『第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』が、9月16日から東京・初台のNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京オペラシティ アートギャラリーで開催。本日9月15日に受賞作家を交えた内覧会が行なわれた。
同展では、世界88の国と地域の4034作品から選ばれた150点以上の作品を一挙に展示。昨年までの受賞作品展は東京・六本木の国立新美術館で行なわれていたが、今回は会場をNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京オペラシティ アートギャラリーに移して行なわれる。また部門ごとに作品を紹介する従来の展示方法ではなく、各作品から浮かび上がるキーワードをもとにゾーニングして展示しているという。
独作家のキネティックインスタレーションや「生命感」を持つロボット
NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]ではアート部門の作品を中心に展示。入口を入ると、同部門の大賞に選出されたラルフ・ベッカーによる192の直流モーターを用いたキネティックインスタレーション『Interface I』が出迎える。自然界の放射線を感知してランダムを動きを作り出し、赤い糸が暗闇をうねる同作品について、作者のベッカーは「縦方向と横方向の動きが互いを制約しながら動くシステム。赤い波形が全体を表しているようで、動きを制約するパーツにもなっており、『全体』と『部分』の関係性を考える作品になっている」と説明した。
受賞作『Interface I』について説明するラルフ・ベッカー
同フロアにはアート部門の優秀賞作品4点も展示。石黒浩、池上高志らによるロボット作品『Alter』をはじめ、東京都心から新潟の柏崎刈羽原子力発電所までの「高電圧送電ケーブルのある光景」を4K一眼レフカメラで撮影・編集した吉原悠博の映像インスタレーション『培養都市』、河川の小石を地質年代別に分類するベンヤミン・マウス、プロコップ・バルトニチェクのインスタレーション『Jller』、イスラエルのオリ・エリサルによる、土壌細菌を含んだ「バイオインク」で古代ヘブライ文字を描いた『The Living Language Project』を見ることができる。
ベンヤミン・マウス、プロコップ・バルトニチェク『Jller』
『Alter』制作チーム(代表:石黒浩/池上高志)『Alter』
『Alter』制作チームの石黒浩は、年齢や性別が不明な「誰でもない顔」と機械部分がむき出しになった身体を持つロボット作品について、「機械をむき出しにしても、中の制御のシステムを(人間の脳の神経回路を模した)複雑なニューラルネットワークで制御することで、生命を持っているような作品になっている。人の生命感をロボットでどれだけ表現できるかというチャレンジ」と話し、タイトルの「Alter」には「Alternative」「もう1つの人間性」といった意味が込められていると明かした。
またNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]のエントランスには、エンターテインメント部門の優秀賞作『NO SALT RESTAURANT』と、Ryo Kishiの新人賞受賞作『ObOrO』も展示されている。
『シン・ゴジラ』蒲田くん登場 ポケモンと一緒に撮影できるコーナーも
東京オペラシティ アートギャラリーの3階では、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の作品を展示。エンターテインメント部門大賞の庵野秀明監督、樋口真嗣監督による『シン・ゴジラ』や、優秀賞の『Pokémon GO』、市原えつこのロボットアプリケーション『デジタルシャーマン・プロジェクト』、アニメーション部門大賞の新海誠監督『君の名は。』、優秀賞の『映画 聲の形』、アレ・アブレウ監督の『父を探して』、新人賞の堤大介とロバート・コンドウによる短編『ムーム』などを紹介している。
『Pokémon GO』の展示ではポケモンと写真を撮ることができる
『デジタルシャーマン・プロジェクト』のロボットと同じポーズをとる市原えつこ
『シン・ゴジラ』の展示室には「蒲田くん」の通称で知られるゴジラ第2形態や、第4形態のフィギュアなどが登場。『Pokémon GO』のコーナーでは、来場者がポケモンと写真を撮ることができる。さらにマンガ部門優秀賞の松本大洋『Sunny』、高井研一郎、林律雄原作『総務部総務課山口六平太』、ユン・テホ『未生ミセン』、新人賞の灰原薬『応天の門』、清家雪子『月に吠えらんねえ』、畑優以『ヤスミーン』といった作品が紹介され、原画や複製原画などが展示されている。また功労賞の受賞者・松武秀樹、高野行央、梯郁太郎、飯塚正夫のコーナーも設置。
『BLUE GIANT』の原画や楽器展示 岡崎体育の「あるある」PVも上映
同ギャラリーの4階では、マンガ部門大賞の石塚真一『BLUE GIANT』を紹介。セリフのない回の原画や、主人公たちのジャズトリオをイメージしたテナーサックス、ドラム、ピアノを展示している。作者の石塚は「この作品は読者の方の頭の中で音を鳴らしていただいている。非常にありがたい」と話した。
エンターテインメント部門の新人賞を受賞した岡崎体育の楽曲“MUSIC VIDEO”のPV映像の前には岡崎体育と寿司くんが登場。音楽PVの「あるある」をテーマにした受賞作について岡崎体育は「制作はなんと6万円以内。おそらく今回の出展作の中で一番安い予算で制作されたのではないか。僕と監督の寿司くん、マネージャーの3人だけで、4日間計100時間をかけて作った」と明かしたほか、「今後は優秀賞や大賞など大きな賞を取れるように頑張るので、応援よろしくお願いします」と呼びかけた。
さらに同フロアでは、マンガ部門優秀賞の筒井哲也『有害都市』の原画や、アニメーション部門優秀賞を受賞したAnushka Kishani NAANAYAKKARAのストップモーションアニメ『A Love Story』の制作に用いられた撮影台、アート部門新人賞の津田道子による「フレーム」をモチーフにしたインスタレーション『あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。』、約300のギャラリーや美術館の白い展示壁を撮影したニナ・クルテラの『The Wall』などが展示されている。
津田道子のインスタレーション『あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。』
『第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』は、明日9月16日から約2週間にわたって開催。会期中は受賞作家によるトークや上映会などの関連イベントが行なわれる。詳細はオフィシャルサイトでチェックしよう。
- イベント情報
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- 『第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』
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2017年9月16日(土)~9月28日(木)
会場:東京都 NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京オペラシティアートギャラリーほか
料金:無料
- 詳細情報
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- 『第20回 文化庁メディア芸術祭』受賞作品
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アート部門
大賞
Ralf BAECKER『Interface I』
優秀賞
吉原悠博『培養都市』
『Alter』制作チーム(代表:石黒浩/池上高志)『Alter』
Benjamin MAUS / Prokop BARTONICEK『Jller』
Ori ELISAR『The Living Language Project』
新人賞
津田道子『あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。』
Rosa MENKMAN『DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.』
Nina KURTELA『The Wall』
エンターテインメント部門
大賞
庵野秀明/樋口真嗣『シン・ゴジラ』
優秀賞
市原えつこ『デジタルシャーマン・プロジェクト』 川嵜鋼平/中野友彦/中村裕美/橋本俊行/宇田川和樹/天野渉『NO SALT RESTAURANT』
『Pokemon GO』制作チーム(代表:野村達雄)『Pokemon GO』
『Unlimited Corridor』制作チーム(代表:松本啓吾)『Unlimited Corridor』
新人賞
岡崎体育/寿司くん『MUSIC VIDEO』
Ryo Kishi『ObOrO』
Marcel BUECKNER / Tim HEINZE / Richard OECKEL / Lorenz POTTHAST / Moritz RICHARTZ『RADIX | ORGANISM / APPARATUS』
アニメーション部門
大賞
新海誠『君の名は。』
優秀賞
山田尚子 映画『聲の形』
Ale ABREU『父を探して』
Anushka Kishani NAANAYAKKARA『A Love Story』
Anna BUDANOVA『Among the black waves』
新人賞
堤大介/ロバート・コンドウ『ムーム』
Emma VAKARELOVA『I Have Dreamed Of You So Much』
Arturo “Vonno” AMBRIZ / Roy AMBRIZ『Rebellious』
マンガ部門
大賞
石塚真一『BLUE GIANT』
優秀賞
高井研一郎/原作:林律雄『総務部総務課山口六平太』
ユン・テホ/訳:古川綾子/金承福『未生ミセン』
筒井哲也『有害都市』
松本大洋『Sunny』
新人賞
灰原薬『応天の門』
清家雪子『月に吠えらんねえ』
畑優以『ヤスミーン』
功労賞
飯塚正夫
梯郁太郎
高野行央
松武秀樹
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