Czecho No Republicにとっての2018年は、バンド始まって以来の苦難と、それを乗り越えた先の歓喜を、同時に味わった1年だったといえるだろう。
5thアルバム『旅に出る準備』を3月にリリースし、「5人になって5周年」をテーマに掲げた記念ライブを行うはずだった、その矢先に訪れた「メンバー脱退」という事実。そこから体制を整え、4人組バンドとして再スタートを切るまでは、計り知れない苦悩や葛藤があったはずだ。
これまでCINRA.NETでは彼らの取材を何度も行ってきたが、タカハシマイの単独インタビューは初めて。ミュージシャンとしてだけでなく、ファッションモデルやテレビ番組のMCなど引っ張りだこの彼女は、輝くような笑顔がチャームポイントであり、バンドを引っ張っていく太陽のような存在だ。しかし、今の笑顔を手に入れるまでには、大きな挫折や試行錯誤があったという。タカハシのライフストーリーを深掘りすると、彼女の意外なパーソナリティーと、「音楽」がいかに彼女の日々を彩ってきたのかが見えてきた。
父子家庭に対するコンプレックスがあって、「私にはロックしかない!」って閉鎖的になっていったんです。
—Czecho No Republic(以下、チェコ)の紅一点であり、ファッションモデルとしても活躍しているタカハシさんですが、意外にも男勝りというか。決断力や実行力も人一倍あって、高校卒業後は「フリーターになって音楽をやろう」と、お父さんになにも言わず上京を決めたそうですね。
タカハシ:そうなんです(笑)。私は小さい頃から歌が好きで、将来は「歌を歌う人になりたい」とずっと思っていて。すでに高校時代から、軽音楽部のある学校に入ろうと、地元から少し離れたところに通っていたんです。
高校卒業後の進路を決める段階になって、きっと親は普通に就職してほしかったんだろうなと思ったんですけど……。ちょうどその頃はバンドに夢中で、椎名林檎さんのライブDVDを見たときに、めちゃめちゃかっこよすぎて泣けたんですよね。
—椎名林檎さんは、特にどの曲が好きですか?
タカハシ:ぱっと思いつくのは“茎(STEM)”ですね。もう鳥肌が立つくらい美しくて。こんなにかっこいい人がいて、自分は足元にも及ばない存在だよな……ってすごく思いました。でも、やっぱり音楽を諦めたくなくて。親の期待を背中で感じつつも、就職や進学をせず、音楽をやっていこうと決めました。
タカハシマイ。ソニーのワイヤレスインイヤー「WI-C600N」を着用。ソニーのサイトでは、インタビューとタカハシマイの手書きメッセージを特別公開中(サイトを見る)
—周囲が就職や進学を決めていく中、自分だけ違う道へ進んでいくことへの不安はなかったですか?
タカハシ:なかったと思います。同じくらいの時期に古着にもハマって。雑誌『Zipper』に載っている見たことないような奇抜な服装やメイク、髪型に「わあ!」ってなって、すごくしっくりきたし、「私もこんな格好がしたい」と思ったんですよね。とにかく、人と違う音楽を聴きたいし、人と違うものを身につけたいと思っていました。
—目立ちたがり屋の一方で、人見知りであがり症の面もあると聞きました。
タカハシ:人見知りは多分、中高校生くらいから始まりました。それまでは超明るかったし、誰に対しても「変顔」しまくって笑わせるみたいな結構ヤバイ子だったんですけど(笑)、高校生くらいから父子家庭に対するコンプレックスというか、父親に対しての不満が爆発して。それが思春期とちょうど重なり、「私にはロックしかない!」みたいに(笑)、どんどん閉鎖的になっていったんです。
自分が音楽をやっている意味が分からなくなるくらい落ち込んでしまったんですよね。
—その頃、よく聴いていたアーティストは?
