2017年の初め、湖池屋のテレビCMに突如登場し、その圧倒的な歌声によって多くの人々を驚かせた「歌うま高校生」鈴木瑛美子。その後、LINE RECORDSの第1弾シンガーとして、絢香“みんな空の下”やBeyonce“Listen”のカバーをリリースしてきた彼女が、「君の瞳に恋してる」の邦題でお馴染みの“Can't take my eyes off of you”カバーをLINE RECORDSからリリースする。
この春、いよいよ高校を卒業する彼女は、どんな環境のもと、どのような思いで歌を続けてきたのだろうか。そして、レーベルから引く手あまたの状況の中、LINE RECORDSから曲をリリースした理由とは? 「2020年の東京オリンピックで歌うのが夢」という彼女に話を聞いた。
中学時代、私のコートネームは「負けてたまるか」の「ルカ」でした。
—いまから約1年前、湖池屋「KOIKEYA PRIDE POTATO」のテレビCMに登場し、制服姿でワイルドな歌声を響かせた鈴木さんですが、そのCMの印象とは、だいぶ違いますね。
鈴木:え、そうですか? 歌になると、ガラッと変わるんですよ(笑)。
—当初は、ごく普通の「歌うま高校生」という触れ込みだったように思いますが、よくよく知っていくと、いわゆる普通とはちょっと違う環境で育ったそうですね。
鈴木:環境的には、全然普通ではないですね(笑)。4、5歳の頃から、ゴスペルディレクターを務める両親と3歳年上の姉と一緒にステージで歌っていたので。それくらい音楽は常に身近にあって、物心つく前からずーっと歌っていました。
ただ、ちゃんと学校に行ったり勉強したりという意味では、普通ですよ。歌はやってましたけど、いわゆる「芸能界」は、まったく意識してなかったので。
—学校では何をやられていたのですか?
鈴木:中学校から、ずっとバレーボール部です。髪もベリーショートだったし、いかにも「バレー少女」という感じで(笑)。私が中学に入ったとき、ちょうど全日本中学のコーチだった人が顧問の先生として入ってきて、ガッツリ練習に取り組んでました。
ただ、2年生に上がるときに、私が腰を痛めてバレーができなくなってしまって……。治す期間が半年ぐらい掛かったんですよね。LINE RECORDSからカバーを出させてもらった絢香さんの“みんな空の下”は、その時期に聴いていて、すごい勇気をもらった曲なんです。
—中学時代を振り返ると、どんな学生でしたか?
鈴木:とりあえず、めちゃくちゃうるさい子だったと思います(笑)。私、生活の中でも、ずーっと歌っているので。周りから見ると「なんか歌ってる子」って感じだったんじゃないかな。
あと、負けず嫌いなんだと思います。中学校の頃、顧問の先生がバレー部の生徒に、練習や試合で呼びやすいように、大体2文字でその子に合うコートネームをつけてくれたんです。たとえば、背は小さいけど頑張り屋さんのキャプテンには、視野や心を大きく持つように「ダイ」っていうコートネームをつけたり、他の子には「昨日より今日、今日より明日」っていう意味で「ヨリ」ってつけたり。で、私は「ルカ」って呼ばれてたんです。「負けてたまるか」の「ルカ」(笑)。
—すごい勝ち気ですね(笑)。
鈴木:先生からは、そう見えてたみたいで(笑)。ただ、自分でもピッタリだなって思ったし、その名前で生きてこられた感じがあって。それまでは、自分のことをあまり負けず嫌いとか思ってなかったんですけど、他人からそう見られているんだったら、「ここは頑張るしかないっしょ」って思ったり。このコートネームのおかげで、「負けてたまるか」にどんどん自分が近づけた感じがありますね。その名前には、いまも助けられています。
最近になって、ようやく歌や自分の声について考えるようになりました。
—高校でも、バレーは続けていたんですか?
鈴木:そうですね。中学のときに腰を痛めたりとかいろいろあったけど、それでもバレーを続けたいと思って。やっぱり、ちょっと悔しかったんですよね。結構リーダーシップをとってやっていたにもかかわらず、それが途中で終わってしまったので。
だから、迷いながらも、高校でもバレー部に入って。そしたら、チームメイトも最高だったし、もうホントにいい高校生活を送れたんです。それは歌を最優先にしなかったからだと思うので……その判断は、正しかったのかなって思います。
—中高学時代はバレーを一生懸命やっていて……どこかのタイミングで、歌に対する意識が変わったりしたんですか?
