単刀直入に聞く。Hi-STANDARDは、なぜ2016年に新曲を出した?

Hi-STANDARDが16年ぶりの新作を発表――2016年の音楽シーンを振り返ったときに、結局これ以上のトピックはなかったと言ってもいいかもしれない。しかも、そのリリース方法は事前告知一切なしで、突然店頭にCDが並ぶというもの。店着日はSNSが爆発的な騒ぎとなり、発売初週に10万枚以上を売り上げて、見事オリコンチャートで1位を獲得した。もちろん、これは誰にでもできることではないが、「アイデアと情熱次第でまだまだいくらでも面白いことができる」と示してくれたことは、文字通り「希望」だった。

思えば、Hi-STANDARDは90年代からずっと、すべてを繋げ続けてきた。日本と海外、メジャーとインディー、音楽とファッション……そこに壁などないことを示し、新たな道を作り出してきた。2016年は国内外のあらゆる場所で対立構造が目につき、すべてが切り離されていくような感覚に滅入ることもあったが、そんな時代だからこそ、僕らにはHi-STANDARDが必要だったのかもしれない。

12月にはカバーシングル『Vintage & New, Gift Shits』をリリースし、東北でのライブハウスツアーを経て、12月23日には『AIR JAM 2016』を九州で初開催。現在のHi-STANDARDに対する想いを、横山健にたっぷりと語ってもらった。

別に勝つことにこだわってやったわけではなくて、ハイスタ的な美学を貫き通すためだけにやった。

―Hi-STANDARD(以下、ハイスタ)が、10月に『ANOTHER STARTING LINE』を突然リリースしたときは、ホントに驚きました。SNSの盛り上がりや、オリコンチャート1位という結果は、バンドから見て「狙い通り」という感じだったのか、それとも、予想外の出来事だったのか、どちらが近いですか?

横山:100%後者ですね。こんなことになるとはまったく予想してなかったです。CDショップの売り場の人が、「なにも書いてない箱があるけど、なんだろう? って開けてみたら、ハイスタの新譜だった」となるところまでは想像できたんですけど、そこからどうなるかは全然想像できなくて、楽しみにしてました。もちろん、そこで驚いてくれたら嬉しいなって希望はありましたけど、「はい、これを売ればいいわけね」って思われるだけかもしれない。でも、僕らの予想以上に驚いてくれましたね。

―まずは店員さんが驚いて、店頭に並んでいるのを見て、今度はお客さんが驚いて、その驚きがSNSで拡散されていった。その状況から、現代の口コミの力を改めて思い知らされました。

横山:90年代のハイスタって、ホントに口コミで広がったんですよ。当時はインターネットもなかったし、情報を出すといったらせいぜい音楽誌くらい。あとはCDショップの店頭だけで、たとえば九州ツアーが決まったときには、九州のお店の人が「ハイスタが九州に来る!」ってチラシを置いてくれて、みんながその情報をキャッチして広めてくれていたんです。今はそれがSNSなんだなって、僕も実感しましたね。

横山健
横山健

―結果として、CDが売れないといわれる時代に、あっという間に10万枚以上を売り上げて、しかも、同日には星野源さんのドラマ主題歌をはじめ、SEKAI NO OWARIやAAAも発売されていた中、ハイスタがチャート1位をとりました。近年健さんは、「ロックバンドの存在感が希薄になっていることに対する危惧」をいろんなところでお話されていたと思うのですが、あの1位はロックバンドの存在感を明確に示すことになったと思います。

横山:その意味では嬉しかったですね。ロックの音源でもこれだけ注目してくれるし、これだけ売れるんだなって。まあ、「上手く考えてやったな」って思う人もいるでしょうけど、僕らは別に勝つことにこだわってやったわけではなくて、ハイスタ的な美学を貫き通すためだけにやったという感じなんですよね。

―ハイスタは90年代にも7インチを告知なしに発売していたし、言ってみれば、それと同じことをまたやっただけとも言えますもんね。

横山:そうなんです。普通に事前に告知して、宣伝のためにメディアに出る、ということをやってもよかったんですけど、「せっかく16年ぶりに出すんだから、普通のことしてもつまんなくない?」って、どうしてもそういう考えになってしまうんですよ。僕たち三人とも、そういうことに対する熱量はものすごく高いんです(笑)。

横山健

―なおかつ、メンバーのみならず、PIZZA OF DEATH(レーベル)のスタッフ、CDショップの店員さん、流通さん、いろんなマンパワーの集合でできたことでもありますよね。

