Omoinotakeは今こそ大きく羽ばたく 自由でエモーショナルで大胆に

Omoinotake、THREE1989、JABBA DA FOOTBALL CLUBの3組が集結した一夜

去る9月9日、渋谷・道玄坂のライブハウス「TSUTAYA O-WEST」にて、3ピースバンドOmoinotakeが自主企画イベント『Dogenzaka Sway』を開催した。出演者はOmoinotakeに加え、JABBA DA FOOTBALL CLUBとTHREE1989(スリー)の3組。

これまでにも渋谷・宇田川町のライブハウス「Shibuya Milkyway」にて『Udagawa Sway』という自主企画を開催しているOmoinotakeは、そもそも渋谷で路上ライブをしながらその表現力を磨いてきたバンドだ。彼らにとって、渋谷はとても重要な場所なのだろう。そんな渋谷の中で彼らが掲げる「Sway」という言葉には、「揺れる」という意味がある。

Omoinotake(おもいのたけ)左から:福島智朗(エモアキ)、藤井レオ、冨田洋之進(ドラゲ)
島根県出身。Key / Vo藤井レオ、Ba / Cho福島智朗(エモアキ)、Dr / Cho冨田洋之進(ドラゲ)からなるギターレス、ピアノトリオバンド。中学からの同級生だった彼らが2012年東京で結成。渋谷を中心に活動、ライブを重ね、その人気と実力を形成してきた。特に渋谷のストリートライブではその集客が話題となり、メディアでも取り上げられる。

トップバッターで登場したのはJABBA DA FOOTBALL CLUB(以下、ジャバ)。2日前に配信リリースされたばかりの“きみは最高”や、現在行っているツアーの中で作り上げているというアコースティックセットで披露された新曲も交えた、現在進行形のジャバを存分に見せるようなセットリスト。その陽性なグルーヴで、見事にフロアに開放感をもたらした。

JABBA DA FOOTBALL CLUB

続いて登場したTHREE1989は、前日には神戸でランウェイを歩いていたというフロントマン・Shoheyを中心に、コーラス隊も参加したゴージャスでソウルフルなパフォーマンスでフロアを魅了した。見事な歌唱力を響かせながらも、自分たちのステージだけでなく、イベント全体を盛り上げようとするShoheyのジェントルな立ち振る舞いも印象的だった。

THREE1989

そしてトリに登場したこの日の主役、Omoinotake。まずは藤井レオ(Vo,Key)、福島智朗(エモアキ)(Ba)、冨田洋之進(ドラゲ)(Dr)に、サポートメンバーである柳橋玲奈(Sax)を加えた4人編成でステージに登場すると、冒頭は“Hit It Up”~“fake me”と、アルバム『So far』(2017年)と同じ流れで始まった。

Omoinotake
Omoinotake『So far』を聴く(Apple Musicはこちら

“Hit It Up”の弾けるようなポップサウンドがフロアの熱量を一気に上げ、続く“fake me”は、躍動感のあるダイナミックなリズム隊、どこか切なさを宿すキーボード、その狭間を縫うようにサックス、それぞれが重なり合うことで絶妙なアンサンブルを生み出していく。<109の前で君と待ち合わせだ / 交差点越しに君の顔が見えてきた / 3度目のデートだし / 思い伝えようかな / うまくいくといいけど>――そんな、渋谷を舞台設定にしたリアルな風景描写と、予感や惑いもはらんだ心理描写によって彩られた歌詞もまた、ポップなサウンドと心地のいい化学反応を生み出しながら、この夜の渋谷に突き刺さっていくようだった。

音数が減ったことでより鮮明になった、グルーヴや歌声

筆者がOmoinotakeのライブを観るのは今年1月に渋谷WWWで開催されたワンマンライブ以来、約8か月ぶりで(参考記事:Omoinotakeとは?渋谷の路上で歌とグルーヴと物語を磨いた3人組)、そのときもライブ冒頭はサポートメンバーを加えた編成で始まっていたのだが、前回は今回の4人編成に、さらにパーカッションを加えた5人編成だった。

そこから今回は4人編成になっていたことによって音数が減ったことが功を奏したのか、生ドラムと電子パッドを同時に操ることで生み出される多層的でしなやかなグルーヴ感や、藤井の歌声の美しくも力強い響きなど、Omoinotakeのポップバンドとしてのストロングポイントがより鮮明に響いてくるようだった。

藤井レオ
冨田洋之進(ドラゲ)
福島智朗(エモアキ)

