「渋谷某所」と予告された限定ライブは、一体どこで開催された?
オリジナルアルバムとしては、前作『Barking』以来6年ぶりとなる最新作『Barbara Barbara, we face a shining future』を3月16日にリリースし、今年の『SUMMER SONIC』の出演も決定しているエレクトリックダンスデュオ・UNDERWORLDが、来日を果たした。これは、彼らもメンバーとして在籍している「TOMATO」の結成25周年を記念し、渋谷パルコにて開催される大型企画展『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』(以下、TOMATO展)の初日を飾る、一夜限りのスペシャルライブ出演のため。3月12日という開催日程、そして「渋谷某所にて、日没後」とだけアナウンスされた200名限定の無料招待制だったのだが、いうまでもなく応募が殺到したという。
果たしてそれは、どのような内容なのだろうか。UNDERWORLDとTOMATOが、本イベントでやろうとしたこととは?
デザイン集団・TOMATO、パルコのビル全体に仕掛けを施す
1991年にロンドンで発足されたTOMATOは、UNDERWORLDのカール・ハイドとリック・スミス、それから第1期UNDERWORLDのメンバーだったジョン・ワーウィッカーが名を連ねていることで有名なデザイン集団である。UNDERWORLDの一連のアートディレクションをはじめ、企業の広告やファッションデザイン、近代彫刻、都市建設設計など活動の分野は多岐にわたり、我々日本人にはテレビ朝日のロゴが馴染み深い。
『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』会場風景
『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』会場風景
今回のTOMATO展でも、彼らのマルチメディア的な活動をより深く理解するため、様々な工夫がなされている。メイン会場はパルコミュージアムで、そこには過去の膨大なデザインが展示されているが、他にも地下にあるギャラリーXでの企画展示、ビルの広告看板を使ったインスタレーション、ポップアップショップでの関連商品の販売(UNDERCOVERなどのブランドがコラボ)、シネクイントでの関連作品上映など、単に「作品を鑑賞する」だけでなく、五感を使ってインタラクティブな体験ができるよう、パルコ全館に仕掛けが施されていた。
様々なメディアから流れた、UNDERWORLDの限定ライブ
UNDERWORLDのスペシャルライブがおこなわれたのは、なんとパルコ PART3の屋上。この日のために特設されたステージでの、いわゆるルーフトップコンサートである。幸い雨は降らなかったものの、夕方になるとさすがにまだ寒く、吐く息も白い。そんな中、ニット帽を被ったカールとハイドが登場し、たった200人の選ばれたファンの前で、おもむろに演奏をスタートした。新作からの楽曲も挟みつつ、“Two Months Off”や“Push Upstairs”など人気曲を畳み掛けるように披露。そうした奇跡のような会場の様子は、パルコ6階にあるソーシャルTV局「2.5D」でもストリーミング配信され、抽選に漏れたファンが大勢詰めかけていた。筆者がライブを鑑賞したのも、こちらのスペース。プロジェクターによって、リアルタイムのライブ映像が白い壁いっぱいに映し出され、照明を落としたクラブのようなその空間は、音響設備も申し分ない。終始ゴキゲンなカールのパフォーマンスやMC、コズミックなシンセ音、ファットなキック&ベースに時おり歓声が巻き起こり、クライマックスの“Cowgirl”、そして前日『ミュージックステーション』でも披露した“Born Slippy”が最後に演奏されると、こちらもルーフトップに負けじと一体感に包まれていた。
さらに、会場にはヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」が数台設置され、360度映像ライブストリーミングも体験できるようになっていた。試しに「Gear VR」を装着し、顔を上下左右に動かすと、UNDERWORLDの二人やオーディエンス、ステージの床や渋谷の夜空が、まるでそこにあるかのように目の前に迫ってくる。
そしてこのライブの模様は、渋谷駅前「QFRONT」の大型ビジョンでも一部流され、FM「渋谷のラジオ」にて生中継もおこなわれた。まさにUNDERWORLDによる「渋谷ジャック」が施されたのだ。
UNDERWORLDとTOMATOとパルコの邂逅。その価値とは
前述したように、TOMATOがメディアミックス的な手法でアート / デザイン表現をおこなっているのと、今回UNDERWORLDがリアルな「ライブ」とバーチャルな「メディア」を掛け合わせて渋谷という空間に新たな価値=アートを創造したのは、思想においては全く同一線上にある行為だ。今から20年前、UNDERWORLDとTOMATOが深く関わった映画『トレインスポッティング』にいち早く価値を見出し、上映をおこなった渋谷パルコ。ここでまた三者が邂逅し、このようなイベントがおこなわれたのは、なんとも感慨深いものがある。
- リリース情報
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- Underworld
『Barbara Barbara, we face a shining future』日本盤(CD) -
2016年3月16日(水)発売
価格:2,646円(税込)
Smith Hyde Productions / Beat Records / BRC-5001. I Exhale
2. If Rah
3. Low Burn
4. Santiago Cuatro
5. Motorhome
6. Ova Nova
7. Nylon Strung
8. Twenty Three Blue(ボーナストラック)
- Underworld
- イベント情報
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- 『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION“O”』
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2016年3月12日(土)~4月3日(日)
会場:東京都 渋谷 パルコミュージアム、ギャラリーX、シネクイント、館内複数か所の特設ギャラリーほか
時間:10:00~21:00(最終日は18:00閉場、入場は閉場の30分前まで)
料金:一般500円 学生400円
※小学生以下無料
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- 『トレインスポッティング』期間限定上映
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2016年3月18日(金)~3月21日(月)
会場:東京都 渋谷 シネクイント
料金:1,000円
- プロフィール
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- UNDERWORLD (あんだーわーるど)
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カール・ハイドとリック・スミスから成るUNDERWORLDは、世界で最も影響力のある草分け的エレクトロニックグループの1つとして20年以上活躍してきた。その20年間で、UNDERWORLDの音楽は、ダンスフロアを超越し、1990年代を代表するアイコン的映画(トレインスポッティング)から、2012年ロンドンオリンピックの開会式(彼らは音楽監督として抜擢された)まで、ありとあらゆるものに起用されてきた。厳密なレコーディングプロセスの成果となった7枚目のアルバム『Barbara Barbara, we face a shining future』では、UNDERWORLDの創造的再生が披露され、自然発生と狂乱を最高峰まで極めたUNDERWORLDのすべてが凝縮されている。日本盤は2016年3月16日にリリース。
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