Oh No Darkness!!、その奇抜な名前をそのまま音にした様な男女2人

今年3月に開催された『ツタロックオーディション2019』でグランプリを獲得し、初の全国流通盤となるセルフタイトルEPを10月9日に発表する大阪発の男女2人組・Oh No Darkness!!。映画や小説を愛し、ロックバンドにロマンを投影するナイーブな青年といった印象のギタリスト・クボと、より感覚重視で、ライブではバンドの顔となるボーカル / ベースのちさとという組み合わせは、まさに男女バンドの王道。これまで何度となく繰り返されてきたロックヒストリーがまた新しく更新されるようなワクワク感を覚える。

そんな相反する2人の関係性はそのままバンドの音楽性ともリンクしていて、パワーポップ譲りのキャッチーなメロディーと、オルタナ~シューゲイザー譲りのヘビネスが同居したサウンドが彼らの持ち味。1990年代にルーツを持つ若手バンドたちとのリンクには時代性も感じられ、バンドシーンの転換期を感じさせる。今後の動向にぜひ注目してほしい。

相反するもので新しいものを作ろう、ということを意識しています。(クボ)

―Oh No Darkness!!って、インパクトのあるバンド名ですよね。

クボ(Gt):もともと同じサークルのメンバーで、4回生の終わりくらいに組んだんですけど、最初は「一回ライブやって終わり」くらいに思ってたので、悪ノリでつけました(笑)。当時はメンバーが4人いたので、一人1単語ずつ、英単語を入れようってなって、僕は「Darkness」を入れたくて。

ちさと(Ba,Vo):私が最初に当てられて、なにも出てこんから、「Oh No」って言ったら、「Oh No Darkness!!、いいやん」って、そのままバンド名になってしまって。

Oh No Darkness!!(おー のー だーくねす)
左から:クボ、ちさと
2015年10月結成。2019年5月から現体制で大阪を中心に活動中。『ツタロックオーディション2019』にてグランプリを受賞。2019年10月9日に、初の全国流通盤『Oh No Darkness!!』をリリース。

―でも、ポップさとヘビーさの両側面があるバンドのキャラクターに合ってますよね。音楽性は組んだときから今の感じだったのか、徐々に変化していったのか、いかがでしょう?

クボ:最初はパワーポップっぽいのをやろうとしていたんですけど、それはもともといたギターボーカルの要素が強かったからで。僕はThe Smashing PumpkinsやMy Bloody Valentine、Deftonesとかが好きだったので、ずっとオルタナっぽいバンドがやりたくて、そういうのを全部詰め込みました。

―そういう1990年代のオルタナって、どうやって知りました?

クボ:もともと中学のときにASIAN KUNG-FU GENERATIONが好きになったことから、「ロックバンド、かっこいいな」と思って。そのあと2000年代に流行ってた洋楽を聴くようになり、遡っていきついたのが1990年代のオルタナでしたね。

クボ

―アジカンは今でこそ日本のギターロックの雛形だけど、もともと彼らは1990年代の海外のバンドに憧れて、自分たちのスタイルを作っていったわけで、今ではアジカンが多くのバンドにとって洋楽の入口になってるというのは、いい話ですよね。ちさとさんは、もともとどんな音楽が好きでしたか?

ちさと:大学のときはくるりとかJUDY AND MARYとか、邦楽のコピバンをやってました。このバンドをやるようになってから、洋楽もいろいろ教えてもらって、スマパンとか聴き始めて、MetallicaとかKornにもハマったりして、今に至るという感じです。

―やっぱり、ポップなものとヘビーなもの、どちらも好きなんですね。

クボ:共通で「これがいいよね」と思ってるのは、アンバランスさというか、ヘビーだったりゴリッとしたりするサウンドにポップなボーカルを乗せるという、相反する感じ。シューゲイザーもそうだと思うんですけど、ゴリゴリ同士じゃなく、相反するもので新しいものを作ろうということを、お互い意識してます。

遡って音楽を聴いていたので、当時流行ってるものを聴く暇がなかった。すでに世に出てるものが探せばこれだけあるわけだから。(クボ)

―EPの1曲目に入ってる“A-90”はシーケンスが入ってて、スーパーカーっぽかったりもするけど……。

クボ:大好きですね。

―例えば、NUMBER GIRLやNirvanaをルーツに持つニトロデイだったり、ここ数年、1990年代をルーツに持つ若手バンドが増えてると思うんですよね(参考記事:ニトロデイの所信表明。忌憚ない言葉で現状を語る)。

クボ:僕らの影響源とはまたちょっと違うのかなって思うけど、リアルタイムで流行ってる感じじゃない音を鳴らすバンドは、大阪にもいますね。

ちさと:ライブハウスのブッキングとかイベントだと、よくそういうバンドと当ててもらってます。

―それってやっぱりYouTubeとかで年代関係なく音楽に接してきたことが大きいと思います?

