1997年生まれのプロデューサー / シンガー、yonkey(ヨンキー)が、LINE RECORDSより配信シングル『ダウナーラブ(feat. AAAMYYY)』を7月3日にリリースした。バンド「Klang Ruler」のフロントマン、さらにBAD HOPの弟分として知られるラッパーSnozzzのトラックメイク / プロデュースも手掛けるyonkey。その多方面にアウトプットを持つ活動スタイルや、「音」と「歌」の双方に鋭利に神経が研ぎ澄まされた完成度の高い楽曲に触れると、このyonkeyという才能が、いかに実直に音楽の「自由」と「普遍」を謳歌しているかが伝わってくる。
今回、“ダウナーラブ(feat. AAAMYYY)”にフィーチャリングボーカルとして参加したAAAMYYYとyonkeyの対談を実施。音楽について、歌について、活動スタイルについて、じっくりと語り合ってもらった。ふたりが語り合うその空間は、真摯に表現に向かう者同士の、とても静かな喜びに満ちているようだった。
“ダウナーラブ”って、強烈なタイトルだよね(笑)。(AAAMYYY)
―今回、デビュー曲“ダウナーラブ(feat. AAAMYYY)”でAAAMYYYさんをフィーチャーしたのは、yonkeyさんからの申し出だったんですか?
yonkey:僕から熱烈にオファーさせていただきました。前からAAAMYYYさんの、他にはないすごく独特なアーティスト性に惹かれていたんです。サウンドには不穏な印象がありつつも、そのなかに優しさもあって、めっちゃ不思議だなって思うんですよね……すみません、僕の勝手な解釈なんですけど。
AAAMYYY:ううん(笑)。合ってると思います。
yonkey:あと、やっぱりyonkeyとして世に出る1曲目なので、どんな曲にするべきなのかは考えたところで。最初は「ポジティブな曲にしたいな」と思っていたんです。でも僕自身、根が明るいタイプの人間ではないんですよね。それなら、無理やり明るさを出すよりも、本当に自分が書きたいものを書くべきだなと思って。
なので内容的には、自分のネガティブな部分も曝け出したうえで、ポジティブな方向に向かっていく曲にしたいなと思いました。そんな曲でAAAMYYYさんに歌ってもらえたら、最高だと思って。
AAAMYYY:“ダウナーラブ”って、強烈なタイトルだよね(笑)。
yonkey:そうですね(笑)。AAAMYYYさんと一緒にできると決まったとき、直感的に「ラブ」っていう言葉を曲に入れたいなと思ったんです。そして、自分が好きなワードとして、「ダウン」っていう言葉が出てきて。それが組み合わさって“ダウナーラブ”になりました。
―「ダウナー」がyonkeyさんで、「ラブ」がAAAMYYYさんを象徴しているんですね。yonkeyさんにとって音楽を作ることは、ご自身の内面性に向き合うこととつながっている感覚がありますか?
yonkey:そうですね。そうやって作らないと面白くないと思います。一人ひとり、生きていくなかで培った価値観は違うじゃないですか。それなら、自分の価値観を出してこそ、アーティストなんじゃないかと。
―AAAMYYYさんは、フィーチャリングボーカルで他のアーティストの作品に参加されることが多いですよね。そういった場合、どのようなスタンスで向き合うものなのでしょうか?
AAAMYYY:まずは、そのトラックを作る人の性格や雰囲気を知りたいっていう気持ちがあります。私自身、トラックも作るので、他のアーティストさんにトラック提供しようっていう話が上がることもあるんですけど、たとえば規模の大きなアイドルとかだと、お互い顔も見えないまま判断されて、落とされる、みたいなこともあって。そういうのは、商業的すぎてイヤなんです。それだと、作曲者の中身や、作品表現としての大事な部分が失われてしまうような気がするんですよね。
―なるほど。
AAAMYYY:私が誰かと一緒に作品を作るなら、相手の顔を見ながら、会話をしながら作っていきたい。そのトラックを作った人と直接会わないと、曲を聴いただけじゃ感覚が掴めないなって思います。その人とのやり取りのなかで、人間性も含めた作品を一緒に作り上げたいなって思いながらやっていますね。
松田聖子さんとエミネムを交互に聴いたりします(笑)。(yonkey)
―実際、yonkeyさんと最初に顔を合わせたときの印象はどうでしたか?
AAAMYYY:意外とヘコヘコしながらも(笑)、熱意があるし、仕事も速いんだろうなって思いました。若さも感じたし。
yonkey:AAAMYYYさんは、僕の知らない音楽を教えてくれましたよね。
―どんな音楽の話をしたんですか?