横山:もう、そこに尽きますよ。僕らは発想して言っただけですけど、PIZZA OF DEATHのスタッフや、流通のスペースシャワーミュージック、店頭の方々、みんなが一緒になってワクワクしてくれたのかなって思います。ホントに、プロの仕事ですよね。店着日の夜に、世の中ですごい話題になってるのを見ながら、思わず「見事だったな」って言いましたもん(笑)。メジャーの人でもインディーの人でも、音楽に携わる人だったら、誰でもここから得られるアイデアがあると思うので、次に繋げてくれればいいなと思いますね。

僕の性根として、格好をつけたがりなんですよね。「かっこつけたい」じゃなくて、「格好をつけたい」んです。

―オフィシャルサイトに載っているインタビューも読ませていただきましたが、2012年の『AIR JAM』以降も断続的にスタジオに入っていて、やっと機が熟しての新曲発表だったようですね。

横山:去年末に3本ライブをやったんですけど、それがすごくよかったんですよね。震災以降に三人が集まって、いろいろモヤモヤがある中でやっていたけど、それがいいところに着地してきた実感があって。すごく楽しんでやれるようになったんです。

そこから、「じゃあ、2016年に『AIR JAM』やる?」という話になって、「だったら、その前に音源あった方がかっこよくない?」「じゃあ、いつまでにレコーディングしなきゃダメだね」って、どんどん発想していって。それで2012年以降ちょこちょこスタジオに集まりながら試していた新曲のひよこを、今年に入って一気にまとめた感じですね。

―ただ、これまでハイスタを動かすことに一番慎重だったのが健さんだと思うんですね。2011年の『AIR JAM』はあくまで震災の復興が目的で、ある意味割り切ってハイスタをやった。そこからの年月で、健さんの心境にどのような変遷があったのでしょうか?

横山:そうですね……まず僕の性根として、格好をつけたがりなんですよね。「かっこつけたい」じゃなくて、「格好をつけたい」んです。2011年の『AIR JAM』は、来てくれた人はみんな喜んでくれたけど、正直僕は楽しくなかった。

ただ、1回動かしたわけで、そこで引き下がるわけにはいかないじゃないですか? みんながハイスタに期待してくれるんだったら、自分が折れてそっちに合わせていくしかない。自分の意地を捨てて、そっちにアジャストするように日々努力するしかないという感じだったんですよね。要は、負けず嫌いなんです。去年末には、やっとだいぶ踏ん切りがついたので、そこまでに4年もかかってしまったということなんでしょうね。

横山健

―つまり、自分自身が「ハイスタをやりたい」と思えるようになるまでの4年間だったと。

横山:意地を張ったという意味では、Ken Bandのスタートもそうだったんです。最初のツアーがものすごくかっこ悪くて、普通だったらそこでやめると思うんですけど、「このバンドで日本中回って、日本一のライブバンドにしよう」って、なぜか天邪鬼が発動したんですよ。きっとハイスタも同じだと思います。

誤解を恐れずに言うと、2011年はやらざるを得ない状況だった。自分で決めたとはいえ、気分的には「やらなきゃ」「やらされてる」って部分が大きかった。なので、そこに落とし前をつけるために、自分から「やりたいです」って言うまでに、4年かかったということなんです。時間はかかったけど、人間この歳になっても変われるんだなって思いましたね。

『AIR JAM 2011』の様子

―健さんがハイスタを動かすことを躊躇した理由のひとつとして、やはりKen Bandの存在が大きかったと思います。Ken Bandも一時期はもがいていたと思うんですけど、今年の日本武道館公演をはじめ、ある種の区切りを迎えて、ハイスタとのバランスをとれるようになったということでもあるのかなと。

横山:あるかもしれないですね。もちろん、自分の中でその2つははっきりわかれてるんですけど、人から見たら結構ごっちゃになってしまうじゃないですか? そこは、今後戦っていかなきゃいけない部分ではあると思っているんです。

だって、ハイスタが新曲をリリースして、ニュースとかにも取り上げられたりすると、「Ken Bandが地上波に出たり武道館をやったりしたのも、結局このためだったのかな?」って、ハイスタに対して悔しい部分もあるんですよ。ハイスタって威力がすごいので、持ってかれちゃうんですよね。ただ、以前までとはっきり違うのは、Ken Bandは当たり前にこれからもやっていくし、今はHi-STANDRDもやりたいんだってことなんです。

「生きてるうちにやれることはなんでもやった方がいいよ」って言われたんですよ。それが今でも胸に刺さってるんです。

―健さんが自然と「ハイスタをやりたい」と思うようになるにあたって、メンバー三人の関係性にはどのような変化がありましたか?

