今年結成15周年を迎えた凛として時雨が、5年ぶりとなる6枚目のオリジナルアルバム『#5』を発表する。この15年を振り返ると、音楽を取り巻く環境が大きく変化したことは誰の目から見ても明らか。楽曲を聴く手段はCDからダウンロード、そしてストリーミングへと移行し、それに伴ってライブの価値が見直され、2010年代を「フェスの時代」と定義づけることも可能なはず。そして、そんな急激な変化のなかにあるからこそ、ひたすらに自分の表現と向き合い、「曲を作り、ライブをする」ということを続けてきたバンドの尊さが今際立っているように思う。凛として時雨は、まさにそうやって確固たるポジションを築いてきたバンドだ。それも、相当にエクストリームな形で。
凛として時雨が2005年に発表したデビューアルバムのタイトルは『#4』、1曲目を飾るのは“鮮やかな殺人”だった。当時まだ学生団体のCINRAは、ライブハウスを賑わせていたバンドの音源を収録したCDマガジンを2004年から発行し、そのVol.2に“鮮やかな殺人”を収録。CDを配布するというアイデア自体が、凛として時雨にインスパイアされたものだったという。
そこで今回はCINRA.NET編集長の柏井万作とともに当時を振り返った上で、『#4』から『#5』へと至る歩みと、そのなかで貫かれてきたバンドの行動原理に迫った。
当時は「手渡し」という温度感の時代だった印象があります。(TK)
―凛として時雨(以下、時雨)は、CINRAがCDマガジン「CINRA MAGAZINE」を作るきっかけになったそうですね。
柏井:渋谷O-nestへ外タレのライブを観に行ったら、時雨が自分たちのCD-Rを手配りしていたんですよ。今の子たちからすれば「?」かもしれないんですけど、当時はYouTubeもスマホもなくて、SNSもmixiができたくらいで。今から考えると、「どうやってバンドのプロモーションしてたんだろう?」って思うくらい、本当になにも方法がない時代だったんですよね。
僕もバンドをやってたけど、商業媒体が取り上げてくれるわけでもない。でも面白いバンドは周りにたくさんいて、どうやってその情報を広げたらいいんだろうって悩んでいたときに、時雨みたいにCD-Rを配るというのはいいアイデアだなと思ったんです。それで、自分たちで面白いと思うバンドの音源を集めてプレスしようと思ったのが、「CINRA MAGAZINE」の始まりでした。
TK(Vo,Gt):渋谷O-nestで、柏井さんのバンド(locomotor)のイベントに呼んでもらったこともありましたよね。
柏井:そうそう。シークレットゲストとして出てくれて。
凛として時雨、当時のライブの様子。初期の頃から、蛍光灯をステージに置くなど、照明や演出に対して独自のこだわりを持っていた
柏井:それで、「CINRA MAGAZINE」のVol.2に“鮮やかな殺人”を収録させてもらったんです。でも、その1年後くらいに『#4』(2005年11月)が出て、時雨はバーンと一気にいっちゃって……。
TK:いやいや、全然いってないですよ(笑)。
柏井:いや、その頃まだ学生団体だった俺たちからしたら、「手が届かないところにいっちゃった!」って感じでしたよ(笑)。あれから10年以上経って、こうやってCINRAとして取材をさせてもらえるのは初めてなので、今日は『#4』から『#5』の間を埋められるような取材ができればなと。
―時雨がCD-Rを配るようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?
TK:どういうことがなにに結び付くか、あまりわからない時代だったので、とにかく顔が見えるところで音源やチラシを手配りしたり、あとはBBSにライブ情報を書き込んだりしていました。今の事務所の社長もそういうなかでバンドのことを知ってくれて、今に至るんです。あと当時はまだ下北沢にハイラインレコーズ(レコードショップ。2008年に閉店)があって、あそこにテープを置いてもらえたら「一人前」みたいな感じがありましたよね。
345:10本ずつしか納品させてもらえなくて、よく置きに行った記憶がある。
TK:そういうことも含めて、当時は「手渡し」という温度感の時代だった印象があります。色が被ってそうなイベントがあると、「チラシ置いてくれませんか?」ってお願いしに行ったりもしてました。今とはだいぶ違う時代でしたよね。
―あとから加入されたピエールさんは、最初どうやって時雨のことを知ったのでしょうか?