クボ:同年代の友達のかっこいいバンドとかを見てると、別に今流行ってる音楽が嫌いというわけではないと思うんですけど、純粋に、自分が好きなものをやってる印象がありますね。内から出てくるものをそのまま表現してる感じ。

―クボくんもそう?

クボ:そうですね。高校くらいから、The Strokesとか、10年くらい前に流行ってた音楽を聴くようになって、さらに遡っていってたので、当時流行ってるものを聴く暇がなかったんですよ。だから、The Strokesとかスマパンとか、その年代の人たちが僕にとっての青春だったので、特に理由もなく、好きになっていたんですよね。もちろん、リアルタイムのものにも興味はあったんですけど、すでに世に出てるものが探せばこれだけあるわけだから、今から聴いておかないと、間に合わないっていうか。

―確かに、音楽の歴史が積み重なれば積み重なるほど、遡るのも大変になっていきますもんね。ちさとさんはどう思いますか?

ちさと:私は特になにも考えず、そのときにいいなと思うのを聴いてきただけなんですよね。大学に入るまで洋楽は全然聴いてなくて、いろいろ教えてもらう中で、「スマパンかっこいい」と思ったからスマパンばっかり聴いてて。ただ自分がハマったものが古かっただけっていう。

もちろん、今の音楽も聴くので、最近だとサカナクションのライブに行って、めっちゃかっこよかったり、アジカンも『ホームタウン』(2018年12月にリリースされたアルバム)が出たときのライブに行って、ずっと聴いてたり、バラバラですね。

―じゃあ、本人たちとしては、時代感はそこまで意識はしてない?

クボ:そうですね……まあ、最近「ギターうるせえ!」みたいなバンドって、そこまで主流ではないと思うから、むきになってやってるわけじゃないですけど、もっと流行ればいいなという気持ちはありますね。

Oh No Darkness!!、ライブ中の様子

映画がもともと好きで、「自分の内なる世界を表現する」ということを突き詰めたかった。(クボ)

―『ツタロックオーディション2019』のグランプリに選ばれて、3月に『ツタロック』のオープニングアクトとして幕張メッセのステージに立ったのはバンドのひとつの転機だったと思うんですけど、応募したのは、「バンドをどうにかしたい!」みたいな感じだったのか、「フェス出たいし、応募してみようか」くらいの感じだったのか、どうでしょう?

クボ:大きい舞台で演奏したいというのもあったんですけど、僕はずっと音源が作りたかったんです(オーディションの賞品が、『ツタロック』への出演と、EggsレーベルからのCDリリースだった)。

『ツタロック』出演時

―もともとライブよりも音源を作るのが好きだった?

クボ:そうですね。今は両方同じくらい好きなんですけど、もともとは曲を作る方が好きでした。バンドをやる原動力としては、もともと「こういう曲が作りたい」「こういうアルバムが作りたい」というところから始まっていて。高2でギターを始めて、高3から誰と演奏するでもなく曲だけは作っていて、大学3回生くらいのときにちゃんとしたパソコンとDAWのソフトを買って、録音できるようにしました。

―ちさとさんから見て、クボくんってどんな人ですか?

ちさと:どんな人……なにを考えてるのかよくわからない(笑)。わりと純粋というか、子どもっぽい。音楽が好きなんやなっていうのはわかるけど、他は不器用で、「仕事できないけど、いい曲作れる」みたいな……こんなん言っていいんかな?(笑)

―Darknessな人ではない?

ちさと:あんまり暗くはないと思います。「Darkness」は、ちょっと中二っぽいところからきてる気がする(笑)。

―クボくんはこれまでずっと音楽一筋できた人なんですか?

クボ:最終的に音楽になったんですけど、ずっとなにかを作ることが好きでした。学生時代は、真面目な生徒ではなかったですけど(笑)、映像学科で。映画がもともと好きで、「自分の内なる世界を表現する」みたいなことをずっと突き詰めたかったんですよね。でも、大学の終わり頃に「ロックバンドだ」と思って、そこからは……余計真面目な学生じゃなくなっちゃいました(笑)。

―映画からロックバンドへの転換は、なにがきっかけだったのでしょうか?

