大阪出身の4ピースバンド、Easycome。2015年の結成以来、マイペースに活動を続けてきた彼らが、新作EP『レイドバック』を7月15日にリリースした。本作には「レイドバック」という言葉が示すように、どこまでも穏やかなムードを醸し出しながら、さりげなく心のひだを撫でてくるような、今どき珍しいほどにいぶし銀な魅力を放つ5曲が並ぶ。
今回、その新作リリースを祝して、ボーカリストの「ちーかま」とギタリストでコンポーザーの落合にZoomでの取材を行った……のだが、彼ら自身がそう語るように、このバンドの音楽性は、彼ら自身の人間性と、とても密接に結びついているようだった。なにはともあれマイペースで、素直で、正直。でも、その柔らかな表情の奥に、強いロマンと詩情を秘めている……。ちーかまは、「この作品を作って、初めて見えるものがあった」と語っているが、新作『レイドバック』は、Easycomeが、とても大事なものに手をかけはじめた作品のようだ。きっとこの先も長い旅路をゆく彼らに、今の話を聞いた。
「無理せん感じでやってきたなって思います。気合いも、入れたり入れなかったり……(笑)」
―新作のタイトルである『レイドバック』という言葉は、Easycomeの音楽や醸し出すムードを的確に捉えた言葉だと思うんです。このタイトルは、どういった理由でつけられたんですか?
ちーかま(Vo,Gt):いつもタイトルは最後まで悩むんですけど、今回も、タイトルより先にジャケットができあがっていて。このデザインは、アートワークを担当してくれた方が「たとえ都会の人がたくさん行き交うような場所でも、どこで聴いても、Easycomeを聴いた瞬間に同じ空気感のなかに戻ることができる」って想いを込めて作ってくださったんですよね。
そこから、「じゃあ、私たちの音楽から感じることができる空気感って、一体なんなんだろう?」と考えはじめて。バンド活動をしていくうえで大事にしていることとか、メンバーの人間性も含めて考えた結果、「レイドバック」という言葉が出てきたんです。
―「レイドバック」は、「のんびり」とか「ゆっくり」といったニュアンスで使われる言葉ですよね。
ちーかま:そうですね。私は「のんびり」みたいな意味合いの言葉を調べていくうちに行きついたんですけど、落合の考えたタイトルの候補にも「レイドバック」があって。被っていたので、「これだ!」と思いました。
落合(Gt):友達と呑みながら適当に考えていた候補のひとつだったんですけど、ちーかまがハマってくれました(笑)。
―「レイドバック」という言葉で言い表せる、Easycomeの空気感や人間性というのは、具体的にどんなものだと思いますか?
ちーかま:これは、いいのか悪いのかはわからないんですけど、私たちはそもそも大学の友達で、「音楽をやるぞ!」と息巻いてはじめたバンドではないんですよね。遊びの延長線ではじまったバンドだったし、聴いてくださる人が増えても、その感覚は抜けなくて。本当にマイペースに活動してきたんです。
リリースも平気で2年くらい空けちゃうし、周りのバンドがどんな動きをしていても、「俺らは、まぁええか」ってすぐに言っちゃうし。ずっとそういうマインドで活動し続けてきた空気感が、音楽にも出ている気がするんです。よく、「音楽を聴いたときの印象と、実際に話したときの印象が変わらない」って言われるんですけど、そのくらい、人間性と音楽がリンクしているんかなって思うんですよね。
Easycome“スピーチ”を聴く(Apple Musicはこちら)
―落合さん的にはどうですか?
落合:そうですね……無理せん感じでやってきたなって思います。気合いも、入れたり入れなかったり……(笑)。
ちーかま:バンドを結成して1~2年目のときに、フェスのオーディションを受けて、落ちたんですよ。そのときも、「投票お願いします!」みたいなことをやりたいわけじゃないよなって話をメンバー内でしていて。「一生懸命、必死になって自分たちを押し出していきたい」と思えない4人が揃っているバンドなんです……いいのか悪いのか、わからないですけど。
友達同士だからこその、穏やかで親密な空気感。音楽にも色濃くにじむ幸福なバンドの姿
―話しぶりを聞く限り、ちーかまさんのなかでは、そんな自分たちのスタンスに迷いがあるんですか?