今のOmoinotakeは、その翼を大きく羽ばたかせようとしている

バンドが自分たちの魅力に自覚的に音楽を作り、それを真っ向から響かせている――8か月前よりもそう感じさせる瞬間が多々あったが、中でもハイライトは、5曲目に演奏された“Blanco”、そこから続く6曲目の“惑星”、そして7曲目、「昨日完成したばかりで、まだタイトルも決まっていません」と紹介された新曲へと至った中盤の流れだった。

これも数日前に配信リリースされたばかりだった新曲の“Blanco”は、SIRUPなどを手掛けるShingo.Sをサウンドプロデューサーに迎えて作られた楽曲で、ミニマムな音像によって穏やかなメロウネスを演出するサウンドプロダクションと、大胆に展開していく歌謡性の高いサビが特徴的な1曲。Omoinotakeのモダンな感性と普遍的なソングライティング力が高次元で融和した楽曲だ。

Omoinotake“Blanco”を聴く(Apple Musicはこちら

“惑星”もまた今年リリースされた曲で、作詞を手掛ける福島の甘くも繊細なリリシズムが、メロディアスなサウンド、さらに藤井のファルセットと重なり合うことで、極上のロマンティシズムを生み出している。さらに、まだ名付けられていない出来立てホヤホヤの新曲は、“Blanco”や“惑星”ともまた違った、緩急のある展開の中でエモーショナルな爆発力を持つサビが光る、スケールの大きな1曲。Omoinotakeの新たな引き出しが開かれたような感覚を抱かせる楽曲だ。

Omoinotake“惑星”を聴く(Apple Musicはこちら

これらの新曲たちは、Omoinotakeが「ブラックミュージックを昇華した~」とか、「シティポップ的な~」といった説明だけでは捉えきれない独自性と普遍性を獲得し始めていることを証明する楽曲たちで、その素晴らしさは、ライブでも見事に表現されていたように思う。これらの楽曲には、「新しさ」と「懐かしさ」が同居するような魅惑的なチャームがあった。

それはきっと、Omoinotakeが「今」を生きるバンドとして必死に未来を手繰り寄せながら、「自分たちがどこから来たのか?」という問いにも、真摯に向き合いながら音楽を作っているからだろう。より自由に、よりエモーショナルに、より大胆に。誰かが決めた言葉ではなく、自分たち自身で、自分たち自身を定義するように――。今のOmoinotakeは、明らかに、その翼を大きく羽ばたかせようとしている。そういう瞬間を目撃するようなライブだった。

アンコールでは、THREE1989のShohey、さらにJABBA DA FOOTBALL CLUBのNOLOVも参加して、ORIGINAL LOVEの“接吻”のカバーが演奏された。ベッタリくっつくわけでもないが、しかし、この夜を幸福な瞬間にしようと、寄り添いながら温かな空間を作り上げていく……そんな3組の姿がとても真摯で、最高。もちろん、演奏も熱く素晴らしいものだった。

イベント情報
『Dogenzaka Sway』

2019年9月9日(月)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-WEST
出演:
Omoinotake
THREE1989
JABBA DA FOOTBALL CLUB

リリース情報
Omoinotake
『Blanco』

2019年9月6日配信

Omoinotake
『Street Light』(CD)

2018年10月10日(水)発売
価格:1,823円(税込)
NEON RECORDS / NECR-1017

1. Stand Alone
2. Never Let You Go
3. Still
4. Temptation
5. Bitter Sweet
6. Friction

プロフィール
Omoinotake
Omoinotake (おもいのたけ)

島根県出身。Key / Vo藤井レオ、Bass / Cho福島智朗(エモアキ)、Dr / Cho冨田洋之進(ドラゲ)からなるギターレス、ピアノ・トリオバンド。中学からの同級生だった彼らが2012年東京で結成。渋谷を中心に活動、ライブを重ね、その人気と実力を形成してきた。特に渋谷のストリートライブではその集客が話題となり、メディアでも取り上げられる。インディーリリースながら2017年1stフルアルバム『So far』、1stミニアルバム『beside』がスマッシュヒット。その音楽性に注目され、早くから日本テレビ『バズリズム』等の地上波出演など、テレビやFMでプッシュされてきた。10月10日、2ndミニアルバム『Street Light』をリリース。ソウル、R&B、HIPHOPなどブラックミュージックの系譜からインスパイアされ生み出す彼らのセンス溢れるサウンドメイク、そして繊細ながらも情感を揺さぶる藤井怜央の魅力的なボーカルが、今の時代のカルチャーと相まって、今後最も活躍が期待されるバンドである。



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