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- 古賀敏幹(Koga Toshiki)
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株式会社リクルートキャリア「サンカク」の責任者。東京工業大学大学院卒業後、ソフトウェアエンジニアとして大手電機メーカーに就職。新規事業開発を担当後、「サンカク」が立ち上がったタイミングでリクルートキャリアに転職、サンカクのプロダクトおよび事業開発を担当。「社会人のインターンシップ」「ふるさと副業」の立ち上げなど、社会人の社外活動を支援することを主軸に、企業の経営支援や採用ブランディングの支援を行っている。
ここ最近、「地方副業」が盛り上がっている。リモートでの仕事を前提に、首都圏に住む人が地方の企業にコミットするという働き方だ。「興味はあるけど情報があまりない」「実態がわからず一歩が踏み出せない」と思っている方も多いのではないだろうか?
今回は、そんな「地方副業」の最新事情から実際に求められるスキルまでを知るべく、リクルートキャリアの社会人インターンシップのサービス「サンカク」で、地方企業と首都圏人材をつなぐ「ふるさと副業」を立ち上げた古賀敏幹さんに話を聞いた。
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「地方副業」需要増の理由は? キーワードは関係人口
ーHR業界にいらっしゃる古賀さんから見て、「地方副業」が盛り上がってきたのはいつ頃からだと感じていますか?
古賀:ここ4、5年ですね。当時の内閣が地方創生を重要なテーマとして掲げたことが大きな要因です。
―政策が発表された2014年当時、UIターンへの注目度が高まりましたよね。
古賀:そうですね。でもやはり移住となると、ハードルが高い。そこで、2017年頃からは、関係人口(移住の「定住人口」でもなく、観光の「交流人口」でもない、地域と多様なかたちで関わる人のこと)を増やそうという流れがうまれてきました。最近では、国が地方に対して、関係人口増加のための支援策も行なっているようです。そういった後押しもあって、「副業」のかたちで首都圏の人材を求める地方企業が増えてきたという流れですね。
―なるほど。直近のトピックで言うと、コロナ禍で副業が活発になったという話もあります。「地方副業」にも影響はありましたか?
古賀:副業者を受け入れる企業側に変化がありましたね。というのも、企業側には副業制度導入に踏み切れなかったふたつのハードルがあるんです。ひとつは「副業」自体が地方の多くの人にとって馴染みのないものであること。ふたつ目は「リモートワーク」への抵抗感ですね。よく知らない、わからないものがふたつかけ合わさっていたら、企業としても「いや、やらなくていいよ」となっちゃう。でもコロナ禍で、リモートワークが一般化したことにより、ハードルがひとつ消えた。そういった意味で、コロナはターニングポイントになったのかなと感じます。
「地方副業」のはじめ方。求められている人材と気をつけるポイントとは?
―「地方副業」では、実際どんな人材が求められているのでしょうか?
古賀:WEBデザインや開発などのクリエイティブな職種と、経営政略や広報戦略など上流から関わるような職種に二極化しているように思います。
―比率としてはどちらが多いのですか?
古賀:定量的に測ったことがないのでわかりませんが、サービスの提供を通して感じるのは、現時点だとクリエイティブな仕事の募集のほうが多いように思います。企業側もスコープを定めて依頼ができますし、副業する側も求められていることがわかりやすいので、仕事としてやりやすいのでしょうね。一方で、本来であれば上流部分に課題を抱えている企業も多く、そういったテーマでも副業のマッチングが成立しやすくなっていけば、より事業成長する企業を増やせるのではないかと思っています。
―では、実際に「地方副業」をはじめるにあたり、気をつける具体的なポイントがあれば教えていただきたいです。
古賀:契約を結ぶ前に、さまざまな認識をそろえておくことは大切だと思います。例えば「副業として参画する人の想定稼働がどのていどなのか」「どれくらいの期間でどんな成果を目指すのか」の認識をそろえておくことで、副業開始後の齟齬やトラブルが起きないようにできると思います。
―最初に認識を合わせるのは大事ですね。
古賀:ほかにも、契約期間についても確認できるといいですね。期間を最初に設定するのもそうですし、長期のプロジェクトの場合は数か月に1回、双方の更新の意志を確認できるようにしておくとか。マッチングしても実際に働き出したら仕事のやり方が合わなかったり、双方の事情が変わったりすることはあります。そのときのために、前もって期間を定め、区切りをつけられるようにしておくといいですね。
―なるほど。では、働きはじめてから気をつけたいことは何ですか?
