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12年前にドイツへ渡り、現在は首都・ベルリンで暮らすフリーライターの久保田由希さん。これまで著書や雑誌を通して、ベルリンのライフスタイルを日本に向けて発信したり、ヨーロッパのヴィンテージ雑貨を紹介しているのだとか。そんな久保田さんに、ドイツのクリエイティブな職場と、そこで働く人々を紹介していただきます。日本との違いや共通点は、一体どんなところにあるのでしょう?
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12年前にドイツへ渡り、現在は首都・ベルリンで暮らすフリーライターの久保田由希さん。これまで著書や雑誌を通して、ベルリンのライフスタイルを日本に向けて発信したり、ヨーロッパのヴィンテージ雑貨を紹介しているのだとか。そんな久保田さんに、ドイツのクリエイティブな職場と、そこで働く人々を紹介していただきます。日本との違いや共通点は、一体どんなところにあるのでしょう?
語学力が足りず一度は断念。再挑戦してつかんだチャンス
一度は海外で仕事をしてみたい、と考える人も少なくないでしょう。ここベルリンにも、そんな希望を抱えてやってきた日本人たちがいます。しかし、いくら日本で経験があったとしても、環境の異なる土地で、すぐに理想通りの仕事ができるとは限りません。そこで今回は、ドイツの首都・ベルリンのデザイン会社で、インターンを行っている日本人、堀・ノアック・亜由美さんにお話を伺いました。
堀さんは、京都造形芸術大学を卒業後、大阪の広告代理店でグラフィックデザイナーとして勤務していました。そして、シンプルで洗練されたドイツデザインに惹かれたことから、ワーキングホリデービザを利用して、2010年に渡独。約半年間の滞在中に、デザイン会社に飛び込み営業をするなど、ドイツでグラフィックデザイナーになるための努力を続けて来ました。しかし、当時はドイツ語力が足りずに、断念。一度日本へ帰国して、再びベルリンへやって来たのです。
2度目の滞在では、将来的に社員としてドイツで働くことを視野に入れながら、まずはインターンとして会社で働くことを目標に定めました。語学も磨きたかったので、ベルリンでフリーランスのデザイナーとして活動しながら、学校でビジネスドイツ語コースを履修。そのコースでは、単にドイツ語を習うだけでなく、履歴書を書いて実際にインターンを経験することも、カリキュラムに組まれていたそうです。堀さんはドイツ式の履歴書を作って、インターネットで探した広告代理店10社にアタック。その中で返事が来たのが、現在インターンをしているデザイン会社でした。ドイツの大手通信会社の広告を中心に、ショッピングセンターのCIなども手がけており、社員は全員で10名。そのうちデザイナーは5名で、20代後半の女性が多いそうです。
堀さんは、社内で唯一のインターン。勤務時間は月曜から木曜の9時半から18時半までで、その間に1時間の昼休みをはさみます。堀さんの場合は、インターンでも月に数万円の給料が出るほか、数日間の有給休暇ももらえます(条件や待遇は会社によって異なり、無給の場合もあります)。
堀さんの仕事内容は、フライヤーやポスターなどのデザイン。ただし、クライアント内のマニュアルに従って作る仕事が中心です。自由にデザインをする面白さは少ないとのことですが、「ドイツでの仕事の流れや、ドイツ語テキストの扱い方を学ぶのにとてもいいんです。」と、堀さんは言います。ドイツ語は上達したとはいえ、やはり外国語。改行の位置など、ドイツ語特有の規則に慣れるのが大変なのだそうです。また、日本ではIllustlatorで制作していましたが、ドイツで初めてInDesignを使うことに。新しいソフトを外国語で習得するのにも苦労したといいます。
最近は、ショッピングセンターのCI制作にも関わるようになりました。これは、会社にとっても新しい仕事です。そのため、まず幹部社員とクライアントが打ち合わせを行い、基本コンセプトを立案後、全体ミーティングが開かれました。堀さんもこのミーティングに参加し、マスコットキャラクター案を出したところ、その案が採用されることに。クリエイティブな仕事で、実績を上げはじめているところです。
