DAISHI DANCEに訊く、最先端のダンスミュージック

2012年11月にオリジナルアルバム『WONDER Tourism』をリリースしたばかりのDAISHI DANCEが、早くも新しいマテリアルを完成させた。国内各地から海外まで、ほとんど休みなくDJとして飛び回りながら、こうして制作を進めているのだから、この人のワーカホリックぶりにはまったく頭が上がらない。

クリエイターとしてはもちろん、プロデューサーとしても活躍するDAISHI DANCEの顔となる活動を1つ挙げるとすれば、それは当然ながらDJである。今回リリースされるミックスCDシリーズ『MYDJBOOTH』の第3弾は、週末のクラブで大勢のオーディエンスを躍らせているDAISHI DANCEが「今」を、まさにそのままパッケージングした作品と言えそうだ。

さて、ここで素朴な疑問。ミックスCDって、つまりはどういう意味合いを持つ作品なんだろう? 実際のところ、普段からクラブミュージックに親しんでいる方はともかく、そうではない方にとって、ミックスCDとはイマイチ捉えどころがないフォーマットなのかもしれない。そこで今回、筆者は恥も外聞もかなぐり捨てて、クラブシーンの先端を走り続けるDAISHI DANCEに、ミックスCDという文化についてのレクチャーをお願いしてみた。結果的には現在の世界のダンスミュージックシーンを俯瞰した興味深い話も聞くことができたので、これまでこうした音楽に縁遠かった方にこそ、ぜひ読んでいただきたい。

自分一人のときも、3,000人を相手にしているときも、まったく変わらないテンションでミックスしていける。

―まさかこんなに短いスパンでまたお会いできるとは思っていませんでした!

DAISHI:僕、リリースが多いんですよ(笑)。今回の『MYDJBOOTH』はDJとしてのリリースですけど、前回の『WONDER Tourism』はオリジナル作品ですし、プロデューサーとしての作品集もありますし。あるいは他のアーティストとのコラボや、ヨーロッパ圏の別名義で作品を出すことも……。結果的には、年に3回くらいはリリースがあるんです。

―そんなにたくさんのリリースがあると、なんだか整理がつかなくなりそうですが(笑)。

DAISHI:それぞれの作品でお客さんの層が微妙に違うんですよ。前回のようにオリジナルのときはオリジナルが好きな人、今回のような作品はやっぱりクラブミュージックが好きな方が手に取ってくれるものなので。

―今回はそのあたりを踏まえて、クラブカルチャーにまつわるいろいろな話をDAISHI DANCEさんにレクチャーしてもらえたらと思ってます。本当に初歩的なレベルから訊かせていただきたくて。

DAISHI:僕も普段から、相手がそこまで詳しくない方にも伝わりやすいようにお仕事をさせてもらっているので、大丈夫ですよ。なるべくわかりやすく話しますね。

―まず、今回リリースされるミックスCDとはそもそもどういうものなのでしょうか? DJにとって、ミックスCDとはどういう意味合いを持っている作品なんでしょう。

DAISHI:楽曲制作の活動だと、僕はDJの感覚を活かして、ポップスのフィールドで活躍するアーティストへのプロデュースなどもやっています。オリジナルアルバムも、まずはDJとしてのフィルターを通すところから始まっているんですね。それで、今回のミックスCDは、毎週末各地で行っているクラブでのDJセットをそのままパッケージしたものです。

―まさにクラブの現場で磨かれた感覚そのままってことですね。

DAISHI:クラブでDJが何をやっているかというと、様々な楽曲を自分なりにセレクトして一晩中ノンストップで繋ぎ合わせて盛り上がりを作る。その選曲の駆け引きで、それぞれのDJの個性が生まれ、クラブに集まるアンテナを張ったコアな音楽ファンを楽しませる。DJがクラブでやっていることをそのままCDに収録して、どこにいてもクラブの雰囲気を出せるのがミックスCDということです。

―この作品に収められたものは、クラブで聴けるものとほぼ同等ということでしょうか?

