カネコアヤノ、uri gagarnら、ジャンルレスな個性が響き合う

Opus Innが鋭く鳴らす、折衷的で、まさに「いま」という感覚

3月29日、音楽アプリ「Eggs」とCINRAの共同主催による無料音楽イベント『exPoP!!!!!』が、TSUTAYA O-nestにて開催された。

この日のトップバッターを飾ったのは、堀内美潮(Vo)と永田誠(Gt)から成る神戸出身の2人組、Opus Inn。R&B、ヒップホップ、エレクトロ、ロックをはじめ、様々なジャンルを滑らかに混ぜ合わせることで自分たちの表現を行う、近年の海外メインストリームポップとも共振するエクレクティック(折衷的)な感性を持つユニットだ。

Opus Inn
Opus Inn

堀内美潮(Vo)
堀内美潮(Vo)

この日は、シンセ / ベースのサポートを加えた3人で登場。そのしなやかなビートと深みのあるメロディーに体を任せれば、海に沈んでいくような、ベッドルームの隅でマインドトリップにいそしむような、そんなメロウネスにズブズブと身を沈めていける。「内省」が音になり、世界と摩擦を起こす――その心地よくも鋭い質感が、「いま」の表現として、とても真摯なものに感じられた。

永田誠(Gt)
永田誠(Gt)

Opus Inn

自由でチャーミングな、ポップアーティストAAAMYYY

続いて登場したのは、SSW / トラックメイカーのAAAMYYY。Tempalayのサポートメンバーとしても活動する彼女、自身のプロジェクトで『exPoP!!!!!』に出演するのは、当時組んでいたユニット「eimie」として出演して以来、2年ぶり。

AAAMYYY
AAAMYYY

AAAMYYY

音楽性においても、その自由な佇まいにおいても、「Grimes以降」というべきポップアーティスト像を日本で体現する貴重な存在だ。ステージでは、舌足らずなMCで笑いを誘い、かと思えば、力強い歌声を響かせる。そのギャップも魅力的で、音楽力と人間力で見る者を惹きつけていく。

AAAMYYY

AAAMYYY『MABOROSI WEEKEND』を聴く(Spotifyを開く

音源でRyohuをフィーチャリングに向かえていた楽曲“BLUEV”では、Ryohuの代わりにラップも披露し、さらに、サビではフロアを巻き込みながら「一緒に歌ってください!」と呼びかける。その姿に、ひとりでステージに立つがゆえの気高さと、「音楽は、人に力を与えうる」――そんな強く大きな想いを見た気がした。

AAAMYYY

まっすぐ、不安定なまま、衝動的に。カネコアヤノの、歌うたいとしての誠実な姿

3番手に登場したのは、カネコアヤノ。ステージだけでなく作品においても、弾き語りとバンドセットでのアウトプットを使い分ける彼女だが、この日は、林宏敏(Gt / ex.踊ってばかりの国)、木村拓磨(Ba / Gateballers)、Bob(Dr / HAPPY)という3人のサポートメンバーを引き連れたバンドセットで登場した。

カネコアヤノ
カネコアヤノ

カネコアヤノ

そのステージングは、「不安定であること」をそのまま受け入れ、音像に変換したようなもの。カネコアヤノは、ステージの上で幸せなフリをしたり、「こうするべきだ」というメッセージを投げかけるようなことはしない。ただ、自分自身の日々や感情の不安定さに身をもたげる。そして、その中にある「幸せだ」と言い切りたい瞬間とか、「抱き合いたい」という願い、抱き合ったときの温度、「どうでもいいじゃんっ!」という衝動、そして「幸せになりたい」という祈り――それらを、そっとすくいあげる。

カネコアヤノ

カネコアヤノ

彼女の音や言葉は、その圧倒的な動体視力で、一瞬一瞬で移り変わっていく人間の感情や目線の動きを克明に捉える。「言い切れない」ということはとても確かなことだし、「祈る」という行為もまた確かなことなのだと、その演奏を聴いていると感じるのだ

カネコアヤノ

カネコアヤノ

uri gagarn、人懐っこい「揺らぎ」のハードコア

そして、この日のトリを飾ったのはuri gagarn。現在活動休止中のgroup_inouでMCを務める「cp」こと威文橋(Vo,Gt)、そして元nhhmbaseの英(Ba)、川村(Dr)のリズム隊による3ピースハードコアバンドだ。

uri gagarn
uri gagarn

威文橋(Vo,Gt)
威文橋(Vo,Gt)

ハードコア、と言ってもuri gagarnには独特のファニーさ、人懐っこさがある。この人懐っこさは、「ファンクネス」と言い換えてもいいだろう。1曲目“Owl”から、フロアにも手拍子を誘導する威文橋。リズム隊の奏でるファンキーなビートに、フロアも揺れ始める。曲によっては激動を、あるいは静寂を操りながら、それでも、そのパフォーマンスには常に一定の「揺らぎ」を維持しようとする強い意志を感じさせる。

威文橋(Vo,Gt)

川村(Dr)
川村(Dr)

彼らは、表現が観念的になりすぎることを嫌っているのかもしれない。エモーショナルになりすぎることもなく、ストイックになりすぎることもなく、脈打つ音の運動のなかに込められた意志。そこにただ、感動させられるのだ。

uri gagarn

英(Ba)
英(Ba)

そして、アンコールでは全てのタガが外れたかのように、疾風怒濤のハードコアパンクを聴かせて去っていった。その圧倒的な速度にもまた、感動させられたのだった。

威文橋(Vo,Gt)

uri gagarn

uri gagarn、カネコアヤノ、AAAMYYY、Opus Inn……振り返ってみれば、4組ともが「こうだ!」とは言い切れない、多面的な魅力を持ったアーティストたちだった。こんな「言い切れない夜」もまた、とても幸せな夜だ。

Opus Inn
Opus Inn

AAAMYYY
AAAMYYY

カネコアヤノ
カネコアヤノ

uri gagarn
uri gagarn

イベント情報
『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume107』

2018年3月29日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
AAAMYYY
カネコアヤノ(バンドセット)
uri gagarn
Opus Inn
料金:無料(2ドリンク別)

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume108』

2018年4月26日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
折坂悠太(合奏)
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
The Songbards
your gold, my pink
and more!!!!!
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール
Opus Inn
Opus Inn (おーぱす いん)

Vocalの堀内美潮とGuitarの永田誠による神戸発2人組ユニット。共通のルーツである60年代からのR&B、Soul、Rock、AOR、また近年のR&B、Electronica、Hiphop等あらゆるジャンルを昇華させた楽曲が注目を集め始めている。2016年頃から2人でトラック制作を開始し、2017年からSoundCloudにて楽曲を公開。サポートメンバーを含めた構成でのLive活動を行っている。2017年12月に1st EP『Time Gone By』リリース。

AAAMYYY (えいみー)

長野県出身のSSW / トラックメイカー。CAを目指しカナダに留学、帰国後22歳から音楽制作を始める。2017年からソロとしてAAAMYYY(エイミー)名義で活動を開始。ロックバンド"Tempalay"のサポートをはじめ、「KANDYTOWN」のメンバー呂布のゲストボーカル、ラジオMC、モデルとして幅広く活動し注目を集める中、2017年に突如自主リリースされ即完売した4曲入りテープ『WEEKEND EP』に、2018年2月リリースの4曲入りテープ第2弾『MABOROSI EP』を加えた計8曲、RyohuやTENDREをフィーチャリングした楽曲を収録した『MABOROSI WEEKEND』が遂に全国配信開始。

カネコアヤノ

シンガーソングライター。これまでミニアルバム1枚、フルルバム2枚をリリース。弾き語りとバンド形態でライブ活動も展開中。音楽活動にとどまらず、舞台 / 映画 / モデルなど多方面で活動する。2016年4月には初の弾き語りアルバム『hug』、さらに11月にEP『さよーならあなた』を発表。2017年4月に2ndEP『ひかれあい』、2017年9月には初のアナログレコード『群れたち』をリリース。2018年4月25日、3枚目となるフルアルバム『祝祭』を全国一斉発売する。

uri gagarn (ゆーり ががーん)

都内を中心に活動する、威文橋 / Bunkyo(Gt,Vo)、英 / Hide(Ba)、川村 / Kawamura(Dr)からなる3ピースバンド。これまでに3枚のアルバムと1枚のシングル、LOSTAGEとのスプリット7inchを発表。その独特なサウンドから、日本語詩ながらも来日アーティストのサポートも多く、過去にSebadoh、Mineral、764-hero等と共演。2016年、1stシングル『Face』を発表。『FUJI ROCK FESTIVAL '16』に出演。オルタナティヴロックをベースに、様々なジャンルからエッセンスを吸収し、uri gagarn独自の世界観を構築している。2018年4月4日、ニューアルバム『For』をリリース。



記事一覧をみる
フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • カネコアヤノ、uri gagarnら、ジャンルレスな個性が響き合う

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて