- プロフィール
-
- 田汲洋
-
新卒でちっちゃな広告代理店に入社する。その後、某雑誌主催の大喜利世界大会に出場して優勝。ここで思いっきり進む方向を間違える。2011年に出版社に転職。宣伝部でエロゲー雑誌やラノベ、マンガを担当し、テレビCMやキャンペーン広告ほか、ゲームショウやコミケなど数々のイベントを手がける。2014年にインフォバーングループに入社。2017年10月よりHR領域担当となる。
休日に仕事の連絡が入ることも珍しくないクリエイティブ業界。たとえ休みの日でも、連絡対応すべき……?
そんな若手のお悩みに、先輩がアドバイスする連載企画の第6弾。頼れる先輩は、クリエイティブ業界を渡り歩いた末に、現在はインフォバーングループの人事を担当している田汲洋さんだ。
「自分がいなくても、仕事は回る」。そう語る田汲さんが若手に伝えたい、休日稼働しないための意識とは?
土日に仕事の連絡がくる。休日も連絡対応すべき?
どうも。タクミです。
現在、企業のデジタルマーケティング支援を行うインフォバーングループで採用担当をしています。ちなみに、前職は某出版社の宣伝部などで働いていました。
迷える若手クリエイターたちの質問に対して、真摯にお答えする連載第6弾。曲がりなりにもクリエイティブ業界で経験を積んできたぼくが、これまで経験したことをもとにアドバイスさせていただきます。
今回、読者の若手クリエイターの方からこんなお悩み相談をいただきました。
こんにちは。PR会社で宣伝プロデューサーの見習いをしているリエです。
仕事がめちゃくちゃ忙しくて悩んでいます。特に困っているのが、休日にくる連絡。デザイナーさんやカメラマンさん、ライターさんなどから連絡がガンガンきます。社員数が少ないので忙しいのは覚悟していましたが、なるべく休日は仕事のことを考えたくない……。どうすれば休日を謳歌できるのでしょうか?
PR会社 新卒1年目 リエ(女性)
これはクリエイティブ業界だと「あるある」な悩み。特にフリーランスの方たちと仕事をする機会が多いと、こういうケースはありがちかも。ぼくら会社員は週休2日でも、向こうからしたら関係ないのでガンガン連絡がくるみたいな。
ぼくの場合はそこまで苦に感じないので、休日も平日と変わらず対応してしまいますね。その一方で、休日も平日もロクに電話に出ない日もありますので、正直言って細かいことは気にしておりません(平日は気にしたほうがいい)。
対応の仕方も人によると思うので、たまたま近くにいた新入社員たちに「休日の連絡対応」について聞いてみました。
社員A「取材のスケジュール変更など緊急の場合は、関係者にすぐ連絡しますね」
社員B「休み明けで対応しても大丈夫そうなものは週明けに連絡します」
社員C「クライアントからの連絡だけ対応します」
だそうです。
逆にフリーランスの方(ライターさん・カメラマンさん)に「土日も連絡しちゃいますか?」と聞いたみたところ、
フリーランスA「もともと自分も会社員だったので、気を使って土日の連絡は避けますね」
フリーランスB「連絡事項は忘れないうちにメールします」
フリーランスC「緊急時は曜日に関係なく連絡しちゃいます」
と言っておりました。
話を聞いていると、お互いなんとなく良くないことだと認識はしつつ、緊急時は対応せざるを得ないと考えているみたい。ですから、日頃からお互いの話し合いのもと、業務や工程の優先順位をつけて共有しておくことが大事かもしれません。
そのうえで「最優先すべきこと以外は、土日の連絡NG」というチーム内での共通認識があれば、連絡頻度もコントロールできるはずです。ひとまず上司や、同じチームのメンバーに相談してみてはいかがでしょうか。
繁忙期にまさかの入院。死期を悟り、スケボーと台湾行きの航空チケットを購入
とはいえ、リエさんは新入社員。「人数が少ない会社だし、自分が返事しないと大変なことになる……」という危機感や不安が強いのかもしれません。でも、あまり過度に気にしなくて良いと思います。経験上、休日の連絡を無視してもなんとかなるものなんですよ。昨年の3月から5月にかけてぼくはそれを痛感しました。
ぼくの仕事は、新卒採用がメイン。だから、3月から5月はめちゃくちゃ繁忙期です。選考管理、書類の準備から、筆記の採点、面接のセッティング、説明会の実施、学生への連絡、新卒の入社前後のケアなどやることがもりだくさん。
