作品が話題になるのを感じる嬉しさは、忙しさに勝る

プロフィール
濱中 優佳

関西学院大学社会学部卒業。2008年に株式会社フラッグに入社し、WEB制作アシスタントを務めたのち、映画宣伝の部署へ異動。洋邦問わず多数の映画・DVD作品等の宣伝を手がけている。

いわゆる「映画業界」の仕事に、製作・配給以外の職種があることを知っている方は意外に少ないのではないでしょうか?
株式会社フラッグは、メインの業務は映像などのコンテンツ制作ですが、同時に『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』など話題作の映画宣伝を手掛けている会社。今回お話を伺った濱中優佳さんは、同社でPRプロモーション事業部に所属し、劇場公開作品はもちろんのこと海外ドラマやDVD作品のWEB媒体向けの宣伝を担当しています。元々は音楽系の業界を目指していたそうですが、濱中さんが「映画配給会社と媒体の架け橋」になった理由とは何だったのでしょうか?
その熱い思いを伺いました。

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音楽業界を目指していた中で出会った映画宣伝

—濱中さんが、株式会社フラッグへ入社した経緯を教えてください。

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濱中:元々音楽が好きだったんですが、クリエイター志望ではなくて、自分の好きな音楽をいろいろな人に知ってほしい、という思いが高校時代からありました。関西学院大学時代は、音楽業界へのコネを作ろうと思って地元のライブハウスでアルバイトをしていましたが、業界とのつながりを作ることは難しく、そんなときに初めて「宣伝」という職業があることを知ったんです。ただ音楽業界だけに絞ると窓口が狭く、エンタメ系であれば音楽業界への道に近づくだろうと考えて、当時音楽系の映像コンテンツを作っていた株式会社フラッグに入社を決めました。

―入社してしばらく経って、自分の夢と違う業務内容に悩まれたことは?

濱中:入社したときは、WEB制作のアシスタントディレクターとして、基本的に「何でも屋さん」という立ち位置でした。仕事は楽しかったけれど、しばらくすると自分のやりたかったことから離れていると感じるようになり、将来が見えなくなってしまった時期があったんです。そういった気持ちもあって、入社1年くらいのときに、アルバイトからでもいいから音楽業界で頑張ってみようかと、会社を辞めることを真剣に考えていました。

―そんな時に、現在のお仕事に繋がる転機があったわけですね?

濱中:偶然にも弊社が映画宣伝の仕事を始めるようになって、「何でも屋さん」の私が、映画『スター・トレック』の主演であるクリス・パインの日本での知名度をアップさせるためのオフィシャルブログを展開することになりました。そこから徐々に映画宣伝の仕事に多く関わるようになって、宣伝を担当する部署への異動が正式に決定したんです。最初は受けるべきか悩みましたが、映画も好きだし、そもそも宣伝という仕事に興味があって、性格的にもデスクワークより人とのコミュニケーションを取る方が好きなので、「とりあえずやってみよう!」というところからスタートしましたね。

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「宣伝をもっと学びたい」という気持ちにさせたファンの言葉

—濱中さんは、具体的にどんな業務を行なっているのでしょうか?

濱中:映画関係のPR会社は、配給会社とマスコミの架け橋的な存在だと言えます。私はWEB媒体向けの宣伝担当で、媒体さんに担当作品を紹介していただくことが主な仕事になります。映画が公開される前に、記者会見や作品関連のイベント、出演者や監督へのインタビュー取材などがありますが、それを設定するのは配給会社の仕事で、そこへ媒体さんを多く呼び込むことが私の仕事です。担当する作品の知名度を上げて、いかに露出を増やせるのかが要なので、ニュース記事にしていただけそうなネタを作品から探して、各媒体に提案することも大事です。

—実際に映画宣伝を担当してみて、いかがでしたか?

