21世紀の女子解放論 もっともっと、気持ちいい毎日を

小島みなみ&紗倉まなインタビュー「AV業界を肯定したいよね」

「女性らしくを、新しく。」をブランドコンセプトとして掲げるirohaとのコラボレーション連載『21世紀の女子解放論』。第5回目は、AV女優の小島みなみと紗倉まなを招いた。二人はそれぞれのソロワークと同時に、アイドルユニット・乙女フラペチーノを結成し、音楽活動を続けている。まもなくリリースされるシングル『私ほとんどスカイフィッシュ / 乙女の炎上』で、トリプルファイヤー、マキタスポーツ、近藤良平などカルチャー濃度の高いクリエイターを布陣し、ポップでガーリーなサウンドを作り上げた。

この他にも、紗倉は文筆家、小島はバラエティータレントとしても活動しており、AVに留まらない多面的な才能を発揮している。そんな彼女たちを突き動かしている欲求とは一体何なのか? そして、性や欲望とどのような付き合い方を日々しているのだろうか? プリミティブな欲望の発露であると同時に、表現の一手段にもなりうる欲望とは何か? その正体を探ってみた。

頑張った分だけ評価される職業だから。普通のお仕事って、なかなか個人の努力が評価されないじゃないですか。(小島)

―お二人がAV業界に入ったきっかけは?

紗倉:私の場合、「ちょっと変わってるね」ってみんなからよく言われるんですけど、14歳のときに偶然AVを見ちゃったのがきっかけなんです。父の書斎にあったビデオデッキを何の気なしに再生したら、裸の女性がパッと目の前に映し出されてビックリして。でも「イヤだな」って感じではなく、むしろ女性が自分の全部をさらけ出せる仕事があることに憧れを覚えたんですよね。それで18歳の誕生日の翌日、今の事務所にメールを送りました。

紗倉まな
紗倉まな

―自ら志願して。

紗倉:就活感覚。でも、絶対落とされると思ってたんですよ。

―え、なぜ?

紗倉:自分に対するコンプレックスがすごかったですからね。自分の内面も外見も全部イヤで……もしもデビューするなら全身整形したいと思っていたくらい。だからこそ一回裸になって全てをさらけ出したら、人生をリスタートできるかもしれない、と思ったんですけど。

―ちょっと意外なエピソードですね。小島さんはどんなきっかけでしたか?

小島:私は、高校を卒業して「何しようかな~」ってふわふわ考えてたんです。そんなときに、たまたま当時の事務所の社長さんを紹介してもらって……その人は女性だったんですけど、話を聞くと自分でもやれそうかな、と思えたんですね。だから、まなちゃんみたいに意欲的ではなくて、なんとなく始めました。

小島みなみ
小島みなみ

紗倉:意欲的というか、裸になることに抵抗がなかったんだよね。家族全員、夏なんか家ではみんな裸だったから。

小島:裸族だ!

紗倉:そうそう。高等専門学校の女子寮で暮らしてた頃も、パンツとスケスケのシャツ姿ですたすた歩いていたし。友達から「まなちゃん、裸で唐揚げ作ったりしないでね。ヤケドしちゃうから」なんて言われて、「たしかにそうだ!」と気づかされて。

―それは友達なりの配慮であって、油ハネ注意は口実ですよね(笑)。

紗倉:ですよね(笑)。そんな感じで、大勢の人の前でご開帳したりすることには抵抗ゼロだったんです。

左から:紗倉まな、小島みなみ

小島:すごいなあ。私は本当に恥ずかしかった。初めてジャケット写真を撮るときも「え、男の人いるけど、なんで? こっち見てるよ!」って感じで、笑顔カチコチ。

紗倉:でも絶対そこからスタートした方がいいですよね。身体を見せることが、自分の中でだんだんマンネリ化しちゃうでしょ。

小島:そうだね。今は乙女フラペチーノの活動とか、バラエティー番組のお仕事とか、幅が広がって楽しいけれど、最初は「6本出演したらやめよう」と思ってたんです。できればバレずに引退したかったから、宣伝活動もほとんどしなかったし。

―数本でAVから引退する人は多いみたいですね。

小島:今は「有名になりたい!」って気持ちが全開ですよ。そう変われたのは、周りのスタッフさんがすごく優しくて、頑張った分だけ評価される職業だったから。普通のお仕事って、なかなか個人の努力が評価されないじゃないですか。

―AVの現場で働くことで、自分自身が肯定されていくみたいな感じがあった?