タカハシ:Radioheadは大好きでした。とにかく当時の私は「怒り」に満ちていて、それが高校時代にマックスまでいったんですよね。そんな気持ちを鎮めてくれるというか、理解し寄り添ってくれるのは彼らの音楽でした。“Paranoid Andoroid”はよく聴いていましたね。アルバムでいうと『Amnesiac』(2001年)が好きでした。
タカハシマイ。ソニーのワイヤレスインイヤー「WI-C600N」を着用。(サイトを見る)
タカハシ:でも、高校を卒業して家を出ると、「怒り」みたいなものって忘れていくというか。そういう感情が浄化されたうえに、チェコのメンバーと出会ってからは、人見知りの側面も徐々に治っていきました。
—以前のインタビューでも話してくれましたが、チェコに入る前に一度挫折を経験したそうですね。
タカハシ:はい。1人で音楽活動をしていたときにデビューのお話をいただいて。それに向けて、いろんな人に曲を提供してもらいつつ歌っていたんですけど、自分の力不足でやりたいことが体現できず、なんのために歌っているのか分からなくなってしまって。自分が音楽をやっている意味が分からなくなるくらい落ち込んでしまったんですよね。
タカハシ:その頃、ちょうどチェコも(吉田)アディムが抜けることになって(2012年に脱退)、武井(優心 / Czecho No Republicのボーカリスト)さんもバンドをこれからどうしていこうか悩んでいた時期で。「私にできることがあれば」という感じで、まずはサポートメンバーとして関わることになったんです。
—その頃、チェコの音楽についてはどう思っていたんですか?
タカハシ:とにかくライブにめちゃくちゃ感動しました。それまでもいろんなライブを観てきたけど、お客さんがみんな笑顔で、会場全体が多幸感に包まれるのは初めての体験で。「チェコ、いいなあ。ここでやりたい!」って強く思いましたね。
特に“幽霊船”という曲は、チェコにしか書けない曲だと思っていました。ハッピーだし、後半に向かってどんどん展開していく構成とかすごいな、すごい才能の人たちが集まっているんだなって。当時からそう思っていましたね……って、メンバーのいないところでこんなこと言うの恥ずかしいな(笑)。
Czecho No Republic“幽霊船”
タカハシ:正式メンバーになったときはすごく嬉しかったです。メンバーはみんな経験値が高いし、さっきも話したように私自身はシンガーとしての自信を失っていたときでもあったので、ここでたくさんのことを学びたいなと思っていました。ただ、あがり症はチェコに入った初期がピークだったかもしれない。
ネガティブな意見が1つあると、それしか見えなくなっていたけど、今は「そういう意見もあるよね」と思えるくらいのメンタルになった。
—あがり症だったのは、なぜですか?
タカハシ:私、モデルもやっていて、音楽よりもそっちで先に知ってもらえるようになったんですね。だから、チェコが「読者モデルのいるバンド」みたいな肩書きになってしまうことに、すごく後ろめたさを感じたんです。メンバーに対して「申し訳ない」と思う自分が常にいて。
今はもちろん、そんなこと思わないし、モデルもバンドも胸を張ってできているんですけど、当時は「リア充バンド」とか言われていたのも「私のせいだよな……」って。ライブのときも、「失敗しちゃいけない」ってずっと気を張っていたと思うんです。常にネガティブなことを考え過ぎてしまって、ライブ中に「お客さんを楽しませよう」という意識までなかなかいけなかった。
—そうだったんですね。
タカハシ:でも、あるときメンバーから「バンドのためにもなるし、モデルもやったらいいじゃん」って言ってもらったんですよ。そういう言葉を直接もらうまでは、「みんなどう思っているのかな?」とか、不安に思うところもあったんですけど、ちゃんと言ってくれたことがすごく嬉しくて。
それからは、「バンドもモデルも堂々とやったらいいじゃん」って思えるようになったんですよね。音楽もモデルも、それ以外の仕事もすごく胸を張ってできているし、いろんな側面があるのが「私」だって思えるようになりました。
—「あがり症にオススメの本」として、『緊張をとる』(伊藤丈恭、芸術新聞社)を挙げていたことがありましたね?
タカハシ:あははは! あの本、すごくよかったですよ。実践できることがたくさん書いてあるんです。たとえば、「変なプライドを捨てる」。ライブ前とかすごく緊張しているときに、めちゃくちゃ変な動きをしたり、奇声を発したり、全力でバカみたいなことをするといいって書いてあって(笑)。しかも、人前でやるんですよ、メンバーの前とか。まあ、メンバーの前だったらなんでもできるんですけどね。
—そういえば、先日もメンバーみんなでディズニーランドへ行ってましたよね(笑)。チェコのメンバーとは、出会ってすぐに打ち解けたのですか?
タカハシ:3か月くらいでもう、心開いていたと思います。気が合ったんですよね。あと私、父子家庭で兄がいたので、男の人に気を遣わないで済むんです。「どうでもいい」というか……(笑)、女性のほうが気を遣ってしまいがちなんですよね。
—メンバーとの絆やファンとの信頼関係が深まったことも、タカハシさんの自信につながりました?
タカハシ:そうですね。それに、歳や経験を重ねてマインドが強くなってきたのかな。たとえば意見が100個あって、そのうちの1つがネガティブな意見だったりすると、それしか見えなくなるじゃないですか。でも今は、その1に対して「そういう意見もあるよね」と思えるくらいのメンタルでいられるようになった。それは、自信がついたからかもしれないです。
「新しいことにチャレンジする」っていいですよね。
—音楽とファッション、それぞれの分野で活動することは、タカハシさん自身にどんな影響を与えていますか?
タカハシ:音楽とファッションって、切っても切り離せない関係だと思うんです。たとえば新曲ができたとき、「この曲は、こういう服で演奏したいな」って考えるし、本当はライブで曲ごとに服を変えたいくらいなんですよ(笑)。
そのくらい洋服が大好きだし、ライブって、聴覚だけじゃなく視覚にも訴えかけるじゃないですか。着ている服ひとつで、楽曲の世界も変わると思うんですよね。実は、次のライブでは自分たちで初めて衣装を作ってみることになっているんです。それもすごく楽しみです。
—タカハシさんにとって、洋服ってどんな存在ですか?
タカハシ:「なんにでもなれる」というか。結構私、着ているものに心が左右されるんです。たとえば、今ここにジャージで来ていたら、もっとダラっとしちゃいそうだし(笑)、こういうワンピースを着ると自然と姿勢がよくなる気がして。古着とかも、ヨーロッパの可愛いワンピースを着たら、ヨーロッパの女の子になった気分になるし、パンツを履くと男の子っぽい歩き方になる。洋服が「心を整えてくれる」というのかな。
—「演じる」ということにも近いのかも知れないですね。今年は舞台(J-WAVE開局30周年記念舞台『みみばしる』)にも挑戦されますね。オーディションを受けて出演が決まったそうですが、今の心境など聞かせてもらえますか?
タカハシ:もともとお芝居はやってみたかったんです。オーディションを受けたときは、「人前で演技するなんて、緊張するだけで終わってしまうだろう」と思っていたんですけど、もちろん緊張はしつつもすごく楽しくて。「やっぱり好きだったんだ」って思えました。
「新しいことにチャレンジする」っていいですよね。最近はエレキギターの練習をしているんです。メンバーが1人脱退してから、エレキも弾くようになって。今までアコギは弾いていたんですけど、楽しいですね、エレキ。今はキーボードよりも楽しいかも(笑)。
今のチェコはめちゃくちゃいい状態です。もちろん、大変なことも不安だったりする部分もあるんですけど、それを超えて手応えを感じたときが本当に嬉しいんですよね。
なるべく忠実に味わってもらいたいから、再生する環境ってすごく大事だと思うんですよ。
—タカハシさん最近の日常を彩っている音楽を、ソニーのワイヤレスインイヤー「WI-C600N」で実際に聴いてもらいたいと思います。2018年、よく聴いた曲というと?
タカハシ:シーアの“Chandelier”はよく聴きました。ナタリー・ポートマンが出演しているCMを見て、また聴きたくなったという人も多いんじゃないかなあ。
(試聴しながら)めちゃ音がいい! 音像が立体的に感じます。楽器が鳴っている場所がわかるというか。ボーカルも、リバーブの乗り方や息遣いが目に見えるようです。イヤホンでここまで感じられるのってすごいですね。いつも使っているヘッドホンよりも立体感があるように聴こえます。
ソニー「WI-C600N」を試聴。ソニーのサイトでは、インタビューとタカハシマイの手書きメッセージを特別公開中(サイトを見る)
—「WI-C600N」にはDSEEという機能を搭載していて、MP3音源やBluetooth接続のような、圧縮された音源で失われがちな高音域をヘッドホンが補完してくれているんです。そのうえ、ノイズキャンセリング機能が搭載されているので、周囲の騒音をイヤホンのマイクが拾って、それを打ち消すことで周囲の騒音を低減しています。
タカハシ:イヤホンなのに没入感がすごいなと思っていたんですけど、ノイキャン機能が搭載されているからなんですね! めっちゃ音がいいライブ会場に行ったような臨場感があります。
—お持ちのスマホで、ソニーの純正アプリ「Headphones Connect」を立ち上げBluetoothで接続すると、サウンドのカスタマイズも簡単にできるんですよ。
タカハシ:なにそれすごい! やりたいです是非。(試聴しながら)わあ、やっぱり音がいいですね。しかもイコライザーを動かすと、全然違いますね。おもしろーい!
ソニー「WI-C600N」を試聴(サイトを見る)
—タカハシさんは、どんなふうにカスタマイズしてみました?
タカハシ:今は、チェコのアルバム『旅に出る準備』を聴きながら、イコライザーを色々いじってみたんですけど、低音をぐっと上げるとビートが強調されていいですね。特にキックの勢いが増すというか。ボーカルの「抜け感」もよくなった気がします。“愛を”をこの設定で聴くと、自分の声の「芯」の部分が前に出てきますね。
私、こうやって低音を上げ気味で聴くのが好きなのかも。特にチェコの場合、ライブの楽しい雰囲気を味わってもらえそうです。わあ、おもしろいなあ。逆に低音をスカスカにするとか、DJ感覚で遊べますね(笑)。ひとつの楽曲で、いろんな楽しみ方ができるところがカスタマイズの魅力ですよね。
Czecho No Republic“愛を”
「Headphones Connect」でサウンドを調整(サイトを見る)
—装着感はいかがですか?
タカハシ:めちゃくちゃ軽いです。肩にかけているのを忘れそうになりました(笑)。シリコン素材もさわり心地がいいし、ケーブルも長すぎず短すぎずちょうどいい。マグネットも便利ですね、なくしにくそうです。色も可愛いですね。どの色も好きなんですけど、私はグレーかな。他のメンバーにはブルーかブラックをすすめたいです。
街中や、電車の移動中などで、これを使って音楽を聴きたいですね。服にも合わせやすく、フォルムも近未来的で高級感があるし、最先端という感じがします。みんなに自慢したいです(笑)。「かっこいいワイヤレスイヤホン、使ってます」みたいな。
ソニー「WI-C600N」を試聴。ソニーのサイトでは、インタビューとタカハシマイの手書きメッセージを特別公開中(サイトを見る)
—では最後に、タカハシさんの今年の抱負を聞かせてください。
タカハシ:さっきも話したように、今年は舞台というまったく新たな分野にも「挑戦したい」と思えるようになったことが本当に嬉しくて。人は、やりたいことをやっているときが一番輝くと思うんですよ。だから、とりあえずやりたいことは全部やろうって。今はそんな気持ちです!
ソニー「WI-C600N」を試聴。ソニーのサイトでは、インタビューとタカハシマイの手書きメッセージを特別公開中(サイトを見る)
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タカハシマイのインタビューが、本人の手書きメッセージとともに特別公開中。
- 商品情報
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- 「WI-C600N」
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2019年1月26日(土)発売予定
価格:オープン価格
- プロフィール
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- タカハシマイ
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バンド「Czecho No Republic」のギター / シンセサイザー / ボーカル担当。2013年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。カラフルでポップでファンタジックなサウンドに、男女のボーカル、多重コーラスが織り成す多幸感溢れる楽曲・ステージは必聴必見。テレビ東京『音流~ONRYU~』MC担当。2019年2月からは、松居大悟作・演出、本仮屋ユイカ主演舞台『みみばしる』に出演する。2019年春にCzecho No Republicの新EPリリース決定!5月からは全国10箇所を回る、ワンマンツアー『ツアーオデッセイ〜未知との遭遇2019〜』を開催。
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