ビルボード東京、最年少記録を樹立
二十歳を迎えたばかりとは思えぬほど、堂々としたパフォーマンス。それは、自らの才能に対する揺るぎない自信からくるものなのだろうか? それとも、持ち前の天真爛漫さ?
1月9日、数々のスーパースターやレジェンドが降臨し、名演を繰り広げてきたBillboard Live TOKYOで、シンガーソングライター・藤原さくらによる一夜限りのワンマンライブ『morning bell』がおこなわれた。ここにメインアクトとして立つのは、なんと彼女が最年少になるという。その実力のほどはいかなるものなのか。多くの注目が集まるなか、2月17日にリリースされるメジャー1stフルアルバム『good morning』に先駆けてのパフォーマンスが披露された。
出で立ち、歌声、人生で2番目に作った楽曲。どこを切り取っても貫禄と愛嬌あり
ステージの中央には、彼女唯一の「セット」とも言える、白い椅子とテーブル、そして譜面台。アコギのボディーを軽く叩きながら、小さな声でカウントを唱えてオープニングナンバー“Ellie”が奏でられる。サポートを務めるのは、昨年3月にリリースされたミニアルバム『à la carte』からの付き合いとなるSPECIAL OTHERSの宮原 "TOYIN" 良太(Dr)、柳下“DAYO”武史(Gt)をはじめ、SOIL&"PIMP"SESSIONSの秋田ゴールドマン(Ba)、菱山正太(Key)という布陣だ。
この日の彼女は、黒いブラウスの上に、白いテーラードジャケットを羽織り、くるぶし丈の黒いパンツに革靴というシックな出で立ち。時おり眉を八の字に寄せながら、オーディエンス一人ひとりに語りかけるように歌う表情はいつも通りだが、ノラ・ジョーンズやエイミー・マンあたりを彷彿とさせる、同年代の他のシンガーにはない彼女のスモーキーな歌声は、以前聴いたときよりもさらに磨きがかかっている。ウィスパーやファルセット、息継ぎのリズムなどを巧みにコントロールしながら、楽曲にニュアンスを加えていくさまは、もはや貫禄すら感じられた。メジャーデビューからおよそ1年、様々なライブやフェスに参加し鍛えられてきた証だろう。そして、そんな彼女の声を活かすように、抑揚を抑えつつ「ここぞ」という場面でダイナミクスをつける、阿吽の呼吸のようなバンドアレンジも見事だった。
中盤からは、特別ゲストに高田漣(Gt, Banjo)を迎えて、プロデュースを手がけている『à la carte』収録の“My Heartthrob”と、新作から“1995”が奏でられた。さらにCurly Giraffeこと高桑圭(Ba)も加わり、7人編成によるバラード“Just one girl”で、この日のハイライトを迎える。続く“これから”は『good morning』収録曲だが、実は藤原が高校時代に曲を書き始めて2番目に作った曲だという。そうとは思えぬクオリティーの高さは驚くばかりで、この楽曲のプロデュースを務めた高桑によるメロディックなベースラインとコーラスが加わり、ひときわヘヴィーな楽曲に仕上がっていた。再び5人編成に戻って演奏されたSPECIAL OTHERSの二人によるプロデュース曲“「かわいい」”では、<手がふれるだけで もう散々だ 息もできないや>と、キュートな歌詞を大人びた声で歌い上げる。ステージのバックスクリーンが開くと、窓の外には六本木の夜景とスケートリンクが広がり、駆け上がるようなメロディーの高揚感と相まって、まるで夜中の遊園地へと迷い込んだ気分になった。
ポール・マッカートニーを敬愛する二十歳は、挑戦を思いっきり楽しもうとする
幼少の頃から父親に音楽の手ほどきを受け、ポール・マッカートニーを「師」とあおぐ藤原。しかも、“Michelle”や“Your Mother Should Know”など、ポールの中でもちょっと暗めの楽曲が好みとあって、彼女の書くメロディーはいつもどこか切ない。その上フォークミュージックだけでなく、世界各国の民族音楽に深く傾倒する彼女の楽曲が、玄人受けするのは当然だろう。
「憧れだった」という会場で、高田漣やCurly Giraffeといった手練れのプレイヤーたちに囲まれながらも、「楽しい!」を連発して伸びやかに歌い演奏する彼女の肝の座り方は、ただただ驚くばかりだ。それは、自らの才能に対する自信と持ち前の天真爛漫さ、その両方から湧き出る強さなのだろう。ライブの翌週に、彼女をインタビューする機会をもらったが(インタビュー記事は後日掲載予定)、彼女の満面の笑みと自信の裏には、ステージ上では見せない日々の努力の積み重ねが当然のようにあり、ステップアップのためには、どれだけハードルの高い壁も、絶対に「楽しみながら」挑戦していこうとする姿勢があることがわかった。
この日の客層の大半は「大人の男性」だったが、今後は彼女と同世代の女性リスナーをはじめ、さらに幅広い層へ届いてほしい。何事も「楽しむ」ことを忘れない純粋さも、等身大の恋愛を歌う歌詞も、そして「マッチョが好き」と真顔で言う天然キャラ(と、その音楽性のギャップ)も、より多くの人たちに愛されるはずなのだから。
- イベント情報
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- 『morning bell』
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2016年1月9日(土)
会場:東京都 六本木 Billboard LIVE TOKYO
- リリース情報
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- 藤原さくら
『good morning』(CD) -
2016年2月17日(水)発売
価格:3,024円(税込)
VICL-644821. Oh Boy!
2. 「かわいい」
3. I wanna go out
4. maybe maybe
5. How do I look?
6. 1995
7. BABY
8. good morning
9. Give me a break
10. これから
11. You and I
- 藤原さくら
- イベント情報
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- 『藤原さくらワンマンツアー2016「good morning~first verse~」』
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2016年6月25日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:福岡県 天神 イムズホール2016年7月1日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
- プロフィール
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- 藤原さくら (ふじわら さくら)
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福岡市出身。20歳。父の影響ではじめてギターを手にしたのが10歳。洋邦問わず多様な音楽に自然と親しむ幼少期を過ごす。高校進学後、オリジナル曲の制作をはじめ、少しずつ音楽活動を開始。地元・福岡のカフェ・レストランを中心としたライブ活動で、徐々に注目を集める。2014年3月、高校卒業と上京を機に、オリジナルアルバム『full bloom』でインディーズデビュー。楽曲制作やライブ活動を本格的に開始し、CM出演での歌唱や、テレビドラマへの曲提供などで話題となる。2015年3月18日、スピードスターレコーズよりミニアルバム『à la carte』でメジャーデビュー。2016年2月には初のフルアルバム『good morning』をリリース。天性のスモーキーな歌声は数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる。
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