濱中:最初の頃はガムシャラ過ぎて、何をしていたのかよく思い出せないんです。先輩の下で、記事掲載状況のチェックであるとか、さまざまな雑務をこなす日々でしたから。自分が映画の宣伝をしているということを実感したのは、海外ドラマのDVD作品を担当しないかと言われたときで、異動してから数ヶ月後のことでした。作品は1人につき1本ではなく、何本もの作品を抱えることもあります。そうなると、あれもこれもしなければならず、パンクしかかることもあって。でも「逃げたい」と思ったことは一度もないんです。自分が仕込んだネタが記事になったり、話題になったりするのを肌で感じる嬉しさは、忙しさに勝るので(笑)。

—̶宣伝の仕事をするようになって、一番嬉しかったことは?

濱中:私が担当した一番大きな案件に、海外テレビドラマ『カイルXY』のDVD宣伝があります。その当時は日本での知名度もなく、タイアップもイチから組んでいかなければなりませんでした。さらに当時はTwitterが流行り始めた時期だったので、Twitterを使っての展開も試作的に行うという宣伝方法でした。ひたすらつぶやき続けるのは地道な作業でしたが、半年間作品についてつぶやいた結果、最終的にはフォロワー数が1,000人を超えたんです。私のTwitterがきっかけで作品を観たという方からは「あなたが宣伝を担当してくれたから、作品の魅力に気付くことができました」というコメントを頂いたりして。すごく嬉しかったですし、もっと宣伝について学びたいと思うきっかけにもなりました。

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—ただ、自分が好きではない作品も担当しなければいけないときもあるわけですよね?

濱中:それはあります。かなり複雑な気持ちになりますが、宣伝するには作品の良いところを広めないといけないですよね。どうすれば人に面白さを伝えられるのかを考えながら観ていくうちに、最初はわからなかった魅力を発見することもあって、そうすると宣伝するのが楽しくなっていくんです。宣伝が楽しいと、作品も魅力的な気がしてきて、最後には宣伝している自分がどっぷりと作品にはまってしまうという相乗効果もあるくらいです。それに苦手意識を持って宣伝すると確実にバレてしまうし、愛を持って作品に接しないとダメだと痛感します。

自分から働きかけていくことが重要

—華やかなイメージがある反面、ハードな仕事でもありますよね。宣伝マンに必要な資質とは何でしょうか?

濱中:フットワークの軽さと、積極性ですね。自分でニュースになるようなネタを考えたり、企画を提案したりして、作品のために自分が動かないと「あの映画って公開していたの?」ということになってしまいますから。メジャーな作品だけではなく、日本ではまったく無名の小規模作品を担当することもありますが、そのときにどれだけ自分から周囲に働きかけていくことができるかが重要だと思います。また、配給会社や各媒体の方々も、「頑張って宣伝してくれた」「あの人が宣伝する作品なら一度観てみよう」と、宣伝マンたちの動きを見てくれていますから、今担当している作品が次の作品へと繋がっていくんです。だから、受身ではできない仕事ですね。

—プライベートでも仕事を意識することはありますか?

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濱中:この仕事を始めてからは、やはり映画をよく観るようになりました。担当している作品の監督や主演俳優の過去作品をチェックしたり、自分の好きなジャンルの開拓もしています。映画以外でも、宣伝の企画に反映できるかもしれないと思って、常にアンテナを張っている状態です。私は「人生の中心は仕事」という考えの持ち主なので、好きなものを仕事にして楽しむという意味では宣伝が自分に合っていると思うし、休日出勤も苦にならないんですよ(笑)。

—最後に、今後の宣伝に掛ける意気込みをお聞かせください。

濱中:1月14日公開の映画『ヒミズ』と、『アイ・アム・ナンバー4』『ツリー・オブ・ライフ』のDVD、そしてこれから動き出すのは『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』です。今後の宣伝マンとしての目標は、常々自分自身の仕事が評価されて次の案件に繋がるようにしたいと思っているので「濱中さんにこの作品をお願いしたいんです!」と言われるようになることですね。この仕事を始めてからまだ2年ほどしか経っていませんが、私にとって宣伝とは「愛と情熱」だと思っています。



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