鈴木:最近になって、ようやく歌や自分の声について考えるようになったんですけど、前はホントに何も考えてなかったですね。「将来の夢はアーティストです」とは言ってたんですけど、いますぐやろうとは思ってなくて、「いつかは、そうなりたい」って感じで。
—変わるきっかけは何だったんでしょう?
鈴木:高校1年の夏に、『全国ゴスペルコンテスト ゴスペル甲子園』という大会に出場して、優勝したんです。
ひとりきりで大勢の前で歌う経験はそれが初めてで。そもそも、歌で人と競い合ったことが、全然なかったんですよね。それまでは、家族みんなで楽しく歌うものだと、ずっと思っていました。だから、そういう大会があることさえ知らなくて。
—たまたま出場したら、優勝してしまったみたいな。
鈴木:ホント、そんな感じでした。でも、多分そのときぐらいからです。ちゃんと自分で、こうやって表現したいとか、そういうことを考えるようになったのは。
ちなみに、そのときに歌ったのがBeyonceの“Listen”だったんです。これも“みんな空の下”と同じで、すごく思い入れが強い曲だから、LINE RECORDSでカバーを出させてもらおうと思ったんです。
制服を着て地元を歩いていて、「あれ、あの子って」となると、どうしていいかわからなくなりました。
—その後、2016年に『関ジャニ∞のThe モーツァルト 音楽王No.1決定戦』に出演するんですよね?
鈴木:そこからですね。ホントに意識が変わったのは。本選は全国放送だったので、もう反響がすごかったし。それがきっかけになって、湖池屋さんからCMのお話をいただいたりもしたので。
—なるほど。あのCMのインパクトはすごかったです。その後は街で声をかけられたりして、大変だったんじゃないですか?
鈴木:大変ではなかったですけど、不思議な感覚でしたね。制服を着て地元を歩いていると、「あれ、あの子って」みたいな感じになるし、それに気づいたとき、どうしたらいいかがわからなかったです。反応してあげたほうがいいのか、気づいてないフリをしたほうがいいのか。「どうしよう、このまま歩いていいのかな」って(笑)。
—「デビューしませんか?」みたいな話も、結構あったんじゃないですか?
鈴木:以前から、学業を優先するって決めていたんですよね。自分で頑張って勉強して入った高校だったし、制服も可愛いから、なるべく着たかったし(笑)。中学もそうやってきたから、高校もちゃんと学校生活を送りたいなって思っていたんです。
4月からは高校生じゃなくなるけど、これからどんどんレベルアップします。
—LINE RECORDSからのリリースを選んだのは、どんな理由からだったのですか?
鈴木:私の夢は、2020年の東京オリンピックで歌うことなので、そのためにはいまからいろいろやっていかないと、とは思って。でも、やっぱり学業を優先したいから、どうしようっていう……そういうことも、LINE RECORDSさんは配慮してくれたんです。できるときに、私が歌いたいと思った曲を歌わせてくれている。なので、いまの環境はすごくありがたいと思っています。
—カバー曲を歌う際には、どんなことを意識しながら歌っているのでしょう?
鈴木:“Listen”に関しては、映画『ドリームガールズ』(2006年公開、ビル・コンドン監督)で知ったんですけど、映画を見ると「この人は孤独を感じているんだ」とか、「何かを乗り越えたり、何かを捨てたりしながら生きているんだな」って登場人物に共感できる。そういう映画のストーリーと自分のバックグラウンドを重ねながら表現するのが好きですね。
—同じ『ドリームガールズ』の“I Am Changing”も歌っていますよね。
鈴木:そうなんです。『横濱ゴスペル祭2016』にゲスト出演した高校2年生のときに歌ったんですけど、“Listen”も“I'm Changing”も中学の頃、腰を痛めていたときにグッと来た曲で……その思いを、高1、高2になって、やっと自分の歌で表現することができたんです。
—もしかして、今回リリースする“Can't take my eyes off of you”のカバーは、映画『ジャージー・ボーイズ』(2014年公開、クリント・イーストウッド監督)を見て?
鈴木:そうです。『ジャージー・ボーイズ』を見て、この曲の中に、The Four Seasonsの四人の人生が、全部うまく表現されているように思ったんですよね。というか、最初は四人がどういうアーティストなのかわからないまま見ていたんですけど、映画の中でこの曲を歌い始めたときに、「あ、これって、この人たちの曲なんだ」と思って。
—「君の瞳に恋してる」の邦題で、日本でもお馴染みの曲ですもんね。
鈴木:そう、この曲ってすごく有名で、いろんな方がすでにカバーしているじゃないですか。でも、映画を見ながら、自分が歌ってる姿も想像できたんです。自分だったら、この曲をどう歌うかなって。それで、いつか自分で歌いたいなと思っていたら、たまたま今回こういう機会をいただいて。
—これまでの鈴木さんの曲はバラードアレンジが多かったですけど、今回はアップテンポの曲になりましたね。
鈴木:この曲に関しては、自分のものにしたいっていう思いが強かったかもしれないです。すでにいろんな方がいろんなアレンジでカバーされているので、ちゃんと自分っぽい感じにしたいなって。それで、父とアレンジャーの会田さんに、いろいろと相談して……。
—どんな相談をしたんですか?
鈴木:父との話し合いの中で、最初はやっぱりバラードというか、スロウな感じで入りながら、だんだん盛り上がっていくのがいいんじゃないかって話になって。あと、コーラスも全部自分でやったんです。だから、この曲に関しては、もう「鈴木瑛美子です!」っていう感じのアレンジになっていると思います。
あと、この曲の配信が3月23日なんですけど、これで終わりじゃないことが感じられるような……4月からは高校生じゃなくなるけど、「これからどんどんレベルアップしますよ」みたいところも、きっと感じ取ってもらえると思うんですよね。
鈴木瑛美子“Can't take my eyes off of you”ジャケット(サイトを見る)
私は芸能事務所にも入ってないし、自分のジャンルもまだ定まってない。
—ちなみに、今後はどんな活動を予定しているのですか?
鈴木:大学に進学して、語学を学ぼうと思っています。ホントは現地に行ったほうがいいのかもしれないけど、いろいろ考えた上で、時間の使い方として、日本の大学に行くのがベストだと思ったんですよね。音楽もやって、友だちと好きなこともやって……それが全部できるのは、やっぱり日本の大学に行くことなのかなって。
—ということは、引き続き音楽活動は、これまでのようにマイペースでやっていくと。
鈴木:そうですね。ツアーまではわからないですけど、コンサートはガンガンやりたいと思っています。ありがたいことに、「生で観たい」っていう声も多くいただいているので、その機会はなるべく作っていけたらいいなって。
こないだゲーム『ファイナルファンタジー』30周年のイベントに呼んでいただいて、東京国際フォーラムで『ファイナルファンタジー』の主題歌を歌わせてもらったんですけど、そこで初めて私のことを知ってくれたという方もやっぱり多くて……。
—新しいことに挑戦すると、テレビ出演とはまた異なる形で世界が広がっていきそうですね。
鈴木:私は芸能事務所にも入ってないし、自分のジャンルもまだ定まってないと思うんです。だから、まだまだいろんな曲にチャレンジしたい。「これ絶対合わないでしょ?」って思うような曲も、歌ってみたら意外とできるということが、たくさんあるんです。自由にやらせてもらっている中で、いろんな曲をやったり、いろんな場所に行ったりすることで、新しい自分を知る機会がどんどん増えているんです。
—なるほど。鈴木さんはこの先、どんな歌手になっていくんでしょうね。
鈴木:どうなんでしょう……それは、私も楽しみですね(笑)。ただ、歌うことは楽しいし、大好きなんですよね。なので、いまは2020年のオリンピック目指して、一つひとつの機会を大事にしながら、マイペースに歌っていけたらなって思っています。
- リリース情報
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- 鈴木瑛美子
『Can't take my eyes off of you』 -
2018年3月23日(金)配信リリース
- 鈴木瑛美子
- プロフィール
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- 鈴木瑛美子 (すずき えみこ)
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4歳の時から毎年、保育教材CDに歌手として参加、また実の家族のコーラスグループ「スギモト・ファミリー」の一員としてステージで歌ってきた。7歳の時には、自作(作詞・作曲)で「ヤマハ・なかよしソングフェスティバル」に3年連続で出場するなど才能を発揮。2012年3月フジテレビ「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦SP」では、The Jackson 5「I Want You Back」を歌い、全国の話題に。2015年には「全国ゴスペルコンテスト(ゴスペル甲子園)」でボーカル部門優勝に輝き、次世代を担うシンガーとして脚光を浴びた。2016年9月、テレビ朝日「関ジャニ∞のTheモーツァルト 音楽王No.1決定戦」では高得点を連発し「最強アマチュア女子高生」として大注目を集めた。2017年、スナック菓子メーカー「湖池屋」のTVCMに起用され、テーマ曲である「100% SONG」のMUSIC VIDEOが動画共有サイトで100万回再生を超え話題となった。その後、世界的デザイナー山本寛斎氏がプロデュースするファッションイベント「日本元気プロジェクト2017 スーパーエネルギー!!」に出演。圧倒的な歌唱力を披露した。そして7月、LINEの音楽レーベル「LINE RECORDS」第一弾シンガーとして「みんな空の下」カバーを発表。
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