DAISHI:100パーセント、クラブでヘビープレイしているものです。ただ、CDは収録時間が78分マックスくらいのフォーマットなので、その制約の中での選曲にはなりますけど。

―とはいえ、こうした作品はお客さんが目の前にいない状況で作るわけですよね? 実際にはどういう環境でレコーディングされているんですか。

DAISHI:札幌の自宅ですね。僕はレギュラーでやっているageHaでやるときも、韓国の会場でやるときも、基本的にPioneerのセットを使っているのですが、それとまったく同じ機材が自宅にあるんです。おっしゃる通り、レコーディングはお客さんのいない状況でやっていますが、機材環境も同じなので、テンションとしてはクラブとあまり変わらないと思う。

―ミックスCDの選曲はどのようにして組んでいくのでしょうか? 例えばクラブだと、オーディエンスからの反応をキャッチしながら選曲していくことになると思うんですけど、自宅だとそれができないですよね。

DAISHI:まず、楽曲を収録するためにはレーベルから許可を取らなきゃいけないので、最近の自分のパーティーで定番となっている楽曲のライセンスをとって、満足できる選曲にしていくんです。僕は毎週DJをやっていて流れも頭の中に入っているので、自分一人のときも、3,000人を相手にしているときも、まったく変わらないテンションでミックスしていけるんです。

―レーベルから返事が来ないこともあるんですか?

DAISHI:ほとんど返事はきますよ。今回は締切に間に合わなかった曲がいくつかあったくらいで、入れたい曲はほぼすべて収録できました。ただ、その返事が1日後のところもあれば、中には1か月くらいかかるところもあるので、そのことを念頭において、少し多めに申請しておくんです。極端な話ですけど、20曲を揃えようとして、締切直前で2曲しか返事がこなかったら、発売できませんから……(笑)。さすがにそんなことはないですけどね。

ここ2年ぐらいで、ダンスミュージックシーンとポップスが近付いてきている。

―『MYDJBOOTH』シリーズもこれが第3弾となるわけですが、作品ごとにコンセプトを立てたりはするのでしょうか?

DAISHI:その時期で一番盛り上がるダンスミュージックをプレイするのが僕のスタイルなので、基本的にはその時期の気分で選曲してます。リリースの間隔が空けばシーンもリニューアルしていくので、そのリフレッシュ感はいくらか意識しますけど、あくまでもそのときの旬なものをかけるという感じです。ただ、『MYDJBOOTH.3』は結果的にこれまでのシリーズより盛り上がる選曲になりました。シーンの流れに伴って、よりテンションが高い構成になったんじゃないかな。


―では、今回の作品に収められたダンスミュージックのトレンドがどういうものなのか、もう少し具体的に教えてもらえますか?

DAISHI:2年くらい前と今で大きく変わったことが1つあって。僕がやっているようなハウスミュージックって、いわゆるクラブ好きの音楽だと思うんですけど、R&Bやヒップホップって、もっとメジャーというかオーバーグラウンドなものだと思うんですよ。ポップスに近いといったら語弊があるけど、いい意味で大衆性を備えた音楽というか。これまでのR&Bやヒップホップは、比較的BPM(演奏のテンポを表す単位)が遅いジャンルだったんですけど、それがここ2年くらいでハウスやエレクトロのような速い4つ打ちを聴かせるシーンと融合してきていて。

―なるほど。

DAISHI:つまり、僕らがかけるものと、メインストリームのヒップホップDJがかけるものが、以前と比べてすごくシェアできている。それこそBillboard(アメリカで最も権威がある音楽チャート)やAmerican Top 40(音楽チャートを40位から1位まで紹介するアメリカのラジオ番組)みたいなポップスチャートでも、速い4つ打ちに寄った楽曲がたくさんリリースされていて、よりダンスミュージックシーンとポップスが近付いてきている。それが2年程前に『MYDJBOOTH.2』を出してから目まぐるしく変化してきたポイントですかね。K-POPも完全にダンスミュージックがベースになっていますし。世界的にダンスミュージックのシーンが派手になった感じはありますね。そのテンションが今回の『MYDJBOOTH.3』には反映されていると思います。

―世界的な傾向として、よりジャンルレスになってきているんですね。DAISHI DANCEさん個人はそのシーンの現状をどのように感じているのでしょう?

