外国籍社員2割のU-NEXT採用責任者が語る、外国人採用5つのポイント

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柿元 崇利
柿元 崇利

東京工業大学・大学院で生命理工学を専攻したのち、日本IBMへ入社し法人営業に6年間従事。その後起業するも挫折。2014年にU-NEXTへ入社。ビジネス開発・プロジェクトマネージャーなど担当し、2017年から採用責任者を務める。

組織を成長させるため、能力の高い外国籍の人を積極的に雇用したり、将来的に外国人採用に取り組もうと考えていたりするクリエイティブ企業が増えています。しかし、外国人採用に必要なノウハウを持っている会社は決して多くないのでは?

そこで、約2割が外国籍社員だという株式会社U-NEXTにて採用を担当している柿元崇利さんに、外国人採用で役立つ5つのポイントをお話いただきました。

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1.抑えておきたい、仕事に対する価値観の違い

ーまずは、柿元さんの普段のお仕事と、U-NEXTが外国人採用を始めたきっかけを教えてください。

柿元:私は人事領域のうち採用に特化して仕事をしています。そのほかには、ビジネス開発の名のもとに、組織横断的なプロジェクトを担当することもあります。

U-NEXTが日本以外の国と地域から採用をするようになったのは、そうしなければ競争に負けてしまう、という危機感からでした。

動画配信業界には極めて高い品質でサービスを提供する競争相手がいて、ちょっといいもの、をつくる程度ではユーザーに認めてもらえない残酷な現実があります。NETFLIXやAmazon、YouTubeを使ったことのある方はご理解いただけると思うのですが、ものすごく使いやすいんです。利用者は無慈悲に比較しますから、私たちも同等以上の使い勝手を目指さないといけません。

そのためには、他社と同等以上の人材が活躍しないと話になりません。自然と、より広範な人材プールから採用するようになっていきました。

結果的にU-NEXTでは2015年から外国人採用が本格化しました。現在は全社員350人のうち、約2割強を外国籍の社員が占めています。定額制動画配信サービスとしても、Netflix、Amazonプライム・ビデオに次ぐ第3位の売上シェアを獲得できています。

ー外国人採用にはいくつかポイントがあるとうかがいました。

柿元:まずはじめに、今回は「外国人採用」というテーマでお話しますが、「外国人」という言葉で「日本人以外の人」を一括りに捉えることは禁物です。日本人にさまざまな人がいるように、外国人にもさまざまな考え方や出自の方がいらっしゃいます。すべてケースバイケースで向き合う必要がありますが、それを踏まえて全体の傾向としてお話したいと思います。

外国人を採用したいと考えたとき、まず、日本企業における慣習や暗黙のルールが、外国の方にとっては「当たり前」ではないという認識をしておくことが重要です。前例にのっとって「いい」「悪い」を判断するのではなく、これまでの考え方や規則などが合理的か、という視点で考えると、互いに働きやすい環境に近づくのではないでしょうか。

ー具体的な例として、どのような状況と対策が考えられますか。

柿元:日本には、「阿吽の呼吸」「忖度」という言葉があるように、言われていないことを読み取り、行動することが美徳とされています。しかし、それはあくまで日本人同士の話で、外国人には理解し難い文化です。契約書に書かれていないことや、伝えられていないことは「ない」ことと同じなので、必要なことは説明、あるいは明文化する必要があるでしょう。

外国人のみなさんは、異国で働くことに多少の不安もあるかもしれません。それゆえ、日本では「当たり前」なことに対する質問も多いかもしれませんが、一つひとつ丁寧に理解してもらう姿勢が必要です。不明点を説明していく過程で、これまで「当たり前」と思ってきたことの不合理も発見できるかもしれません。

ー「評価制度」についても、異なる部分はあるのでしょうか。

柿元:日本では社員を一から丁寧に育て、その成長具合を含めて評価する傾向にあると言われます。しかし海外で働くプロフェッショナルはジョブ型で雇用されている場合が多く、結果や成果に対して評価することが一般的です。評価の前提が違うことを念頭において、事前に自社の評価制度を伝え、互いに理解しあえるといいでしょう。

2.優秀な人材=高額な給与とは限らない

ー給与面はいかがでしょうか? 海外の優秀な人材を雇うとなると、高額な給料を払う必要があるように思うのですが。

柿元:海外の優秀な人材を採用するとなると、破格の給与を支払う必要があると考える方もいるかもしれませんが、もちろん千差万別です。また、給与に対する期待は、住んでいる地域や個人の価値観によっても違うので、最初から給与について気構える必要はありません。

「日本で働きたい」というモチベーションを持っている方はたくさんいらっしゃいます。もちろん、求めるスキルや人材に対する「相場」はありますが、金額面で臆することなく、会社の魅力や採用したい人物像を明確に打ち出すことで、自社に合致する人材に出会える確度は高まるでしょう。

ー国にもよりますが、ボーナスに対する考え方も異なると聞きました。

柿元:たとえば、アメリカと日本ではボーナスの仕組みがまったく異なります。アメリカではボーナスを受け取る従業員は役員や管理職以上の役職者に限定され、業績に応じて給与に上乗せして支払われる形態が一般的です。

一方、日本ではボーナスを見込んだ金額を年収として提示することが通例化しています。住宅や車のローンを組む際にもボーナスがもらえる前提で計画したりしますよね。しかし、多くの場合ボーナスの金額が決まる基準は明確になっていません。一方的に「今季は◯か月分です」などと通達されて終わりで、明確な理由なく減るような事態も起こりえます。海外の方から見ると、なかなか理解に苦しむ制度なんです。

ーU-NEXTでは、どのような対策をとりましたか?

柿元:「合理的に説明できないことはやめよう」という考えから、賞与自体を廃止し、ベースの給与を高める方向に舵を切りました。結果、誰もがわかりやすい給与体制となり、納得感が高まりました。

ー制度の変更にまで踏み込んだのですね。

柿元:制度を変えるのは簡単ではありません。一足飛びにはいかないと思いますが、給与面に限らず、まずは就労規則や休暇制度等を事前に共有しておくことが大事です。そして、合理的に説明がつかないことに関しては、思い切って変更することも検討しましょう。外国人の社員に対してだけでなく、日本人の社員に対しても、わかりやすく納得しやすい制度ができあがるはずです。

3.言語の壁を恐れず、積極的にコミュニケーションを

ーコミュニケーション面も気になります。たとえば、言語の壁は大きいと思いますが、U-NEXTの場合はいかがでしょうか。

柿元:外国人社員が多いU-NEXTですが、「言語の壁を乗り越えた」とは言えません。しかし、日本語が喋れない外国人に向けて日本語のレッスンを開くなど、より活発なコミュニケーションが生まれるようにサポートしています。また日本人の社員も、自発的に英語を理解しようとしており、相手の言語に合わせて発言するケースも増えています。また、リモートワークになって以降はチャットツールでの会話も増えたため、文章をコピー&ペーストして機械翻訳にかければ、いままでよりも容易に相手の発言を理解できるようになりました。

外国人従業員を受け入れる場合、コミュニケーションが不安になる企業も多いはず。しかし大切なのは、外国語が完璧に話せるかどうかよりも、間違いを恐れずにコミュニケーションを取ろうとする姿勢だと思います。

4.求人票は、「役割と責任」をはっきり書く

ー採用において求人票の出し方も重要です。外国人の方にとってわかりやすい求人票とは、どのようなものですか?

柿元:日本企業の求人票で曖昧に書かれがちなのが、ロール&レスポンシビリティー(役割と責任)です。どのようなスキルや能力を求めているかはもちろん、入社後の役割と責任を明確に定義しておきましょう。求人票の精度が高ければ、書類選考の時点からミスマッチが減らせます。

ーできるだけ情報を明確にしておくということですね。

柿元:採用のプロセスをオープンにして、選考の基準や、募集している人材がなぜ必要かなどをはっきり伝えたほうが、日本の企業文化に慣れていない人は安心します。「蓋を開けてみたら違った」ということがないよう、採用する側は説明責任を尽くすと良いでしょう。

5.会社に必要な人材は? スキルは足りてる? 求める人物像は明確に

ー書類選考が終わると面接に入ります。知っておくと良いポイントなどはありますか?

柿元:当然のことですが、日本の就労ビザを所有しているかは必ずたしかめましょう。日本国内の会社からの中途採用の場合、すでに就労ビザを所有している人が大半です。

就労ビザを所有していない場合、取得して働き始めるまでにさまざまな手続きがあり、U-NEXTではトラブルなく進行できるようにサポートしています。なお、就労ビザを取得するまでの期間は、出身国や仕事の種類、タイミングによって変わります。就労事例が多い国、日本と関係性が良好な国であれば、一般的には1、2か月くらいで取得できます。ただ、感染症の世界的流行のように、不確定要素により延長する可能性があることも認識しておきましょう。

なお、外国籍の人が「正社員契約」になると、滞在などに有利なビザを取得できる可能性が高まるため、その企業に対してよりポジティブな印象を抱いてもらえます。

ーちなみに、よりマッチングを高めるためのコツなどあるのでしょうか。

柿元:ミスマッチを減らすため、応募者と同じ国の社員と面談する機会を設けることがあります。功を奏した例として、以前、中国語圏の採用候補者と英語で面談した際、生真面目すぎてチームに合わないのではという不安がありました。そこで、中国語を話せる社員と少人数かつ母国語で話す機会を設けたところ、本来のキャラクターがいい意味で違うことがわかり、お互いの不安を解消することができました。

ー素敵なエピソードですね。長期的な取り組みとしてみると良さそうです。

柿元:外国人採用が初めて、という企業にとっては難しいですが、何人か採用できて、さらに人数を増やしたいとなったときに、参考にしていただけると良いかもしれません。

まとめ.「外国人」と一括りにせず、一人ひとりにリスペクトを持ってコミュニケーションを

ー最後に、出身国、宗教、価値観などが違う方々と一緒に働く際、どのような心構えをしておくと良いか教えてください。

柿元:世界にはいろいろな人種や性別、考え方や宗教、政治信条があるのが当たり前です。逆に、多様性を認める考え方が会社に浸透していないと、外国人にとって居心地がいい職場とはいえません。これまでの慣習や思い込みではなく、目的に対して合理的な対話ができると良いですね。

ー一人ひとりに向き合うのが重要なのですね。

柿元:日本企業にとって、外国人を採用するメリットはたくさんあります。ただ、「外国人」と一言で括ってしまうのは簡単ですが、働くことへのモチベーションや企業に求めることは、一人ひとりまったくことなります。互いに「一緒に働きたい」と思うためには、価値観をすり合わせたり、情報を明確に開示したりする必要があります。

日本で暮らすこと、働くことへの不安に寄り添い、ときには会社のよくない面までも心を尽くして説明することで、お互いに納得できる結果に近づくはず。皆さんの採用活動が上手くいくことを、心から願っています。



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