ちーかま:いや……私たちとしては、これが正解なんです。この4人は意見が一致しているし、そこに関してはポジティブなんですよ。お客さんも受け入れてくれているし。でも、インタビューで答えるぶんには正解かどうかわからないなって。きっと、こういうことを言うのはインタビューとしてはよくないですよね?(苦笑)
―いやいや、思うことを語っていただければ(笑)。でもきっと、それだけEasycomeというバンドの内部にある空気感は、居心地がよく幸福なものだということですよね。
ちーかま:仲はいいですね。私は、バンドメンバーで遊ぶのも好きなんですよ。たとえば、ライブで遠征する予定だったのに、「急な事情があって、今日はライブができません」となっても、メンバーで旅行だけでも行きたい、みたいな(笑)。この感じって、周りのバンドには驚かれるんですよね。
ちーかま:私たちは練習後にみんなでご飯に行くのが普通だし、それが楽しみでスタジオに入っているところもあったけど(笑)、それを他のバンドの人に話したら、驚愕される。「バンドメンバーでご飯なんか行ったことない!」って。
―なるほど。今言ってくださったメンバー間の空気感って、穏やかで、テンポもゆっくりとしたEasycomeの音楽性にも反映されているものだと思うんですよね。それは、明確に意識してそうなっているのか……。曲を作っている落合さん、どうですか?
落合:う~ん……わかんないっす(笑)。
―ははは(笑)。
落合:こういう感じしか作れないのかな? メロディがいいものがいいなと思うんですけど、どうなんだろう……。
ちーかま:いや、落合はいろんなタイプの曲を作れますよ! Easycomeを組む前、ベースのコダマさんとふたりでユニットを組んでいたんですけど、今と全然違う感じでしたもん。
落合:それは、そうだった。そのときは、初期のP-MODELみたいな、ポストパンク~テクノみたいなことやっていましたね(笑)。その頃は「こういうものを作りたい」っていう明確な意識があったんですけど、今はそんなに明確な意思はないんですよね。でも、Easycomeのほうが真剣にやっているとは思います。
―「明確な意思はないけど、真剣」というのは面白いですね。
落合:もしかしたら、「Easycomeのメンバーで鳴らすならこういう曲だな」と無意識にでも感じているのかもしれないし、もし自分で歌うとなれば、違うタイプの曲になるのかもしれないし……。やっぱり、わかんないっすけど(笑)。
「生活に馴染む音楽がしたいなって気持ちが強かった」
―じっくりいきましょう(笑)。おふたりの音楽遍歴を伺いたいんですけど、まず、ちーかまさんはどういった経緯で音楽をはじめたんですか?
ちーかま:そもそも小学3年生のときに、ばあちゃんが全国の子どもたちを集めてやるミュージカルのオーディションを私に受けさせたんです。それに受かってしまって、しかも、歌が上手い人がもらう役をもらってしまって。そのときから、「私、歌が得意なんかな」と思いはじめました。
だからといって、すぐにバンドに興味を持つわけでもなく、大学でも最初は水泳部のマネージャーをしていたんですよ。でも、落合がいた音楽サークルのライブに一度出させてもらって、そのとき、そこにいた人に「一緒にバンドやろう」と誘ってもらったんです。それがきっかけで音楽をはじめたんですけど。
―じゃあ、バンドに強烈に惹かれてはじめた、というわけでもないんですね。
ちーかま:そうですね。ずっと誰かに手を引かれるままに音楽をやっていたんですけど、初めて自分から「音楽の趣味が合いそうだな」と思った人たちに声をかけたのが、Easycomeの前身のコピーバンドだったんです。
そのコピバンをはじめるまで、私が誘われるバンドで求められるのは、どちらかというとソウルフルに歌いあげる感じが多くて、「歌が上手い人=歌いあげる人」って勝手に思い込んでいたんですよ。でも普段、自分が聴く音楽は囁くように歌ったり、派手さはないけどグッとくる歌が多かったんですよね。なので、「もっと、自分がやりたい音楽をやりたいな」と思って、落合や、ベースのコダマさんを誘ったんです。
―「囁くような歌」というのは、どんな音楽がお好きだったんですか?
