若葉竜也×中島歩×吉村界人 20代の若手俳優たちの歩く、役者道

冨永昌敬監督の『素敵なダイナマイトスキャンダル』と、沖田修一監督の『モリのいる場所』――実在の人物を描いた2本の映画が立て続けに公開される。エロ雑誌の編集者として一時代を築いた末井昭と、「画壇の仙人」という異名で知られる画家・熊谷守一。「偉人」というよりも、むしろ「異人」と言うべき個性的な人物に焦点を当てた映画が次々と生み出される背景には、果たして何があるのだろうか。そして、それらの人物のユニークな「生」が、いまの時代にもたらすものとは何なのか。

この2作品に、それぞれ役者として出演するなど、その監督や現場の内実を知る若手俳優たち……中島歩、若葉竜也、吉村界人の3人に集まってもらい、それぞれの映画が持つ意味はもちろん、それらが射程する「いま」という時代のなかで、彼らが役者として目指すものについて語り合ってもらった。

僕と界人は、『サラバ静寂』という映画を一緒にやっていて……中島さんは、今日お会いするのが初めてです。(若葉)

―3人は、それぞれ面識や交流があるのですか?

若葉:僕と(吉村)界人は、『サラバ静寂』(2018年公開、監督は宇賀那健一)という映画を一緒にやっていて、そこからプライベートでも、たまに会ったりする感じで……中島さんは、今日お会いするのが初めてですね。

中島:初めてです(笑)。

吉村:僕も初めてです。

―では、自己紹介も兼ねて、「役者になったきっかけ」から、それぞれ話してもらってもいいですか?

中島:僕は日大の芸術学部の文芸学科に通っていて、そこで落語研究会に入っていたのが大きいかもしれないです。稽古したものを人前で披露して、ウケたり滑ったりするっていうのが面白くて、就活をするときになっても、普通に会社に務めるよりも、何か面白おかしく生きられたらいいなと思っていました。

大学を出たあとは、モデルの仕事とかをやりながら小劇場の芝居とかに出ているなかで、美輪明宏さんの舞台『黒蜥蜴』(2013年。中島は主役である雨宮潤一役として出演)のオーディションを受けたら、運よく合格することができて。そこからいまに至る道が、いろいろ開けてきた感じですね。

中島歩
中島歩

若葉:僕はもともと大衆演劇をやっている家で生まれ育ったので、「役者をやろう」と思ってやりはじめたわけではないんです。むしろ小さい頃は、こんな仕事、絶対嫌だと思ってました。

小さい頃から、いろいろな作品に出させてもらってはいたんですけど、10代の頃、廣木隆一監督の『4TEEN』(2004年。WOWOWドラマ「ドラマW」で放映)に参加したのが、役者をやっていく動機としては大きかったかもしれないです。そこでいままで感じたことのない高揚感みたいなものを感じて。でも、「役者をやるぞ!」みたいなことは一度も思ったことはないです。

若葉竜也
若葉竜也

吉村:僕は、映画はもちろん、絵や音楽やファッションなど、とにかく芸術全般が大好きなんですよね。だから、いまはたまたま役者をやってますけど、他の職業をやっていても、同じことを思って、同じようなことを言ってたと思います。

―役者をやるきっかけみたいなのがあったんですか?

吉村:4年ぐらい前に、すごくたくさん映画を観ていた時期があったんですけど、その頃やってた映画に、面白いと思う人があんまりいなかったからかもしれないです。だから、俺がなるんだ! みたいな。

―「塗り替えるのは僕らの世代」みたいな。

吉村:ああ……はい(笑)。まあでも、自分に正直に生きてるだけですよ。

吉村界人
吉村界人

本当はみんな、ちょっと危うかったり、生々しかったりするものを、映画のなかに求めているような気がして。(若葉)

―そんな3人が、それぞれ出演している映画、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(中島と若葉が出演)と『モリのいる場所』(中島と吉村が出演)が、立て続けに公開されます。1975年生まれの冨永昌敬監督、そして1977年生まれの沖田修一監督――40代の中堅監督が、末井昭さんや熊谷守一さんといった「過去の異人」を、いま描こうとしているのは、どうしてなんでしょうね? どちらも、監督発信の企画のようですし。

若葉:いまの時代って、何でも整っているものがいいとされるというか、視聴者がわかりやすいものを求めていると思い込んで、直線的に何かを作っている人が多いと思うんですよね。でも、本当はみんな、ちょっと危うかったり、生々しかったりするものを、映画のなかに求めているような気がして。