中野(Dr):それこそBBSに書き込んでいたのを見て、試聴したのがきっかけです。ライブハウスとかで、時雨のステッカーがよく貼ってあったのも覚えていて、「名前は知ってるけど、どんなサウンドなんだろう?」って気になってたし、そうやってちゃんとプロモーション活動をしているバンドだという印象がありました。
「かっこいいだけで終わらせたくない」っていうのはずっと思ってた。(TK)
―さきほど名前の出た“鮮やかな殺人”は『#4』の1曲目に収録されていますが、バンドにとってどんな1曲だと言えますか?
TK:時雨を始める前に作った曲で、「こういう曲があるんですけど、誰か叩いてくれませんか?」って、ドラムを募集するための曲だったんです。当時ってよく「茶髪NG、ヤンキー不可、当方プロ志向」みたいなメン募(メンバー募集)が貼ってあったりしたじゃないですか(笑)。でも、文字だけじゃわからないだろうと思って、「これを叩けるドラムの人を募集します」ってことを伝えるためにデモを作ったんです。
ちょうどその頃中野くんがやってたバンドのイベントに出ることになったんですけど、メンバー脱退の時期と重なってしまって「キャンセルするかもしれません」と言ったら、「じゃあ、俺が叩くから出て」って言われて。そこからサポートをやってもらったんですよね。
―それこそ「当方プロ志向」じゃないですけど、当時はなにか目標とか考えていたんですか?
TK:いや、目指してるものが明確にあったわけではなくて、「とにかく見てくれる人を増やそう」という思いで、ひとまず目の前の目標に向かっていたというか。まだまだお客さんも少なくて、「今日より明日、聴いてくれる人を増やしたい」というのが三人の共通認識でしたね。
―柏井さんは当時の時雨の音楽性に対して、どんな印象でしたか?
柏井:僕が時雨に出会ったのは2003年なんですけど、その頃ってNUMBER GIRL(以下、ナンバガ)の解散(2002年11月)という大きな喪失感のなか、toeを筆頭にポストロックが出てきた時代で、時雨はそんな新しい時代を担いそうな同世代のバンドが出てきた! って思うくらい、印象的な存在でした。ナンバガもtoeも、音楽性は違うけど「バンド」としてリフやキメのかっこよさがあって、時雨はそこに更に独自の歌とメロを乗せてきましたよね。
TK:ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)が解散したのもそのくらいの時期だったし(2003年に解散)、わりと日本ではそれぞれのジャンルの重要なバンドがいなくなってしまった感じでしたよね。
―時雨の音楽的な理想像は、結成当初どの程度明確だったのでしょうか?
TK:自分が作る音楽に対しての理想像はあるし、どうやったらそれが届くかまでは突き詰めて考えるんですけど、それが人の耳に入ったあとは、それぞれで好きになってくれればいいなって。いつもそう思ってます。
今回の作品(『#5』)にしても、作り上げるところまでは自分の理想に向かっていくんですけど、「こういうふうに聴いてもらえたら」っていうのはあんまりなくて。自分の思う理想像を超えられれば、ちゃんと届くとは思っているので、自分自身が作りたいものを作れるかどうかですね。
―ナンバガやミッシェル、あるいはポストロックといったその時代の音楽を肌では感じていただろうけど、どこかのシーンを意識してとかではなくて、あくまで自分の理想像を目指していたと。
TK:そうですね。ギターロックももちろん好きなんですけど、もともとはJ-POP育ちなので、メロディーで曲を聴くという性質は未だに抜けてなくて。だから、根本的にはメロディーを人に届かせたいんですよね。プログレッシブなものを好んで聴いていたということも、実はなくて。自分のなかではいろんなものがごちゃ混ぜになっているんですけど、根っこに強くあるのはJ-POPなんです。
―確かに、一般的にはヒリヒリした鋭いイメージがあって、もちろんそれも時雨の大きな特徴だと思うんですけど、今回改めて『#4』を聴き返したりすると、ちゃんとポップなメロディーが前に出てるんですよね。
TK:当時はオルタナティブなバンドが多くて、渋谷O-nestとか下北沢ERAはかなり尖ったブッキングをやっていて、いつ行ってもかっこいいバンドが出てたんですけど、「かっこいいだけで終わらせたくない」っていうのはずっと思ってて。
そこをなにで埋められるのかと言ったら、メロディーなんじゃないかって、未だに思ってます。どれだけ曲構成が複雑で、自分の声やギターがちょっと耳馴染み悪いものだったとしても、その違和感をメロディーでつなぎとめることができれば、新しいものが生み出せるんじゃないかって。
―J-POPの要素は、ピエールさんと345さんの根っこにも共通しているものだと言えますか?
中野:自分は手数、足数の多いイメージだけど、実は歌心があるタイプのドラマーだと思っていて。たとえば胸をえぐるようなメロと歌詞だったら、そこに対してドラムを当てることはできるし、そこは意識せずとも自然とやってました。
メンバーはほぼ同世代で聴いてきたものも近かったから、先人たちの感覚がリスナーとしても染みついていて、自分たちが表現するときも、その遺伝子がちゃんと自然と出てくる部分もあるんだと思います。
345:私もずっと、たとえばJUDY AND MARYとか、ポップなものを聴いて育ったので、そこもTKや中野くんと一緒なんじゃないかと思いますね。
言葉ではないところで共有してるものがあまりにも多いんです。ちょっと不思議なバンドではありますね。(TK)
―ここまで初期について話してもらいましたが、新作のタイトルが『#5』なのは、やはり『#4』とリンクする感覚があったということなのでしょうか?
TK:『#4』を2005年に出す以前に『#1』から『#3』というタイトルの作品があったんですけど、なんとなくそのあと『#5』にはいかなかったんですよ。別に確固たる理由があったわけではないんですけど。
ただ、今回曲を並べて聴いてみたときに、なんとなく「『#5』がいいかも」と思って仮タイトルにしていたら、ちょうど中野くんもそう思ってたみたいで。「じゃあ、『#5』でいこう」って。
中野:曲順を考えてるときに、いろいろ並べ替えたりしながら車とかで聴いてたんですけど、「すげえアルバムになったな」と思えて、「これでタイトルが『#5』だったら相当かっこよさそうだな」って思ったんですよ。そしたら、ちょうどそのタイミングでTKからきたメールを開くと、仮タイトルが『#5』ってなってて、これはすごいことだなと(笑)。
TK:僕たちがやってることって極端で、針の穴に糸を通すような活動の仕方をしているし、「今回はこうだからこうしよう」とかってバンド内で話し合うこともほぼないんですけど、そのわりには、言葉ではないところで共有してるものがあまりにも多いんですよね。
基本的には、僕がなにを作るかってところで方向性も自然と固まってくるので、全体としては明確なものが見えないまま、でも明確に進んではいるっていう。ちょっと不思議なバンドではありますね。
―さっきも話に出たメロディーのポップさとか、歌詞のユニークさ、三人のバンド感とか、『#4』とリンクする要素を挙げようとすれば挙げられるとも思うんですけど、そういうことよりも、感覚的に『#5』がハマったと。
TK:そうですね。順序立てて作品を作れるタイプではなくて、今目の前にある楽器に対してなにを弾くか、できたオケにどんな言葉を当てはめるか、そういう物事の連続でしか音楽を捉えられないので、マスタリングのときに初めて「こうなったのか」ってわかるというか。
もしかしたら、唯一『#4』だけは、結成からの処女作として順序立てて作れたのかもしれないけど、その感覚はもう一生ないと思うんですよね。それ以降は常に、アルバムはその期間の自分たちで出した音でしかないと思っています。
凛として時雨『#5』(Amazonで見る)
―「一周した」みたいな感覚でもないわけですよね?
