RAMMELLSインタビュー 結成わずか半年で注目の的へ駆け上がる

今、耳の早いインディーリスナーを騒がせているバンドがいる。3ピースロックバンド、RAMMELLSだ。昨年8月に結成、12月に初ライブというキャリアの短さでありながら、無料音楽アプリ『Eggs』を介して行われた『ビクターロック祭り』への出場をかけるオーディションでは最終予選まで進出。2月25日にTSUTAYA O-nestで行われる無料ライブイベント『Eggs × CINRA presents exPoP!!!!! volume82』にも出演が決定している。

ライブ会場限定のシングル『NIGHT CAP』では、彼らの音楽大学出身という経歴に裏打ちされた卓越したテクニックと、ブラックミュージックとオルタナティブロックのいいとこ取りというニクいまでのセンスのよさを垣間見ることができる。まだホームページも開設されておらず、これまで行ったライブも10回に満たない程度という、まだまだ未知の存在である彼らだが、表現の核にあるものはなんなのだろうか。黒田秋子、真田徹、Chiriponの三人に話を訊いた。

新しいバンドを組むなら、あいつ(SuchmosのYONCE)に勝てるボーカルじゃないとなって思って、それで黒田に声をかけてみようと。(真田)

―RAMMELLSは、昨年8月の結成ということで、活動期間がまだ1年にも満たないそうですが、すでに耳の早い人の間では話題になっていて。オーディション(『ワン!チャン!!~ビクターロック祭りへの挑戦~』)では、最終予選まで進まれたそうですね。

Chiripon(Ba):駆けだしのバンドなので、なにかつながりができるきっかけになればと思って、とりあえずオーディションに応募したんです。アプリ(Eggs)に音源を上げるだけで応募できたので、面倒でもなかったし。「受からなくてもそれはそれでいいや」くらいに思っていて、実はメンバーに相談もせずに応募したんですよ。

真田(Gt):勝手にChiriponが応募したもんだから、僕と黒田は投票できることさえ知らなかったんですよ。だからお客さんに対して「投票してください」といった告知も全然してなくて。

左から:Chiripon、真田徹、黒田秋子
左から:Chiripon、真田徹、黒田秋子

―結果、数百組の中から審査員の評価を勝ち得たということですよね。

Chiripon:無理だろうなと思ってたら、「一次審査に通りました」って連絡が来て、びっくりしましたね。それがきっかけでEggsの人とつながって、『exPoP!!!!!』の出演にもつながったから、今回のオーディションは活動に弾みをつけるという意味でいいきっかけになりました。

Chiripon

―RAMMELLSは、公開されている情報が極端に少ないので色々とこのインタビューで整理していきたいのですが、どういうきっかけでこのバンドは結成することになったのでしょうか?

真田:自分には高校生の頃から続けていたOLD JOEというバンドがあったんです。それはSuchmosのYONCEと一緒にやってたんですけど、去年の7月に解散してしまって。みんな他のバンドと掛け持ちでやっていたので、このバンド1つに全力を注いでやっていくというのは厳しいかなという結論に達したんですよね。僕だけはやってたバンドがOLD JOEのみだったんですけど、僕から「解散しよう」と言いだしました。解散前後に、サポートギタリストで入らないかという誘いを5組くらいのバンドから受けたものの、自分の一番好きな音楽をやるために、自分でバンドを始めようと。

OLD JOE

―この三人のメンバーになったのは、なぜですか?

真田:昭和音大の仲間で、6年ぐらい前からお互いのことは知っていて。黒田とChiriponは1つ上の先輩で、僕はジャズ科、二人はポピュラー音楽学科でした。新しいバンドを組むなら、あいつ(YONCE)に勝てるボーカルじゃないとなって思って、それで黒田に声をかけてみようと。学生の頃から、黒田の歌は際立っていたんです。そんなに歌がうまいタイプじゃないんですけど、それを上回るセンスや個性を持っているんですよね。最初は黒田と二人で活動していて、その後他の楽器のメンバーも入れようとなったときに、「Chiriponは今なにやってんだ?」って話がでてきて、久しぶりに連絡をとりました。二人のことは「なんでこの人たち売れないんだろう」とずっと思っていたから、誰もやらないのであれば俺が一緒にやっちゃおうと。