仕事は動かなければもらえない
ドイツでは、自分から積極的に働きかけていかなければ仕事はもらえないということに、現在の会社でインターンを始めて気づいたといいます。
「日本では、新人の仕事というのがあったんです。だけど、ドイツでは、自分が何も言わないと仕事がないんです。だから、誰かが紙を切るなどの作業をしていたら手伝ったり、ミーティングに参加させてもらったりしています。」
と、自ら進んでプロジェクトミーティングに参加することで、新たな経験を積むようにしているとのこと。
これと同じようなことを、連載第1回で取材した、デザイナーのカロリーナさんも話していました。仕事は興味のある企画に自発的に参加して得ており、一方的に与えられるものではない、と。だからこそ、いい仕事ができるのかもしれません。
年齢・社歴を意識しない、フランクな雰囲気
堀さんが気づいた、日本の会社と大きく違うもう一つの点は、社内の上下関係が希薄なこと。日本では、年齢や社歴が1年違えば、社員同士の言葉遣いや振る舞いが変わります。ドイツ語では、話し相手に対する呼び方には「あなた」というオフィシャルなものと、「きみ」というくだけた言い方がありますが、日本語ほど細かくはありません。一般的に社員同士は、年齢に関係なくフランクな言葉で話しており、堀さんがいる会社でもそれは同じです。
昼休みには、会社が入居しているビル内の食堂へ社員同士で行き、家族や旅行などの話をするそうです。「社員同士は仲がいいです。でもフランクに話していても、相手に対して気を遣っているのは感じます。ただ、日本のように厳しくはないですね。」
昼休みには、仕事の話題は出ません。仕事と休みのメリハリを、はっきりつけるのがドイツ人。休み時間の目的は、休むこと。ひととき仕事から離れることで、仕事の効率も上がると考えている人が多いのです。ちなみに、食堂でのランチは無料。会社が負担しているそうです。
仕事に集中し、定時にスパッと退社するドイツ人
日本では、残業はつきものという雰囲気で、夜遅くまで仕事をすることが多かったという堀さん。でも、今の会社では、デザイナーたちは定時に仕事を切り上げて帰っているそうです。
「みんなすごく仕事に集中していると思います。日本だとつい息抜きで、ネットサーフィンなどをしたりしますが、周りのドイツ人たちはそういうことはしていません。」
就業時間中は仕事に集中して、定時に退社するのがドイツの一般的な働き方。残業が多いと、能力が低いと思われ、マイナス評価につながります。そうしたドイツの働き方が、ここでも行われています。
堀さんによると、「アジア人は仕事が遅い」と思っているドイツ人もいるとか。それはもしかして、丁寧な仕事によるものなのかもしれませんし、あるいは効率が悪かったり、時間の管理が甘い可能性もあるでしょう。定時退社を目指すあまり、仕事内容がずさんになっては本末転倒ですが、もしかしたら無駄な作業が多いとも考えられます。もし日本で長時間にわたり仕事をしているとしたら、自分が担当している仕事の目的と、それを達成するための方法を見直し、さらに周囲の人々に自分の考えを伝えていくことで、環境は少しずつ変わるかもしれません。ドイツと日本では、感覚や習慣の違いは大きいです。しかし、日本でよりよい働き方を模索するために、ドイツの働き方は一つのヒントになるのではないでしょうか。
堀さんは、今年12月まで現在の会社でインターンを続ける予定です。ドイツではインターン終了時に、勤務態度を評価した証明書を会社からもらえます。その証明書を元に、今度はどこかのデザイン会社で週に数日間社員契約し、フリーランスと両立して働いていくのが理想のキャリアパスだそうです。ドイツと日本、両者の良さを取り入れたデザインと働き方が、数年後には実現しているかもしれませんね。
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