DAISHI:僕は、どんな時代でもシーンの否定は絶対にしないんです。DJってアンテナを張って毎週たくさんの楽曲を買っていくうちに自ずとトレンドが染みついていくものだから、自分のプレイスタイルも無意識で変化していくものなんです。それで、フロアの空気を読みながら曲をどんどん繰り出していると、やっぱりお客さんの温度を感じるんですよ。例えば、3年前にものすごい盛り上がった曲でも、さすがに今かけるとちょっと違うっていう雰囲気はすぐにわかりますね。楽曲のテンションやコード感の変化を肌で感じているうちに、自然とその時代に適応したセンスが上書きされていくんです。

今の韓国は、日本でジュリアナが流行ったときに近いのかもしれない。

―今回のジャケット写真はまさにそのフロアの空気を掴んでいる場面ですよね?

DAISHI:ここは自分がずっとレギュラーをやらせてもらっている、カンナム(江南)にあるソウル最大のハコで。毎回、人口密度がマックスで、ものすごくいいパーティーがやれてます。キャパシティーは、瞬間だと3,000人くらいなのかな?

DAISHI DANCE『MYDJBOOTH.3』ジャケット
DAISHI DANCE『MYDJBOOTH.3』ジャケット

―ここ、そんなに大きいんですね!

DAISHI:韓国のクラブって、一晩で2、3軒をハシゴするのが普通なんですよね。各クラブのブレスレットのようなものを巻いて、みんなが会場をぐるぐる回ってるんです。だから、累計でいくと4,000〜5,000人入るときもあって。

―ハシゴ方式が普通って、すごいですね。

DAISHI:近隣に会場がたくさんあるんですよ。渋谷なんかもそうですけどね。日本だと、今は1店舗で朝まで遊ぶ人が多いけど。

―ちなみに、全店舗を同じところが経営しているんですか?

DAISHI:経営は別ですね。ジャンルでいうと、カンナムあたりはエレクトロが主流なんですけど、エリアによってはヒップホップが多かったり。

―韓国はクラブが隆盛している印象があります。

DAISHI:クラブの歴史は日本より浅いのですが、ここ3年くらいで大箱がオープンラッシュで急速に盛り上がってます。日本は、80年代後半あたりからクラブやディスコがカルチャーになっていったんだけど、それと同時にカラオケや夜のアミューズメント的なものがいくつも発達していって、夜遊びの選択肢がいっぱいできましたよね。今の韓国は遊びのトレンドがまさにクラブ。日本ほどカラオケがたくさんあるわけでもないから、夜はクラブに人が集中していくんです。日本でいうと、90年代にジュリアナが流行ったときに近いのかもしれない。OLさんでも誰でもクラブに行くみたいな現象。もちろん音は現在のもので、日本よりガツガツとハードに攻めているのですが、クラブ的な一体感がものすごく生まれていて、盛り上がっていますよ。

―まさに活気があるというか。シーンとしては健全な状況ですね。

DAISHI:シャンパン付きの席売りでソファー席なんかもあって、踊りに来たわけじゃない人の受け入れ態勢もちゃんとできているんです。だから、幅広い年齢層の人が遊びに来れて、財閥や大企業のお偉いさんとかも普通に遊びに行ける。ソファーに座ってフロアの様子を眺めながら、お酒を飲んでおしゃべりを楽しむ。そういう環境も整っていてビジネスシステムもかなりしっかりしています。