整理整頓されているものではなく、ある種いびつだったり、センセーショナルなものだったり、ちょっと外れた人生を送っているんだけど、あくまでも人間的な人たちを描いたものというか。そういうものを、みんなが求めているんじゃないかなって思うんです。特に若い人たちは。で、そういう感覚を、監督たちも、どこかで感じ取っているんじゃないですかね。

中島:いま若葉さんがおっしゃったように、特に『素敵なダイナマイトスキャンダル』のほうは、かなり思い切ったことをやっている人たちが、すごくたくさん出てくるんですけど、いろんなことに対する規制が厳しい現状だからこそ、そういうものを求めているところがあるのかなと。それは僕もちょっと思いますね。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』より
『素敵なダイナマイトスキャンダル』より

いまの時代というか状況に、違和感を感じているからこういう作品を作るんじゃないかと思う。(吉村)

―2作品とも、携帯電話やインターネットのない時代の話であるというのもポイントかもしれないですね。

若葉:そうですね。『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、場所と場所の距離感みたいなものがすごく面白いんですよね。いまは、東京から大阪までって2〜3時間で行けたりするじゃないですか。だけど、映画の舞台になった1970〜80年代っていうのは、もっと感覚的な距離感があって……そこにドラマチックなものが、いっぱい詰まっていたと思うんですよね。

末井さん自身も岡山の出身ですけど、そういう人が東京に抱く憧れとか、上京する覚悟って、いまとは全く違うと思うんですよね。人との距離感みたいなものも、インターネットがあるいまとは全然違う。そういうところが、いまは逆に新鮮に見えるんじゃないですかね。

若葉竜也
若葉竜也

吉村:僕も『素敵なダイナマイトスキャンダル』を観させてもらったんですけど、すごく面白かったです。やっぱり、いまの時代というか状況に、何か違和感みたいなものを感じているからこういう作品を作るんじゃないかと思うんです。その違和感を、過去を描くことによって浮き彫りにするというか。あと、この2作品って両方とも、ものを作る人が主人公の映画なんですよね。熊谷さんは画家だし、末井さんも最初は看板描きをやっていたし。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』より
『素敵なダイナマイトスキャンダル』より

『モリのいる場所』より
『モリのいる場所』より

吉村:そうやって何かを描く時間って、ある意味、自分と世界との距離感を確かめるというか、自分と対話して、自分の物差しを確かめているような感じがあるじゃないですか。特に熊谷さんの場合は、庭にある植物とか虫とかを、じーっと見つめながら、何かを感じている人だし。そういうところに、監督たちは、同じようにものを作る人間として、何かシンパシーを感じたんじゃないですかね。

吉村界人
吉村界人

冨永さんがやりたいことって一貫していて、要は人間をちゃんと描くってことだと思う。(若葉)

―両方の画に出演している中島さんから、それぞれの映画の中身について、簡単に説明してもらってもいいですか?

中島:両方とも、なかなか説明するのが難しい映画ですよね(笑)。

若葉:『素敵なダイナマイトスキャンダル』に関しては……冨永さんがやりたいことって一貫していて、要は人間をちゃんと描くってことだと思うんです。だから、登場人物たちが、みんなすごく生々しいんだと思います。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』より
『素敵なダイナマイトスキャンダル』より

若葉:僕、その前の『南瓜とマヨネーズ』(2017年)っていう映画も、冨永さんと一緒にやっていているんですけど、あの人ってすごく天邪鬼なんですよね。なので、スタッフも役者も、台本を読んで、こういう感じだろうなと想定して現場に行っても、それと全然違うことをさせられるっていう(笑)。

中島:(笑)

若葉:冨永さんの現場は、それがすごくいいんですよね。作品について言うと、単純に、この原作である末井さんのエッセイが面白いというか、あの人自身がすごく面白い。仮に末井さんがいまの時代に二十歳だったとしても、きっと何かを成し遂げていたと思うんです。そういうところに冨永さんも、反応したんじゃないですかね。

中島:あとこれは冨永さんが言っていたことなんですけど、原作エッセイを初めて読んだとき、自分の人生を肯定してくれる感じがあったみたいで。冨永さん自身の、自意識過剰なだけで、まだ何者でもなかった大学時代を、すごく肯定してくれた本だったとおっしゃっていたんですよ。

映画のなかに「お前ら、女の股に巣食う便所虫か!」っていう台詞があって、まったくその通りなんですけど(笑)、そういう人たちすらも、ちゃんと肯定している映画になっているというか。