そんな時期なのに、休日はおろか平日も満足に仕事ができない日々が続いたんです。リエさんの不安を少しでも和らげるためにも、ぼくの体験談を赤裸々に語りたいと思います。
【2019年3月】
MRIで重病の可能性ありとの診断。即入院が決まりました。入院予定は4月。まあまあ怖いことをお医者さんから言われたので「もう人生おしまいだ」と悟ったぼくは、人生最期の旅に出ようと決意しました。
意味不明ですか? じつはこれにもちゃんとした理由があります。どうせ死ぬなら映画『ストレイト・ストーリー』(デヴィット・リンチ監督)の主人公のように、人々の優しさにふれる旅に出ようと思ったのです。
この映画の物語をざっくり説明すると、車に乗れないおじいちゃんがトラクターに乗って、疎遠になった兄に会いに行くロードムービーです。心温まるこの映画に憧れていたので、人生の最後にやってみようと。
でも、トラクターを買うのはいろいろと面倒くさそう……。そう感じたぼくは、たまたま見つけたかっこいいスケボーで旅に出ようと思いつきました。スケボーの購入と同時に、ゴールデンウィーク期間中の台湾行きのチケットをその場で購入。台湾にした理由は、買ったスケボーが台湾製だったからです。
待ちに待ったスケボー到着。わずか5分間で、テンションMAXとどん底を経験
【4月4日~6日】
予定通り、入院しました。術後は動いてはいけないと言われたのでボーッとしていました。もちろん仕事はしていませんし、誰とも連絡を取っていません。一年でいちばん忙しい時期に……。ぼくがやるはずの仕事は、ぼくの上司をはじめ、会社の皆みんながなんとかしてくれました。……ね、ぼく1人がいなくたってなんとかなるんですよ。
結果的に手術は成功し、大事には至らずひと安心。しかし、旅の前に肝心のスケーボーが届かず。ゴールデンウィークはたひたすら台湾で小籠包を食べまくって太っただけでした。
で、この話には、まだまだ続きがあります。
【5月8日】
お昼頃、佐川急便から荷物到着の電話。「細長いやつですか?」と聞いたら「そうです」とのことだったので、待ちに待ったスケボーだと確信。
19時頃、社内のワークショップにて「24時間以内にあったうれしいことを1分で語る」というアイスブレイクがあり、イカしたスケボーが家に届いたことを参加メンバー全員に自慢しました。
その場にいた上司に「怪我だけはしないよう無茶しないでくださいね」と言われました。そんな心配に対し、「おれを何歳だと思ってるんすか! 仕事がめちゃくちゃ忙しい時期に、そんな無茶するわけないじゃないですか!」と鼻息荒く答えました。
その日の深夜、我慢できずにスケーボーに乗りました。ちなみにスケボーは中学生のときに「ムラサキスポーツで買って、とりあえず持っていた」程度の超初心者です。でも、そのモデルは初心者でも扱いやすいのもウリなだけあって、スイスイ進んで最高に楽しい!
夜中だから周りに人もいません。気持ち的には14歳だったぼくは、平地では満足できず、エクストリームな坂を攻めにいってしまったのです(実際は、超初心者のおじさんひとりです)。
スケボーに乗り始めて5分くらい経った頃でしょうか。大転倒。左手のみで着地し、メガネは吹っ飛んでいきました。左手はまったく動かなくなり、肘は血だらけでした。
動かない左手。チタンを入れないと、オリンピックに間に合わないことが判明
一気にテンションも下がり、速攻で帰宅しました。左手が動かないままシャワーを浴びて寝ようとしたのですが、「骨折かも?」という不安は拭えません。骨折したことないのでわからなかったのです。
しかし、あまりに手が変な方向に曲がっていたので怖くなり、近所の救急病院へ駆け込みました。当直の先生に診てもらったところ、秒で「骨折」と診断。「これはひどいですね。朝にもう一回来てくださいね。絶対に来てください」と念を押されました。
【5月9日】
翌朝、病院に駆け込むと、「手首がバッキバキに折れている」と再度言い渡されました。とりあえず正しい位置に強引に整えてもらいました。お医者さんは、夜中に駆け込んだうえに、トゥーマッチな折れ具合ゆえ(平地ではこうはならないとのこと)、ぼくをプロのスケーターだと思って診察していた模様。
「オリンピック種目になりましたからね~。間に合わせるなら手術してチタンを入れないとですね」と言われました。しかし、贔屓目に見ても、若干重めでスポーツマンとはほど遠い肉体です。正直にデスクワークであることを白状しました。
ついでに、スケボーとの接点は、ファミコンの『高橋名人の冒険島』をプレイしたことがあることと、映画『ロード・オブ・ドッグタウン』がちょっと好きくらいのレベルであることも伝えました。
その日はギプスで手を固めまくり、出社しました。昨日ワークショップに参加していたメンバーは、ぼくの腕を見た瞬間に爆笑。ええ、ぼくだって昨日の時点では、まさかこんなことになるとは思っていませんでしたから。
気分は、中世ヨーロッパのお姫さま。周りに助けてもらう生活で感じたこと
それから1週間、普段どおりに仕事をこなし……と書きたいところですが、なんせ「重たいものを持ってはだめ」とお医者さんから言われていたので、紙すらもロクに持てない状況。ドアを開けるのも大変です。
その頃の気分は、中世ヨーロッパのお姫さまでした。周りの人に助けてもらわないとなんにもできないのです。もはや、「すみません」と言うのが仕事。『ONE PIECE』で「俺は!!!! 弱いっ!!!!」と言っているルフィと自分を重ねておりました。
【5月20日】
「微妙に骨がずれている。手術しないと一生残るかも」とお医者さんから言われて手術を決意。入院しました。その週はもちろん仕事がまったくできません。選考の対応などすべて会社の皆さんにやってもらいました。
病院のベッドでボーッとしながら自分のいない世界を想像しました。ぼくがいようが、いまいが、日常は動いているのです。実際、この繁忙期の2か月、ぼくがいなくても仕事は問題なく回っていたのですから。そう考えたら、自分のやりたいようにやったほうが良くないですか?(超強引かつ自己中な展開!!)
新入社員もベテラン社員も関係ない。自分の人生を楽しむ権利は誰にでもあります。休日に仕事のことを考えたくないなら、「土日は稼働しない体制づくり」に主体的に取り組んでみてはいかがでしょうか。フリーランスの人も巻き込みながら。そうすれば、休日にきた連絡もガン無視できるはず。誰しも休みたい気持ちはあるはずなので、きっと皆さん賛同してくれると思いますよ。
自分がいなくても、仕事は回る。土日に休むためのチームづくりを
ちなみに、結局ぼくは夏過ぎまで重いものを持てない状態でした(いまもまだ自分の体重を支えられないので、腕立てができません)。
痛々しい姿のままイベントに登壇したこともあります。左手を垂直に上げて2、3か月過ごしました。つねにスペシウム光線(正確にいうとウルトラセブンのワイドショットの逆の手バージョン)を出している状態でした。痛みよりダサさが勝っておりました。
「2019年は最悪な年だった」と胸を張って宣言できますが、幸いにも仕事に関してはクリティカルなダメージは受けませんでした。完全に周りの人たちに助けていただいたおかげです。その感謝は忘れずに、困った人がいたら自分も助けようと思います。
そうやって支え合うのが、会社であり、チームなのではないでしょうか。まずは、そういう関係性を築く取り組みをしてみましょう。たとえ休日に自分が連絡できなくても「なんとかなる」というマインドセットさえ持てれば、土日も気がラクになりますよ。
【まとめ】
・休日に仕事のことを考えたくないなら「土日は稼働しない体制づくり」に取り組んでみよう!
・いまの状況を上司や周囲の人に正直に相談して、チームで解決策を見つけよう!
・あなたがいなくても仕事はなんとかなる。会社のことは気にするな!
「若手クリエイターのお悩み相談所」へのお悩みを募集中!
業務内容、職場の環境、働き方、給料、キャリア、人間関係など……些細な相談からディープな話まで、お悩みを募集しています。
※基本的にクリエイティブ業界での経験が浅い方(初日〜3年目くらい)を対象にしています。
※お悩みのメール文には、所属会社の業界やジャンル・社会人歴・職種・お名前・性別をご記載ください。
※お悩みは200字程度でお願いいたします。
※いただいたお悩みの内容を掲載する場合があります。その際に文章をこちらで編集させていただきますので、あらかじめご了承ください。以下のアドレスにお悩みをお送りください。お待ちしております!
hiroshi.takumi@infobahngroup.co.jp
- フィードバック 1
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-