日本でジュリアナが流行っていた頃は、小室哲哉が作っていたクラブミュージック的な要素の強い音楽が、まさにJ-POPだった。

―では、いわゆるK-POPと言われるメインストリームと、そのクラブシーンの状況にはどんな違いがあるんですか。

DAISHI:K-POP自体が世界的な音楽のトレンドを汲んでいるので、クラブシーンとの距離感はかなり近いですね。それこそ日本でジュリアナが流行っていた頃は、TRFなどクラブミュージック的な要素の強い音楽が、まさにJ-POPの主流だったわけじゃないですか。そういった音楽がミリオンセラーを連発して、その延長で洋楽のヒット曲がディスコでかかるというリンクがあった。その状況と今の韓国は本当に似ていると思います。もちろんTRFは今も大ブレイク中なので、過去系というわけではないのですが。

―日本のジュリアナと現在の韓国ですか! それは考えたことがなかったです。

DAISHI:日本のクラブには歴史ができてきたので、ジャンルも細分化したんです。クラブ遊びが根付いて、シーン的に成熟したというか。そのメリットもデメリットも感じてますけどね。あと日本が他の国と比べて特殊なのは、クラブ以外にも夜に遊ぶ選択肢が多いということで、こんなにカラオケがあるのは日本くらいですよね。しかも安い。韓国だと、カラオケはちょっと高い遊びになっちゃうんです。ラグジュアリーな部屋を貸し切るような感じで(笑)。


―僕の世代になると、ジュリアナの時代をよく知らないので、今の韓国の状況が少し羨ましいです。一方で今の日本のシーンはどうなんでしょう? ちょっと盛り上がりに欠けているんでしょうか。

DAISHI:そんなことはまったくないですよ(笑)。日本のクラブシーンってホントに素晴らしいと思う。日本はどの都道府県に出向いても、いい音楽シーンがあるんです。諸外国は、大都市はものすごく発達していても、地方都市とのクオリティーにすごく差があることが多くて。クラブ文化が完全に根付いているEU圏は別として、そんな場所って他にないと思いますよ。地方に行っても東京と同じ選曲でDJできる、といったことは世界的に見ると珍しいんです。

―その理由はどういうところにあると思いますか?

DAISHI:どうしてですかね……。僕はもう6年くらい、ほぼ毎月韓国に通っているんですけど、ソウルやプサン以外の都市に行くのは、フェスで呼ばれたときくらいなんですよね。それもまだ2、3回だと思う。そう考えると、日本で僕がDJをやったことのない県って、たぶん2つか3つくらいじゃないかな? 海外からやってきたヘッドライナー級の人は、日本なら5都市くらいは無理しなくても回れますよね。これってすごいことだと思うんです。アジア圏の他の国だと、そうはいかないところが多いと思う。日本全体の地域のクラブや音楽シーンの頑張りによって、毎年年間150本平均のDJ本数が可能になってます。

―近年は日本のリスナーがドメスティックな方面に向かいがちだと言われていて。つまり洋楽を聴かなくなる傾向が強くなっていると思うんですけど、クラブシーンに関して言うと、そこはどのように感じていますか?

DAISHI:うーん。クラブミュージックを聞いている層は、僕がデビューした頃(2006年)より海外のシーンにすごく詳しくなっていると思いますけど、人口比率的に国内の音楽を聞く人が多いのは確かですね。今のJ-POPが世界のトレンドに乗っているかと言われると、決してそうではないと思います。だけど、他の国の真似事じゃなくて、日本独自のカルチャーから、いいアーティストがたくさん輩出されている。あと、欧米だとセールスの9割くらいが配信になってきているけど、日本はまだパッケージの方が強い。それは僕にとっては嬉しいことで。

―パッケージに対する愛情が強いのでしょうか?

DAISHI:音楽を作るのと同じくらいに、ジャケットを作るのが好きですね。ただ、海外だと、例えばBeatport(有料オンライン音楽配信サービス / ダンスミュージック、クラブミュージックを多く扱う)やiTunesで楽曲の配信をするんですけど、中には合法的に自分の楽曲をフリーダウンロードしている人もいるし、YouTubeにアップしたものから自分の楽曲を知ってもらって、そこからDJの仕事をもらう人もいて。最近はそういう現場ありきの人が多いんじゃないかな。曲を売るんじゃなくて、DJで生計を立てるというか。海外のヘッドライナーの中には、ワンナイトで何千万っていう人もいますからね。

