UI / UXデザイナーを目指す人必見。仕事内容や必要なスキルを徹底解説

プロフィール
佐宗純
佐宗純

株式会社グッドパッチ
ReDesigner事業責任者
2015年1月にUXデザイナーとしてグッドパッチに入社。Prottの初期チームにて国内外100社以上のデザインチームを担当。アライアンスからデザインワークショップの設計、UI Crunchなどのデザインイベント企画運営を担当。2018年5月にReDesignerを立ち上げ、2019年6月にReDesigner for Studentを立ち上げる。事業責任者兼キャリアデザイナーとしてCA業にもコミットしている。前職ではNTT Communicationsにてデザイン思考を活用した事業開発や既存プロダクトのUI / UX改善に従事。

企業からの需要が高まっている、「UI / UXデザイン」の仕事。その変化の背景には、一体どんな理由があるのでしょうか? 今回は、デザイナー特化型キャリア支援サービス「ReDesigner」を運営している株式会社グッドパッチから、事業責任者の佐宗純さんにお話をうかがいました。

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いま、企業のニーズに対してデザイナーの供給が追いつかないほど、圧倒的に売り手市場な職種が「UI / UXデザイナー」です。実際に、デザイナーと企業のマッチングを行っている求人サービス「ReDesigner」でも、その状況が見て取れるそうです。

しかし、日本では、UI / UXデザイナーの役割やキャリアステップについて、業界のスタンダードがまだない状況。今回は、UI / UXデザイナーの重要性や将来性について解説していきたいと思います。

TOPIC
1. クリエイティブ業界における「デザイン」のいま
2. UI / UXデザイナーの役割
3. WEBデザイナーとUI / UXデザイナーの違い
4. デザイナーのキャリアはどう変化する?
5. UI / UXデザイナーになるには

1.クリエイティブ業界における「デザイン」のいま

企業100社にデザイン投資に関するアンケートを行い、その結果をまとめた「ReDesigner DesignDataBook」(調査:グッドパッチ)のデータをもとに、まずはクリエティブ業界におけるデザイナーのいまについてお話します。

■直近採用したいデザイナーの職種は?

画像提供:グッドパッチ「ReDesigner DesignDataBook」

UI / UXデザイナーは、今後増やしていきたい職種のトップ2になっています。需要についてはこのアンケート結果からも明らかです。

■デザイナーに求める役割は?

画像提供:グッドパッチ「ReDesigner DesignDataBook」

続いて、企業がデザイナーに求める役割については、「機能やコンセプトの整理」がトップ回答でした。従来のデザイナーは、ビジュアルといった見た目にわかる部分での関わりが多かったのに対し、いまはより上流工程でサービスや価値を整理し構造化することが求められているのです。この役割の変化や、職種の細分化については、ユーザーの価値観や時代の変化の影響を大きく受けています。

なかでもクリエイターに示唆すべき時代の変化を3つ、述べたいと思います。

一つ目は「VUCA」時代の到来です。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)のこと。いまは世の中のトレンドが物凄いスピードで変化しています。半年先や1年先の未来が読みづらくなっているため、その時々でユーザーの本質的なニーズを的確にとらえることが重要になります。

二つ目は、マーケット起点が当てにならなくなったこと。いかに市場調査をして、ロジカルに考えて事業をつくったとしても、それが本当にユーザーに求められているものかはわからない。事業をマーケット起点だけで考えるのは、一定のリスクを伴います。

三つ目は、ユーザーの選択肢の緩和です。この10年でスマートフォンが普及し、アプリやWEBサイトが生活に欠かせないものとなりました。世の中にはどれを使えば良いのかわからないほど、大量の商品やサービスであふれています。もはや、価格やサービス内容、機能といった要素での差別化は難しいと言えます。大事なのはいかにユーザーに選ばれ続け、愛されるサービスをつくれるかということです。

このように、マーケット起点だけでなくユーザー中心に設計し、ユーザーが求める体験を提供していくこと、つまり、「使いやすさ」や「体験価値」を重視したUI / UXデザインが、これからのものづくりに求められることは間違いありません。

2.UI / UXデザイナーの役割

よく「UI / UXデザイナー」とまとめて呼ばれますが、そもそも「UIデザイナー」と「UXデザイナー」の責任領域は異なっています。

まずはその定義を、世界的デザイナーであるジェームズ・ギャレット氏が考案した「UX5段階モデル」をもとに説明します。

画像提供:グッドパッチ「ReDesigner DesignDataBook」

「UX5段階モデル」とは、「ユーザー体験を構成する要素は5つあり、それぞれの要素が段階的に、そして密接につながっている」という概念です。つまり、各段階で必要なデザインプロセスを行い、アウトプットをすることで、ユーザーへのより良いサービス体験の提供を目指せるというもの。 下から上へ行くにつれ、生み出されるアウトプットがより具体的なものになっていきます。

UX5段階モデルのうちUIデザイナーの主な役割は、「構造」「骨格」「表層」の3つ。一方、UXデザイナーは「戦略」「要件」「構造」が主な役割です。

画像提供:グッドパッチ

ただ、これはあくまで責任領域としての分担。実際には、UXリサーチから課題の発見・定義、情報設計をしてUIデザインに落とし込み、レビューをするまでのプロセスを、UIデザイナーとUXデザイナーが一緒に動くこともあります。

企業によって、デザイナーの責任範囲や求める期待値は異なります。ここはご自身のキャリアを形成するうえで非常に重要なポイントになるので、転職を検討している方は、UIとUX、どちらのデザインスキルをまずは伸ばしていきたいかを一度考えてみると良いでしょう。