紗倉:それはすごくありました。SNSとかだと、否定的な意見も目に入ってきちゃうんですけど、じつはAV業界の中って、お互いがお互いをすごく尊重し合っていて、絆がとても深いんですよ。否定的な部分があるからこそ、肯定していきたいよねっていう気持ちのバランスがあって、そこに私はすごく共感できる。もちろん「自分の裸が後世に残るなんて後悔しないの?」という意見もよくわかる。でも同時に裸をさらけ出すことが恥ずかしくない自分もいるから、そこは個々人の価値観の違いだなと思います。

小島:私は今の仕事をすることで、どんどんやれることが広がっていった実感があるから続けてるんだと思う。子どものときからダンスも歌も好きで「アイドルになりた~い!」って願っていて、乙女フラペチーノでその夢がかなった。そうするとまた次の目標が現れて、どんどん貪欲になるんですよね。

「AV女優のくせに!」って思われたくないから。(小島)

―乙女フラペチーノの活動を始めて、二人で過ごす時間が増えたと思うのですが、お互いの印象はいかがですか? それぞれ多才ですよね。紗倉さんは『最低。』(KADOKAWA、2016年)で小説家デビューなさって、今はコラム連載を何本も抱えていますし、小島さんは人気番組『ゴッドタン』で芸人とガチ漫才までこなすタレント性が光ります。

紗倉:『最低。』はたくさんの人から反響が寄せられて、むしろビックリしました。言い方がアレなんですけど、私は自分をちょっとした社会不適合者だなと思っていて、そのままの気持ちを文章にしちゃったらドン引きされると思っているんですよ。だから『最低。』も自己投影はほとんどなくて、編集者の方からの提案を膨らませたりして作った、ほぼ完全なフィクションなんです。

―意外です。AV業界に関わるいろんな人たちが登場するので、実生活が多かれ少なかれ反映してるのかと思っていました。

紗倉:じつは、すごく客観的な本なんです。でも最近のコラム連載は、自分を装う暇もなく締切がやってくるので、かなり地が出ちゃってますね。お酒の失敗エピソードばっかりになっててヤバいです(笑)。

左から:紗倉まな、小島みなみ

小島:私からしたら、文章を書くってすごいなと思う。まなちゃんと話してると、辞書引かないとわかんないような言葉がどんどん出てくるもん。

紗倉:そんなことないよ(苦笑)。

小島:私が読書感想文を書くとしたら「楽しかった。ハート♡」で終わるタイプだから、まなちゃんはちゃんと文字にして書けてて、本当すごいなって思います。

紗倉:コジ(小島)は純粋で……なんか、ありがたい(笑)。でも私からするとコジには天性のキャラクターの輝きがあって、すごいと思ってるよ。乙女フラペチーノで一緒になってわかったけど、本当にいつも素でしょ。

小島:うん。

紗倉:もしも自分がバラエティー番組に出るとしたら、無理してキャラを作ると思うんだけど、コジは肩ひじ張らずにスッと自分の空気を出せるのがすごい。

小島:え~、私も頑張ってるんだよ! 『ゴッドタン』で芸人さんといちゃいちゃしながら漫才をやる「イチャまん」ってシリーズがあるけど、芸人さんたちと会うのは本番だけなんだよね。もちろんスタッフさん相手に練習はするんだけど、もしも漫才の筋が逸れたら戻すのは私の役目なので、テンポとか間はすごく考える。台本も何十回も読み込む。

―芸人顔負けのプロ意識ですね。

小島:そこは「AV女優のくせに!」って思われたくないからですね。テレビのバラエティー番組は、AVと違って、性別年齢問わずいろんな人が見てくれる場だから、「この子ちゃんとできるな!」って思われたいんです。

左から:紗倉まな、小島みなみ

乙女フラペチーノの活動も、AVの活動も、どちらも自分にとっては自己表現。(紗倉)

―そんな乙女フラペチーノは、シングル『私ほとんどスカイフィッシュ / 乙女の炎上』で、トリプルファイヤーとマキタスポーツが書き下ろした初のオリジナル曲に挑戦し、振付に近藤良平、衣装に中島美保子、アートディレクターに小林哉、フォトグラファーに美島菊名など、カルチャー色の強い制作陣が集まりました。前作からかなりイメージをリニューアルしたのは、お二人にとっても大きな変化ではないでしょうか。

紗倉:コジも私も本当に興奮してるんですよ。ベクトルが一気に別の方向を向いたので、すごくドキドキしています。

小島:今回のPV、めっちゃかわいいんですよ。歌詞に私たちの意見も反映させてもらったり、衣装合わせもすごい時間かけて、本当に夢みたい。すごいすごいすごい!

