- プロフィール
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- 永瀬由衣
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1991年生まれ、東京都出身。女子美術大学在学中に株式会社れもんらいふのインターンを経験。2014年、新卒で入社。以降、経験を積んでデザイナーとして広告、雑誌、CDジャケットなど様々なプロジェクトに携わる。
アートディレクター兼グラフィックデザイナーである千原徹也氏が代表を務める株式会社れもんらいふ。広告や書籍、ファッションブランドなど多岐にわたるデザインに加え、この春からは各界で活躍する講師を招いて京都を舞台に「れもんらいふデザイン塾」をスタートするなど、その勢いは増すばかり。今回登場いただくのは、同社でデザイナーとして働く永瀬由衣さん。スタッフの中で最年少ながら、学生時代からインターンをしていたこともあり、れもんらいふ歴は最も長いのだとか。ファッションとデザインが大好きと宣言する、どこまでも真っ直ぐな24歳の言葉を追う。
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絵とファッションに没頭した学生時代
―子供の頃は、どんな毎日を過ごしていましたか?
永瀬:物心のついた頃から絵を描くのが本当に好きで。一番仲良しだった友だちも同じ一人っ子で洋服が好きだったので、2人でずっと家で絵を描いて遊んでいるような子供でした。小学生のときにはモーニング娘。の衣装の絵を描いたり、中学校2年生からは古着が好きになって、雑誌『CUTiE』の読者モデルのコーディネートを見て「こういう組み合わせで描いたらかわいいな」とか。
―昔から絵やファッションが好きだったんですね。では、仕事もその道に進もうと?
永瀬:はい。ずーっと文化服装学院に入りたい! と思っていたんですけど、高校3年生のときに学校の先生から女子美術大学にもファッション学科があることを聞いて、女子美術大学に入ることに決めたんです。高校の部活を引退してからは、高校生を中心とする『moc.』というファッションショーに参加しました。部活を引退したので時間もありましたし、やってみようと。『moc.』では、美大や文化服装学院に行きたい子たちが集まって、それぞれ担当を持つんです。私はそこで洋服を作って、チーム全員でモデルとして舞台にも立ちました。
—そのときのメンバーとは今も交流はあるんですか?
永瀬:ありますね。それが本当に大きくて。高校3年の夏から卒業するまでだから期間としては半年ちょっとくらいなんですが、すごく濃い時間を過ごしたんです。志をはっきりと持ったメンバーが多かったので、今では美容師になった子、アパレルで働いている子、カメラマンで写真をやっている子、広告代理店に就職した子、そのままモデルになった子もいますよ。今でも刺激をもらっています。
ファッションからデザインへ。きっかけは野田凪との出会い
―ファッションが大好きだったのに、グラフィックデザインに興味を持つようになったのは何がきっかけだったんですか?
永瀬:女子美術大学に入って間もない頃に授業でアートディレクター・野田凪さんのことを知ったんです。母にそのことを話したら「お父さんも野田凪さんと同じ仕事をしているんだよ」って教えてもらって。私の父も音楽会社でアートディレクターとしてCDのジャケットなどをデザインしていたんですけど、それまでちゃんと知ろうとしたことがなくて。それを聞いて、そういう血なのか……と、デザインの方向を目指し始めました。大学ではテキスタイル、パターン、縫製まで学びながら、PhotoshopとIllustratorでデザイン画を描いたり、仕上げた洋服を自分で写真を撮ったりファイルデザインなどしてポートフォリオにまとめる課題もあるんです。パターンを引くのが本当に苦手で専門の勉強に入る前に洋服を作ることは違うかも、と感じるようになって。私はこっちじゃないなと。
―在学中にたくさんインターンをされていたと聞いたのですが、具体的には?
永瀬:インターンは大学2年生から始めました。凪さんがスタイリストの優哉さんと立ち上げた「bortsprungt.(ボシュプルメット)」というファッションブランドでは展示会に立ち、ポップアップショップで販売員をして、「Syrup.(シロップ)」というブランドではアクセサリーの製作を手伝ったり、販売員をしたり。カタログも制作させて頂いたりしていました。
―いろんな現場に関わることで、さぞかし選択肢も広がったのでは?
永瀬:ファッションブランドで販売員を経験して思ったのは、本当に向いてないなってことでした(笑)。ワンピースの色を5色くらい悩んでいる方がいて相談されるんですけど、「好きな色を選べばいいのになぁ」とか思っちゃうんですよ(笑)。人と話すのは好きなんですけど、それと販売スタッフは違うなということも学びました。基本的に表に立つより、裏方作業が好きということにも気付きましたね。
―ずっとファッションを仕事にすると決意して進んできたのに、悩んだりもしたのでは……?
永瀬:ファッションを仕事にしたいとは思っていましたが、ファッションデザイナーとして服を作ったり、ショップ店員としてじゃなくても、ファッション広告などでグラフィックの世界でファッションと関わることができる。その方が自分に適しているなと思って。
―吉田ユニさんの事務所やれもんらいふでのインターンも経験したとのことですが、インターンとしては狭き門ですよね?
