メロウにたゆたいながらも、熱さと激しさを見せつけたMellow Youth
2月28日、CINRAと音楽アプリ「Eggs」の共同主催による無料音楽イベント『exPoP!!!!!』が、渋谷のライブハウスTSUTAYA O-nestにて開催された。
この日の一番手を飾ったのは、平均年齢22歳の5人組バンド、Mellow Youth。
ブラックミュージックのグルーヴ感を昇華したバンドアンサンブルは、SuchmosやNulbarichといった、近年の国内シーンでも重要な位置を占めるバンドたちからの系譜を感じさせる。しかし、曲の随所に現れるロックでエモーショナルなギターが、このバンドにしか出せない熱さと激しさを際立たせている。
そのバンド名の通り、メロウにたゆたいながら、しかし、穏やかなだけではいられない若さゆえの焦燥をアグレッシブなギターサウンドに託して、バンドのアイデンティティを見せつけるようなステージングを披露した。
メロウ・イエロー・バナナムーンが鳴らす、多国籍なルーツを昇華した先にある普遍的なポップス
2番手に登場したのは、キーボードとパーカッションを含む6人組バンド、メロウ・イエロー・バナナムーン。
大学の音楽サークルから始まり、ロックやポップスだけでなく、中南米音楽や黒人音楽、ケルト音楽なども摂取してきたメンバーが集まったバンドだけあって、その音楽性は国籍を感じさせない雑食的なものになっている。しかし、曲の聴き心地に難解さや複雑さは一切なく、リズムやメロディ、歌からは、童謡や子守唄のような、普遍的な優しさや懐かしさを強く感じさせる。
この日は、4月に新作ミニアルバム『Tropicália』をリリースすることを発表し、そこからの新曲も披露。この先のバンドの行く末の大部分を担っていくであろう緒方利菜(Vo)の、目いっぱい歌を届けようとする歌声に、若さと豊かさを感じた。
獰猛な音の塊の中に鳴り響くフルートとファゴットで、会場を揺さぶったTHE RATEL
3番手に登場したのは、THE RATEL。吉田ヨウヘイgroupの一員だった池田若菜(フルート)と内藤彩(ファゴット)を中心に、畠山健嗣(Gt / H Mountains)、溝渕匠良(Ba / TOURS)、富樫大樹(Dr / サンガツ、harineko)といった、東京のインディシーンで活躍してきたメンバーが集まった5人組バンドだ。
彼らが鳴らす音は、静かに、激しく、重い。地響きのような重低音、空間を埋め尽くすノイズ、その獰猛な音の塊の中で優雅に、ふくよかに鳴るフルートとファゴット、そして内藤の呟くような歌声(それはときに、言葉すら捨て去った叫びへと変わっていった)。そのすべてが混然一体となって、怒りのような、祈りのような、その両方が混ざり合ったような、音楽にしか創造しえない美しくも異形の空間を創造していく。
彼らの音に身を任せながら深く沈んでいくのは、とてもヒリヒリとしながらも、不思議と、とても心地のよい体験でもあった。
I Saw You Yesterday、機材トラブルを振り切る演奏から見えたバンドとしてのプライド
4番手に登場したのは、4人組バンド、I Saw You Yesterday。刹那を疾走するような、瑞々しくも衝動的なギターポップを鳴らす彼らは、そのグッドメロディを大いに響かせ、フロアを熱気で包んでいく。
まるで切なさと熱狂が混然一体となって胸に飛び込んでくるようなパフォーマンス。もちろん、そのパワフルな演奏やポップなメロディだけが彼らの武器ではない。下田英雅(Vo,Gt)の艶のある歌声は、彼らの音楽性が、この先「インディポップ」と呼ばれる範疇を大きくはみ出していくであろう可能性を感じさせもした。
この日はギターのトラブルで演奏が止まる瞬間もあり、本調子とはいかなかったようだ。それでも最後、すべてを振り切るように全身全霊で届けられた“Lisbon”の迫力ある演奏には、たしかにロックバンドのマジックが宿っていた。
「謎」の多いバンド、木(KI)。「人と人」が奏でる音楽の圧倒的な凄みを見せつける
この日のトリに登場したのは、木(KI)。バンド名も、ビジュアルイメージも、その存在は謎だらけながら、音楽好きの間で徐々に話題になっている4ピースバンドだ。
筆者自身も「このバンドは一体、何者なんだろう?」という状態で、この日、初めてライブを観たのだが、あまりの衝撃で「何者か?」なんて問いはどうでもよくなってしまった。むしろ「謎」を「謎」のまましっかりと消化できてしまうほどに、音がすべてを雄弁に語っていたのだ。
ジャズ、ベースミュージック、ヒップホップなど、様々な音楽性を身に付けたプレイヤーたちであることは間違いない。しかし、そうしたジャンル云々の話はどうでもよくなるくらいに、その演奏を聴いている間は、バンドであることの凄み、合奏であることの凄み、「人と人」が奏でる音楽の圧倒的な凄みが、耳から全身を駆け巡るようだった。
生音と電子音を混ぜ合わせながら、自分たちが生み出す微細なズレや違和感、身体と身体が重なり合う歪さ、呼吸の揺らぎも、「音楽」として楽しむように楽器を演奏しているステージ上の4人。パフォーマンスは、後半にいくにしたがって神聖さすら帯びていくようだ。こんなにも「人間」の存在感を感じさせる音楽には、近年、出会ったことがなかった……そう思えるくらいに、その演奏は生々しく身体的で、美しく、エモーショナルなステージだった。