―その一味を中島さんも演じてたじゃないですか。

中島:そうなんですよね(笑)。でも、そういう人たちを喜劇的かつ魅力的に描いているところに、この映画の面白さがあると思うんですよね。

左から:吉村界人、中島歩
左から:吉村界人、中島歩

『素敵なダイナマイトスキャンダル』より
『素敵なダイナマイトスキャンダル』より

いま、自意識でおかしくなっちゃってるような若い人は、きっと救われるところがあると思います。(中島)

―いわゆるサクセスストーリーではない、うだつのあがらない若者たちの青春群像みたいな映画ですよね。

中島:そうですね。そういう意味では、(柄本)佑さん演じる末井さんと、峯田(和伸)さん演じる近松の関係性が、ひとつ大きな筋となっている映画だなって思っていて。

たぶん近松は、頭がよすぎたんですよね。だから、なかなか思い切ったことができないんですけど、途中から末井さんが無鉄砲にいろんなことをやりはじめて、近松が置いていかれる感じになってしまうというか。そういう青春グラフィティーも、ちゃんと描かれていると思うんですよね。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』より
『素敵なダイナマイトスキャンダル』より

―そのあたりは、いまの若い人たちが見ても、共感できるところかもしれないですね。

中島:だからいま、自意識でおかしくなっちゃってるような若い人は、きっと救われるところがあると思います。そこを目指して作っているって監督もおっしゃっていましたし。

吉村:逆にいまの子は、こういう作品が好きそうですよね。無鉄砲な感じにちょっと憧れがあるというか。たとえば、SNSが嫌いとか言いながらもSNSをやらざるを得ないような状況があるじゃないですか。そういう矛盾みたいなものって、いまの時代、いろいろあると思うんですよね。だからこそ、しがらみとか矛盾を全部打ち破って進んでいく末井さんのパワーみたいなものに、惹かれるというか。

中島:ああいう人を見ていると、「こんなこと、やっちゃっていいんだ!」って思いますよね(笑)。ほとんど実話だし。そういう痛快さがある映画だと思います。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』ポスタービジュアル
『素敵なダイナマイトスキャンダル』ポスタービジュアル(サイトを見る

他の人が気にも留めないようなものを、じっと見つめているような映画というか。(吉村)

―吉村さんと中島さんが出演している『モリのいる場所』についてはいかがでしょう。

吉村:この映画は、昭和49年(1974年)のある1日を描いた作品なんですけど、実在した人物の半生をたった1日で描くっていうのはすごいですよね。俺は口下手なので、あと1時間ぐらいあればちゃんとこの作品について話せるんですけど……中島さん、どんな映画なんですか、これ(笑)。

中島:(笑)。ひと言で説明するのはなかなか難しい映画ですけど、このポスターのビジュアルみたいな感じの映画ですよね。要するに、こういうものを、じっと見ている映画というか。

『モリのいる場所』ポスタービジュアル
『モリのいる場所』ポスタービジュアル(サイトを見る

吉村:『ナショナルジオグラフィック』(地理学、人類学、自然・環境学、ポピュラーサイエンス、歴史、文化、最新事象、写真などの記事を掲載する雑誌、テレビ番組、およびウェブサイト)ってあるじゃないですか。最初は、ああいう感じです。生物をじっと見ている画というか。

中島:とにかく生物がすごくよく撮れている映画ですよね。虫とか、すごくよく撮れてるし。

若葉:僕はまだ見てないけど、そういう映画なの?

吉村:いや、どう言ったらいいのかな……日常的な映画もいいなって思えるような作品なんですよね。僕は『素敵なダイナマイトスキャンダル』のような、映画だからこその非日常みたいな作品に惹かれがちなんですけど、『モリのいる場所』のほうがある意味リアル。日常に寄り添っている感じがあるというか。

『モリのいる場所』より
『モリのいる場所』より

『モリのいる場所』より
『モリのいる場所』より

中島:沖田さんの映画って、そうやって日常の細々としたことに焦点を当てるものが多いように思うんですけど、この熊谷守一という人は、その方向でさらに振り切った人だから……それで沖田さんは、すごく興味を持ったんだと思うんですよね。

吉村:他の人が気にも留めないようなものを、じっと見つめているような映画というか。だから、話の内容としてはすごくミニマムなんですよね。だけど、描かれていることはめっちゃ大きいみたいな。

中島:実際、熊谷さんが描いてきた絵を年代別に見ていくと、どんどん絵柄が変わっていくんですよ。結局、ああいう生活を送りながら、最終的にイラストのようなタッチになっていくという。そこが、すごく面白いところだと思います。

若葉:なるほど。

豊かな映画なんだと思います。熊谷守一の自宅の庭が、ものすごく豊かであるように。(中島)

―先ほど、『素敵なダイナマイトスキャンダル』のことを「肯定してくれる映画」と言っていましたが、『モリのいる場所』はどうですか?