AAAMYYY:あのとき話したのは、スプーキー・ブラックっていうアメリカの男の子の話とか。彼は、無理をせず音楽をしている人だと思うんですよね。言い方は悪いかもしれないけど、売れ線で曲を書いていない。ちゃんと、その人のバックグラウンドが見える音楽をやっている人だと思うんです。
音楽性としては、すごくダウナーで、ちょっとシューゲイザーっぽい音楽を宅録で作っている男の子なんですけど、yonkeyくんとは宅録っていう共通点もあるし、歳も近いし、国籍は違えど、自分のバックグラウンドを表現しているところが共通しているなと思って、おすすめしました。
スプーキー・ブラック『Leaving』を聴く(Apple Musicはこちら)
―yonkeyさんからAAAMYYYさんに対しては、どんな音楽の話をしたんですか?
AAAMYYY:yonkeyくんはApple Musicのプレイリストを見せてくれたけど、まんべんなく聴いていたよね?
yonkey:そうですね。僕は「このジャンルが好き!」っていうのがなくて。J-POPもROCKもR&Bも、とにかくApple Musicで毎日、片っ端から聴いている感じなんです。
AAAMYYY:美空ひばりとかも聴いていたもんね。
yonkey:そうですね。今日はこの現場にくるまで、松田聖子さんを聴いていました。松田聖子さんとエミネムを交互に聴いたりします(笑)。
―すごい精神状態になりそうですけど(笑)。そのざっくばらんに音楽を摂取できる感性は、根本的に備わっているものですか?
yonkey:中学2年生でスマホを買ってもらったときから、YouTubeで音楽をディグっていました。その頃から、「まんべんなく聴く」っていう感覚はあったと思います。
AAAMYYY:初めてYouTubeで見た動画は覚えてる?
yonkey:中学生の頃に見た、エミネムとリアーナの“Love The Way You Lie”のビデオですね。周りの友達は湘南乃風さんとか、AK-69さん、CHEHONさんとかを聴いていたんですけど、当時の僕はエミネムが好きすぎて、すぐに友達に見せることができるように、手帳にリリックを貼ってました(笑)。
AAAMYYY:私の頃はみんな、西野カナさんの歌詞画像をガラケーの待ち受けにしたりしてたなぁ。
やっぱり、テクノロジーが味方になった世代ですよね、yonkeyくんは。(AAAMYYY)
―そもそも、yonkeyさんが音楽作りを始めたきっかけはどのようなものだったのしょう?
yonkey:2歳の頃からクラシックピアノをやっていて、本格的に曲作りを始めたのは18歳の頃です。最初はバンドを始めたんですけど、それは武道館でUVERworldさんのライブを観たのがきっかけでした。そのとき、人生で初めて生バンドを観たんですけど、食らっちゃって。その日の帰り道に、隣の友達の家のインターホンを押して、「バンドやろう!」って言いました。
―すごい衝動ですね。隣の友達は、バンドをやっていたんですか?
yonkey:いや、家が隣だから誘っただけです(笑)。そいつが和太鼓をやっているのは知っていたので、「よし、ドラムいけるよね?」って。ちょうど受験シーズンだったんですけど、次の日から受験勉強もやめて。塾も行かなくなっちゃったんですよ。
―それだけ、UVERworldのライブが衝撃的だったんですね。クラシックピアノでは感じられなかったものが、そこにはあった。
yonkey:「生のエネルギーってこんなにすごいんだ!」って思いました。それまでCDやスマホ越しでしか聴いたことがなかった音楽が、こんなにもエネルギッシュなものなんだと感動して。集団で奏でる音楽のすごさも感じました。バンドって、個々の集まりじゃないですか。集合体で出せるパワーは、発表会でひとりピアノを弾いているときには感じられなかったもので。「自分もこれをやりたい!」って思ったんですよね。
―現状yonkeyさんは今回の“ダウナーラブ(feat. AAAMYYY)”のようなソロ名義での活動もありつつ、自身がフロントマンを務めるバンド、Klang Rulerでも活動されていますよね。Klang Rulerでは、ミュージックビデオも自分たちで制作されているそうですね。
yonkey:そうですね。制作に関わることは、自分たちで完結させていきたいと思っています。スマホを買ってもらったときから、自分で映像を作ったりするのは当たり前だったので、ビデオを作るときも、レコーディングも、バンドの衣装を作るのも、「人に頼む」っていう発想が自分たちにはそもそもなくて。
“I'm a moment”っていう曲のビデオに関しては、Twitterで見つけたイラストレーターさんに声をかけてコラボレーションしたんですけど、それもやっぱり、自分たちを起点にして周りを巻き込んでいくっていう発想なんですよね。
AAAMYYY:やっぱり、テクノロジーが味方になった世代ですよね、yonkeyくんは。私が初めて携帯電話を買ってもらったのは高校1年生の頃だったんですけど、その頃のガラケーには、まだ説明書がついていて。わからないことがあれば説明書を見るっていう発想が、当時はまだあったんだけど、今のスマホには説明書がついていないから、自分でやり方を見つけなきゃいけない。
私の甥っ子や姪っ子もそうなんですけど、初めて手にしたのがスマホの子たちは、自分でやり方を見つけて楽しんでいますよね。人類の発達を感じさせて、面白いなぁって思います(笑)。
アーティストが曲を出していく窓口って、ひとつじゃなくていいんだなって思います。(yonkey)
―yonkeyさんがバンド活動と並行して、トラックメイカーとしてソロ活動も行っていくことになったのは、どうしてなのでしょうか?