横山:十何年離れていた三人がまた集まると、みんなやっぱりだいぶ変わっていて、認め合うことができるようになったんです。お互いのありがたみを初めて実感した4年間でしたね。

1990年代にハイスタが活動していた頃はまだ20代で、お互いを認め合ってなかったと思うんです。若くして売れたバンドはどこもそういう側面があると思うんですけど、ハイスタはその最たるもので、お互いに対して尖っていた。表にも突っ張ってたけど、中に対して一番突っ張ってたと思うんです。そんなことしてたら、当然活動が止まってしまった。でも、再始動する機会を与えられて「さあ、どうしようか?」ってなったときには、すごくお互いを認め合うことができました。

Hi-STANDARD
Hi-STANDARD

―非常に大きな変化ですね。

横山:個人的に、忘れられない一言があって。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(以下、ミッシェル)のギターのアベ(フトシ)くんが2009年に亡くなったじゃないですか? ちょうど『AIR JAM 2012』の開催を発表したくらいのときに、The Birthday(ミッシェルのチバユウスケとクハラカズユキが現在活動するバンド)と対バンする機会があったんですね。

その打ち上げで、ミッシェル時代からずっとマネジメントをしてる能野(哲彦)さんに、「ハイスタまたやるんだね。生きてるうちにやれることはなんでもやった方がいいよ」って言われたんですよ。それが今でも胸に刺さってるんです。ハイスタがこうして2016年に新しい音源を出して、『AIR JAM』の開催を発表して、またワクワクできるのって、1人欠けてたらできないじゃないですか?

―たまたま昨日bloodthirsty butchersの射守矢(雄)さんと小松(正宏)さんに取材をさせていただいて、そのときも「1人欠けたらできない」ということの重みを改めて感じました。

横山:メンバーチェンジが多いバンドだったら、「この時期のメンバーでやるんだ」っていうのでも合点がいくだろうけど、ハナから同じメンバーでやってきたバンドは、やっぱりその面子じゃなきゃダメですもんね。

―その意味では、再び三人が集まれたことの幸福が、今のハイスタを動かしていると言えるのかもしれない。90年代には三人の摩擦から熱量が生まれていて、それはそれで魅力的だったけど、今のハイスタはまた違うハイスタになっているんでしょうね。

横山:「90年代に戻るんじゃなくて、新しいハイスタになっていこう」ってことを、4年間やってきたんだと思います。それは結局今おっしゃっていただいたことで、90年代は摩擦から生まれていたエネルギーを、違うところから生み出そうとする作業だったのかもしれない。

横山健

―そう考えると、『ANOTHER STARTING LINE』って、まさに今のハイスタを表している言葉ですよね。

横山:難ちゃん(難波)の言葉のチョイスが見事だったと思います。僕だと、これ、恥ずかしくて言えないんですよ。難ちゃんだから言えた言葉で、冷静で、なおかつ思い切っていて、よく言ったなって(笑)。「これこれ! これがタイトルでいいじゃん!」って言いましたからね。

自分が持ってるものを下の世代に受け継ぐことがしたいんです。

―ハイスタの再始動には、時代の空気も関係しているように思います。今年の『AIR JAM』にWANIMAが出ることが象徴的だと思うんですけど、今また若い世代でパンクのシーンがすごく盛り上がっている。どこまで意図的かはわからないですけど、そういうタイミングだからこそハイスタをやる意味があるという想いもあったのではないでしょうか。

横山:あるかもしれないですね。『AIR JAM』で声をかけるバンドはすごく意識的に考えていて、次世代にバトンを渡す役目をしたいということは、すごく思ってます。まあ、簡単には渡さないんですけどね。でも、もしかしたら、「おっさんは引っ込んでろ」って若手のバンドにやり込められるかもしれない。そこで起こることはどんなことでも楽しんで受け入れたいと思ってるので、頼もしい若手のバンドにはたくさん出てもらいたかったんです。まあ、『AIR JAM』って、毎回出演バンドのことをすごくいろいろ言われるんですよ。「こんなの『AIR JAM』じゃない」とか。

―90年代、もしくは2000年の『AIR JAM』に対して想い入れのある人が多いから、そういう人はもしかしたら「あれ?」って思うのかもしれない。でも、100人中100人満足するラインナップなんて無理ですもんね。