TK:僕ら、一周するほど変わってないと思う。新しいことだけをやろうとも思ってないですし、単に今自分が作れる音楽を作ってるだけで、それがずっと変わらずに続いている。感覚としては、同じところで足踏みをしてる感じというか、それがちょっと前だったり、後ろだったり、横だったりにずれるくらいの誤差でしかなくて……たまに不安すら覚えますよ(笑)。
―とはいえ15年間活動しているなかでは、ターニングポイントと呼べるようなタイミングもあったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
345:ターニングポイント……でも本当に最初からずっと同じ感じでやってて……。
TK:中野くんがMCし始めたくらいじゃない?
中野:下北沢CLUB Queのライブのときね。ストイックにシリアスなライブをするバンドなのに、ドラムがいきなり前に出てきて、「ヨーヨーヨー、ヒップホップ楽しんでるか?」みたいな。
TK:ジャンル間違えちゃった(笑)。
中野:そこは転機ですね。「このバンド、こっちもか」って。賛否両論が未だに続いてますけど(笑)。
―(笑)。逆に言うと、それくらいしか変化がないと。でも確かに、「瞬間の連続」だというバンドの姿勢は、『#5』に収録されている“ten to ten”によく表れているように思いました。以前にも「時雨は線じゃなくて点だ」ということをおっしゃっていたと思うんですけど、「点=瞬間、moment」で、ただそれをつないでいくだけなんだっていう。
TK:どうだろう……そのときの自分に聞くとわかるんですけどね(笑)。曲を作り終えてしまうと、歌詞とかも「なんでこんなことを書いたんだろう?」ってことの連続でしかないんです。純粋に自分の音楽に向き合ってるときって、あまりにも言葉にできないことが多くて。だからインタビューで聞かれると、なんとか答えようとするんですけど、大体あとで後悔します(笑)。「本当はそうじゃなかったかもしれない」って。
―言葉を重ねれば重ねるほど真実から遠ざかってしまう。逆に言えば、言葉にできない瞬間にこそ真理があるというか。
TK:そうですね。自分がなんでその言葉を書いたのかわからないくらいじゃないと、無意識の意識まで飛べてないんじゃないかって思うようになってからは、自分の書いてる言葉を許せるようになりました。
「なんでこの一文なんですか?」って聞かれて、答えられないのって、音楽家としてどうなんだろうと思うこともあったんです。でも、自分がその言葉を書いたり、そこにギターのリフを入れたとき、その瞬間には確実に意味があって。それは言葉で説明できないからこそ、純粋に自分の欲求に従って生み出せたんじゃないかと思えるようになってからは、それが自分の書き方なのかなって。
Maison Book Girlのバンドセットでほとんど変拍子をやっていて、時雨で6拍子をやったらかっこいいんじゃないかと思って。(ピエール中野)
―345さんやピエールさんが「こういうの作ってみたら?」って提案することはないんですか?
TK:僕がそれを引き出すことはあります。大体「激しいやつ」って言われるんですけど(笑)。
中野:速くて激しいやつ(笑)。
345:ゴリゴリに激しいやつ(笑)。
中野:あとは自宅の電子ドラムで試しにドラムパターンをいくつか録って、送って、「これでお願いします」って。
TK:「最近(中野のなかで)流行ってるフレーズちょうだい」って。
―今回そうやってできた曲ってありますか?
中野:“Chocolate Passion”の元になってるフレーズはそうですね。Aメロが6拍子になってるんですけど、TKが自発的に6拍子を作ることはあまりないので。
TK:僕のなかに「拍子」の感覚がなくて、インタビューで6拍子だって初めて知りました(笑)。
中野:僕、Maison Book Girlのバンドセットをやっていて、あそこはほとんど変拍子だから慣れてきて、時雨で6拍子やったらかっこいいんじゃないかと思って。なおかつ、すげえ速くしようと思って、BPM200くらいでいくつかパターンを送ったら、この曲が返ってきて。すげえ曲になったなと。
―ちなみに、バレンタインデーに出るアルバムのリード曲に「Chocolate」という単語が入ってることに関して、ピエールさんから一言いただけますか?(笑)
中野:僕がタイトル付けたわけじゃないですからね。「頼むよ!」とか言ってないですよ(笑)。いろんな憶測があると思いますけど……。
TK:どれがリード曲になるかとかも考えて作ってないので、最後に曲を並べたときに、どの曲でもこのアルバムを表せるとは思ったんですけど、結果的に発売日がバレンタインデーだという偶然、いや必然に引き寄せられていって……。
―Perfumeのライバルになったと。
中野:あ、言いましたね。
―出てこなそうな流れだったんで、僕のほうから言っちゃいました(笑)(参照記事:ピエール中野が愛を込めて語る、アイドル論。なぜハマったのか?)。
中野:痺れを切らせましたね(笑)。
自分の感覚としては、アルバムのインタビューで、「最高傑作です」って言える気がまったくしないんです。(TK)
―「歌詞も瞬間瞬間でしか書いてない」という話でしたが、ラストに収録されている“#5”は表現することそのものに向き合った歌詞のように感じられます。「果たして、これがいつまで続くのか? 苦しさもあるけど、でも作らずにはいられない」という。最後に<鮮やかな夕景達よ>というフレーズが出てくるのにもグッときました。
TK:自分は手の届かないものでしか自分を覚醒することができないところがあって、そういうものを掴もうとするんですけど、掴んだらまた離れていってしまう、みたいなことの連続なんです。しかも、掴んだら自分が強くなるように思ってたけど、よく考えたら逆に弱くなってる気もして。
でも、もしそこで自分が弱くなっていたとしても、またそこで自分が作れるものを作り出さなきゃいけない。そういうジレンマを言葉にしたいなと思って、言葉先行で書いた曲です。
―言葉先行で書くことは珍しい?
TK:あんまりそういう書き方はしないんですけど、今回で言うと“ten to ten”と“#5”、まさにおっしゃっていただいた2曲に関しては言葉先行で、わりと明確な意志を持って書きました。
今の自分とシンクロする部分を等身大で書いてる歌詞ではあったりするので、オブラートに包まず出してるっていうのは、『#4』には少なかった要素かもしれないです。こういう剥き出しな部分があるのは、時雨としては新しい……ってほどではないにしろ、昔は見せられなかった部分が出てきているのかな。
―前のアルバムタイトルが『i’mperfect』(2013年4月)だったのは、自分の理想に到達できない、未完成の辛さが常にあるということが背景にあったと思いますが、それは今でも変わらない?
TK:結局自分が追い越せるものには興奮しないんだと思うんです。掴みきれないからこそ続けられる。自分の感覚としては、アルバムのインタビューで、「最高傑作です」って言える気がまったくしないんです。決して「駄作を作ってしまった」ということではなくて、「まだ届かない」という印象が常にあるから。
なかなか超えられないからこそ作ってるというのもわかってますし、でも超えたい、掴みたいと思ってるのもわかってる。その苦しさはやっぱりありますね。そういう苦しさって、自分が自分に対して作り出してるものだと思うんですけど、逆に言えば、その苦しさがなくなってしまうと、人に届くものも届かなくなってしまうのかなとも思うんです。
死ぬときパッと後ろを向いて、それが一本の道になってたらいいなって。(TK)
―最後に改めて、「バンドを続けること」についてお伺いしたいです。今日最初に話したように、15年前と音楽を取り巻く環境が大きく変わって、最近だとフェスだストリーミングだという話題も多い。そういうなかで、ただ「曲を作って、ライブをやる」ということを続けているバンドの尊さを改めて感じていて、時雨はまさにそういうバンドだと思っています。なので、時代の変化も踏まえつつ、「バンドを続けること」をどのように考えているか、一人ずつ話していただけますか?