永瀬:ユニさんの参加している展示を見に行ったらご本人がいらして、話し掛けました。それ以降、不定期で「手伝って」とご連絡を頂けるように。なのでインターンというよりはお手伝いという感じです。れもんらいふも、もともとデザインが好きでTwitterをフォローしていたら、スタッフの募集をしていて。「大学生でもいいですか?」と問い合わせたら、インターンならOKですよと。学校の行事が忙しくて出られなくなった時期もあったのですが、卒業まで続けました。なので、今いるスタッフでは社会人歴もデザイナー歴も私が一番短いのですが、れもんらいふ歴は一番長いという(笑)。両方のインターンで撮影の立ち会いにも行かせてもらっていたので、当時の現場にいたカメラマンさんやスタイリストさんに今はデザイナーとして「実はあのときに〜」と、名刺を渡せるのはうれしいです。
―すごくアクティブですよね。躊躇する気持ちは全くないんでしょうか?
永瀬:相手の方は覚えていないかもしれないけれど、それでも「会っている」という事実があるから、そこは伝えたいなと思っていますね。それで私の印象が初めましてよりは覚えてもらえるかなって。いつかはフリーでやっていきたいという想いもあるので、そういうときのためにも。
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- 憧れの『装苑』で表紙を担当! 代官山 蔦屋書店に自分のデザインが並ぶ感動。
憧れの『装苑』で表紙を担当! 代官山 蔦屋書店に自分のデザインが並ぶ感動。
—いろいろな現場を経験されて、最終的にれもんらいふに入社を決めた理由はどんなところに?
永瀬:同時進行でいろんなインターンもやりながら、休みなく駆け抜けるような学生生活の中、就職活動もしていたんですけど、一番行きたかった広告会社に落ちてしまって燃え尽きちゃったんですよね。そのあとにもう一度きちんと自分と向き合ったときに、私が将来的にやりたいテイストや仕事内容ができるのはれもんらいふだけだと思ったので、代表の千原に相談して入社が決定しました。
—将来的にやりたいことと、れもんらいふでの仕事はどの辺りが重なっていましたか?
永瀬:もともとカタログを中心としたファッション広告などをやっていた会社なので、そこでファッションと結びついた仕事ができるのと、CDジャケットのデザインができるという点ですね。最近ではハッカドロップスさんのCDジャケット、木村カエラさんのファンクラブ会報誌、ワコールの「BRA&PEACE!」キャンペーンのデザインや、ふぇのたすというバンドでボーカルとして活動していた、みこさんのソロプロジェクトのアートワークも担当しています。
—れもんらいふでの、デザインの進め方を教えてください。
永瀬:基本的には千原がアートディレクター兼デザイナーとして全てのプロジェクトに携わり、私たちデザイナーが担当制で手を動かします。広告など大きいプロジェクトになると、スタッフ全員でアイデアを出して話し合いながら決めることが多いです。スムーズにいくときもあれば、コンセプトから求められる仕事だとみんな煮詰まっちゃって「続きは明日にしようか」というときもありますね。
—とてもチーム感のある働き方なんですね。永瀬さんご自身がやりがいを感じるのは、どういう時ですか?
永瀬:雑誌『装苑』の「音楽とファッションとエモーション」という特集で表紙のデザイン担当をやらせていただいたのはすごくうれしかったです。私、高校生の頃から『装苑』が好きで、いつか表紙のデザインに関われたらいいなと思っていたんです。代官山の蔦屋書店にこのカバーがズラーッと並んでいて感動しました。提案して、撮影するところからするとどの仕事もけっこう長い期間をかけているので、それが世に出たのを見ると「この仕事、できてよかったなぁ」とうれしくなりますね。
趣味であり、遊び場でもある。仕事は生きるうえでのモチベーション
—いつか独立したいというのは、やはり自分の表現を追求したいということですか?
永瀬:そうですね、れもんらいふで経験したことを活かしながら、自分のテイストでものづくりをして、表現していきたいと思っています。
—永瀬さん自身のテイストをキーワードにすると?
永瀬:女性らしさです。女の子が「かわいい」と言うものを大切に大学の頃に個人の作品を作ってきたので。千原も女性をターゲットにした広告やジャケットを手掛けることが多いですし、どれもすごくかわいい。だけど、男性には作り出せない女性らしいかわいらしさ、美しさもあると思っているので、そこを表現していけたらと思っています。
—野田凪さんはまさにそういう感じですよね。
永瀬:そうなんです。野田凪さんがデザインしたYUKIさんのアルバム『commune』のアートワークは特に。いつかは私もYUKIさんの仕事をしたいと密かに思っています! あとは、コスチュームディレクションをやってみたいですね。野田凪さんが自分のブランドを立ち上げたように、自分が手を動かさなくとも洋服をデザインしたりディレクションしたりしてみたいです。
—最後に永瀬さんにとって「仕事」とは?
永瀬:仕事は仕事としてちゃんとやっているんですけど、好きなことができているので、お仕事だけど、趣味だし、遊び場みたいな感じなんです。だから、仕事は生きるためのものという意識ではなく、自分にとって生きる上でのモチベーションになっています。
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