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- コナリミサト
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ハイティーン向けファッション雑誌『CUTiE』(宝島社)で『ヘチマミルク』の連載をきっかけに漫画家デビュー。現在、『凪のお暇』(秋田書店)を連載し、ストレスを抱えながら働く女性をはじめ多くの人から反響を呼んでいる。著書に『珈琲いかがでしょう』『恋する二日酔い』『宅飲み残念乙女ズ』など。
女性を中心に絶大な支持を集め、累計部数は300万部を突破。2019年にはドラマ化もされた漫画『凪のお暇』の作者、コナリミサトさん。彼女の著書には、食事のシーンや料理のレシピが多数登場します。それらの印象的なシーンや物語は、一体どのようにして生み出されているのでしょうか。じつはコナリさん自身も、お酒と食べることが大好き。
そこで今回は、高円寺にある居酒屋「大将」でマカロニサラダをつつきながらインタビュー。「食」シーンのこだわりとは? コナリ漫画の原点とは? 「漫画と食」について、たっぷり語っていただきました。
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赤提灯も、チェーン店も好き。コナリミサトが愛する「酒場の食」
—今回、コナリミサトさんのお気に入りのお店として高円寺にある「大将」を挙げていただきました。
コナリ:はい。ここは『凪のお暇』の6巻で、ゴンとエリィが一緒に飲んでいるシーンの舞台なんです。お昼からやっているので、友人を誘ってふらっと飲みに行けるのが良いんですよね。
—おすすめのメニューはありますか?
コナリ:マカロニサラダは外せないです。味が濃くてお酒と合う。マカロニサラダって、自分ではあんまりつくらないので、人がつくったものを食べられるのが嬉しくて。この本店にはないですが、ほかの「大将」の店舗には、しそサワーがあって。ピンク色が鮮やかで、それも好きです。
—マカロニサラダ、気になります……!
コナリ:じゃあ頼んじゃっていいですか? とりあえずビールに、マカロニサラダと、鯖ポテトサラダと、もやしナムル、カキフライ。あと焼き鳥ください!
—良いですね! コナリさんは、いわゆる「赤提灯系」のお店でよく飲むのですか?
コナリ:好きですけど、いろんなお店で飲みますよ。チェーン店飲みも好きですし。よく行くのは「てんや」と「王将」。でもいま一番、推したいのは立ち食いそばの「いわもとQ」ですね。天そばとビールでサクッと飲んでます。チェーン店は、どこのお店に行っても変わらない味が出てくるのが強みだと思います。
「100%良い人はいない」。居酒屋バイトで学んだ人間模様
—コナリさんは昔からお酒好きだったんですか?
コナリ:はい。フリーター時代はずっと飲み屋で働いていました。おしゃれな感じとざっくりした感じのお店を掛け持ちしていたこともあります。客層がぜんぜん違うお店で働いてみたかったんですよね。
でも私、接客がすごく苦手で。回転の早い店とかだと、場を回すことができないんです。焼き鳥屋で働いていたときは、お肉を焼くのは超上手かったらしく(笑)、女性では珍しく焼き場に配置されました。いっぱい気を配るのは苦手だけど、ひとつのことをガーってやるのは得意だったんですよね。
—なぜ居酒屋で働きたいと?
コナリ:多分、お酒を飲んでいる状態の人が好きなんですよね。見ているのも喋るのも。ほら、酔っ払うとみんな本音が出てくるじゃないですか。酒の場って、いつもはできない話をしたりするのが楽しいんですよ。そういう話を聞けるから、居酒屋を選んだのかもしれません。
—居酒屋で働いていると、いろいろなお客さんに出会いそうですね。
コナリ:そうですね。少し厄介なお客さんもたくさんいました(笑)。たとえば昔、お店で働いている女の子に優劣をつけるお客さんがいたんです。当時はすごくフレッシュに憤ってました。でも一方で、その人の行動について、自分なりに納得できる落としどころを見つけたりしていました。
たとえば、嫌なこと言う人だけど、家に帰ったら良い人なのかも、とか。本当にいろんな人間模様を見させていただいたので、それらのエピソードをいつか漫画にできたらなとも考えていましたね。
—コナリさんの漫画は、人間の明るい面だけじゃなく、仄暗い面もしっかり描かれているように思います。
コナリ:現実は良い人ばかりじゃない、とはつねに思っていますね。私の漫画に出てくる『凪のお暇』の主人公である凪だって、別に100%良い人ではないですし。人にはみんなそれぞれの生活があるから、そこを描いているだけというか。
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- タンブラーにお酒を入れて。「酒散歩」でアイデアを考える
タンブラーにお酒を入れて。「酒散歩」でアイデアを考える
—漫画のアイデアはどのようにして考えていますか?
コナリ:次回作のプロットとかを考えるときは、タンブラーにお酒を入れて、飲みながら散歩しています(笑)。夏は氷とサワー、冬は温めたワインを入れたりして。頭がフワっと緩むので、考えごとするのにちょうど良いんですよ。あと、ほんの少しの背徳感も合間って、それも良くて。
友だちと一緒に「酒散歩」することもありますよ。ほろ酔いの状態で本屋に寄って、互いに本を勧めあったりするのがすごく楽しい。自分がぜんぜん読まないような作品も知れるんです。
—お酒がアイデアのもと、ということでしょうか。
コナリ:でも結局シラフのときも酔っ払っているときも、出てくるアイデアの質に変わりはないんですよね。本当はお酒を飲みたいがための言い訳なのかも(笑)。
とはいえ、お酒を飲まないと何も浮かばなくなったら危険なので、そこは節度を持つようにしています。特に原稿は、絶対飲みながらはやりませんね。「酔っ払っていてもできる」って知ってしまったら、多分ずっと飲み続けちゃうと思うので。
—『凪のお暇』をはじめ、コナリさんの漫画には食事やお酒のシーンがたくさん出てきます。それらを描く際にこだわっていることはありますか?
コナリ:漫画のなかに出てくるレシピは、分量や材料をしっかり書くように心がけています。普段から料理する人は、詳細に書かれていなくても肌感でわかるけど、そうじゃない人もいるじゃないですか。私自身、人のレシピを見ていて分量とか気になっちゃうタイプですし。読者の方にも、キャラクターが食べた味を体験してみてほしいですしね。
—レシピは、ちょっとしたおつまみからお菓子まで幅広いですよね。
コナリ:そうですね。昔、近所に友だちが住んでいたんですけど、その子がよく料理をつくってくれて。漫画のレシピでそれを参考にしている部分はあるかもしれません。でも、パックの豆腐に納豆入れて混ぜるとか、なんちゃってもんじゃ焼きとか、やかんで卵をゆでるといった本当に残念な「アテ」は、私のオリジナルです(笑)。ちょっと雑な感じが好きなんですよね。
—キャラクターが食べたり飲んだりしているシーンはいかがでしょう? どのキャラも表情豊かですよね。
コナリ:美味しいものを食べたときにキャラの造形が変わるのが好きですね。美味しくて、体からほどけるみたいな。私、子どもの頃『らんま1/2』が好きで。食事のシーンが結構出てくるんですよ。それを見ながら似たようなものを食べるのが好きでした。漫画のキャラと一緒の時間を過ごしている気分になれるからかもしれません。
あと、セリフで「美味しい」ってめちゃくちゃ言わせていることに気づきました。「騙されたと思ってひと口」も。タレ目のキャラに言わせがちなんですよね。それに気づいたときはすごく恥ずかしかったです(笑)。
「人といる時間も大切ですよね。会話することでしか生まれないものって、あると思うので」
—そもそも、なぜコナリさんは漫画家を目指したのですか?
コナリ:高校卒業後、雑貨屋さんに就職したんですけど、対人関係に悩んでしまって。社会で働くって、自分と他人で輪をつくって連帯責任で進めなきゃいけないじゃないですか。それが、無理っぽいなって。
それで、一人でやっていける仕事って何だろうと考えたときに、漫画を思いついたんです。もちろん編集さんはいるけど、上手くいってもいかなくても自己責任じゃないですか。それが良いなと思って漫画家を選びました。
—コナリさんの漫画は、セリフのテンポが独特だなと思うのですが、どこから影響を受けたのでしょうか。
コナリ:小学校のときですけど、学校で発行している冊子に私の詩が選ばれたことを思い出しました。多分、昔からそういう言葉遊びみたいなのが好きだったんでしょうね。短い言葉で世界を表現できることに、ちょっと感動していたのかもしれません。
—デビュー当時といまで、漫画の描き方に変化はありますか?
コナリ:最初は、文章で説明しすぎている部分があったと思います。いまは文字ではなく絵で見せるやり方を勉強中です。たとえば、貧乏なキャラがいるとするじゃないですか。「この人は貧乏で……」って言葉で説明したら楽だけど、服装や雰囲気で貧乏であることを想像させるやり方もありますよね。私はそれが苦手なので、これから挑戦したいと思っています。
—今後の作品も楽しみです。最後に、コナリさんのお仕事と「食」の関係について教えてください。
コナリ:創作において欠かせないことだと思います。たとえば、仕事が終わったら飲みに行って、好きなものが食べられると思うと、頑張ろうって思いますね。私はサウナも好きなので、今日はここまで頑張ったらあそこの銭湯まで行って、蕎麦食べて帰ってこよう、とか。
あと、人といる時間も大切ですよね。会話することでしか生まれないものってあると思うので。私の漫画は「食と酒と人」で、できているのかもしれません(笑)。
お店の情報
やきとり大衆酒場 大将 本店
〒166-0003
東京都杉並区高円寺南4-27-10
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