCL-2000

1. sharp ♯
2. drop
3. Tonight

ねごと
『sharp ♯』期間生産限定盤

2012年4月4日発売
価格:1,365円(税込)
KSCL-2001

1. sharp ♯
2. カロン
3. sharp ♯ -tofubeats remix-
4. sharp ♯ -TV size-
5.sharp ♯ -Inst.-

プロフィール
ねごと

蒼山幸子(Vo&Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(Ba)、澤村小夜子(Dr)による千葉県出身、全員平成生まれの4ピースバンド。さわやかでポップな要素と、オルタナティブなロックエッセンスを盛り込んだ、一見アンバランスなバランス感で新世代のガールズロックを奏でる。「閃光ライオット2008」審査員特別賞受賞。2010年、初音源となるミニアルバム『Hello!”Z”』をリリース。11年にリリースしたファーストアルバム『ex Negoto』はオリコンTOP10にチャートイン。2012年4月4日に2ndシングル『sharp ♯』をリリースする。

tofubeats

1990年生まれ、神戸市内在住のトラックメイカー/DJ。インターネットでの音源公開を中心に活動を開始し、現在は公式にFPM、9nine、佐々木希、ももいろクローバーなど多数アーティストのリミックスを手がける。他にもtengal6のシングル”プチャヘンザ!”のプロデュースなど精力的に活動中。2012年初頭にはオノマトペ大臣と”水星EP”を12インチレコードでリリース。



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