―それも夢みたいな話ですね。

DAISHI:だから、海外だと楽曲をプロモーションみたいな捉え方で広める人が増えていると思います。そんな中、日本にはまだパッケージがあるし、購買層もちゃんとあるので、できればそこはなくならないでほしいと思います。今回のCDのパッケージも、中面までしっかり力を入れて作っていますから。それは、普段からクラブに通っている人に聴いてほしいのはもちろんだけど、それと同じくらいにこれから新しくクラブに通い始める人のきっかけになってほしいからなんです。

―作品がクラブへの架け橋になってほしいということですね。

DAISHI:うん。まさにクラブとリスナーをリンクさせるためのCDなので。

―これは海外でもご活躍されているDAISHI DANCEさんだからこそ訊いてみたいんですけど、日本のミュージシャン、あるいは日本の音楽シーンって、海外ではどのように受け止められているんでしょうか?

DAISHI:それは僕にもよくわからないかな……。僕が韓国で受け入れてもらえたのも、デビュータイミングだったりメロディアスなのがウケたりBIGBANGとの共作だったり、けっこう特殊な成り行きだと思うので。例えば韓国のフェスとかに行くと「I Love Your Music!」みたいな感じで話しかけてくれて、たくさんの人が写真を頼んでくれるんです。僕はそれが嬉しいから、すべて応じるんですけど、そのときに日本のアーティストの話とかはしないので。もちろん僕が日本人であることは韓国の方々も知っているはずですけど、それによってプライオリティーが変わることは特にないですね。

世界中のDJがほぼ平等に曲をシェアできている中で、どう個性を出していくか。

―前回、オリジナル作品について取材させてもらったときに、作り手としてどうやって個性を出すのかを話していただいて。それがDAISHI DANCEさんの場合は抒情的なメロディーだというお話でしたが、こういうミックス作品を形にするときは、作り手としての個性はどのように意識されるのでしょう?

DAISHI:DJと曲作りはまったく別の仕事なので、そこは二面性がありますね。DJに関しては人前に出る仕事。そして作曲に関しては、プロデュースも自分の作品も、裏方の作業ですよね。だからそれぞれリンクはしていても、別モノとして認識しています。しかも一括りにDJと言っても、ミックスのやり方は様々ですから。エフェクト1つにも個性が出てくるし、自分もそれを売りにしているので。

―今「エフェクト」という言葉がでましたが、ミックス以外にもDJにはテクニカルな部分がたくさんありますよね。

DAISHI:「この曲からこの曲に行くの?」という意外性を演出するのも、DJの面白味ですよね。あるいはミックスの長さ。例えば今回のアルバムでも、4分間くらい2曲を同時に掛け合わせていたりしているんです。あと、エフェクトでいうと、僕が使っているPioneerのRMX-1000という新しい機材でも、よりスタジオで作っているようなサウンドに演出していくことは可能なので。やっぱり、人気DJってどこかに個性があるんですよ。クラブに入った瞬間「あの人がプレイしてるのかな?」ってわかる人は、やっぱり強い。ファッションもそうですよね。やっぱりクラブはカルチャーの現場だから、オシャレも大切な個性の1つだと思います。

―そうですね。クラブカルチャーって、ファッションなども含めた複合的なメディアだから、重要なのは音だけじゃないんですよね。

DAISHI:例えばファッション誌を参考にみんなが服を着たとしても、オシャレな人もいればそうじゃない人も出てきますよね? DJもそれと似ています。レコードが主流だった頃って、盤が売り切れてしまったり、プロしか手に入れられないような枚数の少ないものがあったりして、かけられる曲そのものに差があったんですけど、今はほとんどがダウンロードで買えるから、世界中のDJがほぼ平等に曲をシェアできている。でも、同じ環境でもやっぱり人それぞれ選曲やパフォーマンスに違いが出てくるんですよね。