ちーかま:中学高校で一番聴いたのは、スピッツですね。あとはユーミンも好きですし、ちょうどEasycomeを組んだときは東京のインディーズバンドが好きで、ミツメやシャムキャッツを聴いていました。その頃は、東京のインディーズ界隈に憧れていたのもあって、生活に馴染む音楽がしたいなって気持ちが強かったですね。
Easycome“crispy crispy”を聴く(Apple Musicはこちら)
―シャムキャッツ、解散してしまいましたね(関連記事:シャムキャッツが10年で作り上げた景色。気まぐれな旅路の途中で)。
ちーかま:そうなんですよね……。ちょっともう、言葉にできないくらいショックです。私は、シャムキャッツが初めてバンドとして好きになった存在だったので、憧れはすごく大きかったんです。
落合:僕も、シャムキャッツめっちゃ好きなんですよね。僕もまだ、シャムキャッツについては喋れないくらいの感じです。
ちーかまと落合の言葉から垣間見える、Easycomeがこの4人じゃなきゃいけなかった理由
―Easycomeにとって、シャムキャッツは相当大きな存在なんですね。彼らには『Friends Again』(2017年)というアルバムもありますけど、「友情」と「バンド」というのは、どこか複雑に入り組んでいくものなのかな、という気もするんですよね。
ちーかま:シャムキャッツがどんな関係性のバンドだったのかは、私にはわからないので……。ただ思うのは、きっと私だけじゃなくてみんなそうだと思うんですけど、最近はコロナで気持ちが落ち込んでいたし、別にコロナのことだけじゃなくても、気分が落ち込むときはあるじゃないですか。
―そうですね。
ちーかま:でも、バンドでスタジオに入って演奏したり、録った音源を聴きながら車で帰るとき、「私たち、最強じゃん!」と思えるんですよね。あとで冷静になれば醒めるんですけど(笑)、その瞬間は、「このメンバーがいれば最強やな」と思える。それがバンドのいいところだなと思うんです。
私は落合ほど音楽に詳しいわけでもないし、音楽をやらなければ生きていけないタイプではないなと自己分析しているんです。ひとりで音楽をはじめていたら、絶対に続けていないだろうなって思う。でも、だからこそ「みんなでいれば最強だ!」と思える瞬間が尊いし、それがなくなっちゃったら終わっちゃうんだろうなと思うし。
―落合さんの音楽遍歴は?
落合:中学生の頃、友達の兄ちゃんが聴いていたBUMP OF CHICKENを聴くようになって。それからバンプばかり聴いていたんですけど、しばらくすると他のバンドにもハマって、RADWIMPSしか聴かない時期もあり(笑)。その頃に初めてバンドのライブを観に行ったり、友達と一緒にギターを買ったりもして。
ずっとサッカー部やったんですけど、サッカー少年でありながら、家ではギターを弾く日々を過ごしていました。で、高校に入ってからは急に「俺は洋楽しか聴かない」と言いはじめるんですけど(笑)。
―(笑)。
落合:でもやっぱり、高校の終わり頃に「日本語の歌っていいな」と思いはじめて。「昔、親が車で聴いていたチューリップって、やっぱりいいな」とか思い出したり。あとは、くるり、サニーデイ・サービス、はっぴぃえんど、ユーミン……そういった人たちを聴いていました。
Easycome“pass you by”を聴く(Apple Musicはこちら)
―ちーかまさんから見て、落合さんの作る曲にはどんな印象を抱きますか?
ちーかま:落合の曲は、メロディにおいても歌詞においても、いつも一筋縄ではいかないなって思うんですけど(笑)。
落合:(笑)。
ちーかま:でも、たまに「これ、誰にも負けないわ」と思うようなメロディがあったり、「この歌詞、宝物だわ」と思うようなものがあるんです。そこが好きです。ずっと80点を出し続けるんじゃなくて、たまに120点とか150点の曲をポンッと出してくれたときに、「やっぱり、落合は最高だな」となりますね。
内に秘めた思いを言葉にしきらない落合。彼がそれでも音楽にこだわり、音楽を作るのはなぜなのか?
―新作『レイドバック』に収録された曲で一番、ちーかまさんが「きた!」と思った曲は?
ちーかま:“描いた果実”かなぁ。この曲の歌詞は、いい意味で落合っぽくなくて。落合の歌詞は、いつもレコーディングのギリギリにくるので、あとから自分の感情が追いつくというか、ライブで歌っていくうちに、自分の感情の置き方が理解できるようになるんです。
“描いた果実”も、案の定、歌入れの5秒前くらいに歌詞がきて(笑)、「譜割り知らん!」って感じだったんですけど、でも、この曲の歌詞はひととおり読んだだけで、スッと自分のなかに入ってきたんですよね。落合らしくないんだけど、一番、「落合だな」と思わせる。そこが、しっくりきた理由なのかなと思うんですけど。
Easycome“描いた果実”を聴く(Apple Musicはこちら)
―落合さんご自身としては、“描いた果実”はどういったモチーフから生まれた曲だったのでしょうか?
