自分の弱さに打ちのめされ、愛されたいと願うあまり自分に嘘をつき、心の歪みに頭を抱えて孤独になっていく。本当の自分を探し、そのたびに傷つき、なぜこんなにもズタズタになりながら俺達は生きるのか? たったそれだけを言葉と音にしながら、Zepp Tokyoをソールドアウトさせ、7月に行われる聖地・日比谷野音での単独公演も完売。幻想や綺麗事とは無縁の音楽が確かに人の心の蓋をこじ開け、思い通りにはなりゃしない日々を力ずくで転がしていくための場所として、MOROHAは確かに今を喰らい始めている。
アコギ+ラップという他に見ない編成について、ギターのUKは「このふたりでできることをやっているだけ」と語ったが、この「最小限」の中には、自分という人間の表現が何よりもダイレクトに伝わる「最大限」が詰まっている。己の弱さと徹底的に向き合ってもんどり打つラップはただのスタイルではなく、言葉まで素っ裸にすることで自分の逃げ場をなくす覚悟としてのもの。1本でメロディとビートを両立するギターは、自分ひとりから生み出せる音楽の可能性に挑み続ける武士道。聖人のようには生きられない自分達の汚さと真実だけを凝視し、それでも愛や幸せを求めて生きていくための覚悟を自分達自身に問い続ける歌は、この徹底的にストイックな音楽と呼び合っている。
5月29日にリリースされる『MOROHA IV』は、その「自分対自分」がよりソリッドな形で表出し、一方では「愛を求めて生きている」という本音がより温かな質感でもって響き渡る、かつてなく音楽も歌も膨よかに変化を果たしたアルバムだ。元から持っていた歌の本質がより一層振り切れた作品を通じ、MOROHAの精神性と闘争の変遷を語り尽くした。
最小限でやっているからこそ、ラップの緊張感や、生き方を問われるリリックは聴き手にダイレクトにくる。楽しさとは別の音楽というか。(UK)
アフロ(MC):MOROHAとしてCINRA.NETで初めてのインタビューだから、先に訊きたいんだけど――。
―初っ端から逆質問ですか。
アフロ:(無視して続ける)CINRA.NETって、いろんなカルチャーや芸術を掘っているメディアじゃない? たとえばメディアの取材だったら、最近はインタビューの先にフェス出演があったりイベントのオファーがあったりってことも増えたけど、CINRA.NETの場合は音楽をはじめとした芸術の奥にある文化まで入ってこられるメディアだし、それを理念にしているでしょう? だから、こうしてCINRA.NETでインタビューを受ける際に、MOROHAはどんな文化と繋がれるのかなって俺は考えていてさ。どう思う?
―カルチャーというより今の概念の話になりますけど、カルチャーって、個々が人生の背景に紐づくものを好きになったり、好きになったものに自由に没頭し続けたり、その没頭が波紋みたいに広がって人と繋がっていく中で生まれると思うんです。だけど今の世の中は、「みんな」とか「共感」っていうものに縛られやすくなってきているように見える。そこに対して大事なこと――俺達はいつまでもひとりだし、温い共感じゃなく個を追求することでしか人の心に響くものは作れないと歌い続けているMOROHAの精神性はすごく大事だと思って、ここに話を聞きに来たんです。
アフロ:そういうことか。確かに、WEBメディアやインターネットって「ひとりじゃない」っていう感覚のために使われることが多い場所な気がする。その点、CINRA.NETっていうメディアは「ひとり上手」な人が比較的多そうというか、自分の好きなものはなんなのかっていうことに向き合える人が多そうだよね。だから個を大事にするメディアだし、「どこまでいってもひとりなんだ」って歌ってる俺らの音楽がより一層響くはずだっていうことだよね。
―はい。そして何より、今回の『MOROHA IV』の素晴らしさ自体がちゃんと一人ひとりに刺さると思うんです。バリエーション豊かで、ラップもギターもかつてなくメロディアスな傑作で。自分達では、どういう手応えを持ってる作品ですか。