紗倉:PVも、今までだったらかわいく「きゃあ」なんてリアクションしてたのが、今回はちょっとシュールで、クール系を装ってたり。ヴィレヴァン感がある!

―ヴィレヴァン感(笑)。ヴィレッジ・ヴァンガードがお好きなんですね。

紗倉:めちゃくちゃ大好き! 「太客」です!

―サブカル界隈で太客(太っ腹な客。主に水商売で使われる用語)って表現、初めて聞きました(笑)。

紗倉:お店にある手書きの黄色いポップを自分たちで書けるかもしれないって妄想ばかりしてますよ(笑)。

左から:紗倉まな、小島みなみ

―テレビとかマスに向けたアイドル活動と、主に男性ファンに向けたAVでの活動って、お二人の中ではどのように関係し合っているのでしょうか?

紗倉:もちろん全然違う仕事なんですけど、芯になる部分は同じかなって思います。私自身は、今日の仕事では服を着て、明日は裸で、ってくらいラフな感じですね。どちらも自分にとっては自己表現ですし。

小島:表現ってことで言うと、私は仕事ごとに気持ちを入れ替えてる気がするなあ。AV撮影の日は完全にエロモード。「私はド変態、私はド変態!」って自己暗示をかけてる。“私ほとんどスカイフィッシュ”みたいなシュール系の曲だったら、ツンとしたモードになるし、バラエティーなら「全部解き放て!」みたいな。

紗倉:確かに、コジは現場に入る前に「私は何々、私は何々……」ってよくやってるよね。

小島:やってる(笑)。

女性にも快楽への関心や欲求はもちろんあって、もっと奔放にさらけ出していいんじゃないかなって思う。(紗倉)

―irohaとコラボレーションしているこの連載は、「女性が欲望を解放したっていいよね」をテーマにしています。お二人の話を聞いていると、それぞれ自分の表現欲を全開にして、一つひとつで結果を出していくことで、さらに別の分野のお仕事につながり、新しい自分と出会えていった。

紗倉:まさにそうですね。

―irohaは女性のためのセルフプレジャーアイテムですが、お二人は性に対する欲と、普段どんなふうに付き合っていますか?

紗倉:女性にも快楽への関心や欲求はもちろんあって、私自身はもっと奔放にさらけ出していいんじゃないかな、って思ったりします。ただ、逆にこの仕事は常に逸脱したところにいるような状況なので、自分の性癖や、気持ちよくなるポイントが何なのかが見つけにくくなっちゃうんですよね。

小島:たしかに。

紗倉:だから私は、毎日いろんなAVを見たり、セルフプレジャーグッズを使ってマスターベーションしたりするんです。そうやって自分自身で興奮するところを探すのは、気持ちいいことの原点を確認する大切な行為だと思うんですよね。

小島みなみ

―つまり、本当の喜びや新しい自分を見つけていくような?

紗倉:そうですね。それに、恋人としているときだと相手のこととか気にしちゃいますし。

小島:私もグッズは持ってて、よくするよ。でも、AVの世界に入るまでは普通に性に対して関心ないですよ、ってふりをずっとしてた。興味津々なのに、コンビニのエロ本コーナーを視界に入れないようにしたり(笑)。だから、性に対して開放的になれない女子の気持ちはよくわかる。

紗倉:今はもう違う?

小島:うん。仕事を始めて、一気に性のことが身近になった。考えてみれば性欲って人間の三大欲求ひとつだから、普通のことなんだよね。

紗倉まな

紗倉:だいぶエクストリームな状況の仕事も多いから、私たちの普通が一般の普通とは言いきれないかもだけど(笑)。でも、やっぱりAVの世界でも、普通の感覚って大事なんですよ。行きすぎるとごく少数の人にだけ理解できる世界になっちゃうから。

小島:ノーブラでふらふらしている人が裸になるより、普段は恥ずかしがっている人が裸になった方がエロいよね。

紗倉:そういうこと? うん、でもたしかに。私たちAV女優って、エロの微細な概念やニュアンスを叩き込まれるんです。

小島:乳首を出す瞬間めっちゃ大事だもんね。

紗倉:眠くなってくるくらい、焦らして焦らして、ゆっくり出すとかね(笑)。本当はもうパッパと出したいんですけど(笑)。これ以上ないくらい恥ずかしがって出すのがエロいんだぞ……と、もはや洗脳されるんです。