yonkey:最初はバンドだけだったんですけど、自分のバンドのサウンド自体、決してバンドっぽくないというか。カリンバの音を使ってみたり、シンセチックにしながらもアナログ感を混ぜ込んでみたり、音作りはこだわっているんです。
そうやってサウンド作りをしていくうちに、トラックメイクにも、どんどんとのめり込んでしまったんですよね。なので、家に籠って音楽を作り続けていたら、「yonkey」という存在ができていた、みたいな感じです。
でも、たとえば僕の事務所の先輩の中田ヤスタカさんも、いろんなプロジェクトを持っていますよね。そういう人の姿を見ると、アーティストが曲を出していく窓口って、ひとつじゃなくていいんだなって思います。
―AAAMYYYさんも、ソロがあり、Tempalayのメンバーでもあり、サポート活動も行っていて。窓口が多いアーティストですよね。
AAAMYYY:私にとっても、それは自然なことですね。窓口は自ずと増えていった感じです。
yonkey:その部分の感覚は、僕とAAAMYYYさんは近いのかなって思っていました。
AAAMYYY:今はフィーチャリング文化もすごく自然なことになっているし、なんなら、そうじゃないと面白くない、くらいの感じはあるよね。
―お互い、複数のプロジェクトで活動しながらも、その全てに一貫している記名性のようなものもあるのでしょうか?
AAAMYYY:私の場合は、極端に音数が少なかったりするところですかね。あと、声も楽器としてみているところとか。
yonkey:僕、AAAMYYYさんの“SKYSCRAPER”がすごく好きなんですけど、あの曲でも声を楽器として扱っている感覚がありますよね。あの曲を聴いたとき、すごく衝撃を受けたんですよ。声がすごくシンセチックに聴こえてくるんだけど、肉声だから、生きている感じもあって。
僕自身、フィールドレコーディングをしたり、日常生活の音を録って音楽に使うのが好きっていうのもあるんですけど、あの“SKYSCRAPER”のエッセンスを捉えたいと思って、“ダウナーラブ”のイントロで声や息をパーカッションとして使うパートを作ったんです。
AAAMYYY“SKYSCRAPER”を聴く(Apple Musicはこちら)
―AAAMYYYさんの、ご自身の声に対する独自の視点は、どのようにして培われたものなのでしょう?
AAAMYYY:私もyonkeyくんと同じようにフィールドレコーディングが好きで、常にスマホのボイスメモはいっぱいの状態なんですけど(笑)。そもそも私には、「自分はディーバのような存在ではないんだ」っていう自覚があるんですよね。
日本だと、たとえばMISIAさんやJUJUさん、最近だとRIRIさんみたいに、声に艶があって、声量も伸びもある……そんな歌唱力のあらゆる面を網羅している人がディーバとして存在してきたと思うんですけど、私はどんなにトレーニングしても、そこを網羅できないんですよね。
でも、「ディーバになりえない」っていう個性もあってもいいのかなって思うんです。今はビリー・アイリッシュのようなアンニュイな表現も受け入れられているし、CHAIのように「型に縛られないこと」が普通であってもいいっていうメッセージを持った人たちも出てきていますからね。そういう人たちに、私も共感するので。
「この先が楽しみだぜ!」って未来を歌うよりは、「過去があるから、今がある」って世界観を歌う。(yonkey)
―やはり「歌」や「声」というファクターは、音楽に対する作家の記名性になりやすい部分かもしれないですね。
yonkey:それはあると思います。やっぱり、自分がバンド活動やトラックメイクをやっていくうえで、「いいサウンドとは、どういうものか」っていうことももちろん考えるんですけど、本質的な部分で一番大事なのは「歌」だと思っています。
まず、歌を聴かせることを重点に置いたうえで、サウンドデザインをしていく……今回の“ダウナーラブ”も、そういう作り方になっていますね。他のトラックメイカーの作った曲を聴いて「いいサウンドだなぁ」って思うこともあるんですけど、本当に自分が心打たれるのは、そこにメッセージや歌がちゃんと入っているものなんです。
―なるほど。
yonkey:それに僕自身、歌の世界観はバンドでもソロ名義でも一貫しているものだなって思うんです。最初にも言いましたけど、「この先がめっちゃ楽しみだぜ!」って未来を歌うというよりは、「過去があるから、今がある」っていう感じの世界観。ある意味、ネガティブなんですけど、そこは自分のなかで一貫しているのかなって思うんです。