UK(Gt):(この音楽を)「他の人がやってなくてよかったなあ」っていうのがひとつあるよね。他の人が俺らみたいな音楽、編成でやってたら悪態をついてたと思うし、嫉妬ですよね。逆に言えば、自分がカッコいいと思ってやれているっていうことだと思う。もうひとつは、「やっぱ聴いてて疲れるなあ」っていうことかな(笑)。
―(笑)。「他の人がこの音楽をやっていなくてよかったな」っていうことについて聞くと、ラップ+ギターっていう他にない編成でやっていること以上に、より一層音楽としてのオリジナリティを獲得できてきたっていうことですか。初期の頃、ラップに対してビートがないと揶揄されたところからナニクソで編み出していったのがUKくんの「メロディとビートが両立する」っていうプレイスタイルだと思うんですけど、それがさらに磨かれて彩り豊かになっている。
UK:この編成に関しては、このふたりでやれること――アフロの熱いところ、ギタリストとして貫きたい自分、それでやりたいだけなのは変わってなくて。だからオリジナリティというよりも、1stの頃から変わったつもりはないんだよね。ただ、その最小限でここまで振り切っている音楽は他にないと思うし、そういう意味で「他の人がやっていなくてよかったな」って思う。
―それは何に対して振り切れていると思うんですか。
UK:「聴いてて疲れる」って言ったのと通ずるけど、僕らの音楽って、情報量が少ないように見えて情報量が多いと思うんです。たとえばMOROHAを聴いたことがない人にとってみれば、「アコギとラップってなに?」っていう混乱から始まるのもわかってて。で、聴き始めてみたら、歌が入るわけでも音数が増えるわけでもなく、そのまま最後まで突っ走っていくわけで。
その最小限でやっているからこそ、アフロのラップの緊張感や、ひたすら自分の生き方を問われるリリックっていうのは聴き手に近くダイレクトにくるよね。楽しさとは別の音楽というか。
大事な人への愛と、自分に対する怒り。そういうふたつの相反する真実の両方を切り捨てることができない本質が、より一層浮き彫りになった。(アフロ)
―聴いてて疲れると言われたアフロくんは、今作についていかがですか。
アフロ:そうだな……歌を書いてる俺としては、結果、矛盾したものができあがってよかったと思う。「アフロ、気持ちよく矛盾できるようになったな」って。
―その「矛盾」っていうのは、ご自身にとってはどういうものなんですか。
アフロ:俺がこれまで歌ってきたこと――たとえば大事な人への愛と、自分に対する怒り。そういう相反する真実の両方を切り捨てることができない本質が、より一層浮き彫りになったというか。生きていく中で愛をもらったり人に伝えたりする一方で、でも自分はなんで弱いままなんだっていう気持ちや孤独があったり、認められないことへの怒りもあったりする。
それは言葉にしてみたら矛盾してるけど、その矛盾も矛盾のままでいいって受け入れられて、曲によって歌ってることが全然違ってもいいと思えた作品な気がする。
―矛盾も感情の幅だと思えたということ?
アフロ:そうだね。前までだったら、「このフレーズを書いたらあっちの曲と矛盾しちゃうな」と思った瞬間に、それをよしとしてなかったの。だけど今回は、矛盾すらも「自分はこんなに膨よかな感情を持ってるんだな」って思えたんだよね。
人に迷惑かけなくちゃ前に進めないんだなって見返した時に弱さを実感する。だからこそ<愛された記憶だけは片時も離さない>っていう戒めを自分に課してるんだと思う。(アフロ)
―まさに、今作の音楽的なバリエーションにもその変化が映っていると思います。それは、今作に至るまでの何によってもたらされた変化なんですか。
アフロ:結局、歳をとったことでいろんな人を知って、許せるものが増えて、許せないものも増えたからだと思う。たとえば去年の3月に“ストロンガー”っていうシングルを急遽メルカリに突っ込んでリリースしたことがあったけど、それは、ユニバーサルシグマ(MOROHAの所属レーベル)のスタッフに対して「許さねえ、ぶっ飛ばしてやる」っていう気持ちから生まれたものだったんだよね。
