- プロフィール
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- 島 芽久美
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1982年東京都生まれ。日本デザイナー学院ビジュアルデザイン科卒業。株式会社カタチ、81(EIGHTY ONE)などのデザイン事務所を経て、株式会社ライゾマティクスに就職、現在に至る。
ナイキストア吉祥寺スタッフ、アメリカ留学、音楽会社での秘書経験など、異色なキャリアの持ち主でもあり、現在はグラフィックデザイナーから、プロジェクトマネジメントにシフト中。
メディアアーティスト・真鍋大度氏、クリエイティブ・ディレクター齋藤精一氏らが在籍するクリエイティブ集団・ライゾマティクス。誰も見たことのない手法と、圧倒的な表現力で見るものの心を奪う広告クリエイティブで、デザインとアートの越境をメディアアートの最前線から常に模索している。
今回ご登場いただくのは、そんなライゾマティクスに勤める島芽久美さん。もともとはグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、いまはプロジェクトマネージャーのお仕事をメインにする島さんに、自身の仕事観を語ってもらった。その根底を流れているものはすごくシンプル。自分の“楽しい”に貪欲であることだった。
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部活みたいで、会社。
—島さんはもともとグラフィックデザイナーで、どちらかというと紙媒体のデザインを手がけていらしたと伺いました。一方でライゾマティクスは少し理系なイメージもある会社です。この、異色な転職のきっかけは何だったのでしょうか?
島:私がライゾマティクスに興味を持つきっかけになったのは、『Alienware』というゲーム専用PCのプロモーション映像でした。それはLEDで電飾された実物の“デコトラ”を使い、Alienwareで制御するというものでした。ダフトパンクが作ったようなデコトラとでもいうか、とにかくデジタルで、スタイリッシュで、大胆で……。今までに見た、いかなるものにも当てはまらないスケールの大きさを感じたんです。もう「何このクレイジー感!?」という一言でしたね(笑)。そこからライゾマティクスに対する憧れが芽生えて。それで、知り合いをつてに簡単なお手伝いを募集しているとのことで、バイトから入りました。
—実際に働いてみて、ギャップを感じることはなかったのでしょうか?
島:たくさんたくさんありましたよ(笑)。わたしはもともと計算が好きじゃないし、理系とはかけ離れている人ですから。そしてみんな飛び抜けた才能を持っている人達なので、自分はここに居ていいのかなって思っていましたね(笑)。それでもやっぱり、今まで自分がいた世界とは全く違って、こんな面白いことをやっている会社ってあるんだ! という印象は強かったですね。
―刺激的な会社だったと。ライゾマティクスはどんな雰囲気の会社なんですか?
島:一言でいえば、“部活”感のある社風ですね。いろんな機材が散らかっている、倉庫の中で働いているような風景です。毎回やることが変わるし、同じことはやらない。WEBだけの時もあれば、映像を使ったり、インスタレーションだったり。あるいはその全部だったりと、全てが実験であって、練習であって、勝負なんです。そして始まりはいつも即興的だったりします。たとえば、『Alienware』のプロモーションの続編をつくっている撮影現場に、私が忘れ物を届けにいったら「見て帰りなよ」といわれて、そのままプロジェクトに加わることになって(笑)。憧れの作品の第二弾に携われたことがほんっとに嬉しくて。夢が叶うじゃないけど、こんなことってあるんだなぁって思いましたね。
“ひとり1役”ではない
―グラフィックデザイナーから、そのままライゾマティクスに入ったわけではないんですよね?
島:実はどこから話していいか分からないくらい、いろんなキャリアがあるんです(笑)。でも、とにかく一貫しているのは好きなことを片っ端からつぶしていくという生き方を貫いていることです。たとえばまだバイトだった時は、仕事をしながら漢方の研究をするためにスクールに通っていたりとか……。
—漢方ですか!
島:はい、漢方は面白いですよ。人間の理にかなっているというか。患者に適切な薬の在り方を共に模索するので、似た症状でも人によって調合が変わるんです。おまけに自分の体調管理にも生かせますしね。私の将来の夢の1つに中国茶の店を開くってこともあったりします(笑)。
—興味範囲が広いですね。
島:そうかもしれませんね。今までもバイトでは、ディズニーランドや、ナイキストアで働いていたりと、楽しそうと思ったらすぐに面接に行くぐらい、飛びついていました。とにかく私は好きなことはやってみなければ気がすまない性分なのかもしれません。
—興味が向く対象には、何か共通点があるんでしょうか?
島:最近になって思うのはやっぱり自分は「クリエイティブ」というものに魅力を感じているんだな、ということです。実は新卒で入った制作会社では初めての挫折を経験しています。デザイン系の専門学校を出て、夢見ていたデザイナーになるんだ! って意気込んでいたのに、体がついていかなくて辞めてしまいました。それからは1年ほどアメリカに留学をしたり、音楽会社で秘書なんかもしながら、人生をどうすべきかと考えていたのですが、やっぱりこうやってまたクリエイティブに戻ってきているんです(笑)。いつも会社を辞める時は、もうクリエイティブなんて辞めようって思うんですけど、結局戻る。だから、この世界に身を置きたいって気持ちが根底にあるんだなって思ってます。
—今は、プロジェクトマネージャー(以下、PM)の仕事をしているとお伺いしました。
島:うちの会社は基本的にひとり1役ではないんです。「できることなら、なんでもやる」といったスタンスです。だから、名刺に肩書きがありません。私は、始めはデザイナーとして入ってますが、今はPMにシフトしつつあります。もちろん、仕事に関しては専門性を要される部分もありますが、PMは自分の知らない世界や業界の人ともやりとりをしながら一緒にものをつくりあげていけるので、私には合っているのかもしれませんね。
自分でつくれないものをつくる、PMの魅力
—自分がPMとして関わって大勢の人と一つのものをつくる。素敵ですね。
島:やっぱり何十人も集まって、ひとつのものをつくりあげる達成感というものは何ものにも代えがたいものがあります。たとえば、『Sony Tablet』のグローバルキャンペーンは、私がライゾマティクスで初めてPMとして手がけた仕事です。完成したムービーだけを見ると、ピタゴラスイッチのような仕掛けの中をSony Tabletが巧みに動いていく姿に目を奪われるのですが、つくっている最中はもう、怒られるわ、寝られないわで大変でした(笑)。収録に100テイクを重ねた48時間耐久撮影は去年の夏の思い出です。
—48時間……(笑)。デザイナーとしてつくる側とPMとしてプロジェクトを進行する、違いはありますか?
島:PMの何よりの魅力は、自分がつくれないものを、つくれるということです。特に私はグラフィックデザイナーでもあるので、自分がつくれるものの限界を良く知っています。それから、デザイナーの時は、基本仕事は画面の中でしたが、PMをやってみてから、視野が広がったと思いますね。自分の知らない可能性が広がっていく感じがします。
—なるほど。では、最後の質問ですが、島さんの今後の目標を。
島:そうですね……。悩ましいところですが、今まで通り好きなことをひとつひとつ潰していきたいなって思ってますね。自分の経歴からもわかる通り、ずっと同じところに居続けたこともないですから。だから、いつかは今の場所を動くかもしれませんが、ライゾマティクスの人達とは、場所が変わってもずっと仕事をしていたいと思ってます。そんな関係性が持ててるのかな、と思います。不思議と、私は今まで勤めた会社の人から今でも沢山支えられているところが多くて。だから、人と人の繋がりを大切にしつつ、いろんな人とお仕事をできたらいいなって思ってます。
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