中島:この映画も、同じように肯定感に満ちた映画だと思います。出てくる人たちが、みんなどこか呑気で楽しそうだし(笑)。よくよく見ると、それぞれいろんな悩みがあったり問題を抱えていたりするけど、日常のなかにある一つひとつに焦点を当てれば、ちゃんと面白く生きられるというか。なかなか上手く説明できないですけど。

―ごく普通の1日の話なんですけど、そこには何もないようで、すべてがあるというか。

中島:それはやっぱり、映画におけるディテールの積み重ねの結果だと思うんですよね。たとえば、僕が演じている郵便屋が、池谷のぶえさん(モリの姪・美恵役)と、モリの家の表札がよく盗まれる話をするんですけど、それによって、毎日こういう感じなんだっていうのがわかるというか。

『モリのいる場所』より
『モリのいる場所』より

―1本の「線」を描くのではなく、そのなかにある「点」をきっちり描くことで、その前後の時間の流れを感じさせるというか。

中島:だからこそ豊かな映画なんだと思います。熊谷守一の自宅の庭が、ものすごく豊かであるように。そういう意味で言ったら、吉村くんの役は、その日常のなかに入ってくる新参者の役だから……いちばん見る人の目線に近い役なんじゃないですかね。

吉村:そうですね。たまたま先輩についてその家にやってきて、「なんだ、この人たちの日常は?」って思う若者の役ですから(笑)。

『モリのいる場所』より
『モリのいる場所』より

―吉村くん演じるアシスタント役の若者も、最後は「明日もきていいっすか?」って言うじゃないですか。あの1日で、彼は何を感じたんでしょうね?

吉村:「『何もない』ってことはないんだ」ってことに気づいたんだと思う。何か事件があってとか、誰かと誰かがどうしてとかではなく、ただそこに人が立っていればそれだけで人生がある、みたいなことを感じたというか。あるいは、派手とか地味っていうのは、単なる物差しのひとつに過ぎなくて、そういう価値観とは違うものがあるってことに、気づいたんじゃないですかね。

―淡々としているようで、実はものすごく豊かだっていう。

中島:そこがやっぱり、沖田さんの作品のすごいところだと思うんです。何でもないたった1日の終わりにものすごくドラマを感じるのは、そこに至るまでに、細かいディテールがすごく積み重なっているからなんですよね。

自分に正直でいることに対して無理をするっていう感覚も、ちょっとあるんですよね。(若葉)

―3人の今後についても聞かせてください。みなさんは、どんな役者になっていきたいと思っているのでしょう?

若葉:その質問、めちゃめちゃ難しいですね。僕は……これは変な言い方ですけど、迎合するところは、ちゃんと迎合していきたいと思っています。僕の世代というか僕よりちょっと下の世代には、等身大でいるってことにすごくこだわりを持っている人が多いような気がするんです。それもすごくわかるんですけど、その一方で、正直に生きるためにはいろいろ無理をしなきゃいけないときがあるってことも、もうわかってきていて……。

若葉竜也
若葉竜也

若葉:もちろん、下の世代でもそれをわかっている人はいると思うんですけど、僕の年齢ぐらいになると、自分に正直でいることに対して無理をするっていう感覚も、ちょっとあるんですよね。むしろ割り切って、その作品に合わせたり、社会性に合わせたほうが、自分自身がラフな状態でいられる場合もあって。というか、全部自分に正直に言いたいことを言うとか、やりたいことをやっていくとなると、僕の場合、相当無理をしないとできないんです。葛藤みたいなものを、自分のなかで抱え込んでしまうタイプなので。

吉村:面白いっす。

若葉:だから、そのバランスはちゃんと持っておきたいなと思っています。あくまでも仕事としてやっているわけだから。

スターになりたいというか、なる必要があると思うんです。(中島)

―中島さんは、どうですか?

中島:僕は「やりたい人とばかり仕事をしてるね」って言われたりするんですけど、やっぱり好きな監督だったり演出家とは、ご一緒したいじゃないですか。ただ、それだけだといわゆるスターみたいな存在にはなれないのかなと思っていて……。

―スターになりたいんですか?