横山:強い想いを持ってくれてる人がいるのはすごくありがたいんですけどね。これはハイスタの考えというより、個人的にいつも考えてることで、自分が持ってるものを下の世代に受け継ぐことがしたいんです。

横山健

横山:こういうことを大々的に謳って活動してきた人ってほとんどいないと思うんですけど、おそらく“Let The Beat Carry On”(2010年発売、Ken Yokoyamaのアルバム『Four』収録曲)を作った頃からずっとそうなんです。なにか次の世代に託せないかって……父親になったからなのかな。「ロックバンドがこういうことを言っちゃダメだ」とも思わなかったし、きっとこれが自分ならではの発信なんだと思っていて。『AIR JAM』にもそういう気持ちがありますね。

―ちなみに、今またパンクが盛り上がっているのは、なにが理由だと思いますか?

横山:単純に、かっこいいバンドが出てきたからじゃないですか? WANIMAとかフォーリミ(04 Limited Sazabys)とか、彼らは彼らなりに楽曲のことやキャラクターのことをすごく考えていて、それが今の若い子にキャッチしてもらえているんだろうし、そのバンドの周りにいる人たちも、それを届けようと頑張ってると思う。一時期は「またパンクかよ」って止まってたのが、今はその一歩先に行けてるんじゃないですかね。

―確かに、シーンをリードするバンドの存在はとても大きいですよね。なおかつ、少し話を大きくすると、2016年はいろんな意味で人間の熱量が求められた年だったように思うんです。誰もがDTMで音楽を作れるようになった分、生演奏の魅力が見直されたり、SNSに疲れて、やっぱり直接会話する方が何倍も情報量を受け取れるなって思ったり。『ANOTHER STARTING LINE』がヒットしたのも、SNSの拡散の前に、まずマンパワーあり気だったという話も含めて、そういう状況とパンクの盛り上がりはどこかリンクしていたような気がして。

横山:なるほど。今お話を聞いて思ったのは、僕は今年スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)と一緒にやってそれをすごく感じましたね。今年の上半期はよく彼らと一緒にいたので、生の音だったり、交わす言葉だったり、気持ちだったり、そういう原風景をスカパラに見せてもらいました。僕、彼らとは「コラボ」っていうつもりがなくて、今の所属バンドは「Ken Band、ハイスタ、スカパラ」だと思ってますからね。おまけでBBQ CHICKENSっていうのもありますけど(笑)。

ハイスタは、怒りで動いちゃダメだと思ってたのかもしれないですね。せめてハイスタくらいはポジティブでいたい。

―『ANOTHER STARTING LINE』に続いて、今度は過去に発表したレア曲と新録をあわせた『Vintage & New, Gift Shits』というカバーシングルが出ますね。

横山:4曲目に収録されているジョン・レノンのカバー(“Happy Xmas (War Is Over)”)を正式に出したかったんです。ドイツではCDで出したんですけど、日本ではアナログでしか出てなくて、今では入手困難なんですよね。でも、その音源がものすごく好きで、「ボーナストラックとかでもいいから出せないかな」って前から考えていたので、このタイミングで出そうと。

新録した“You Can't Hurry Love”は、実は昔ライブでやってたりもするし。そういう曲をパッケージしようというアイデアが、『ANOTHER STARTING LINE』を作りながら出てきたので、一気に2作品遂行しました(笑)。

―そして、12月の東北でのライブハウスツアーを経て、12月23日に福岡ヤフオク!ドームで『AIR JAM 2016』が開催されます。九州での開催は、熊本での震災以前から決まっていたそうですね。

横山:実はそうなんです。震災があったから、急遽場所を押さえてやることにしたっていう方が話としてはきれいですけど、そうではないんですよね。

―結果として、復興の意味合いも加わったとは思うんですけど、健さんがオフィシャルサイトのコラムで「誤解を恐れずに言うと『震災バンド』にはなりたくない」と書かれていたのが印象的でした。

横山:僕個人としては、すごくそう思ってます。自分の得たものを下の世代に繋げたい、シェアしたい、お客さんと今までにない繋がり方をしたいっていうのはあるんですけど、震災の復興に特化する存在にはなりたくないんですよね。

もちろん、復興のことは考えていますし、今朝もすごく揺れて(取材は11月22日)、そういうときに「自分は今なにをすべきか?」ってすぐ考えちゃう性分なんです。バンドの活動と復興を上手く繋げる人がいてもいいとは思っていますし。ただ、ハイスタはそうなりたくない気持ちがあります。