僕、音楽を始めるまでは、学校ではぐれものにされるぐらい浮いていたんですよ。なので、高校時代とかにあまりいい思い出がないんですよね。授業中に急にボイスパーカッションの練習を始めて、周りから白い目で見られているようなタイプだったので……。
AAAMYYY:ふふふ(笑)。
yonkey:今思うと、ヤバいやつなんですけどね(苦笑)。悪い意味で協調性がなかった。でも当時は、それにも気づかなかったし、全然友達もできなくて。そこから音楽を作り始めたことで、自分も変わることができたんです。そういう過去から今への変遷があることが、自分の歌詞の書き方にも反映されているような気がします。
―「過去を描く」というのは、とても重要なポイントですよね。「今」を楽観的に切り取るだけではなく、無責任に「未来」だけを描くのでもなく、「過去から今へ」という時間軸を描くことで、そこに歴史や物語が生まれるわけで。
AAAMYYY:そう思います。私にも、いろんな過去の出来事があって、予想通りに行かなかったことや、希望通りに行かなかったことがたくさんあるけど、でも、起こってしまったことは変えようがないし、それを無理にポジティブに捉えようとする必要もなくて。「いろんな過去があっての今なんだ」っていうことは、表現していくべきことだと思いますね。
―お話を聞かせていただいて、初めて観たバンドのライブで直情的にバンドを始めたというエピソードにも顕著でしたけど、yonkeyさんは一貫して音楽を聴くことをエモーショナルな体験として見てしていますよね。
yonkey:そうですね。自分も音楽を通して、そういう瞬間をどれだけ与えることができるか? っていうことに挑戦していると思うので。
―音楽を通して作家のエモーションを伝えるって、どのようにしたら上手くできるのでしょう? それはきっと感情的に音楽を作ればいい、という話ではないですよね。
AAAMYYY:人が感じる気持ちやエモーションって、生きていくうえで、時代背景や社会の在り様のなかで意識せずとも自然に培われていくものだと思うし、それは聴いている人にも、誰にでもある部分だと思うんです。そこに刺されば、それはいい音楽になるんじゃないかなって思います。だから、作り手にとって、その音楽が等身大であることが大事、というか。
yonkey:そうですよね。すごく大層なことを歌うより、案外、ちっぽけな言葉が刺さったりするものなのかなって思います。日常に潜んでいる些細なもののなかにエモーションって隠れているような気がするんです。だからこそ僕も、歌は等身大な表現を貫いていきたいですね。それが聴く人にとっても、エモーショナルなものとして伝わってくれればいいなと思います。
- リリース情報
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- yonkey
『ダウナーラブ(feat. AAAMYYY)』 -
2019年7月3日(水)配信
- yonkey
- プロフィール
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- yonkey (よんきー)
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1997年生まれ、22歳のプロデューサー、シンガー。幼少からクラシック音楽に触れ、ピアノ演奏を始める。高校で自身がフロントマンを務めるバンド「Klang Ruler」を結成。ライブ活動に加え、YOUTUBEなどに自身が映像ディレクションするMVを次々に発表。18歳でSkrillexやZEDDなどのEDMシーンに感銘を受け、トラックメイキングに没頭。間もなくシンガー、ラッパーのプロデュースを始め、現在は、BADHOPの弟分である「Snozzz」のプロデュース・トラックメイキングをすべて任される。トラディショナルなソングライティングをべースに、最先端のエレクトロニックサウンドとHIPHOPのエッジを組み合わせたプロデュースワークが業界内外で話題となっている。
- AAAMYYY (えいみー)
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長野県出身のSSW / トラックメイカー。CAを目指してカナダに留学し、帰国後22歳から音楽制作を始める。2017年からAAAMYYY(エイミー)名義で活動を開始し、2018年6月からTempalayに正式加入。数多くのサポート、ゲストボーカル経験を持ち、CMでの歌唱提供やモデルでの活動も並行する。
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