中島:なりたいというか、なる必要があると思うんです。やっぱり、俳優という仕事をやっている以上、お客さんを呼べる存在というか、いろんな人を惹きつけるような存在にならなきゃいけないと思っています。

中島歩
中島歩

中島:僕とは全然タイプが違うんですけど、こないだ萩原健一さんのライブを見させてもらったんですね。そしたら、おじさんやおばさんが、超喜んで目をキラキラさせながらステージを見ているんですよ。それを見て、ショーケンさんは、この人たちがなれないものになったんだなって思ったんです。

僕はそういうふうになれないかもしれないけど、やっている以上は、みんなが素敵だなって憧れる存在にならなきゃいけないと思っています。俳優っていうのは、特別な仕事じゃないですか。であれば、みんなが憧れを抱けるような気持ちいい存在になりたいなと。

そのときどきで、ちゃんと自分の言葉で話せる俳優でありたい。(吉村)

―吉村さんはいかがでしょう?

吉村:そういう質問って結構される機会があるんですけど、俺の場合、言ってることが毎回違うんですよね(笑)。でも、それは別にそれでいいというか、人間、絶対変わっていくものじゃないですか。だから、そのとき思ったことは、ちゃんと言っていきたいっていう気持ちはありますね。そのときどきで、ちゃんと自分の言葉で話せる俳優でありたいというか。

―「塗り替えるのは僕らの世代」じゃないですけど、かつては、やるからにはナンバーワンを目指す的なことを言っていた印象がありますけど。

吉村:それはずっと言ってきたし、いまも目指しているんですけど、最近テレビドラマとか、いろんな仕事をやっていくなかで……さっき中島さんがおっしゃったように、たくさんの人の前に出ていくのも必要なんだなって感じていて。人の目に留まるのと、いい映画に出るのって、必ずしもイコールじゃないじゃないですか。そういうところで、ちゃんとバランスを取って活動していきたいというのはあります。

吉村界人
吉村界人

―どんな現場でもちゃんと爪痕を残すじゃないですけど。

吉村:ああ……でも、上手い芝居を目指そうとは思ってないですね。それは、これからも。1,800円払って、上手い芝居を見せられてもって、僕は思ってしまうんです。だって、映画館に上手い芝居を観に行ってるわけじゃないじゃないですか。

そうじゃなくて、たったひと言でも、ワンシーンでもいいから、観ている人の人生に重なる瞬間があればいいなって思っていて。その一瞬があれば、役者をやっている意味があると思うし、そういう役者でありたいなといつも思っています。

作品情報
『素敵なダイナマイトスキャンダル』

2018年3月17日(土)からテアトル新宿ほか全国で公開中
監督・脚本:冨永昌敬
原作:末井昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫)
主題歌:尾野真千子と末井昭“山の音”
音楽:菊地成孔、小田朋美
出演:
柄本佑
前田敦子
三浦透子
峯田和伸
中島歩
落合モトキ
若葉竜也
松重豊
村上淳
尾野真千子
ほか
配給:東京テアトル

作品情報
『モリのいる場所』

2018年5月19日(土)からシネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国で公開
監督・脚本:沖田修一
出演:
山﨑努
樹木希林
加瀬亮
吉村界人
光石研
青木崇高
吹越満
池谷のぶえ
きたろう
林与一
三上博史
ほか
配給:日活

プロフィール
中島歩 (なかじま あゆむ)

1988年10月7日生まれ、宮崎県出身。美輪明宏主演の舞台「黒蜥蜴」のオーディションで200名の中から選ばれ、2013年に同舞台で俳優デビュー。翌年、NHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演し注目される。主な出演作に『グッド・ストライプス』(15)、『恋愛奇譚集』(17)、「植木等とのぼせもん」(NHK/17)などがある。

若葉竜也 (わかば りゅうや)

1989年生まれ。東京都出身。1990年、若葉劇団にて1歳3ヶ月で初舞台を踏む。陰のある役からアクの強い役まで作品によって180度違った表情を見せる幅広い演技力で、数多くの作品に出演。2016年公開の映画『葛城事件』(監督:赤堀雅秋)で、第8回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞受賞。公開待機作に、映画『パンク侍、斬られて候』(監督:石井岳龍 2018年6月30日全国公開)など多数。

吉村界人 (よしむら かいと)

1993年2月2日東京生まれ。『ポルトレ -PORTRAIT-』(14)で映画主演デビュー。 以降、多数の映画、ドラマ、CMに出演。主な作品に、映画『百円の恋』(15)、『ディストラクション・ベイビーズ』(16)『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』(16)、主演作『太陽を掴め』(16)等。待機作にドラマ「スモーキング」(TX/4月19日スタート、毎週木曜深1:00)を控える等、次世代の日本映画界を背負って立つと期待される若手俳優。



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