音楽性はバラバラながら、「音楽」としてなにかを語ることの可能性を感じさせる5組が揃ったこの日の『exPoP!!!!!』。全組がバンドミュージックとしての躍動感を持ちながら、ときに穏やかに、ときにダイナミックに、深く深く、集まった人たちをこの夜の中に沈めていた。
- イベント情報
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- 『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume118』
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2019年2月28日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest出演:
I Saw You Yesterday
木(KI)
THE RATEL
メロウ・イエロー・バナナムーン
Mellow Youth
- 『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume122』
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2019年6月27日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest出演:
新しい学校のリーダーズ
vividboooy
ほか
料金:無料(2ドリンク別)
- プロフィール
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- Mellow Youth (めろう ゆーす)
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2016年結成。平均年齢22歳。ツインボーカル、ツインギター、ベース、ドラムの編成。AOR / Acid jazz / pop / Rock様々な要素を取り込み、独自の空気感、世界観で奏でる5人組バンド。
- メロウ・イエロー・バナナムーン
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2015年夏頃、大学の音楽サークルで出会ったメンバーが「野外フェス出たいね」を合言葉に集合。翌年春より本格的に活動開始。ポップ、中南米音楽、ロック、黒人音楽、ケルト音楽など多種多彩な音楽を聴いたりやったり揉みつ揉まれつしてきたメンバーによる、にぎやかなポップ・ミュージックが魅力。2017年11月にバンド初の全国流通版ミニアルバム「かくも素晴らしき日々」をリリース、2019年4月には1st EP「Tropicália」をリリース。
- THE RATEL (ざ らーてる)
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元・吉田ヨウヘイgroupのフルート池田若菜とファゴット内藤彩を中心に、Gt.畠山健嗣(H Mountains)、Ba.溝渕匠良(TOURS,ex.SuiseiNoboAz)、Dr.富樫大樹(サンガツ,harineko)と東京インディシーンで活躍するメンバーを迎え結成されたポストハードコア/オルタナティブロックバンド。2018年12月に初の4曲入りシングル『Focus EP』を発売。2019年1月のレコ発ではチケット前売り完売。初期4AD~ツインピークス的とも言えるゴシックな世界観の中、管楽器のハーモニーとアヴァンサイケなギターが絡むタイトル曲などを披露。
- I Saw You Yesterday (あい そう ゆー いえすたでい)
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東京にて活動する4人組インディ・ポップ・バンド。USインディ直系のギター・ロック・サウンドで、90年代オルタナティブやシューゲイザーからの影響が強く、疾走感のあるインディポップを鳴らす。一方で、ライブではラウド感が強く、その音は形容し難いが、日本で唯一無二の音を鳴らすバンドといっても過言ではないだろう。2016年9月にはりんご音楽祭へ出演。その後も数々の海外バンドの前座も務めながら、2017年4月には待望のデビュー作『Dove』をリリース。2018年にはミツメらとタイの音楽フェスPOW! FESTに出演し、初の海外進出を実現。同年には1年ぶりとなる新作『Topia EP』をリリース。
- 木 (KI)
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きいたことないけど、みたことある。ぼくらはそれを見つけた。もしかするとマスターキーかもしれない。扉を開けて聴いてみて、昨日のことを思い出すように。
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