古賀:やっぱりコミュニケーションです。例えば、ライトに返信できるような内容はすぐに返事をするだけで、信頼関係が保てます。あとは、「この時間にがっつり作業します」と事前に伝えるなど、こちらの状況を理解してもらう努力は必要です。
ほかにも、自走できることも大切。日本のビジネスパーソンのなかには、ミッションを提示されて、それに120%のクオリティーで応えることで評価される方が少なからずいます。副業の現場では、ミッションを自身で定義する側に立つこともあるので、仕事とはスイッチを変えなければいけないこともあると思います。
「ふるさと副業」でキャリアの財産になるような体験をしてほしい
―古賀さんが企画・運営されている「ふるさと副業」とはどういったものなのでしょうか?
古賀:リクルートキャリアの「サンカク」内で立ち上がった企画です。そもそも「サンカク」は、「会社の枠を超えて成長機会を生み出すこと」を目的に、さまざまプロジェクトを実施しているコンテンツ。主には、他社の仕事を体験できる「社会人インターンシップ」を企画・実施しています。
「ふるさと副業」は、2018年に新しいコンテンツとしてはじまりました。毎回、決まった地域の企業と、その地域で副業したい人に集まっていただきマッチングの機会を提供していて、これまで全4回3地域で開催しています。
―マッチングのイベントを開催しているのは珍しいですね。どういった経緯で立ち上がったプロジェクトなのですか?
古賀:ぼく自身、和歌山県出身で、「地元と繋がれる機会はないか」「地元に還元できることはないか」とずっと考えていました。でも、地方企業側のニーズがないだろうと思って、寝かせていたアイデアだったんです。
そんなとき、福岡の営業所からある話を聞きました。「企業として成長したいけど、人材がいないから探してほしい」という相談が地元企業からきている、と。そこで、ダメ元で「ふるさと副業会議」の企画書をつくりました。さっそく地元企業に向けて募集をしたところ、1週間で5社の参加が決まった。思った以上に、副業のかたちでコミットしてくれる人を企業が求めていることに気づき、本格的な立ち上げに踏み切りました。
―古賀さんの個人的な想いからスタートしたプロジェクトなのですね。いま、さまざまなマッチングサービスがありますが、「ふるさと副業」の特徴はありますか?
古賀:「副業」というと、お金を稼ぐことが目的であることが多いと思うのですが、「ふるさと副業」は、働く人にとって「成長機会があるかどうか」を大切にしています。わたしたちは挑戦の機会を「打席」と言っているんですけど、その打席に立つ機会をつくることに重きを置いています。
―具体的にどのような成長機会を提供しているのですか?
古賀:例えば大手企業で働いていて、細分化された仕事をしていると、ルーティーン化してきたり、やりがいを見失ったりすることってあると思うんです。そういったときに、「ふるさと副業」をとおして、地方企業の経営者の方と一緒に、その会社の5年10年後の未来を見据えながら一緒に働くということは、モチベーションにもなりますし、普段の仕事では経験できない業務も任せてもらえる。気持ち的にもスキル的にも、キャリアの財産になるような体験・経験をしてほしいと思っています。
成長する機会はもっと多様になる。未来のキャリア形成とは?
―実際に「ふるさと副業」に参加された方からは、どのような声がありますか?
古賀:最近では「社会貢献をしたいという想いがコロナ禍で強まっていた。本業も完全リモートになり、いいタイミングでチャンスが重なった」といったものや、「成長機会のある現職はそのままで、地方貢献が出来ることを知り、今回参加した。自分の経験が役に立つのかもという実感がわいた」など、「ふるさと副業」を通して、地方貢献の想いを叶えられたというお声をいただいていますね。
―では、最後に古賀さんが見据えるこれからの 「働き方」についてお聞かせください。
古賀:「サンカク」のキーワードのひとつに、「会社の壁を超えて」があります。これからも、働き方の主流は、企業に所属して働くことだと思いますが、会社に壁があって、そこで働く人の機会が限定されるのはもったいない。その壁を溶かしていくコンテンツやサービスが世の中に増えて、働く個人の「打席」がもっと多く提供されるようになることで、個がもっと能力を伸ばし、それぞれが望むキャリアをさらに実現できる未来になるのではないでしょうか。
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