落合:う~ん……歌詞は大体、自分のことを書くので、「俺やで」っていう感じなんですけど(笑)。よく考えたら、歌詞は全部「がんばれ、落合」みたいな感じなんですよ。
―ははは(笑)。でも、わかります。
落合:曲を書くのは、自分のことを残したいから書くんですけど、別に、それを発表したいわけでもないし、わかってほしい気もするけど、「わかってもらわんでもええわい」とも思うし……。
自分のなかではグワッとなっているんだけど、「これ、誰にも言われへんな」みたいなことを、いつも書いているような気がします。誰にも言われへんし、言うようなことでもないしな、みたいなこと。
落合:なので、みんなが「歌詞、意味わからん」というのも、当然な気もするんですよね。別に、書かんでもいいことって感じもするから。だから……歌詞に書いてあるのは、「本当は話したいけど、恥ずかしいから言えないこと」っていう感じなのかもしれないです。
―「曲を書くのは、自分を残すこと」というのは、根底にあるものですか?
落合:それは、ありますね。……前に、考えたことがあって。もし、無人島にひとりで辿り着いて、もう助からないとなったら、僕は、なんとかしてアルバムを作ろうとすると思うんですよね。
―そのくらい、落合さんにとって曲を作るということは、生きていくうえで必要なこと?
落合:うん……そうだろうなって思います。「自分は、自分でありたい」というか。もちろん、どんな生き方をしていても、その生き方がその人自身だと思うんですけど、僕は、音楽をやることで、「自分になりたい」というか……こんなこと言っても、わけわからないかもしれないけど(笑)。でも、そういうものを感じることができるのが、僕の場合は音楽なのかなって思います。
Easycome“タペストリー”を聴く(Apple Musicはこちら)
「『心ギュッ』みたいな感じ(笑)。そういう気持ちが、行き場を失くした結果、曲になっていくような気がします」
―落合さんの書く歌詞には、「旅」というモチーフがよく描かれていると思うんです。それは、「さぁ、いくぞ!」と力強く旅立っていく感覚というよりは、悲しみや痛みが伴ったうえでの出発であったり、あるいは、今いる場所から、過去いた場所に思いを馳せている感覚があると思うんです。
落合:そうですね……普段、そういうことを考えているような気もするし。曲を書くときって、めちゃめちゃ感情が振り切れたときで、それを「残しておきたいな」って思うんですよね。それは、悲しいときもあるし、「よくわからんなぁ」ってときもあるんですけど……でも、「最高にハッピー!」とか、「めちゃめちゃ悲しくて死にそうです」ってことではないんです。
本当に、なんともいえない感じ……テンションぶち上げでもないし、怒りもあんまりないです。なんなんでしょう……「心ギュッ」みたいな感じ(笑)。そういう気持ちが、行き場を失くした結果、曲になっていくような気がします。
ちーかま:……落合は、普段から謎めいているというか。わからんことは多いんですけど。
落合:(笑)。
ちーかま:でも、「わからんでもいいかな」って思うんですよね。いろんな人に、「この歌詞はどういう意味なん?」とか「これはなんの歌なの?」って訊かれるんですけど、落合はそれに答えないんです。それを見て、私も、「答えなくていいし、答えないでいてほしいな」と思います。答えは知らなくていい。
でも、私のなかの答えはあるし、聴いている人にも答えはあるだろうし。私の答えが、聴いている人に伝わってほしいとも思わない。でも、私なんかよりよっぽど、リスナーの人には、落合の歌詞は伝わるんじゃないかと思う。私はあくまでもパイプっていう感じで、聴いてくれている人は、私よりも深く、落合の歌詞のことを私の歌から感じとってくれているイメージがあります。
―落合さんの感覚って、すごく独特ではあると思うんです。「わかってもらえなくてもいい」と思いながら、世に作品を発表していく。落合さん自身は、自分が書いた曲や歌詞が「伝わる」ということを、どう捉えているのでしょう?
落合:共感とかは、「別にいいや」って思うけど。でも、ちょっと前に、歌詞にめちゃめちゃ共感したことがあって。
―どなたの曲ですか?
落合:初恋の嵐の“Untitled”っていう曲なんですけど。僕、そもそも音楽を聴いても歌詞はあんまり聴かないんですよ。だから、みんなが……って、「みんな」って誰やって話ですけど(笑)、他人が作った曲を聴いて、「これは俺のための曲や」とかいう人がいるじゃないですか。「なにを言うとんねん」と思っていたんですけど、初めてその気持ちがわかって。
初恋の嵐“Untitled”を聴く(Apple Musicはこちら)
落合:「誰かが書いた歌詞で救われることもあるんやな」って思ったんです。「そう思えることって、こんなにもいいもんなんやなぁ」とも思ったし。俺にとっては、初恋の嵐がその曲をどんな思いで作ったかは関係ないんですけど、でも、曲を作っていれば、こんないいこともあるんだなと思いましたね。自分の曲でそうなってほしいとは言わないけど、「そういうこともあるんだな」と思いました。
「自分たちの音楽が、誰かの一瞬のなにかになってほしい」――マイペースに活動してきたEasycomeが見つけた、自分たちらしい活動の道しるべ
―Easycomeは、この先どうなっていくんでしょうね。
ちーかま:私個人としては、「今までの感じだけで、バンドを続けていくのはイヤだなぁ」と思いはじめている部分もあって。他のみんなはどうかわからないけど、やっぱり、「音楽は遊びでやっているんです」っていうものダサいし、やるなら、ちゃんと売れたいなって気持ちになってきています。少し、尖りが減ってきたのかもしれない(笑)。
―落合さんはどうですか?
落合:僕は、最初から「まぁ、売れるやろ」って思ってきたんで(笑)、今もそんな感じなんですけど。
―『レイドバック』に、ちーかまさんの言う「売れたい」という気持ちは込められていると思いますか?
ちーかま:う~ん……そこにまで意識が至れなかったかもです(笑)。今回、初めてディレクターに入ってもらったんですけど、歌の課題がいっぱい見えました。「もっとこうしたいな」とか「こういう歌い方ができないな」とか、いっぱい見えるものがあって。
今までの作品は、レコーディングで歌っているときは「今、最強だな」と思うんですけど、あとから聴き返して「げぇ」と思うことが多くて。でも、今回はそういう感じではなくて、初めて明確に見えるものがあったレコーディングでした。だから、次の作品が楽しみだなって思います。向上心はあったほうがいいなと思いますね、やっぱり。
―先ほどちーかさまんは、シャムキャッツやミツメのことを、「生活に馴染む音楽」とおっしゃったじゃないですか。彼らのような場所を目指すのならば、Easycomeの音楽は、聴き手の生活のなかに、どんな居場所を見つけたいと思いますか?
ちーかま:……ある時期にめっちゃハマった曲を、あとから聴き返して、ブワってそのときのことを思い出すことってあるじゃないですか。
―ありますね。
ちーかま:誰かにとっての、そういう音楽になりたいなと最近は思います。前までは、「ずーっと自分たちの音楽を好きでいてほしい」と思っていたんです。でも今は、ある程度、時間が経たないと感じることができない感情に惹かれている感じがします。
―そう思うきっかけがあったんですか?
ちーかま:私が高校生の頃に、一時期、集中して聴いていたアーティストがいて、そのアーティストの曲を、最近、10年ぶりくらいに聴いたんですよね。そうしたら、本当に「心ギュッ」みたいな気持ちになって……「こういうときに、落合は曲作りたくなるんかなぁ」って思うような。
落合:うん。
ちーかま:私は別に、ずっとそのアーティストのファンだったわけでもないし、そもそも、そのアーティストはもう活動していないし。それでも、音楽を残して、それをどこかで誰かが聴いた、という事実があるだけで、ひとつの感情を生み出せる。……それが、すごく不思議だし、すごいことだなと思ったんです。だから、今はもう自分たちのことをずっと好きでいてもらうことに固執しなくなって。むしろ、ずっと好きだったらそういう気持ちにはなれないと思うんですよね。
―きっとそうですよね。
ちーかま:今は、自分たちの音楽が、誰かの一瞬のなにかになってほしいなと思います。
Easycome『レイドバック』を聴く(Apple Musicはこちら)
- リリース情報
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- Easycome
『レイドバック』(CD) -
2020年7月15日(水)発売
価格:1,595円(税込)
NCS-102391. スピーチ
2. タペストリー
3. pass you by
4. 描いた果実
5. crispy crispy
- Easycome
- プロフィール
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- Easycome (いーじーかむ)
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2015年8月、大学のサークル仲間と組んだバンドからメンバーチェンジ、改名を経て「Easycome」を結成。大阪・南堀江knaveで初ライブ開催。2016年9月、1stミニアルバム『風の便りをおしえて』を会場限定販売と一部の店舗での販売開始。2017年8月、2ndミニアルバム『お天気でした』をリリース。2018年12月、サポートドラマーとして参加していたDr.johnnyが正式メンバーとして加入。2019年7月、1stアルバム『Easycome』をリリースし「タワレコメン」にも選出される。2020年7月15日、1st EP『レイドバック』をリリースした。
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