―許せないと思ったことと“ストロンガー”が生まれたことの発端には何があったんですか。
アフロ:……俺らがメジャーに行くことに付随する条件として、ある大きなアーティストのトリビュートに参加することが先に決まっていたの。それ用の楽曲として作っていたのが“ストロンガー”だったんだけど、トリビュート参加が直前でナシになってしまって。
それも俺らがナメられてるからだと思ったし、だとしたら気に食わない事柄を全部ぶっ潰していくしかないと思った。だから一度墓場行きになった“ストロンガー”をもう一度救うためにメルカリで発売したし、やっぱり俺達は華やかな場所とか「みんな」っていう場所には入れないんだと改めて思って、ずっと孤独だっていうことに勝る真実はないって再確認したんだよね。
「そこまで潜る必要あるのかな」ってところまで潜って人間の冷たさまで全部掬わないと、嘘になるんだよね。(アフロ)
―だけど「ぶっ潰してやる」の一方で、人と自分を愛する気持ちも色濃く出てきた作品だと思っていて。“五文銭”で<俺は弱い すぐに調子乗る / それでも 愛された記憶だけは片時も離さない>というラインを歌い切れていたり、歌詞に載っていないところで「俺はたくさんズルしてきたしたくさん負けてきたけど、いつか、自分のことを褒めてやりたい」「いつの日か、俺は俺のことを幸せにしたい」という叫びが入ってきたりする。
勝てない自分の弱さを責めて、自分を疑って、「どこまでもひとりぼっちだ」と言ってきた部分が、自分を愛するためにどうしたらいいのか、という歌に変化してきたと思うんです。それが今作の大らかさやスケール感に直結していると思っていて。そう言われてみると、自分ではどう思います?
アフロ:言われてみたら……その通りだと思う。“五文銭”のその部分がこの作品を総括してるなって。やっぱ俺は一生懸命になればなるほど空回るところがあって、それでいろんな人を巻き込んで迷惑かけてる自覚はあるのよ。で、そうやって人に迷惑かけなくちゃ前に進めないんだなって見返した時に自分の弱さを実感する。それなのにすぐ調子乗って、自分ひとりが頑張ってる気になって、「お前らはなんで俺と同じ熱量じゃないんだよ」って疑ってかかってしまったりするわけ。
―それはもう、人と人が向き合うこと全般に通ずる話ですよね。
アフロ:でも結局、みんな同じ気持ちを返してくれて俺のために頑張ってくれてたじゃん、って気づくのは後のことでさ。だからこそ、<愛された記憶だけは片時も離さない>っていう戒めを自分に課してるんだと思う。
そうなっていくと、自分も変化していくよね。前は人に対して好きか嫌いかだけだったけど、今は「許せる」か「許せない」っていう感覚のほうが強い。それこそ“ストロンガー”の話じゃないけど、メジャーの人に対して許せねえ気持ちと、感謝と、両方あるのは事実なわけじゃない? そういう経過があったからこそ、人に対する時には好きか嫌いかの二択だけじゃないんだなっていう感覚が自分の中に生まれてきたんだと思う。それが、矛盾を受け入れるってことなのかな。
―よくわかります。
アフロ:で、これだけ数多くライブをやってくると、どんどん嫌な音楽にも出会うし、こういう音楽いいなって思うものも増えていくじゃん。たとえば素敵な大合唱が起こってたり、みんなが楽しく笑ってたりすると、いい音楽の正解ってこれだよな、って思うこともある。そこで逆に言うと、俺らの音楽は不正解なのかなって思うこともあってね。
―どういう部分が不正解だと思うんですか。
アフロ:だって、MOROHAのやってる音楽って、「俺達はひとりぼっちだ、ワチャワチャやってる場合じゃねえんだ」って伝え続けてる音楽だと思うから。そんなこと目を逸らせばいいのにってところまで、俺らは現実を歌い切ってる。だから聴いた人は決して楽しい気分にはならないだろうなっていうことが俺ら自身もわかるんだよね。
―その現実っていうのは?
アフロ:どんなに人と楽しく過ごす時間があっても、俺らには絶対、人の不幸で救われたり人の不幸を願ったりするような汚さがある。それが現実だと思う。聖人のように生きられないどころか、人間って冷たくてクソなんじゃないの? っていうのが現実だと思うし、そこからどう生きていくんだって問い続けていくのが俺らの歌だと思うんだよ。
―そこまで潜って真実を曝け出したいのは、その先になにがあると思うからなんですか。
アフロ:真実を知ることでしか、自分が納得できないからなんだと思う。汚いところがあるくせにそれを隠そうとする事柄が多すぎるし、ただ綺麗に取り繕ったものや偽物に負けている自分にも、全然納得できないから。だから真実だけを追い求めたいし、悔しさとか負けも絶対に見過ごさないことが、自分自身の本当の気持ちに嘘をつかないってことだと思うんだよ。
そのために自分を疑うし、自分の弱さもリリックにする。で、それって裏を返せば、どんな自分になりたいのかっていう本音じゃんか。その気持ちに嘘をつきたくないし、「そこまで潜る必要あるのかな」ってところまで潜って人間の冷たさまで全部掬わないと、嘘になっちゃうんだよね。俺らはよく「熱い」って言われることがあるけど、その熱さって本当は冷たいんだぜって思うよ。
どんな人だって最後に辿り着きたいのは愛っていうところだと思うんだよね。(アフロ)
―でも、MOROHAの歌が内包しているのは残酷なほどの現実だけではないと思うんですよ。“拝啓、MCアフロ様”や“うぬぼれ”のように、愛を受け取ること、その愛に応えることがテーマになっている曲もある。<愛された記憶だけは片時も離さない>という歌詞も、ある種の自己嫌悪をガソリンにしているだけじゃ自分を幸せにできないっていう気持ちから生まれたものなんじゃないかと思ったんですね。
アフロ:ああ……なるほどね。人に愛されたっていうことだけじゃなくて、迷っている自分、ズタズタに負けた自分を自分で肯定してあげられた瞬間の、自分からの愛情を絶対に忘れないっていうことなんだろうね。
―たとえば別れた恋人からの手紙がそのまま歌になっている“拝啓、MCアフロ様”はまさに、人から愛されていたことの証明ですよね。その変化は、ご自身のなにが表れたものなんですか。
アフロ:言われてみて思ったことだけど……落ち込んで真面目ぶってんじゃねえよって自分に言ってる感覚が今は強いんだろうね。結局は自分を信じなくちゃどこへも行けないっていうか。“拝啓、MCアフロ様”で言えば、人から言われた<大して理由もない 憂鬱に / 黄昏るのはダサいからやめて>っていう言葉を書くのも、自分のクソさに対する相当なヘヴィーパンチじゃん。そこから歌が出てくるのは変わらない部分なんだろうけど。
<愛の歌しか歌えないような / 腑抜けたつまらん奴になってね / そしたら遠くで後悔するね>なんて言われたら、ほんと堪らないよね。自分の足りなさをそのまま言われてるわけでさ。
アフロの歌う怒りとか葛藤に救われたって言う人がいたとしても、奮い立つ力は、潜在的にみんなが元々持っているものだと思うんだよね。(UK)
―それが足りなさだっていう認識があるのは、愛の歌を真っ向から歌える自分になれるのが理想なんだっていう話ですか。
アフロ:というか、どんな人だって最後に辿り着きたいのは愛っていうところだと思うんだよね。この前も「愛の歌しか作れなくなったらどうするんだ」って話になった時に、「解散しかないですよ」ってUKが言ったの。で、俺もそれを聞いて納得してね。怒りも葛藤もなくなって愛の歌しか作れなくなったら、人間としてそんなに満足できて幸せなことはないじゃん。
よく人が「MOROHAの魅力は怒りや葛藤を曝け出していることだ」みたいなことを言うけど、もし怒りや葛藤を歌わなくなった俺にとやかく言うヤツがいたら、ひどい話でしょ。だって、俺の不幸を望んでるっていうことなんだからさ。
UK:そうだね。アフロの歌う怒りとか葛藤に救われたって言う人がいたとしても、それはきっと音楽の力ではなくて。奮い立つ力は、潜在的にみんなが持っているものだと思うんだよね。自分が変わることに何かしら理由をつけていく人は、葛藤とか怒りに奮い立たせられるところはあるかもしれないけど、でも変わっていく力は音楽じゃなくて、その人自身が持ってるんだよ。それに気づいて欲しいっていう気持ちはあるし、お互いがお互いで幸せになれたらそれでいいじゃんって。
アフロ:俺らが幸せになったら素直に喜んでくれよって思うよね。人の不幸を願う冷たさが現実だって話したけど、でも、人の幸せを喜べたら最高なのは言うまでもないわけで。じゃあ幸せってなんだろうって考えるけど――これも俺の矛盾だけど――怒ってる時だって幸せだよなとも思うわけ。いろんなことに怒れてる自分、いろんなことをぶっ潰そうと思って燃えられてるのも幸せなことなんだよ。
―だから、“ストロンガー”みたいに怒りに打ち震える曲も、矛盾というより、心の同じ箱の中にあるっていうことですよね。
アフロ:そういうことなんだろうね。怒りにしろ愛にしろ、自分の素直な気持ちを出せるようにしていくのが、絶対に生きやすいし幸せなわけじゃん。たとえばNUMBER GIRL復活の時に向井さんが「金が欲しい」ってコメントをしてたのも、絶対的に真実だし。人の圧倒的な本心に対しては、誰も咎められないし納得するしかないんだよね。
これだけ好き勝手な意見やフェイクに溢れた世の中だからこそ、今はもう真実しか力を持たないってみんな気づいてるはずなんだよ。結局はみんな幸せになりたいだけだし、だからこそ人の不幸に救われる汚さからも目を逸らしちゃいけないんだよ。
「落ち込んでるっていうことは、自分はちゃんと真面目に向き合ってるんだ」みたいな、自分に赦しを乞うだけのことは辞めようと思った。(アフロ)
―今おっしゃった幸せに対する感覚や素直さがそのまま、“うぬぼれ”という曲になっていると思いました。<あなたと向き合う事で私は私を好きになれたのです><強がって 堪えて 震えて 傷付いて / 擦り切れた心には何が残ったの?><「もうダメだ」なんてすぐ弱音吐くのに / 不意打ちの温もりやあたたかさに打たれて / 昨夜の葛藤いつの間に吹っ飛んで><愛されたくて生きているのです>というリリック。ここには本音と現実はあるけど卑屈がない。それがいいんです。今日の話を伺った上で、これはご自身の一番の本音を歌っているものだと捉えたんですけど。
アフロ:………(長考)。俺らは今度『The Covers』(NHK)に出るんだけど、そこで“明日があるさ”をカバーするの。じゃあなぜ“明日があるさ”をやるかというと――“勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ”で<明日があるさじゃ明日は来ない>っていう歌を歌っていたじゃない?
MOROHA『MOROHA BEST~十年再録~』を聴く(Apple Musicはこちら)
―はい。
アフロ:で、絶対にそうなんだよ。「明日やろう」と思ったって、自分も世界も一朝一夕じゃ変わらない。だけど、ライブをずっとしている中で確かに変わってきた気持ちはあってさ。「今日のライブは出し切れなかった」と思っても、やり直しはきかない。だからこそ、また明日ライブがあるっていうことが希望になるし、明日に向けて意味のある落ち込み方をしようって思うようになったの。「落ち込んでるっていうことは、自分はちゃんと真面目に向き合ってるんだ」みたいな、自分に赦しを乞うだけのことは辞めようと思ったんだよね。
しかも、そこにはお金を払って待ってくれている人がいるから、それには応えたい。だとしたら、やるしかないじゃん。「こういう時の気持ちを“明日があるさ”と呼ぶんだ」と思えたし、だから“明日があるさ”をやってみようと思って。前向きにことを進めるためには自分を責めるだけじゃなくて、もっと自分を励ましたほうがいいっていう感じになってきたんだろうね。
UK:そうだね。大事だなって思える人の存在が、音楽的というよりは人間的なパワーになってるのは間違いない。誰かのためにやってる感覚はないけど、でもきっと、誰が聴いてもいい曲だと思えるものを作ろうっていうハードルが上がっていくし、さらに前に進むための鍛錬はなにかって考えるようになっていくよね。誰かのためにっていうよりも、自分が挑戦している姿をいろんな人が見てくれているっていうのは大きいと思う。
―でも、全国を旅して毎日と言っていいほどライブをしているのは昔からそうですよね。それと今はどう違うのかが不思議なんです。お金を払ってくれてる人には応えたいとおっしゃいましたけど、自分達に向き合ってくれている人や、自分達を確かに待ってくれている人がいるっていうことが大きいんですか。
アフロ:さっきUKが「挑戦している姿を見てくれているのは大きい」って言ったけど……俺自身が、日々もがいてるところを俺自身の歌に救われたいって思ったのかもしれないね。
―そうですよね。
アフロ:“うぬぼれ”の<誰も見てないのにカッコつけてバカだね>っていうフレーズが好きなのね。でも、そうやってカッコつけるところは俺だけじゃなく誰しもにあって。それを遠くで誰かが見てくれてたら、嬉しいなって。俺自身が言われたかったことを書いたんだろうなって気がする。……だって、これだけやってもやっても、誰も救ってはくれないからさ。怒りにも愛にも素直になってきたのも、そういうことなのかもしれないね。
―それを曝け出せた歌が、とても温かくて強い。そこが最高なんです。
アフロ:……自分の家族とか大事な人への愛情はずっと歌にしてきたつもりなんだけどね。目の前の人に対して「笑っててほしい」っていう愛情を持ってるのは昔から変わらないし、それこそ「大事な人に愛された記憶」に救われてきたのは間違いない。だから引き続き幸せにしたいし、幸せになってほしい。そのために、自分という存在の意義を問い続けるんだよね。
そうやって自分と闘うことでしか、本当に信じられる幸せなんて見つけられないんだよ。ある幸せを知ったら、もっと幸せになりたいって思うのが人間だと思うし、俺らはその欲すら掬って全部歌にしていく。そのためにまずは、自分を励ましたり救ったりする歌を書いたところはあるのかもしれない。
―自己嫌悪だけじゃ、どこにもいけないから。
アフロ:きっと、そういうことに気づき始めたんだろうね。目の前の人に笑っていて欲しいっていう結論は、みんな一緒だと思うんだよ。それが愛ってものなんだと思う。それを真っ向から歌うために、人や自分のドロドロとしたところにまで語りかけて、汚さを自覚しなくちゃいけないんだよね。
- リリース情報
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- MOROHA
『MOROHA IV』初回限定盤(CD+DVD) -
2019年5月29日(水)発売
価格:4,135円(税込)
UMCK-7010[CD]
1. ストロンガー
2. 上京タワー
3. 遠郷タワー
4. 米
5. 拝啓、MC アフロ様
6. スタミナ太郎
7. 夜に数えて
8. いくつものいつもの
9. うぬぼれ
10. 五文銭[DVD]
2018年12月16日 Zepp Tokyo「単独」全曲収録
二文銭
奮い立つ CD ショップにて
一文銭
俺のがヤバイ
勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ
三文銭
ハダ色の日々
スペシャル
革命
四文銭
tomorrow
バラ色の日々
恩学
ストロンガー
五文銭
- MOROHA
-
- MOROHA
『MOROHA IV』通常盤(CD) -
2019年5月29日(水)発売
価格:3,024円(税込)
UMCK-16201. ストロンガー
2. 上京タワー
3. 遠郷タワー
4. 米
5. 拝啓、MC アフロ様
6. スタミナ太郎
7. 夜に数えて
8. いくつものいつもの
9. うぬぼれ
10. 五文銭
- MOROHA
- イベント情報
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- 『AVAY YAYVA RECORDS presents MOROHA 日比谷野外大音楽堂 単独ライブ』
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2019年7月13日(土)
東京都 日比谷公園大音楽堂
- プロフィール
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- MOROHA (もろは)
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2008年結成。アコースティックギターのUKと、マイクに喰らいつくMCのアフロからなる二人組。楽曲、ライブともにGt×MCという最小最強編成で臨み、「対ジャンル」ではなく「対人間」を題目に活動。2018年に『MOROHA BEST~十年再録~』でメジャー進出。ライブハウス、ホール、フェス、場所を問わず聴き手の人生へと踏み込む楽曲を生み出し続ける。
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