3.WEBデザイナーとUI / UXデザイナーの違い

よく「WEBデザイナーとUI / UXデザイナーの違いは?」という質問をいただきます。

求人市場でいう「UI / UXデザイナー」は、ほとんどの場合、サービス、つまりデジタルプロダクトをつくる仕事を指しています。一方、WEBデザイナーの求人は、会社のコーポレートサイトやサービスのランディングページをつくるケースが多いと思います。WEBデザイナーのようにWEBサイトをつくる経験と、UI / UXデザイナーのようにデジタルプロダクトをつくる経験では、必要とされるスキルが異なります。よって、WEBサイト制作の経験だけで、そのままUI / UXデザイナーにすぐキャリア転身できるかというと、そうとは限りません。

先述したUX5段階モデルは、対象とするものがWEBサイトであっても、デジタルプロダクトであっても、最終的なアウトプットの質を高めるために、どのデザイナーも無意識のうちに踏んでいるステップだと思います。職種に関係なく、デザインのプロセスやスタンスを意識することは大切です。

4.デザイナーのキャリアはどう変化する?

求められる領域が広がりつつあるがゆえに、デザイナーの次のキャリアアップがより複雑になっています。企業によって肩書きの呼び名はさまざまですが、最近増えているデザイナーの職種を紹介します。

■サービスデザイナー

サービスから得られる「体験」だけではなく、ビジネスの仕組みや関わる人など、システムの全体をデザインする。

■ブランドエクスペリエンスデザイナー

企業のビジョン・ミッション・バリューなどを策定し、インナーとアウターのブランディングをデザインする。

■デザインエンジニア

デザインとエンジニアリングを分けずに、両分野をかけ合わせることでものづくりの品質を高める。

■かけ合わせ

UI / UXデザイナー、UXデザイナー兼デザインマネージャーのような、二つの職種をかけ合わせた肩書き。

このように、キャリアの選択肢や肩書きも増えてきています。デザイナーにとって、良い面でもあり難しい面でもありますよね。今後は「インハウスのUI / UXデザイナー」のポジションがより求められることは間違いないでしょう。その理由は、「1.クリエイティブ業界における『デザイン』のいま」で述べたことに加え、先進国のデザイン事情も影響しています。

ヨーロッパにもオフィスを構えるグッドパッチさんによると、ヨーロッパに限らずアメリカでも、多くの企業がインハウスでデザインチームを持っているそうです。自分たちでデザイナーを抱える理由は、ユーザーからの声をプロダクトへ反映するまでのスピードが向上するうえ、内製化することによって社内にナレッジが貯まっていくという運用上のメリットがあるからです。

日本でもすでにデザイン組織を立ち上げる動きが多くの大企業で散見されます。今後は、インハウスのUI / UXデザイナーの求人が増えていくことはもちろん、外部のデザイン会社がクライアントのデザイン組織を育てていくようなケースも出てくることでしょう。

5.UI / UXデザイナーになるには

UI / UXデザイナーのニーズが高まっている一方、未経験の採用はそんなに多くないのが現状です。しかし、諦めることはありません。ファーストステップとしてすぐに行動できる2つの方法をご紹介します。

■自分でデジタルプロダクトをつくってみる

プライベートでも構いません。アプリでもWEBサイトでも、自分のポートフォリオに載せられるレベルのものを、デザインプロセスを意識して、ユーザー検証をしながら自分でつくってみてください。

もしWEBデザインをしている方であれば、そのWEBサイトにどんなニーズがあって、それをどう情報設計して、どんなかたちで価値を表現するのか、UX5段階モデルをもとに自分で言語化しながら進めてみると良いでしょう。自分で考え、アウトプットし、ユーザーに検証するプロセスが、デザインをするうえでは非常に大事だと思います。

■制作実績のプロセスを言語化する

デザイナーであれば、デジタル・アナログ関係なく、これまで何かしらの制作実績があるはずです。それをつくったときのプロセスやロジック、アプローチ、スタンスといったものを、あらためて言語化し、ポートフォリオに落とし込んでみましょう。重要なのは、アウトプットのかたちだけではなく、経ているプロセスをしっかり言語化し、どのような効果を与えたのかを明示することです。

このように、未経験でも熱量をアピールする材料は自分でつくれます。まずはどんなデザイナーになりたいのか、そしてアウトプットだけでなく、中間の成果物や、最終的な成果も意識したうえで、自分の作品としてのポートフォリオをつくってみる。それが、UI / UXデザイナーへの第一歩だと思います。

まとめ

クリエイティブ企業の採用も細分化しているため、キャリアを考えるときは、自分の「目指したいデザイナー像」を明確に持っておくことが重要です。その際、どんな職種であれ、「いかにユーザーのニーズをとらえ、魅力的な体験を提供できるか」がデザイナーの真髄なのです。

UI / UXデザイナーは、企業からいま非常に求められている仕事だということは事実。そして、単純労働ではなく、ものづくりの上流から実際のアウトプットまで関われるという点で面白い仕事です。「ユーザーが喜ぶ姿を見たい」や「事業をこんなふうに成長させたい」など、人に関心があり、サービスを根っこからつくり上げることに関心を持てる人は、活躍できる分野だと思います。

まずは、デザイナーに求められるスキルの多様化を理解したうえで、ご自身のキャリアについて見つめ直す機会にしてみてはいかがでしょうか。



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