―なるほど。選曲の段階では、今は環境の差が限りなく小さいんですね。

DAISHI:そう。そのなかで面白味を出せる人が残っていけるんじゃないかなって。あと、僕はクラブでいろんな人とコミュニケーションを取れることがすごくいいなと思っていて。そうやって常連さんやリスナーと会話したり、持ってきてくれたCDにサインをするだけで、その人の音楽の聴き方もきっと変わってくると思うんです。僕はそれを大切にしたいし、お客さんとの接し方も個性ではありますよね。次も絶対に来て欲しいので、毎回のDJを絶頂まで楽しんでもらおうと全力でやってます。16歳の頃に機材を買ってから長い間DJをやっていますが、今でも僕の中で変わらないのは、その時代で一番盛り上がる音楽が好きだってこと。それをクラブでかっこ良くプレイして、お客さんからのレスポンスをもらう。そのスタイルはずっと変わらないんです。自分とお客さんの需要と供給が合っているのはすごく嬉しい。

―ダンスミュージックのトレンドってものすごく速いスピードで流れていますよね。DAISHI DANCEさんから見て、この先の動向でなにか予見できていることがあれば教えてください。

DAISHI:それはすごく難しい質問ですね(笑)。単純にいくと、ダンスミュージックってすごく派手なものが流行った後は、ちょっとダークな音楽が盛り上がってきたりするんです。反動で流行が入れ替わるようなサイクルは、90年代からずっとあって。例えば今だったら、それこそ去年くらいから出てきたEDM(エレクトロニックダンスミュージック)が、ダンスミュージックはもちろん、ポップスのアーティストも取り入れ始めていますよね。

―BillboardもEDMチャートができましたもんね。

DAISHI:というか、Billboardのトップチャート自体が、今はEDMでいっぱいですよね。だから、その反動としてもっとナチュラルなもの、あるいはオールドスクール的なものが出てくるのかも。うーん、これは難しいな。とりあえず思いつきで言うとそういう感じかな(笑)。

―現状への反動が、ダンスミュージックのトレンドを動かしていくということですね。

DAISHI:ダンスミュージックのトレンド自体、最近は半年くらいでサイクルが変わっていくので。しかも、今はそれがポップスのマーケットにも絡んできている。そういう流れも含めて、これからどうなっていくんでしょうね? こればかりは誰も読めないものですから。

―うーん。面白い! いくらでも聞きたい話が出てくるのですが、時間がきてしまいました……。

DAISHI:きっとまた年内にリリースがあると思うので、続きはそのときにでも話しましょうか(笑)。

―また年内って、すごい(笑)。

リリース情報
DAISHI DANCE
『MYDJBOOTH.3』

2013年3月27日発売
価格:2,800円(税込)
UPCH-1921

1.NEW GATE (SAX@ROCK MIX)/DAISHI DANCE feat.NOISEMAKERXSHINJI TAKEDA
2.Calling (Lose My Mind)
3.Here We Go (Original MIX)
4.A.T.W (MYDJBOOTH.Unreleaesed edit)
5.Vai (Original Mix)
6.good time (Waideboys Club Remix)
7.Music
8.Free(DD TRIBAL ANTHEM!) feat.Blanc
9.Big Hoops (Bigger The Better)
10.City of Dream
11.In And Out Of Love feat.Sharonden Adel (Whelan AND DI SCALA REMIX)
12."Everything You Want (MITOMI TOKOTO Limited Express Remix)"
13.LEVELS
14.Make You Freak (Original Mix)
15.Spectrum feat.Matthew Koma (Extended mix)
16.Dear New York (Original Mix)
17.Balearic
18.Club Can't Handle Me (feat.David Guetta)
19.Starlight
20.Many Many Many stars away feat.COLDFEET (MITOMI TOKOTO LIMITED EXPRESS MIX “FINAL"VER.)

プロフィール
DAISHI DANCE

札幌を中心に活動するハウスDJ。メロディアスなHOUSEからマッシブなHOUSEまでハイブリッドでカッティングエッジなDJスタイルでダンスフロアに強烈なピークタイムと一体感を創り出す。ピアノやストリングスを軸としたメロディアスな楽曲プロデュースが特徴的。



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