Chiripon:それまではシンガーのサポートをやったり、企画のライブに出たりしてたんですけど、バンドを組んだのは大学時代にやっていたファンクバンド以来なので、本当に久しぶりですね。

真田:ドラマーも早く正式メンバーを見つけたいんです。できれば4月くらいまでには見つけたいな。

なんとなく感じた不穏な空気というか、悪い冗談みたいなことが起こる世の中で、それが当たり前になっちゃいけないなと。(黒田)

―ライブ会場限定の3曲入りのシングル『NIGHT CAP』は、ブラックミュージックのルーツとオルタナティブロックの感覚が合わさった音楽性で、ありそうでない独自のものになっていると思います。表題曲の“NIGHT CAP”は黒田さんの作詞作曲だそうですね。

黒田(Vo,Key):はい、5年くらい前に書いた曲です。当時は全然違うアレンジだったんですけど、Chiriponや真田の音楽性が合わさることでブラックミュージックに寄ったものになりましたね。私、お酒がとても好きで、バーで働いていたこともあるんですけど、「NIGHT CAP」って英語のスラングで「寝酒」という意味なんですね。この曲は酔っ払いの曲です。作った当時、なんとなく感じた不穏な空気というか、悪い冗談みたいなことが起こる世の中で、それが当たり前になっちゃいけないなと。元々お酒は好きだし、バーで働いたりして酔っ払いを見ていて、こっちが当たり前になったらいいなと思って書きました。酔っ払いを擁護するわけじゃないんですけど……。

―社会とのつながりを明確に意識して書かれたという点で、ミュージシャンとしてある一定の責任を負ってらっしゃるなと思うのですが、歌詞は黒田さんが全て書かれてるんですか?

黒田:そうですね。

―巷に溢れるありふれた恋愛の歌詞ではなく、社会と自分自身の関わりについて歌詞を書こうと思うのはなぜでしょう? どうしても女性のシンガーの定型にとらわれると「愛」や「恋」というテーマで歌詞を書く人というのが多い気がするのですが。

黒田:私が恋愛をあまりしないというのもあると思うんですけどね(笑)。たまたま今回の3曲がそうじゃなかっただけで、私も恋愛してそれが生活の一部になれば書くと思います。3曲目の“Blue”も世の中について考えながら書きました。これは真田が書いた曲で、「海っぽい感じをイメージした」って言われて渡されたんですけど……海とか空をずっと見ていると、右も左も上も下もよく分からなくなって、どうでもよくなる。それを今の社会と照らし合わせると、個々がなにかの善し悪しを判断するだけのときに右か左かって言うのは、全然重要じゃないんだろうなと改めて思って。大事なことは自然を見てるとわかるなぁと……伝わりますかね? 私、あんまり言葉がうまくなくて……。

黒田秋子

―そんなことないです。丁寧に言葉を選んでくださって、ありがとうございます。黒田さんにとって歌詞は、思想や政治的なものを声高に訴える「媒体」なのではなく、あくまでも芸術の範疇の中で、今を生きるということについて考えてみようとする「試み」なんだなぁ、と思いました。その距離感がとても独特ですよね。

黒田:2曲目の“anna”は、歌詞はなくて、本能的に声で出てきたものを歌っているだけなんですけど、どの曲も言葉を使う以前に、心のピュアなところを曲にできたらなと思っています。あとネガティブな方向に引っ張られずに、できるだけポジティブなことを書きたい。

―世間に対する、不安や憤りはありますか?

黒田:不安や憤りというか、一人ひとりのよさが埋もれずに少しでもどこかでピックアップされる世の中であるといいな思います。あとはそれぞれがやるべきと思うことを地道に繊細にやる。

最近は、かっこいい音楽が正当に評価される時代だなと思っていて。だから、評価されることを信じてかっこいい音楽を作り続けます。(真田)

―メンバーのみなさんそれぞれの尊敬するミュージシャンを教えていただきたいのですが。

黒田:私はボビー・マクファーリン(1950年生まれ、アメリカのジャズ歌手)です。みんなをフラットなところに立たせてくれる、平等で対等な立場で語りかけてくるような人だと思うんです。すごく憧れます。

真田:僕はWilcoが好きで、ジャズもロックも弾けるネルス・クライン(Wilcoのギタリスト)が一番好きなギタリストです。去年Blue Noteでやった来日公演をYONCEと一緒に観に行きました。あとは、ジャズギタリストばかり聴きますね。ビル・フリーゼルも好きかな。

Chiripon:僕はあんまり1人にどっぷりはまるというのがないんですけど、あえて言うなら、ジャコ・パストリアス(1951年生まれ、アメリカのジャズ / フュージョンベーシスト。35歳で逝去)。プレイヤーとして個性的なところももちろんのこと、彼の作曲のセンスに憧れます。

―今日のインタビューで、RAMMELLSは徐々に見え始めてきた自分たちの個性や音楽性を育てている最中なのだなと感じました。そして、同時に色々なRAMMELLSにしかない魅力も見えている。これからやっていきたいことを教えていただけますか?

真田:夏にアルバムを出したいなと思ってます。最近は、かっこいい音楽が正当に評価される時代だなと思っていて。だから、評価されることを信じてかっこいい音楽を作り続けます。

真田徹

―Suchmosのようにかつて同じフィールドでやられていた同世代のバンドの活躍がめざましいと思うんですけど、そういう人たちに対する焦りって感じていたりしますか?

真田:OLD JOEを解散したあたりは一番焦ってました。前々から友達だったYogee New WavesとかLUCKY TAPESとかも、すごく活躍し始めていたし。でも、RAMMELLSをやり始めてから、あいつらと同じフィールドで別にやらなくてもいいなと思うようになりました。悔しいと思うことはあるんですけど、夏にアルバムを出して、その先ぶち抜く予定なんで(笑)。

―新たな素晴らしいバンドの今後を楽しみにしています。

真田:頑張ります。今のバンドシーンは、ギターヒーローがいないですよね。うまい人はいるけど、かっこいい人がいない。他のミュージシャンからも憧れられるようなギタリストがいないと思うんです。テクニックだけじゃなくて、佇まいや雰囲気でも魅せられるような、そんなにギタリストになりたいと思います。

左から:黒田秋子、真田徹、Chiripon

アプリ情報
『Eggs』

アーティストが自身の楽曲やプロフィール、活動情報、ライブ映像などを自由に登録・公開し、また、リスナーも登録された楽曲を聴き、プレビューや「いいね」等を行うことができる、アーティストとリスナーをつなぐ新しい音楽の無料プラットフォーム。登録アーティストの楽曲視聴や情報は、「Eggsアプリ」(無料)をダウンロードすると、いつでもお手もとでお楽しみいただけます。
料金:無料
推奨環境:iOS8.2以上(iPhone、iPad および iPod touch)、Android 4.3以上

イベント情報
『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume82』

2016年2月25日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
oono yuuki
Rei
永原真夏+SUPER GOOD BAND
RAMMELLS(オープニングアクト)
料金:無料(2ドリンク別)
※会場入口で音楽アプリ「Eggs」の起動画面を提示すると、入場時のドリンク代1杯分無料

リリース情報
RAMMELLS
『Night cap』(CD)

ライブ会場限定販売
価格:1,000円(税込)

1. Night cap
2. Anna
3. Blue

プロフィール
RAMMELLS
RAMMELLS (らめるず)

2015年8月結成。メンバーは黒田秋子(Vo,Key)、真田徹(Gt)、Chiripon(Ba)に、現在はサポートドラマーを迎え活動中。2015年12月より都内ライブハウスでライブ活動を始めるが、初ライブ開始より先にFM Yokohama”Tresen+,JFN”ON THE PLANET”に出演する等、注目を集める。JAZZ,R&B,FUNKを基盤に、メンバー各々のオリジナリティを混ぜ込んだステージは音楽フリークからも評価を集める。自主制作1st single”NIGHT CAP(全3曲¥1000)”を会場限定で販売中。



記事一覧をみる
フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • RAMMELLSインタビュー 結成わずか半年で注目の的へ駆け上がる

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて