RAMMELLSは、この先どれだけ多くの人を包み込むことができるか?
CINRAが手掛ける入場無料の音楽イベント『exPoP!!!!!』。その第82回目が、前回に引き続き音楽アプリ「Eggs」との共同主催にて、毎度おなじみのライブハウス・TSUTAYA O-nestで開催された。かねてより次世代を担うであろうミュージシャンたちを積極的にフックアップしてきたこのイベントだが、今回出演したのはRAMMELLS、永原真夏+SUPER GOOD BAND、oono yuuki、Reiの4組。RAMMELLSやReiは、活動をスタートさせて間もない「新世代」のアーティスト。その一方で、永原真夏は去年自身がボーカルを務めるバンド・SEBASTIAN Xを活動休止し、ソロ活動をスタートさせたばかり。そしてoono yuukiは、2013年にバンド編成での活動を休止させて以降、弾き語りのみで演奏を続け、その結晶のアルバム『夜と火』を去年リリースしている。永原とoonoは、その近年キャリアに大きな変換点を迎えた、いわば新章に突入した2組と言えるだろう。
まず、トップバッターとして登場したのはRAMMELLS。去年の8月に結成されたばかりのバンドだが、ギターの真田はSuchmosのボーカル・YONCEらとOLD JOEというバンドで約7年間活動していた経験の持ち主。ゆえに音楽性も、R&Bやジャズを昇華した有機的なバンドサウンドを基軸とする点ではSuchmosと共振しているのだが、RAMMELLSが一線を画すのは、その「包容力」。随所に取り入れられた厚みのあるギター、そして紅一点ボーカル・黒田の力強さと穏やかさを兼ね備えた歌声は、聴き手を包み込む「居場所」としての存在感を強く感じさせる。たとえば、今のSuchmosの音が時代を突き刺す「声」のようなものなら、RAMMELLSの音は時代の喧騒から聴き手を優しく守る「眼差し」のようなものなのかもしれない……その穏やかなグルーヴに乗せて体を揺らしながら、そう感じた。特に、この日最後に演奏された”Blue”の眩い光で会場を満たすような壮大なスケール感は、この先RAMMELLSが行く道をもあたたかく照らし出すような素晴らしさだった。
「人間讃歌」を丁寧に奏でる、永原真夏が降臨
続いて登場したのは、永原真夏+SUPER GOOD BAND。SEBASTIAN Xの活動休止を経て、ソロへ。この変化の中で、着実に自らの表現をものにしようとする永原真夏の姿を、この日はしかと確認することができた。“青い空”や“平和”では、ソロになってより一層「ロック」や「パンク」にこだわり、大いに戯れてやろうとする永原の想いが伝わってきたし、最後に演奏された“SUPER GOOD”では、「はじまりも終わりもここにあるから、今、全力で遊んでやる!」と言わんばかりの彼女の本質が、その饒舌な歌声とメロディーの隙間から零れ落ちていた。今の永原には、SEBASTIAN X時代にあった、何かを追いかけ、何かに追い立てられているような刹那的な速度はもうないし、いらない。今の彼女は歌を、詩を、そして命を、丁寧に作り、紡ぎ、奏でていく。悲しみや「からっぽ」から逃れるためではなく、悲しみも「からっぽ」もあるがままに受け入れ、その上に自ら作り出した喜びを積み重ねようとする今の永原の姿には、かつてはなかった凛とした逞しさと、そして痛みに裏付けされた気高い優しさがあった。また、長い旅になりそうだ。
永原真夏からoono yuukiへ、「人生の祝福」をつなぐ
そして、3番手は弾き語りのoono yuuki。この日演奏されたのはアルバム『夜と火』からの楽曲だったが、そのタイトルが示すように、全てを暗闇で塗りつぶしてしまうような巨大な「夜」と、それに抗うように灯りをともす「火」の存在――oonoの音楽は、その両者の相克そのもののようだ。oonoにとって、音楽を鳴らすこととは、夜闇のような巨大な何かに「抗う」ことなのかもしれない。MCもあまりなく、淡々と進んでいく演奏。ダイレクトに心臓に響いてくるようなアコギの音、そして透明感を感じさせる真っ直ぐな歌声には、「今、俺は生きている」という閃光のような躍動を、その命が燃焼する瞬間を、世界に向かってザックリと刻みつけるような凄みがあった。もしかしたら、彼の音楽を聴いたことがない人は、『夜と火』というタイトルや弾き語りというスタイルから、静かで暗いものを想像するかもしれない。でも実のところ、彼の音楽はほとんど「叫び」に近い激しさと人生への祝福を内包していると、この日の演奏を観て感じた。
初見のオーディエンスの心も一気に摑んだ、弱冠22歳のRei
トリを飾ったのは、弱冠22歳のシンガーソングライター、Rei。ライブハウスに通う中で出会う刺激的な瞬間は多々あるが、その中のひとつに、「若者が、まったく新しい『挨拶』を世界に投げかける瞬間」というのがある。筆者にとって、この日のReiはまさにそれだった。その小柄な体に不釣り合いな大きさのギターを抱え、サポートドラマー・片山タカズミと共に、圧倒的なスキルと音圧でブルースを放っていく。その音に刻まれていたのは高尚な社会意識や過剰演出された内省などではなく、「元気?」とか「ムカつく!」とか「遊ぼう!」とか、まるで隣にいる友達に話しかけているかのような等身大のメッセージ。でも、そんなメッセージが「体中から溢れ出て仕方がない!」と言わんばかりにギターを掻き鳴らし、言葉とリズムを跳躍させるReiは、1990年代のBECKがそうであったように、「ブルース」とは、どんな時代にだって最先端のアートフォームでありコミュニケーションツールになり得ることを証明する。“JUMP”のように、世界と遊び倒そうとする気持ちがほとばしったアッパーな楽曲が、最高に良かった。
無垢な好奇心と天性の鋭い批評眼を持って、今まさに世界に飛び出したRAMMELLSやRei。そして、どうしたって存在してしまう抗いがたい痛みを知りながら、「それでも」音楽を紡ぎ続ける永原真夏とoono yuuki。世代は違えど、それぞれの「生き方」や「営み」と音楽が分かちがたく繋っているという点でこの4組は共通していたし、その喜びと切実さこそが、この日のO-nestを満たしていた。
- イベント情報
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- 『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume82』
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2016年2月25日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
永原真夏+SUPER GOOD BAND
RAMMELLS
oono yuuki
Rei
料金:無料(2ドリンク別)
※会場入口で音楽アプリ「Eggs」の起動画面を提示すると入場時のドリンク代1杯分無料
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- 『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume83』
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2015年3月31日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
出演:
CICADA
GOMESS
LILI LIMIT
and more
料金:無料(2ドリンク別)
※会場入口で音楽アプリ「Eggs」の起動画面を提示すると入場時のドリンク代1杯分無料
- プロフィール
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- RAMMELLS (らめるず)
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2015年8月結成。メンバーはVo&Key.黒田秋子、Gt.真田 徹、Ba.Chiriponに、現在はサポートドラマーを迎え活動。2015年12月より都内ライブハウスでライブ活動を始めるが、初ライブ開始より先にFM Yokohama"Tresen+,JFN"ON THE PLANET"に出演する等、注目を集める。JAZZ,R&B,FUNKを基盤に、メンバー各々のオリジナリティを混ぜ込んだステージは音楽フリークからも評価を集める。自主制作1st single『NIGHT CAP』(全3曲¥1000)を会場限定で販売中。
- 永原真夏+SUPER GOOD BAND (ながはらまなつ あんど すーぱー ぐっど ばんど)
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2008年2月から2015年4月の活動休止までSEBASTIAN Xのヴォーカリストとして活動。作詞作曲、アートワークやMV、グッズなどを手がけていた。バンドの活動休 止から19日後にソロ活動開始宣言、2015年 7月には1stソロEP『青い空』をリ リース。発売日にソロ初ライブを行なう。 現在、ソロプロジェクト「永原真夏+SUPER GOOD BAND」やKey.工藤歩里とのユ ニット「音沙汰」などで活動中。2016年3月16日に1st Mini Album『バイオロジー』をリリースする。
- oono yuuki (おおの ゆうき)
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高知県出身。2003年より東京で音楽活動を始め、2010年にkitiレーベルより1stアルバムを発表。以降インストを中心に演奏する大所帯バンドと、弾き語りの2つの形態で活動を続ける。2015年全編弾き語りのアルバム『夜と火』を発表。
- Rei (れい)
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1993年、兵庫県伊丹市生。卓越したギタープレイとボーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をニューヨークで過ごす。4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会う。2015年2月、プロデューサーに長岡亮介(ペトロールズ)を迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。FUJI ROCK FESTIVAL '15、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015、Peter Barakan's Live Magicなどビッグフェスに多数出演。2015年11月4日、セルフ・プロデュースにて2nd Mini Album『UNO』をリリース。好きなミュージシャンは、Johnny Winter、Blind Blake、JB Lenoir、Jeff Lang、BECK、tUnE-yArDs、HIATUS KAIYOTEなど。
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