クボ:不器用が過ぎたんでしょうね。映画は大規模なプロジェクトだから、監督はリーダーとしていろんな人と関わって、自分のビジョンを説明できなきゃいけないんですけど、音楽だったら自分一人でも曲は作れるし、気の合う人が集まれば、バンドだったら3人でもできる。なので、4回生のときに、「バンドをやっていこう」って決めたんです。

今しかできひんのはバンドやなって、そういう憧れもありました。(ちさと)

―逆に、クボくんから見たちさとさんはどんな人ですか?

クボ:バンドを組むまであんまり話したことなかったんですけど、努力家という印象はずっとありました。僕は「これしかできない」くらいの気持ちでバンドをやってて、ロックバンドの持ってる外連味とかロマンの部分も含めてバンドが好きなんですけど、彼女は小さい頃からピアノもやってたし、たぶん頼めばなんでもできるんです。良くも悪くも、ロックバンド然とすることにあんまりこだわりがなくて、いい意味で、僕とは反対の人ですね。

ちさと:ピアノをやってたから、練習することに慣れてたので、ベースもわりとすぐできました。器用かはわからないけど……確かに、タイプは違うな。

クボ:あと、僕は考えがちというか、いろいろ考えて、理念に基づいてやってるつもりなんですけど、(ちさとは)結構感情的というか、そこも僕とは違う人間だなって。

ちさと:本当になんにも考えないから、逆になんでもできると思っちゃって、やってみたら、「あ、無理だ」って、あとで気づくことも多いです(笑)。

―歌うことに関しては?

ちさと:もともとはめっちゃ苦手でした。最初は別にギターボーカルがいて、私はコーラスメインの予定だったし。でも、結果的には今の状態の方がいいと思うし、今は歌うこともめっちゃ楽しいです。あと、もともと自分でなにかを作ることがめっちゃ苦手で、それをやれる人はすごいなと思うから、(クボとバンドをやるのが)楽しいと思ったし。今しかできひんのはバンドやなって、そういう憧れもありました。

自分たちがやってるのはすごく流行るタイプの音楽ではないと思うけど、それが逆に強みだと思う。(クボ)

―初の全国流通音源となる『Oh No Darkness!!』はバンドのこれまでが詰まった作品になっているそうですね。

クボ:過去の総括という感じですね。結構古い曲ばっかりで、活動初期からあって今でもライブでやってる曲とか、ライブでやらなくなっちゃったけど日の目を見せたい曲とかが入ってます。だから厳密に言うと、今のOh No Darkness!!とはまたちょっと違うかもしれないですけど、改めて「こんなバンドです」というのを見せる曲を選んだ感じです。

―最初期に作って、バンドの原型となった曲を挙げることはできますか?

クボ:1曲目の“A-90”が一番古くて、もともとはバンドを結成する前からあった曲なんです。一番最初に自分たちでCD-Rを焼いて作った音源にも入ってるんですけど、それは録音も自分たちでやったから、ずっと録り直したくて。なので、初めての全国流通やし、ここで出しておきたいなって。

ちさと:さっきも言ったように、私はもともと自分でなにかを作ることができないし、やりたくない人やったんですけど(笑)、“A-90”を聴かせてもらって、「これを作れる人が近くにおるんや」って感動したんですよ。めっちゃ気に入ってたので、もう一回録り直せてよかったです。

―“A-90”というタイトルと、エレクトロシューゲイズな曲調からは、M83を連想したりもしました。

クボ:この曲はキーがAで、BPMが90なんです(笑)。仮タイトルはどの曲も大体そんな感じで、ずっと“A-90”って呼んでたから、このままでいいかって。

Oh No Darkness!!“A-90”を聴く(Apple Musicはこちら

―それ、気づきたかったな(笑)。他の曲はパワーポップっぽい曲も多いですけど、とりわけラウドでヘビーなのが“CAST”で、これはまさにスマパンっぽいですね。

クボ:ライブでやりながら一緒に進化してきた曲ですね。無機質な感じもあるけど、演奏してみると熱が込められるので、ライブで絶対やりたい曲で。自分たちで作った音源はもう少しフワフワした感じだったんですけど、この重さがこの曲のいいところだって掴めてきたので、今回ちゃんと録り直せてよかったです。