345:バンドを続けること……先々のことを私はなにも考えていなくて。そのときにかっこいい音楽ができればいいっていうだけのことを、15年間続けてきている感じで……。
中野:先のことはわかんないですよね。結局今の自分になにができるかに向かっていくのが、続けていくことにつながるんじゃないかなと思う。なにが起こるかなんて誰からないから、そこを考えてもしょうがないっていうのが、持論としてずっとあります。
あとはどれだけ執着を持っているか。TKの場合は自分の表現にものすごい執着があるからこそ、こういう作品になってるし、それに対して僕ら二人は、TKの出してきたものに対してどういうアプローチをしていくのかに執着がある。「続けていきたいから」っていうよりは、執着ありきで、後付けで「続けるべき」になっているんだと思います。
TK:自分のなかに「続ける」という概念がそもそもなくて。楽曲でいったら5分、アルバムでいったら40何分とか、その時間をバンドで共有してるだけ。そのなかにそれ以外の意図はないですし、その「時間を共有する」ということが、このバンドにとって一番重要なことなんです。僕が「共有したい」っていう時間を二人に聴かせることができるかどうか。
そういう自分の姿勢に対して、二人とも「続ける / 続けない」という意識がないのは、一番健全な状態だと思います。「続ける」という概念がないから、「終わる」と思ったこともないですし。
―なるほど。
TK:僕たちは瞬間の連続のなかでしか曲を作ったり、ライブをしたりしていなくて、それを人が見たら、結果的に「続けてる」って見えるだけ。僕らの感覚としては、ただそのとき「鳴ってる」というだけで、後ろを振り返ってみたら、15年鳴ってたんだなっていうくらいなんです。
ずっと目の前に道がないようなところを、なんとなくしがみつきながら走ってきたので、死ぬときパッと後ろを向いて、それが一本の道になってたらいいなって。本当に、それくらいにしか思ってないんですよね。
- リリース情報
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- 凛として時雨
『#5』初回生産限定盤(CD+DVD) -
2018年2月14日(水)発売
価格:4,212円(税込)
AICL-3479/80
※トールサイズ、デジパック仕様[CD]
1. Ultra Overcorrection
2. Chocolate Passion
3. Tornado Minority
4. Who's WhoFO
5. EneMe
6. ten to ten
7. Serial Number Of Turbo
8. DIE meets HARD
9. High Energy Vacuum
10. #5[DVD]
“Chocolate Passion” Music Video with Making Passion
“#5” Music Video
DIE HARD RADIO Season 2
- 凛として時雨
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- 凛として時雨
『#5』通常盤(CD) -
2018年2月14日(水)発売
価格:3,240円(税込)
AICL-34811. Ultra Overcorrection
2. Chocolate Passion
3. Tornado Minority
4. Who's WhoFO
5. EneMe
6. ten to ten
7. Serial Number Of Turbo
8. DIE meets HARD
9. High Energy Vacuum
10. #5
- 凛として時雨
- イベント情報
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- 凛として時雨
『Tour 2018“Five For You”』 -
2018年3月3日(土)
会場:石川県 金沢 EIGHT HALL2018年3月4日(日)
会場:新潟県 LOTS2018年3月11日(日)
会場:東京都 Zepp DiverCity2018年3月17日(土)
会場:宮城県 仙台 GIGS2018年3月21日(水・祝)
会場:北海道 サッポロファクトリーホール2018年3月25日(日)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside2018年4月7日(土)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO2018年4月8日(日)
会場:香川県 高松 festhalle2018年4月14日(土)
会場:福岡県 DRUM LOGOS2018年4月15日(日)
会場:熊本県 B.9 V12018年4月21日(土)
会場:愛知県 Zepp Nagoya2018年4月30日(月・祝)
会場:東京都 Zepp Tokyo料金:立見4,860円 2階席5,400円(共にドリンク別)
※新潟公演、札幌公演はドリンク代なし
※2階席は東京2公演、宮城公演、大阪公演のみ
※高校生以下は学生証など提示で500円割引
- 凛として時雨
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- 凛として時雨
『Tour 2018 “Five For You ~Vacuum The Hall Edition~』 -
2018年6月1日(金)
会場:大阪府 フェスティバルホール
2018年6月11日(月)
会場:東京都 東京国際フォーラム ホールA料金:各公演 全席指定 5,400円
※高校生以下は学生証など提示で500円割引
- 凛として時雨
- プロフィール
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- 凛として時雨 (りんとしてしぐれ)
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TK(Vocal&Guitar)、345(Vocal&Bass)、ピエール中野(Dr)。2002年、埼玉にて結成。男女ツインボーカルから生まれるせつなく冷たいメロディーと、鋭く変幻自在な曲展開は唯一無二。プログレッシブな轟音からなるそのライブパフォーマンスは、冷めた激情を現実の音にする。
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