陽性の魅力に富んだパーティーラップを武器に、シーンの枠組みを越えて注目を集めている四人組ヒップホップクルー・JABBA DA FOOTBALL CLUBが、3月14日にニューE.P.『FUCKING GOOD MILK SHAKE』をリリースする。 “MONKEYS”を除く楽曲は、外部のトラックメイカーがビートを提供しているという点においても、彼らにとって大きな挑戦作と言える。
中でも特筆すべきはTempalayのキラーチューン“革命前夜”をサンプリングしている“月にタッチ”だ。原曲の印象深いメインフレーズのループを採用したフックを軸に、メロウな浮遊感をおおいに活かしたトラック。そのうえで展開されるマイクリレーは実に心地よく、JABBA DA FOOTBALL CLUBとTempalayがジャンルを跨ぐ同時代の感覚や気分においてナチュラルに共鳴していることがわかる。
この曲の誕生を記念して実現したこのJABBA DA FOOTBALL CLUBのメンバー全員とTemapalyのフロントマン・小原綾斗の対談記事においても、ヒップホップクルーとバンドマンが分かち合う同時代性というものを感じてもらえると思う。
もともとRIP SLYMEがめっちゃ好きで。ジャバにも似た雰囲気を感じてるのかもしれない。(小原)
—JABBA DA FOOTBALL CLUB(以下、ジャバ)とTempalayの付き合いはいつから始まったんですか?
NOLOV:最初は『ビートマ』(『BEACH TOMATO NOODLE』)だよね?
小原:一昨年にTempalayとドミコの共同企画で『BEACH TOMATO NOODLE』という野外フェス的なイベントを開催したんです。TENDOUJIも出てくれて。ジャバとは、そこが初対面でしたね。
NOLOV:そのときの僕らはビートマ周りで友だちが全然いなかったので、呼んでもらえたことにビックリしたし、嬉しかったですね。そこでTempalayのライブを観て、めちゃくちゃカッコよくて、みんなで「ヤバくね?」って驚きました。ライブの余韻に浸りたくて、帰りの車の中でも聴いたもんね。
NOLOV、ROVIN、BAOBAB MC、ASHTRAY(JABBA DA FOOTBALL CLUB)、小原綾斗(Tempalay)
ASHTRAY:そのあとは『Shimokitazawa SOUND CRUISING』でも会ったりしたよね。
小原:そのとき、仲のいいTENDOUJIとジャバのライブのタイムテーブルが被っていたんだけど、俺はジャバを観に行ったんですよ。まだそんなに仲よくなかったのに(笑)。
BAOBAB:おおっ!
—それは、『ビートマ』で観たジャバのライブの印象がよかったから?
小原:そうっすね。普通にジャバの曲も好きやったんで。いや、曲というか、この四人の雰囲気が好きで。
—クルー感みたいな?
小原:そう、クルー感。それはべつに、仲よくないときから好きやった。僕、もともとRIP SLYMEがめっちゃ好きで。ジャバにも似た雰囲気を感じてるのかもしれないですね。本人たちは誰かに似てるって言われたらイヤかもしれないけど。
ROVIN:イヤな気持ちはしないよ。
小原:なら、よかった。ジャバにも、RIP SLYME(以下、リップ)とかTERIYAKI BOYZ®に通じるものを感じるんですよね。
—リップやTERIYAKI BOYZ®は日本語ラップが好きというよりは、ポピュラーミュージックのひとつとして聴いていた感じですか?
小原:そうっすね。小学生のときだったので、ヒップホップというジャンルを意識して聴いていたわけではなかったんです。僕の地元(高知県)はめちゃめちゃ田舎で、ビデオショップの一角にあるCDレンタルをよく利用していたんですよ。そこで借りるCDはオリコンランキングに並んでる曲ばかりで。リップの『BLUE BE-BOP』(2002年)とか借りたのを覚えてますね。
—当時聴いていたリップと似た感覚をジャバが思い出させてくれたと。
小原:そうなんですかね?
NOLOV:そうなんだと思うよ、俺は!(笑)
小原:でも、ジャバもリップのこと好きでしょ?
NOLOV:超好きだよ。
ROVIN:僕らはFUNKY GRAMMAR UNIT(以下、FG。1990年代にRHYMESTERを中心に、RIP SLYME、EAST END、KICK THE CAN CREWなどで結成されたクルー)が超好きで。KREVAの新しい動画がYouTubeに上がったりすると、視聴数が1000もいってない段階からみんなチェックしてて、「見た?」って話す、みたいな。
—それこそジャバの新作『FUCKING GOOD MILK SHAKE』の1曲目“MONKEYS”のミュージックビデオ(以下、MV)は、FG感のあるパーティートラックで。MVでもKICK THE CAN CREWのオマージュと思われるシーンがいくつか出てきたり。
BAOBAB:“MONKEYS”のトラックは、ファンクとかミドルスクールなトラックにラップを乗せたくて、そこにNOLOVがDe La Soulを意識した感じにしたいと言って作っていって。
—ああ、それもわかります。FGの血に流れてるニュースクール、Native Tongue(ネイティブ・タン:オールドスクールやヒップホップを印象付ける、「マッチョ」「ゴールドネックレス」「銃」などの要素を排除した、新しい路線を切り開いたヒップホップクルー)のニュアンスというか。
NOLOV:そうそう、FGよりさらに前へ先祖返りする感じで。曲調としてはDe La Soulの“Me Myself And I”を意識していて。
—世代的にどういう流れでFGとかDe La SoulをはじめとするNative Tongue周辺のヒップホップが好きになったんですか?
NOLOV:KICK THE CAN CREWやRHYMESTERを小学生のときに知って、あとからFGの存在を知るんですよね。それで、FGが超いいってなって。その流れでNative Tongue周辺も聴き始めたんです。
ROVIN:俺は、最初はリップの“楽園ベイベー”だったな。中1のとき、忘れもしないです。ヒップホップとか関係なく聴いていて、単純にカッコいいなって。
—FGのどんなところにシンパシーを覚えたんですか?
NOLOV:やっぱりバンドって音楽的にすごく面白いんですよね。そこには、僕らにないアイデアがあったりして。今、バンドセットのライブをやるラッパーが増えてますけど、それってバンドサウンドならではのグルーヴが出るからだと思うんです。だから、Tempalayみたいなカッコいいバンドと対バンしたときに俺たちができることって、この四人がいかに堂々と楽しく立ち振る舞って盛り上げられるかしかなくて。
そういうときにFGの人たちのライブ映像を観たりすると、前はわからなかったけど、今だから理解できるポイントもあったりして。KREVAがバンドセットで積極的にライブしてた理由も今ならすごくわかる。そのうえで俺たちは、今はマイク4本とDJでバンドとも真正面からで戦いたいと思うし。
キャラ被りしない今のバンドシーンやヒップホップシーンってめっちゃ漫画っぽいし、『TOKYO TRIBE』的だなって。(NOLOV)
—ジャバはOMAKE CLUBに所属する前は、ヒップホップシーンの人たちと繋がりはなかったんですか?
NOLOV:全然なかったです。パーティーも自分たちで始めるしかなくて。自分たちのパーティーにはヒップホップのグループだけじゃなくてバンドも呼んでいました。ジャバのパーティーを自分たちなりにFGみたいな場所にしたいと思っていて。
で、そのころに『ビートマ』の誘いをもらったんです。自分たちのパーティーにバンドは呼んでいたけど、ちゃんとバンドシーンとコネクトしたことはなかったから、すごく刺激的で楽しかったんですよね。
—今は自分たちのパーティーにどういう人たちをゲストに呼びたいと思ってますか?
NOLOV:ゲストをお願いする基準は、曲がカッコいいとか、ライブが超いいとか、めちゃシンプルなものです。
ROVIN:主催するパーティーはだいたい俺らがトリなんですけど、トップバッターのライブからどんどん気が滅入ってくるのが理想ですね。ゲストに呼んだやつらのライブがよすぎるっていう。
ASHTRAY:お客さんに対しても「こいつらカッコいいから一緒にライブ観ようぜ!」ってなる。
—Tempalayもまた、対バンするにあたってちゃんと共鳴できる相手じゃないと一緒にやりたくないというマインドを貫いてるなと思いますが、どうですか?
小原:それはそうですね。カッコいい人としか一緒にやりたくないです。僕は自分たちの居場所云々はわからないですけど、そこは大切にしていますね。
—綾斗くんが思う「カッコいい」の基準を言語化できますか?
小原:難しいけど、その人が持ってる雰囲気ですね。媚びてない人が好きです。あとは、自分の言葉やスタイルを持ってる人ですね。
—ジャバはそれを持ってる?
小原:ジャバさんは雰囲気が好きですね。相当なクールガイズだと思います(笑)。
NOLOV:またまた(笑)。俺も言いたいわ。「カッコいいやつとしかつるんでない」って(笑)。でも、この世代が面白いなと思うのは、ヒップホップクルーもバンドもみんなキャラが立っててることなんですよ。どんなやつらがいるのか本当にわかりやすいと思うんですよ。
『ビートマ』でも、TempalayとドミコとTENDOUJIが揃うだけでキャラが全然違って面白い。ヒップホップシーンでもKANDYTOWNがいれば、BAD HOPもいて。
—SUMMIT勢もいれば、kiLLa CrewやYENTOWNもいたり。
NOLOV:そうなんですよ。キャラ被りしない今のバンドシーンやヒップホップシーンってめっちゃ漫画っぽいし、これって『TOKYO TRIBE』的だなって。タイプの違ういろんなやつらがいて、いろんなテイストの曲を聴けるのは、リスナー的にすごく贅沢な時代だと思いますね。
—今、名前が挙がったバンドやクルーを同列に聴いているリスナーも少なくないと思うし、サブスク的な時代の様相とも言えるかもしれないですね。
ROVIN:だから、僕らもキャラを貫こうと思っていて。明るく、楽しく、ボケるみたいな(笑)。さっき撮影していても思ったけど、写真を撮られてるときにシュッとクールにはできないし、やっぱり照れてボケちゃうから。でも、それが俺らのよさだと思うんです。
“革命前夜”は、“今夜はブギー・バック”みたいな曲を作りたいと思ってできたんですよ。(小原)
—一見なかなか繋がりが見いだせなさそうなジャバとTempalayが、今回“月にタッチ”でサンプリングというカタチでナチュラルに交わっているのも、今の時代っぽいのかなと思いますね。
小原:“革命前夜”は、“今夜はブギー・バック”みたいな曲を作りたいと思ってできたんですよ。素直に、やっぱええ曲やなと思うんですよね。こういう曲、最近ないなって。すべてのジャンルを巻き込んで社会的にも大きな影響力を持ってる曲で、誰もが歌いたくなる曲。
—まさにクラシック中のクラシックですよね。
小原:そう。僕は、過去の影響力のある曲と戦える作品を作りたいと思ってるんですね。たとえば山下達郎さんの“クリスマス・イブ”も毎年クリスマスシーズンに流れるじゃないですか。そろそろ自分がそれを変えたいなと思うんですよ。そういう無謀な挑戦はしていきたいなって。
—“革命前夜”は“今夜はブギー・バック”を更新したいと思ったと。
小原:そう。だから、“革命前夜”は誰かにラップを入れてほしいとも思いながら作ったんです。それでBPMも“ブギー・バック”に近かったり、ループを使ったりしていて。だから、今回ジャバが使ってくれて「あざっす!」という感じでした。
ROVIN:綾斗から「“革命前夜”で曲作ってよ」って言われて。“革命前夜”はTempalayのアンセムだから、「ほんとに作っていいの?」って思ったんですけど、嬉しかったですね。
—Tempalayと“革命前夜”に対して、愛のある曲になった。
ROVIN:曲が完成したときに俺ら史上、一番カッコいい曲ができたって思いましたね。
小原:アンセムだと思います。ライブの最後にやられたらグッときちゃうな。
—“革命前夜”と“月にタッチ”が相乗効果でクラシックな曲になったら最高ですよね。
ROVIN:アツいっすね。
小原:そうなったら最高です。
「Tempalayに乗っかったな」って言われたくなかった。(NOLOV)
—今回のEPで、ジャバが“MONKEYS”以外のすべてのビートを、%CさんやTSUBAMEさん(TOKYO HEALTH CLUB / OMAKE CLUB主宰)をはじめとする縁の深い外部のトラックメイカーに提供してもらった理由はなんだったんですか?
JABBA DA FOOTBALL CLUB『FUCKING GOOD MILK SHAKE』ジャケット(Amazonで見る)
NOLOV:『OFF THE WALL』(2ndアルバム、2017年リリース)まではずっとBAOBABがトラックを作っていたんですよ(名義はHIROKI TOYODA™)。それまではずっとTSUBAMEさんに「他のトラックメイカーに頼るな。誰かのカッコよさに乗っかるのはやめろ」って言われていて。
—でも、このタイミングだったら、外部から提供してもらったビートでもジャバの色を出せると思ったと。
NOLOV:そうなんですよ。TSUBAMEさんの言う通りだったなって。やっと僕たちの音楽的なレベルが上がったかなと思っていて。ノリで作った1stアルバム『QUEST』(2015年)があって、ようやく本気でラップと向き合った2nd『OFF THE WALL』(2017年)があって。
NOLOV:今回のEPでは人に提供してもらったトラックがあって、メンバーがそれぞれのラップについて言い合いながら制作を進めていったんです。だから“月にタッチ”でも、Tempalayの“革命前夜”に食われないラップができたと思います。
「Tempalayに乗っかったな」って言われたくなかったし、“革命前夜”があきらかな名曲だから、サンプリングするなら相当いい曲に仕上げないといけないという使命感がありましたね。僕らはただでさえ、チャランポランなふうに見られるので、曲はちゃんとカッコよくしないといけないと思ってるんですよね。
—説得力のあるパーティーラップをするためにも獲得しなければいけない音楽力があると思います。
NOLOV:そうなんですよね。ヒップホップ的な視点で見たら、ジャバは逆にアウトローなので。マッチョでもないし、ストリートでもないし、オシャレでもないから。そこに俺らの居場所はないので。だったら、曲とライブがカッコいいという超シンプルなところで戦うしかないと思っています。
だから、2018年はめっちゃいい曲を作って、めっちゃいいライブをしたいなって。僕らの音楽の味付けは人間性でありキャラだと思うからこそ、そこはどんどんスキルを上げていきたいですね。
- リリース情報
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- JABBA DA FOOTBALL CLUB
『FUCKING GOOD MILK SHAKE』(CD) -
2018年3月14日(水)発売
価格:1,080円(税込)
OMKCD-00141.MONKEYS
2.THINK RICH, LOOK GOOD feat. Kick a Show
3.MESSI COOL
4.LUCKY PUPIL RADIO
5.MIDNIGHT GOOD GOOD MOOD feat. KEMMY
6.月にタッチ
- JABBA DA FOOTBALL CLUB
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- Tempalay 『from JAPAN 2』(LP+7インチアナログ)
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2018年3月28日(水)発売
価格:4,320円(税込)
PLP-6937/81.TIME MACHINE
2.新世代
3.かいじゅうたちの島
4.革命前夜
5.夏の誘惑
6.my name is GREENMAN
7.ZOMBIE-SONG feat. REATMO
8.made in Brazil
9.インスタントハワイ
10.深海より
11.San Francisco
12.革命
13.それじゃまた
- プロフィール
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- JABBA DA FOOTBALL CLUB (じゃば だ ふっとぼーるくらぶ)
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2014年結成。オマケクラブ所属。NOLOVとBAOBAB MCが悪ふざけではじめたラップユニット。ASHTRAYとROVINが加入後、正式に活動を開始する。2015年、1st Album「QUEST」を枚数限定で発売。都市部の若い世代を中心に話題となり完売。サマーソニックや米キャンプなど大型フェスからクラブイベントまで、ジャンル・昼夜問わず、ロックしている。2017年3月に、2nd Album「OFF THE WALL」発売。リード曲”STAY GOLD, LIFE GOES ON”で、知名度を広げる。これから目が離せないクルー。
- Tempalay (てんぱれい)
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東京を中心に活動する、小原 綾斗(オハラ・リョート/ Gt&Vo)、竹内 祐也(タケウチ・ユウヤ / Ba)、藤本 夏樹(フジモト・ナツキ / Dr)による3ピースロックバンド。ライブはサポートメンバーにAAAMYYY (エイミー / Cho&Syn)を加えた4人編成で行う。結成から僅か1 年にしてFUJI ROCK FESTIVAL '15「ROOKIE A GO-GO」に出演。西海岸やカナダの海外インディーシーンの影響を感じさせる極彩の脱力系サウンドに中毒者が続出。話題と注目が集まる中で2度目の出演となったFUJI ROCK FESTIVAL'17では、小原がワクワクしすぎて右指を骨折。そんな緊急事態に仲間のギタリスト達が集結し、1曲ずつギターをバトン代わりに演奏したステージが多くの人の胸を打ち、ちょっとした伝説となる・・・!2018年3月28日には、2ndアルバム『from JAPAN 2』のアナログ盤をリリース!
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