―そういうあけっぴろげな話を聞くと、AVも明るく見れますね。

小島:そうですよ。後ろめたさもないし、借金抱えたりもしてないですから(笑)。

左から:紗倉まな、小島みなみ

irohaみたいなかわいらしいものを愛用し続けた方がいいんだなって、つくづく思いました。(紗倉)

―紗倉さんはirohaも愛用されてるそうですね。

紗倉:はい。全種類持ってます! 全部素材が本当に柔らかくて、気持ちいいんですよ。気持ちよくしたい場所に応じて、使い分けられるのがいいです。ケンドーコバヤシさんは「よるくじら」で自分の乳首を挟むのが好きって言ってました(笑)。私もやっちゃいます。

左から:よるくじら、りんごとり
左から:よるくじら、りんごとり(商品詳細

―ケンコバさんは何をしているんでしょうか……(笑)。

紗倉:あとirohaはかたちが「いかにも」じゃないのがいいよね。昔、irohaをリビングに置いたまま出かけちゃって、そのあいだに母親が家に来たことあったんですよ。でも全然気づかれなかったです。

小島:すっごいわかる、それ! 電マ(電気マッサージャー)を出しっ放しにしてて、家族から「今から家に行くね」って連絡もらったときは本当に気まずいよね。

紗倉:まさかここで共感してもらえるとは(笑)。私すっごく後悔してることがひとつあって、たぶん死ぬまで忘れない光景だと思うんですけど。電マを使ったまま消毒せずに家に放置してたんですよ。そのタイミングで母親が来ちゃって、あわてて家に帰ったら、電マで肩マッサージしてたの! そのときに、irohaみたいなかわいらしいものを愛用し続けた方がいいんだなって、つくづく思いました。

iroha
iroha(商品詳細

小島:まなちゃんのママも、電マを肩にあてるより、irohaを肩に乗せてる方がかわいいよね。

紗倉:たしかに。それはそれで気持ちいいかも(笑)。

商品情報
iroha designed by TENGA

「女性らしくを、新しく。」をコンセプトにTENGAから登場した、女性用プレジャー・アイテムブランド。女性目線で考えられた機能性とデザインで、女性に寄り添うセルフケアを提供します。

リリース情報
乙女フラペチーノ
『私ほとんどスカイフィッシュ / 乙女の炎上』乙女とパンツ 盤(CD+DVD)

2016年8月26日(金)発売
価格:2,300円(税込)
LNZM-1145/6

[CD]
1. 私ほとんどスカイフィッシュ
2. 乙女の炎上
3. 私ほとんどスカイフィッシュ(みなみver.)
4. 私ほとんどスカイフィッシュ(まなver.)
5. 私ほとんどスカイフィッシュ(Instrumental)
6. 乙女の炎上(Instrumental)
[DVD]
1. “私ほとんどスカイフィッシュ”Music Video
2. 密着ドキュメンタリー
・ジャケット撮影ドキュメンタリー
・Music Video撮影ドキュメンタリー
・レコーディングドキュメンタリー

乙女フラペチーノ
『私ほとんどスカイフィッシュ / 乙女の炎上』乙女と電車 盤(CD+DVD)

2016年8月26日(金)発売
価格:2,300円(税込)
LNZM-1147/8

乙女フラペチーノ
『私ほとんどスカイフィッシュ / 乙女の炎上』乙女と矢 盤(CD+DVD)

2016年8月26日(金)発売
価格:2,300円(税込)
LNZM-1149/50

プロフィール
小島みなみ
小島みなみ (こじま みなみ)

1992年12月14日生まれ。趣味は、散歩、テニス。「恵比寿★マスカッツ」「SEXY-J」メンバー。テレビ東京『ゴッドタン』『マスカットナイト』、映画『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2』、NOTTV『もう!バカリズムさんのドH』、お笑いライブ《6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア》等に出演、各種バラエティにて活躍中。最近では、香港のTVCM出演や台湾での写真集発売等アジアでの活動も目立っている。

紗倉まな (さくら まな)

1993年3月23日生まれ。趣味は、コラム執筆、絵を描くこと。「SEXY-J」メンバー。ドラマ『闇金ウシジマくん Season2』、映画『ゴッドタン THE MOVIE』『エターナルマリア』『KARATE KILL(2017年公開)』などに出演。『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)、および『最低。』(KADOKAWA)の出版、企業のWEBサイトにてコラムの連載等、執筆活動を積極的におこなっている。



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