―もともとの『AIR JAM』はストリートカルチャーの祭典で、決して復興目的で始まったわけではないですもんね。

横山:極端に言えば、結局「楽しそうだからやる」ってだけなんです。「九州でやっちゃう?」って、ワクワクするじゃないですか? きっと『AIR JAM』に対しては、人それぞれにいろんな想いがあると思うんですけど、僕はまず楽しみたいんですよね。

―去年、一昨年とCINRA.NETで健さんの取材をさせていただいて、ソロ活動の背景には「怒り」があるという話をしていただいたと思うんですね。もちろん、ハイスタの活動も「怒り」がゼロではないと思うんですけど、『AIR JAM』にしろ、『ANOTHER STARTING LINE』のリリースにしろ、「楽しさ」が原動力になっている。そこは大きく違うのかなって。

横山:言われてみればそうですね。怒りは、それぞれで持ってはいるんですけど……それ、すごくヒントかもしれないなあ……。ハイスタは三人とも原発反対なんです。なんだけど、ハイスタとして原発問題には向かわなかったんですよ。「チケット転売嫌だね」くらいは言いましたけど、ハイスタとして「~に反対」みたいなことは言ってない。

周りから期待はされるんです。原発反対派の人からも、「ハイスタは影響力があるから、なにかやってくれ」って言われるけど、どうも腰が動かなかった。それって、怒りで動いちゃダメだと思ってたのかもしれないですね。怒りを出すのはKen Bandでできるし、せめてハイスタくらいはポジティブでいたい、ワクワクしないとやってる意味がないと思ってるのかもしれない。

横山健

―『ANOTHER STARTING LINE』にしても、16年ぶりというタイミングだからこそ、社会性の強いメッセージを放つこともできたけど、歌われているのはすごくポジティブなメッセージですもんね。

横山:そうですよね。三人でそこを話したわけではないですけど、気持ちは近かったのかもしれない。面白いな……話すといろいろわかってきますね。

―そう言えば、もうひとつ聞きたかったんですけど、送っていただいた『Vintage & New, Gift Shits』の音源データのアルバムタイトルが『ALL GROWN UP』になっていて。これって、もしかして仮タイトルですか?

横山:ああ、それはレコーディング中にライアン(・グリーン / エンジニア。1995年発売の2ndアルバム『GROWING UP』なども手掛けている)との会話の中で出てきたジョークで、「ALL GROWN UP」=「俺たちいい大人だから」っていう、それを合言葉に厳しいレコーディングを乗り切ったんです(笑)。

―「GROWING UP」から「ALL GROWN UP」へ、と。今日のお話を聞いて、今のハイスタがとてもいい状態にあるということがよくわかりました。

横山:まあ、ハイスタは、毎月やるバンドではないですけど、もう止めることはないです……あれ? これイエモン(THE YELLOW MONKEY)が言ってたなあ(笑)。

―(笑)。

横山:イエモン兄さんの気持ちがわかったんですよね。活動の間が空くことはあるだろうけど、もう止めることはないです。ついでに言うと、きっとNAMBA69も止まらないし、Ken Bandは止めないです。それを最後に言っておきます。

リリース情報
Hi-STANDARD
『Vintage & New, Gift Shits』(CD)

2016年12月7日(水)発売
価格:1,296円(税込)
PZCA-80

1. I Get Around
2. You Can't Hurry Love
3. Money Changes Everything
4. Happy Xmas (War Is Over)

イベント情報
『AIR JAM 2016』

2016年12月23日(金・祝)
会場:福岡県 ヤフオク!ドーム

プロフィール
Hi-STANDARD
Hi-STANDARD (はいすたんだーど)

難波章浩(Vo,Ba)、横山健(Gt,Vo)、恒岡章(Dr)によるパンクロックバンド。通称「ハイスタ」。1991年8月、4人で結成。1992年9月より、現在の3人体制となる。1994年にミニアルバム『LAST OF SUNNY DAY』をリリース。『GROWING UP』(1995年)、『ANGRY FIST』(1997年)と、2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。1997年には、主催フェス『AIR JAM』をスタートさせる。1999年に、自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」を立ち上げ、アルバム『MAKING THE ROAD』をリリース。インディーズとしては異例のオリコンチャート初登場3位を記録する。2000年に活動休止。2011年、『AIR JAM 2011』の開催と再始動を発表。2016年10月5日には、シングル『ANOTHER STARTING LINE』を突如リリースした。12月には、4年ぶりの『AIR JAM』を福岡 ヤフオク!ドームにて開催する。



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