ちさと:最初の3曲と後の3曲を別のCDに入れたら、別のバンドかってくらいの差があったりもするけど、でもその全部がOh No Darkness!!なので、いいバランスで曲が入れられたと思うし「これがOh No Darkness!!です」っていう、これまでの集大成的な作品になったと思います。

Oh No Darkness!!“CAST”を聴く(Apple Musicはこちら

―歌詞はそれぞれ3曲ずつ担当していて、“火星年代記”を筆頭に、クボくんの歌詞はSFっぽい世界観がありますよね。

クボ:僕は映画とか小説の好きな作品をコラージュして書いてる感じです。“火星年代記”に関しては、実は小説の『火星年代記』(著者はレイ・ブラッドベリ)は読んだことがないんですけど、「火星」をモチーフにした映画や小説からの要素が何個か入っていて、タイトルはあえて読んだことのない『火星年代記』から取ったんです。僕個人を発信するというよりは、物語を作るような感じで書いて、聴く人が主人公になれる、誰でも入ってこられる器的な歌詞になればなと思っています。

Oh No Darkness!!“火星年代記”を聴く(Apple Musicはこちら

―そこはやはり映画好きの感性が表れてますね。

クボ:あと一番重要なのはサウンドやメロディーだと思ってるので、それを聴くのに邪魔にならない、スッと入っていける言葉を選ぶようにしてます。もちろん、こだわって、いい歌詞にしようとは思ってるんですけど。

―サウンドとしていい意味で聴き流すこともできるし、読み込もうと思えば読み込むこともできる歌詞ということですよね。

ちさと:私も歌詞にはあんまり意味を持たせてないかもしれないです。自分の感情を歌いたいとかではないので、曲に乗っかったときに、いい感じに聴こえるのがベストというか。でも、なんでもいい歌詞にはしたくないから、そのバランスが難しいなって思うんですけど。

―ちなみに、ちさとさんは「もともと自分がなにかを作るのは苦手」という話でしたよね?

クボ:確かに、今でこそ歌詞やメロディーを任せてる曲もありますけど、最初は作ってもらうイメージがなかったかもしれないです。でも、「もしよかったら作ってみてよ」くらいの感じで頼んだら、いい歌詞を作ってきたので、バンドを組んでから「こういうこともできるんや」って思いました。

―EPは初期曲が中心とのことでしたが、現在のバンドのモードはまた少し変わってきているのでしょうか?

クボ:そうなんです。これから音源を出すというときに、ちょっと変な話ですけど、最新の曲を聴いてもらいたい気持ちもあります。EPはあくまでOh No Darkness!!の第一期として見てもらって、これを入口に、今のライブを観に来てもらえたら嬉しいです。

―サウンド的にはどうなってきてるんですか?

クボ:よりオルタナっぽい曲が増えて、重たくなってきていますね。今回の6曲は、ヘビーさはそこまで意識してないけど、最近の曲は作ってるときから重くなってます。

―でも、そこにポップな歌メロを乗っけることで、その対比がより鮮やかになって、よりOh No Darkness!!らしいものになるんでしょうね。バンドの今後の展望に関してはいかがですか?

クボ:自分たちがやってるのはすごく流行るタイプの音楽ではないと思うんですけど、でも今のスタイルでデカいところでライブをしたいし、できたらめっちゃかっこいいなって。バンドを始めた頃はそこまで意識してなかったんですけど、最近はカウンター魂も出てきたというか。流行らなさそうなのが逆に強みかなと思うので……ざっくり言うと、売れたいです。

Oh No Darkness!!『Oh No Darkness!!』を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
Oh No Darkness!!
『Oh No Darkness!!』(CD)

2019年10月9日(水)発売
価格:1,760円(税込)
EGGS-041

1. A-90
2. 火星年代記
3. CAST
4. Escape
5. How To Listen
6. Bossanova!!!

イベント情報
『EP「Oh No Darkness!!」Release Party《INTO DARKNESS!!》』

2020年1月26日(日)
会場:東京都 下北沢 THREE

2020年1月31日(金)
会場:大阪府 心斎橋 Live House Pangea

プロフィール
Oh No Darkness!!
Oh No Darkness!! (おー のー だーくねす)

メンバーはちさと(Ba / Vo)、クボ(Gt)。2015年10月結成。2019年5月から現体制で大阪を中心に活動中。『ツタロックオーディション2019』にてグランプリを受賞。2019年10月9日に、初の全国流通盤『Oh No Darkness!!』をリリース。



記事一覧をみる
フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • Oh No Darkness!!、その奇抜な名前をそのまま音にした様な男女2人

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて